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公開日 2015/06/03 10:29

元JBL幹部が起ち上げたブランド「WREN」とは? CEOとプロダクトデザイナーに聞く

「オーディオの喜びを次世代へ」
山本 敦
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昨年末、日本に上陸したアメリカのオーディオブランド「WREN(レン)」より発売されている「V5BT」(関連ニュース)は、温もり感あふれるウッドボディに、先進のワイヤレスオーディオ技術を詰め込んだコンパクトスピーカーとして注目を集めている。

CEOのマイク・ギフィン氏(左)とプロダクトデザイナーのダニエル・アッシュクラフト氏(右)

今回、Wren Sound Systems社より来日したCEOのマイク・ギフィン氏、ならびにプロダクトデザイナーのダニエル・アシュクラフト氏に製品のコンセプトを訊ねる機会を得た。

WRENの日本での第一弾製品「V5BT」

各種端子とスイッチ類を背面に装備

WRENを設立したギフィン氏は、ハーマンインターナショナルに22年間在籍し、JBLブランドのモバイル・ポータブル製品のブランディングや開発責任者などを歴任してきたキャリアを持つ人物だ。

マイク・ギフィン氏

WRENの創立は2011年と、まだとても若いブランドでありながら、V5BTのように完成度の高い製品を作り上げることができた理由は、オーディオ業界で長年に渡ってものづくりの最前線で活躍してきたギフィン氏が辣腕を振るってきたからに他ならない。

ギフィン氏はブランドが誕生した背景をこう語る。「iPodやスマートフォンが普及して、音楽は手軽に聴けるようになりましたが、いい音、アーティスティックなデザインを楽しめる製品は少なくなりました。私は次世代へオーディオの喜びを継承したいと考え、WRENというブランドを始めました」。

ちなみに“WREN”のブランドネームは、アメリカ大陸に生息する小さな鳥類(スズメの仲間で日本語ではミソサザイと訳される)の名前から取られたものである。

「美しく、大きな声で歌う鳥です。自由に空を駆けめぐる姿を、コンパクトで軽快なワイヤレススピーカーの姿に重ねてみました。そして、言葉の響きが1音節だから覚えやすい!」。ギフィン氏はとても人なつこい笑顔で語る。

ブランドの処女作となったワイヤレススピーカーが「V5BT」だ。スマホやBluetoothの技術は、手軽かつ便利に音楽を聴くスタイルを浸透させた。「これからはモバイルデバイスで音楽を聴くスタイルがますます主流になる」と考えたギフィン氏は、WRENの中核プロダクトにワイヤレススピーカーを位置づけながらラインナップを固めていく決断を下した。

WRENの航海の舵を切る重要な人物がもう一人いる。本項の冒頭に名を挙げたプロダクトデザイナーのダニエル・アシュクラフト氏だ。

ダニエル・アシュクラフト氏

V5BTには、JBLが世に送り出してきた数々のスピーカーのエッセンスが注入されている。ことにデザインの面では、JBLのK2シリーズ、EVEREST DD55000/DD66000といった銘機のデザインを手がけてきたアシュクラフト氏の影響が強く反映されている。

「高品位なサウンドとアーティスティックなデザイン、スマートな操作性を一つの製品に束ねてかたちにできる人物を、私はダン(“ダニエル”の愛称)をおいて他に知らない」とギフィン氏は力強く言い切る。

WRENのスピーカー開発のコンセプトに、アメリカの著名建築家であるルイス・ヘンリー・サリヴァン氏の名言へのリスペクトから生まれた「カタチは感動に従う(form follows emotion)」という考え方がある。

「エレガントなデザインも“いい音”と同じぐらい、音楽やオーディオを楽しむ際に欠かせない大切な要素。だからWRENの製品は使う人の感動を揺さぶるようなデザインに徹底してこだわる」。ギフィン氏とダン・アシュクラフト氏の理想が重なった。

V5BTのデザインを象徴する要素の一つが、コンパクトなワイヤレススピーカーとしては珍しい木製のキャビネットだ。強靱なリアルウッドのMDFの表面に、美しいローズウッドとバンブー(竹)による2種類の突き板仕上げのモデルを揃える。

「プラスティックや金属を使って刺激的なデザインにすることは簡単ですが、WRENではユーザーに愛着を持って、長く使ってもらえるようなスピーカーをつくりたいと考えて、ウッドを使うことを選択しました」とアシュクラフト氏はこだわりを説く。

