[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第160回】良いメンテナンスが良い音を作る!ポータブルオーディオの “お手入れ法” 徹底解説
■外装の木と革の扱い
イヤホンやヘッドホンの外装やポータブルプレーヤーのケースに、木材や革が利用されている例も少なくはない。金属やプラスチックとはまた違う考え方や扱い方、メンテナンスが必要な素材だ。
まず革、人工合成皮革ではなく本革は、丁寧に使い込んでいるうちに経年変化で、感触としてはしなやかさを増し、外観としては色合いが濃くなる。これを「手に馴染んで深みが出た」と感じる方は革製品と相性がよい。一方これを「へたって汚れた」と感じる場合は革製品との相性が根本的によろしくないと思われるので、次回から革製品は避けたほうが無難だ。
そして人間にも「あの人はよい歳の取り方をしている」と言った表現があるように、革もその環境によって経年変化が「よい感じ」になったり「単にぼろくなった…」みたくなったりと違いは出る。なので「革のお手入れ」は大切だ。基本はやはり「乾拭き」。例えば夏場に耳周りもじんわりと汗をかいたときなど、ヘッドホンを外したあとは乾拭きでイヤーパッドの湿り気を拭き取っておこう。
革製品の保湿や汚れ落とし向けのワックスやオイルも市販されている。カルナバ蝋や蜜蝋などのワックスと植物性オイルを配合したものが主流。それらには馴染みや深みを引き出す効果もある。しかし新品の革製品から早急に味わいを引き出そうと多用しすぎると、オイル成分が染み込みすぎて革がぐったりとしてしまったりもする。半年ごとや四季ごとくらいのペースでの使用が適当だろう。
木材の部分についてはまず、塗装等の仕上げが施されているか、施されているならそれはどのようなものか、といったところを確認してみてほしい。それによって扱い方が変わってくるからだ。
例えば良質なプラスチックのように硬質で滑らかな塗装が施されているならば、それはウレタン系など頑強な樹脂塗装である可能性が高い。するとその部分は構造材としての木材らしい特性は保ちつつも、湿気からの影響の受けにくさや汚れにくさといった点では大幅に強化、保護されている。木材だからという特別な配慮はあまり必要なく、他と同じように「基本乾拭きのみ」みたいな感じでOK。
見たところや手触りがこれ木肌のままの無塗装?といった感じの状態であれば、それは本当に完全に無塗装か、またはオイル仕上げと思われる。
オイル仕上げというのは、天然成分にせよ化学的なものにせよ、木の表面にオイルを塗り込んで磨き、表面近くにその油分等での保護層を作ってあるものだ。保護層といっても実際の保護力はしっかりとした塗装に及ぶものではない。しかし木の手触りを損ねないままに多少なりとも保護でき、またオイルによって木肌の色合いが深みを増すといった効果もあり、木材の魅力を特に生かす仕上げと言える。
お手入れは無塗装でもオイル仕上げでも、こちらもやはり乾拭きが基本だ。加えて革と同じく木材向けにも、そのお手入れ用に天然素材のオイルやワックスが市販されている。こちらも半年や四季ごとくらいのペースでの使用が適当だろう。
なお、元が完全無塗装の木材にオイル等を利用すると色合いに深みが出るので、そういう方向の変化があまり好みでない方は使用を控えた方がよいかもしれない。もっとも革と同じく木材も、特に何もしなくとも自然な「色焼け」等で色の深みは出てくる。
なお天然素材のオイルやワックスは革や木材の周りの樹脂や金属のパーツに付着してもそれらを痛めにくいので、その点でも使いやすい。とはいえ余計な成分、余計な水分ではあるので、余計な場所に付着したらささっと拭き取っておこう。
他、オーディオ製品でも時折「漆」など特殊な仕上げが施されているものもある。特殊な仕上げや素材には特殊な扱いやお手入れが必要な場合もあるので、それは各自調べてみてほしい。
■終わりに
…ということで今回は、ポータブルオーディオ周りのメンテナンスのポイントや、役立つグッズを紹介した。すべてをいますぐ神経質に気にして実行していただく必要はない。しかしざっと目を通していただいて、手入れや保管への意識に少し変化があったのであれば、まずはそれだけでも意義がある。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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