公開日 2015/07/17 12:00
【レビュー】花澤香菜の未発表ハイレゾ楽曲を一足先に聴いた!
作詞・作曲担当者へのインタビューも
花澤香菜の未発表曲。それも、かなり力の入った録り下ろしのハイレゾ音源。気にならないという方はいるだろうか、いやいない(反語&断言)。
ということで、Astell&Kernのハイレゾオーディオプレーヤー「AK100II」と花澤香菜がコラボした、「AK100II KANA HANAZAWA エディション」。本コラボモデルの最大のポイントと言っていいだろう、プリインストール音源について、くわしい情報をお伝えしていきたい。本体についての情報はこちらを参照されたい。
●“音質”と“音楽性”の両方を追求した楽曲
さて、花澤香菜による未発表曲だが、そのタイトルは「辿りつく場所」。レコーディングエンジニアには杉山勇司氏を起用。数々の名作、アーティストを手掛ける超実力者である氏の名前が登場することで、その音への仕上がりの期待度がグンと上がる。さらにレコーディングは全てソニーミュージックスタジオ、マスタリングはロンドンのSoundMastersで行われている。
また以前、レコーディングの模様をご紹介した記事が掲載されているからご一読いただきたいのだが、ここから分かるのは本作が生楽器により構成されているということだ。もちろん、三者三様でありながら全員がまさに一流というプレイヤー陣によって演奏されている。ハイレゾというスペックに対し、その全てを使い切るようなクオリティを目指していることがうかがえる。
作曲は音楽制作集団「Mili(ミリー)」のYamato Kasai。「Mili」は動画配信サイトなどで曲を発表するとたちまちビュー数を伸ばすなどネット上を騒がせている音楽制作集団であり、iOS/Android端末に配信されているスマートフォン向け音楽ゲームアプリ「Deemo」への楽曲提供が有名だろう。その楽曲としては、非常に美しい世界を構築していくような、音楽それ自体にストーリー性を持つメロディアスな構成が特徴だ。
そして作詞はReom(AQUA ARIS)が担当。先ほどのレコーディングレポートであったり、花澤香菜楽曲のレビュー記事であったり、「アルマギア -Project-」であったり、アニソンオーディオをご覧の方ではその名をご存知だろう。スタジオ集団「AQUA ARIS」もまた多岐にわたる活動を行っているが、その一環としての作詞家としての顔が本作にて見られたというわけだ。
また本作のアートワークは、よしとも(AQUA ARIS)が担当。作詞担当のReomがアートディレクションを行うことで、作品の持つ世界観の共有が高いレベルでなされたのだろう。「辿りつく場所」というタイトルや、楽曲の持つ幻想的な世界を描き出している。また逆に、イラストから受け取ることのできるイメージが、その世界をさらに深め、広げ、そして透明でありながらも確かに存在するものとして昇華させている。
では、この「辿りつく場所」は実際にどういった楽曲なのだろうか。今回、作曲・作詞を担当したYamato KasaiとReomの両者にインタビューを行うことができた。ここでは技術的なことではなく、楽曲制作時の姿勢や発想についてうかがった。楽曲がどのようにして生まれたのかを知ることで、よりその本質に近づくことができるはずだ。
〜インタビュー to Yamato Kasai〜
−「辿りつく場所」という楽曲を生み出すにあたり、なにをスタートとして考え、そしてそれをどのように広げていったのでしょうか?
Yamato Kasai 楽曲自体の響きです。「Mili」としての作品もそうですが、それぞれのパートが絡み合い、ヴォーカルも含めどのパートも主役級のバランスを作ることがスタートでした。その土台さえ出来てしまえば、後は奏者様方の演奏と、花澤さんの歌声が広げてくれると思っておりました。
−楽曲の音作りや展開として、どういった部分にこだわりましたか?
Yamato Kasai 展開に関しては、楽曲を作る際オケから作ったのですが、そのオケが自然と流れる形を意識しました。無理に展開を戻したり繰り返したりはせずに、流れるままに構成し、自然と終わるよう作っています。それに合わせて歌のメロディをはめ込み、ピアノと弦楽器とメロディに一体感が生まれる状態になるようこだわりました。
−作詞の方とは作品としてどのように連携を取られましたか?
Yamato Kasai 幾度かメールや直接お会いして打ち合わせをさせていただく際、都度Reomさんの詞の経過を拝見しました。アイデアを提示していただきつつ、音に合う作品を作っていただいた形です。
−ハイレゾというフォーマットに対して、意識されましたか?
Yamato Kasai はい。まず生演奏でのRecというのもそうですが、それを前提に最小限の楽器構成にしました。よって各パートがより目立ち、より空間を感じると思います。楽器が鳴り、それが響き、歌と弾き手から発生する小さな音まで感じられると思います。
−ここを聴いてみて欲しい、というポイントは?