インタビュー中のようす

本体のフロントとリアのパネルは緩やかな曲線を描く。「オーディオの技術とアートの、シームレスな融和」を表現しているのだという。

「先進技術と優れたデザインを一体にして高めることが何よりも大事」。アシュクラフト氏の弁にはさらに熱がこもる。リビングやオーディオルームに置いた時、景観と自然に溶け込む外観であることを、アシュクラフト氏はプロダクトデザインの大切な心得として掲げる。これまでに手がけてきたJBLのスピーカーデザインから一貫して貫いてきた姿勢でもある。

側面がなだらかなカーブを描く独特の形状

V5BTの底面に用意された4mm厚のシリコンシートはキャビネットの振動を抑える効果だけでなく、スピーカーをラックやデスクトップに置いたときに、キャビネットと接地面との間に淡い影ができる。エレガンスを徹底追求したWRENの渋いこだわりは、こんな細かいところにも見つけることができる。

製品について解説するアシュクラフト氏

キャビネット内部のようす

コンパクトなボディには25W×2の高出力クラスDアンプを搭載。2基の80mmウーファーを左右に配置し、19mmソフトドームトゥイーターも備える。さらにより豊かな低音を再生するためにバスレフポートも設けた。

ウーファーは小型化しながら、ロングスロードライブ設計としたことでコンパクトなキャビネットながらも十分にエネルギッシュな音を鳴らせるよう設計されている。リジッドな木製キャビネットにとどまらず、いい音を真摯にこだわり抜いたWRENならではと言える、スピーカーづくりにとって大切な要素が惜しみなく注ぎ込まれている。

V5BTを始めWRENのスピーカーの音づくりを支えている、もう一人のキーパーソンがエンジニアのジョン・クリスコー氏だ。「彼が開発した4層構造のボイスコイルをウーファーユニットに搭載することによって、コンパクトな筐体ながらもあふれんばかりのパワーを獲得しています。音づくりは彼と私が、長時間のリスニングセッションを繰り返しながら入念に決めています」と開発の舞台裏をギフィン氏は明かす。

「音づくりにはサイエンスの工程と、アートの工程の2段階を設けています。最初のサイエンスの工程では、入力信号に対してリニアでフラットバランスな特性が出せるように追い込みます。それだけではスピーカーとして味気ないものになってしまいますので、後段のアートの工程であるリスニングセッションをジョンと一緒に重ねながら、何日もかけて音楽的に味わい深いサウンドに仕上げていきます」。

ワールドワイドで展開が始まったV5BTの評価は上々だという。本機を2台使って、1台のソース機器へ同時にBluetooth接続しながらステレオ再生を楽しめるリスニングモードも搭載されている。「迫力あるステレオリスニングが味わえる使い方」としてギフィン氏がおすすめするステレオリスニングのモード時には、スピーカーに内蔵する高精度DSPが各ユニットの駆動を最適化。より臨場感豊かなステレオイメージが再現される。

V5BTの背面

今後は様々なワイヤレスオーディオのプラットフォームに対応しながら、ユーザーに長く楽しんでもらえるスピーカーのラインナップを広げていきたいというギフィン氏。まずはaptXにも対応するBluetoothベース、V5BTの成功により足場を固め、今後はWi-Fi接続機能を追加して1台でAirPlayやDTS Play-Fiにも対応するスピーカーなどをロードマップに組み込む計画があるようだ。

今年の後半にはV5BTよりもさらにコンパクトサイズな兄弟機「V3」シリーズのローンチも計画されているという。V5BTを一回り以上小さくしたワイヤレススピーカーだが、今回そのプロトタイプも見せていただいた。

「フットプリントをより小さくすることで、“エレガンスとシンプルさ”を強く感じてもらえるスピーカーです。音質にも一切妥協せず、V5BTと同じ80mmのウーファーを2基搭載します。自宅に複数のWRENのスピーカーを設置し、マルチリスニング環境を構築するなら、リビングにはV5BTを置いて、キッチンや寝室にV3BTという使い方もおすすめです。“ショッキングなほど、いい音”なスピーカーに作り上げたいと思っています」と、ギフィン氏は目を輝かせながら語ってくれた。

よりコンパクトな「V3」も計画中。後ろの「V5BT」は日本未導入のカラーバリエーションモデル

オーディオの魅力を熟知した、業界の重鎮たちがタッグを組んで生まれたWREN。その懐からどんな面白い製品が飛び出てくるのか、今後の動向から目が離せない。

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