角田郁雄のオーディオSUPREME
dCS「Rossini Player」を聴く。独自の5bit Ring DACが奏でる唯一無二のサウンドとは?
Rossini Playerの技術(Ring DACについて)
■“Ring DAC”がPCMとDSDそれぞれの長所を両立させる
dCSのRing DACは特許技術なので、詳細については明かされていない要素も多い。しかし、公開された資料から動作原理は推察することができる。
まずPCMは、独自のアルゴリズムで動作するFPGAによってデジタル処理を行い、2.8MHz/5bit化。そのデジタル信号を1chあたり48個(ホット、コールド各24個)の超高精度抵抗を並べた抵抗ラダー型DACでD/A変換する仕組みだ。デジタル信号が、このDACの中で「輪を描く」ように循環するので、“Ring DAC”と名付けられた。出力段には、ディスクリート構成の6Vを出力できる強力なA級バッファーアンプを搭載する。
おそらくDSDについても、同じ工程で5bit化されているのではないかと考えられる。なぜならば、DSD再生でも音量調整やフィルターモードが可変できるからだ。また何の処理を加えない純粋な1bit DACでは、高域ノイズのために周波数特性を広げることができず、弱音から強音までのダイナミックレンジも十分に拡張できない。
一方で、PCMの高い分解能や中低域の厚みを表現するためには、マルチビットDACが理想的だ。従って、ダイナミックレンジなどで高い性能値が発揮できる5bitは、PCMとDSDの音の再現性が両立できる、理想的なビット数だと私は考える。参考までに、現在最高峰と言われる海外製のDSD対応32bit型DACチップも、2.8MHz/1bitのDSDを6bit化し、2.8MHz/6bitでD/A変換するのだが、Ring DACも同じようなアーキテクチャーだと考えられる。創業当時から一貫して、このDACを成熟させてきたことには畏敬の念すら感じる。
Rossini Playerの音を聴く
■CDを再生すると、愛聴盤が“dCSリマスター盤”として蘇った
Rossini Playerの音を、まずはCD再生で試した。再生においてはアップサンプリングをDXD(384kHz/24bit)またはDSDのどちらかで選択できる。空間性、倍音再現、音のレスポンスなどを試すために、ヘルゲ・リエン・トリオ『Spiral Circle』をDXDアップサンプリングで再生した。
冒頭から極めて俊敏なドラムスの響きが空間に点在し、個々のタムの微細な余韻までが再現される。くっきりとした透明度の高いピアノを聴くことができ、聴感上の濁りを全く感じさせない。中盤からの弦を弓で弾くアルコでは、目の覚めるような、ごりごりとした木質感たっぷりの胴の響きが体験できる。Ring DACにより解像度が格段に高まるので、音だけが単に聴き手にインパクトを与えるのではなく、音と奏者の動きが一体になって、部屋の空気までを動かしてインパクトを与えてくれる。この生演奏を聴くようなリアリティーが、dCSの凄いところだ。
次にムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルのチャイコフスキー交響曲を聴いたが、とてもCDとは思えない、音数の多い弦楽の響きと鮮烈な金管楽器の倍音が空間を埋め尽くした。ハイビットで録音された音源を聴く感覚で、通常の44.1kHz/16bit再生には後戻りができない。
私はそもそもDSDが好きなのだが、Rossini PlayerでDSDに変換すると、音に柔らかみが付加され、倍音がさらにアナログの音、ひいては生の音に近づいた感覚を味わえる。フィルターモードは、少しワイドレンジな「F1」が好みだった。聴き慣れたCDが“dCSによるリマスター盤”になったかのようで、情報量が多く、音に深みが出てくることも特徴だ。ブルーノート、マイルス・デイビスなどのジャズや、フィリップス、EMI、グラモフォンなど往年の大切なコレクションを愛聴する方に、ぜひこの音を聴いて欲しい。CDから新たな発見があるはずだ。
■“Ring DAC”がPCMとDSDそれぞれの長所を両立させる
dCSのRing DACは特許技術なので、詳細については明かされていない要素も多い。しかし、公開された資料から動作原理は推察することができる。
まずPCMは、独自のアルゴリズムで動作するFPGAによってデジタル処理を行い、2.8MHz/5bit化。そのデジタル信号を1chあたり48個(ホット、コールド各24個)の超高精度抵抗を並べた抵抗ラダー型DACでD/A変換する仕組みだ。デジタル信号が、このDACの中で「輪を描く」ように循環するので、“Ring DAC”と名付けられた。出力段には、ディスクリート構成の6Vを出力できる強力なA級バッファーアンプを搭載する。
おそらくDSDについても、同じ工程で5bit化されているのではないかと考えられる。なぜならば、DSD再生でも音量調整やフィルターモードが可変できるからだ。また何の処理を加えない純粋な1bit DACでは、高域ノイズのために周波数特性を広げることができず、弱音から強音までのダイナミックレンジも十分に拡張できない。
一方で、PCMの高い分解能や中低域の厚みを表現するためには、マルチビットDACが理想的だ。従って、ダイナミックレンジなどで高い性能値が発揮できる5bitは、PCMとDSDの音の再現性が両立できる、理想的なビット数だと私は考える。参考までに、現在最高峰と言われる海外製のDSD対応32bit型DACチップも、2.8MHz/1bitのDSDを6bit化し、2.8MHz/6bitでD/A変換するのだが、Ring DACも同じようなアーキテクチャーだと考えられる。創業当時から一貫して、このDACを成熟させてきたことには畏敬の念すら感じる。
Rossini Playerの音を聴く
■CDを再生すると、愛聴盤が“dCSリマスター盤”として蘇った
Rossini Playerの音を、まずはCD再生で試した。再生においてはアップサンプリングをDXD(384kHz/24bit)またはDSDのどちらかで選択できる。空間性、倍音再現、音のレスポンスなどを試すために、ヘルゲ・リエン・トリオ『Spiral Circle』をDXDアップサンプリングで再生した。
冒頭から極めて俊敏なドラムスの響きが空間に点在し、個々のタムの微細な余韻までが再現される。くっきりとした透明度の高いピアノを聴くことができ、聴感上の濁りを全く感じさせない。中盤からの弦を弓で弾くアルコでは、目の覚めるような、ごりごりとした木質感たっぷりの胴の響きが体験できる。Ring DACにより解像度が格段に高まるので、音だけが単に聴き手にインパクトを与えるのではなく、音と奏者の動きが一体になって、部屋の空気までを動かしてインパクトを与えてくれる。この生演奏を聴くようなリアリティーが、dCSの凄いところだ。
次にムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルのチャイコフスキー交響曲を聴いたが、とてもCDとは思えない、音数の多い弦楽の響きと鮮烈な金管楽器の倍音が空間を埋め尽くした。ハイビットで録音された音源を聴く感覚で、通常の44.1kHz/16bit再生には後戻りができない。
私はそもそもDSDが好きなのだが、Rossini PlayerでDSDに変換すると、音に柔らかみが付加され、倍音がさらにアナログの音、ひいては生の音に近づいた感覚を味わえる。フィルターモードは、少しワイドレンジな「F1」が好みだった。聴き慣れたCDが“dCSによるリマスター盤”になったかのようで、情報量が多く、音に深みが出てくることも特徴だ。ブルーノート、マイルス・デイビスなどのジャズや、フィリップス、EMI、グラモフォンなど往年の大切なコレクションを愛聴する方に、ぜひこの音を聴いて欲しい。CDから新たな発見があるはずだ。