Yamato Kasai とにかく、全てが良い意味で生々しいです。花澤さんと奏者様方の息遣いや鼓動まで聴こえてきそうな音の臨場感を楽しんでほしいと思います。
〜インタビュー to Reom〜
−「辿りつく場所」という楽曲を生み出すにあたり、なにをスタートとして考え、そしてそれをどのように広げていったのでしょうか?
Reom 届いたデモ曲を聴いたときに、特定の人物ではないのですが、一人の少女をストーリーテラーとして物語を作り込んでいきたいなと思いました。そこを出発点として、曲調からのイメージと、Yamato Kasaiさんとの話し合いから得られたイメージから書いていきました。
−タイトルを含めて、楽曲の世界観などはどのようなイメージですか? また、言葉の表現などで意識されたことはありますか?
Reom 好きなことに向かっていったけど、好きなことなのに挫折があって、それでも頑張って前に進もうっていう普遍的な悩みを題材に世界観を考えています。感情の“揺れ”というのもテーマにしていて、具体的に揺れをイメージしたのは「街路風」という単語であったり、そのまま直接「揺れ」という言葉を使って表現しています。タイトルの「辿りつく場所」はどんな場所なのか、それとも場所ではなくて“自分の気持ち”なのか、どんなふうにも聴いている人が考えられる言葉として選びました。
−作曲の方とは作品としてどのように連携を取られましたか?
Reom 楽曲をお送りいただいてから、直接会っての打ち合わせやメールでお互いの想像する世界観を共有して、曲に対するギャップが生まれないよう気をつけました。しかし、考えていたものはまったく同じで、スムーズに楽しく書くことができました!
−ここを聴いてみて欲しい、というポイントは?
Reom 聴いていただいた方が、この子に自分を重ねて共感できる部分があって、何か感じてもらえる所があったら嬉しいなと思います。あと「何も前も見ずに〜」からのリズミカルに、そして感情的に追い込んで花澤香菜さんが歌っている部分は私のお気に入りです!
このお話から、作詞家と作曲家が密に連携を取り合い、ひとつの世界観に基づいた作品を作り上げていることが分かる。そして最後にまとめがてら、特別に試聴させてもらうことができた「辿りつく場所」のハイレゾ音源(192kHz/24bit・WAV)でのレビューをいつものように行いたい。試聴に用いたのは、もちろん「AK100II」だ。
●「辿りつく場所」
花澤香菜の未発表曲として、“音質”にもこだわられたタイトル。ピアノとチェロ、ヴァイオリンによる編成で、その全ては生楽器による生演奏で収録。そこに情感の込められた花澤香菜の歌声が旋律を紡いでいく。どこか物悲しさを感じさせる音色が中心となった、メランコリックで儚い雰囲気の静かなメロディライン。重苦しくもある夢の中を歩むような、思い通りにならない焦燥、縺れるように絡みつく過去と想いの残滓、シャボンのような綺麗な情景が独自の世界を組み上げている。
ハイレゾの特徴のひとつに、S/Nの良さが挙げられる。つまりノイズがない。小編成の楽曲だけに、そのメリットが見事に感じられる。自分の息すら邪魔に感じられるほどの、静けさから得られる透明感がピアノのタッチを、弦の響きを、花澤香菜の息遣いを際立たせている。その静寂こそが、饒舌に物語を語り、楽曲を満たしている。
良い音楽は、もちろん普通に聴いても良い音楽だ。けれど、もっと深く聴き込むことで、楽しめる世界がある。「AK100II」のようなモデルは、その場所へと導いてくれるアイテムだ。そして「辿りつく場所」は、それだけ手を掛けるだけの価値がある音と音楽性を持つ楽曲だ。ちなみにこれは、花澤香菜の初ハイレゾ配信アルバムとなった「25」でも同様なことが言える。折角ならこちらのタイトルも、じっくりと聴きなおして新たな発見をして欲しい。
■Infomation
iriver(Astell&Kern)公式サイトはこちら
花澤香菜公式サイトはこちら
花澤香菜×Astell&Kern 特設サイトはこちら
花澤香菜STAFF公式ツイッターはこちら
Mili Official Websiteはこちら
ということで、Astell&Kernのハイレゾオーディオプレーヤー「AK100II」と花澤香菜がコラボした、「AK100II KANA HANAZAWA エディション」。本コラボモデルの最大のポイントと言っていいだろう、プリインストール音源について、くわしい情報をお伝えしていきたい。本体についての情報はこちらを参照されたい。
●“音質”と“音楽性”の両方を追求した楽曲
さて、花澤香菜による未発表曲だが、そのタイトルは「辿りつく場所」。レコーディングエンジニアには杉山勇司氏を起用。数々の名作、アーティストを手掛ける超実力者である氏の名前が登場することで、その音への仕上がりの期待度がグンと上がる。さらにレコーディングは全てソニーミュージックスタジオ、マスタリングはロンドンのSoundMastersで行われている。
