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構想10年、DACを2チップに“分離”した成果とは? AKM「AK4191+AK4498」を聴いた
■10年前からあったアイデアを5年ほど前から具体化
デジタル処理とアナログ処理の分離というアイデアについて、中元聖子氏はこう語る。
「デジタルとアナログが混在しているΔΣDACという形のなかで、良い音を出せるよう技術を磨いてきました。一つのチップではデジタル処理部からアナログ処理部へのノイズ干渉が音に影響することに対してケアが必要ですが、そもそもD/A変換以外の部分が同じチップに乗っているということに違和感があったのです」。
「干渉を起こす根源がなければ、もっと色々できるのではないかと考えていました。その問題解消にはデジタル部とアナログ部を分けることが得策だと、10年ほど前から雑談レベルで佐藤と話していたのですが、具体的に構想がスタートしたのは5年ほど前からですね」。
「その構想スタート当時の2014年は、AK4490を出し、歪みの少なさなどDACとしての性能の良さが認知されるようになってきた頃でした。当時我々が提示できたスペックは十全といえるものではなく、オーディオメーカーとしてのAKMの立ち位置が確立しているとはいえないと感じていました。そうした中でデジタル/アナログを分割したセパレート構成を出したとしても、『ワンチップで良いスペックが出せないから分離構造に手を出した』と受け取られるかもしれない、と考えました」。
「それであれば、既存のワンチップ型ΔΣDACでしっかり音を作り、認められたうえでやりたいことをやろうと、ずっと機を窺っていたのです。2014年当時、AK4490が完成し、次のAK4497の開発が始まっていました。その段階で現在のフラグシップであるAK4499の構想がスタートしていたので、『AK4499の次はどうしよう』という検討をする中で、今回のセパレートDAC構想がようやく動き始めたのです。まずAK4499で自分たちの立ち位置や音質、性能を示してから、分離構造に行こうということですね」。
しかし、ただデジタルとアナログを分離したからといって、すべてが解決するというものではない。
AK4191から出力されるΔΣモジュレーター通過後のデジタル信号とクロックは8ピン分あり、チップを置いたボード上にノイズ源が増えることになってしまう。そのため、ワンチップDACで積み重ねてきたノイズ低減・干渉防止のためのノウハウを生かし、ΔΣ出力ピンからのノイズをケアするため、インターフェース部に気を遣った設計としたという。
またセパレート構成となることで、純粋に基板上のスペースがワンチップ型の倍以上必要となる点も課題だ。
AK4191、AK4498はAK4497と同じ64ピンパッケージだが、デジタル部とアナログ部を分離し、各々のチップでできた余裕に対し、より細やかな電源供給を行うよう設計を行い、総合的な性能・音質向上を図っている。