また以前、レコーディングの模様をご紹介した記事が掲載されているからご一読いただきたいのだが、ここから分かるのは本作が生楽器により構成されているということだ。もちろん、三者三様でありながら全員がまさに一流というプレイヤー陣によって演奏されている。ハイレゾというスペックに対し、その全てを使い切るようなクオリティを目指していることがうかがえる。
作曲は音楽制作集団「Mili(ミリー)」のYamato Kasai。「Mili」は動画配信サイトなどで曲を発表するとたちまちビュー数を伸ばすなどネット上を騒がせている音楽制作集団であり、iOS/Android端末に配信されているスマートフォン向け音楽ゲームアプリ「Deemo」への楽曲提供が有名だろう。その楽曲としては、非常に美しい世界を構築していくような、音楽それ自体にストーリー性を持つメロディアスな構成が特徴だ。
Mili (ミリー) | |
世界中を魅了する異国のトリリンガルヴォーカリスト。クラシカルなサウンドを土台に、幅広い複合的な作曲を手がけるコンポーザー、インディーズ&メジャーシーンを騒がせるプレイヤー、Miliの世界を演出し視覚的に表現するデザイナー・イラストレーターからなる世界基準の音楽制作集団。各々の濃厚な経験から生み出される音は、どんなジャンルとも形容し難い独特な音楽を奏で、見たことのない世界を造り上げる。 | |
●「Mili」オフィシャルサイト ● Twitter:Mili Yamato Kasai / Mili |
そして作詞はReom(AQUA ARIS)が担当。先ほどのレコーディングレポートであったり、花澤香菜楽曲のレビュー記事であったり、「アルマギア -Project-」であったり、アニソンオーディオをご覧の方ではその名をご存知だろう。スタジオ集団「AQUA ARIS」もまた多岐にわたる活動を行っているが、その一環としての作詞家としての顔が本作にて見られたというわけだ。
Reom (れおむ) | |
アニメに関わる音楽やビジュアル、物語をトータルプロデュースするスタジオ集団「AQUA ARIS」代表。オリジナル作品の企画・執筆、声優・花澤香菜の楽曲の作詞を担当するなど作品制作に携わるほか、音楽ライターや宣伝協力などその活動は多岐にわたる。主な作品に「アルマギア -Project-」がある。 | |
●「AQUA ARIS」オフィシャルサイト ● Twitter:Reom_aqua_aris ●「アルマギア -Project-」特設ページ |
また本作のアートワークは、よしとも(AQUA ARIS)が担当。作詞担当のReomがアートディレクションを行うことで、作品の持つ世界観の共有が高いレベルでなされたのだろう。「辿りつく場所」というタイトルや、楽曲の持つ幻想的な世界を描き出している。また逆に、イラストから受け取ることのできるイメージが、その世界をさらに深め、広げ、そして透明でありながらも確かに存在するものとして昇華させている。
では、この「辿りつく場所」は実際にどういった楽曲なのだろうか。今回、作曲・作詞を担当したYamato KasaiとReomの両者にインタビューを行うことができた。ここでは技術的なことではなく、楽曲制作時の姿勢や発想についてうかがった。楽曲がどのようにして生まれたのかを知ることで、よりその本質に近づくことができるはずだ。
−「辿りつく場所」という楽曲を生み出すにあたり、なにをスタートとして考え、そしてそれをどのように広げていったのでしょうか?
Yamato Kasai 楽曲自体の響きです。「Mili」としての作品もそうですが、それぞれのパートが絡み合い、ヴォーカルも含めどのパートも主役級のバランスを作ることがスタートでした。その土台さえ出来てしまえば、後は奏者様方の演奏と、花澤さんの歌声が広げてくれると思っておりました。
−楽曲の音作りや展開として、どういった部分にこだわりましたか?
Yamato Kasai 展開に関しては、楽曲を作る際オケから作ったのですが、そのオケが自然と流れる形を意識しました。無理に展開を戻したり繰り返したりはせずに、流れるままに構成し、自然と終わるよう作っています。それに合わせて歌のメロディをはめ込み、ピアノと弦楽器とメロディに一体感が生まれる状態になるようこだわりました。
−作詞の方とは作品としてどのように連携を取られましたか?
Yamato Kasai 幾度かメールや直接お会いして打ち合わせをさせていただく際、都度Reomさんの詞の経過を拝見しました。アイデアを提示していただきつつ、音に合う作品を作っていただいた形です。
−ハイレゾというフォーマットに対して、意識されましたか?
Yamato Kasai はい。まず生演奏でのRecというのもそうですが、それを前提に最小限の楽器構成にしました。よって各パートがより目立ち、より空間を感じると思います。楽器が鳴り、それが響き、歌と弾き手から発生する小さな音まで感じられると思います。
−ここを聴いてみて欲しい、というポイントは?
Yamato Kasai とにかく、全てが良い意味で生々しいです。花澤さんと奏者様方の息遣いや鼓動まで聴こえてきそうな音の臨場感を楽しんでほしいと思います。
−「辿りつく場所」という楽曲を生み出すにあたり、なにをスタートとして考え、そしてそれをどのように広げていったのでしょうか?
Reom 届いたデモ曲を聴いたときに、特定の人物ではないのですが、一人の少女をストーリーテラーとして物語を作り込んでいきたいなと思いました。そこを出発点として、曲調からのイメージと、Yamato Kasaiさんとの話し合いから得られたイメージから書いていきました。
−タイトルを含めて、楽曲の世界観などはどのようなイメージですか? また、言葉の表現などで意識されたことはありますか?
Reom 好きなことに向かっていったけど、好きなことなのに挫折があって、それでも頑張って前に進もうっていう普遍的な悩みを題材に世界観を考えています。感情の“揺れ”というのもテーマにしていて、具体的に揺れをイメージしたのは「街路風」という単語であったり、そのまま直接「揺れ」という言葉を使って表現しています。タイトルの「辿りつく場所」はどんな場所なのか、それとも場所ではなくて“自分の気持ち”なのか、どんなふうにも聴いている人が考えられる言葉として選びました。
−作曲の方とは作品としてどのように連携を取られましたか?
Reom 楽曲をお送りいただいてから、直接会っての打ち合わせやメールでお互いの想像する世界観を共有して、曲に対するギャップが生まれないよう気をつけました。しかし、考えていたものはまったく同じで、スムーズに楽しく書くことができました!
−ここを聴いてみて欲しい、というポイントは?
Reom 聴いていただいた方が、この子に自分を重ねて共感できる部分があって、何か感じてもらえる所があったら嬉しいなと思います。あと「何も前も見ずに〜」からのリズミカルに、そして感情的に追い込んで花澤香菜さんが歌っている部分は私のお気に入りです!
このお話から、作詞家と作曲家が密に連携を取り合い、ひとつの世界観に基づいた作品を作り上げていることが分かる。そして最後にまとめがてら、特別に試聴させてもらうことができた「辿りつく場所」のハイレゾ音源(192kHz/24bit・WAV)でのレビューをいつものように行いたい。試聴に用いたのは、もちろん「AK100II」だ。
●「辿りつく場所」
花澤香菜の未発表曲として、“音質”にもこだわられたタイトル。ピアノとチェロ、ヴァイオリンによる編成で、その全ては生楽器による生演奏で収録。そこに情感の込められた花澤香菜の歌声が旋律を紡いでいく。どこか物悲しさを感じさせる音色が中心となった、メランコリックで儚い雰囲気の静かなメロディライン。重苦しくもある夢の中を歩むような、思い通りにならない焦燥、縺れるように絡みつく過去と想いの残滓、シャボンのような綺麗な情景が独自の世界を組み上げている。
ハイレゾの特徴のひとつに、S/Nの良さが挙げられる。つまりノイズがない。小編成の楽曲だけに、そのメリットが見事に感じられる。自分の息すら邪魔に感じられるほどの、静けさから得られる透明感がピアノのタッチを、弦の響きを、花澤香菜の息遣いを際立たせている。その静寂こそが、饒舌に物語を語り、楽曲を満たしている。
良い音楽は、もちろん普通に聴いても良い音楽だ。けれど、もっと深く聴き込むことで、楽しめる世界がある。「AK100II」のようなモデルは、その場所へと導いてくれるアイテムだ。そして「辿りつく場所」は、それだけ手を掛けるだけの価値がある音と音楽性を持つ楽曲だ。ちなみにこれは、花澤香菜の初ハイレゾ配信アルバムとなった「25」でも同様なことが言える。折角ならこちらのタイトルも、じっくりと聴きなおして新たな発見をして欲しい。
■Infomation
iriver(Astell&Kern)公式サイトはこちら
花澤香菜公式サイトはこちら
花澤香菜×Astell&Kern 特設サイトはこちら
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Mili Official Websiteはこちら
赤江ユウ Yu Akae 主にアニメ・ゲームとオーディオの分野で活動中。気持ちの良い音・映像を求めて、2次元と3次元の狭間を漂う。都内の片隅にある6畳間から、庶民的な感性を発揮した文章を発信している。 |
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