公開日 2017/04/27 15:00
【連続インタビュー(上)】「アイドルマスター」のハイレゾはどうやって作られたのか? コロムビアに聞く制作の舞台裏
「ハイレゾで出す意味があるならやろうと決めた」
2017年3月3日(先行配信では2月24日から)、アイドルマスターコンテンツのハイレゾ配信がスタートした。
日本コロムビアからは『アイドルマスター』『アイドルマスター シンデレラガールズ』、ランティスからは『アイドルマスター ミリオンライブ!』のハイレゾ配信が行われるというニュースを耳にした時、記者もプロデューサーの末席を汚す者として色めき立った。「アイマスの音楽を良い音で聴けるなんて最高!」と。
そして同時に、「ハイレゾになったからといって、それほど変わるものなのか?」という疑問も抱いた。職業柄ハイレゾ音源を試聴する機会も多く、「“良いハイレゾ”は“スペックが高いだけの音源ではない”」ことを実感していたからだ。また、どういう考えに基いてハイレゾ化したのか、その意図とエンジニアの腕が仕上がりに影響を与えることも大きい。
個人的には、アイドルマスターのハイレゾ配信によって、ハイレゾまわりが賑わって欲しいと思う。それはオーディオファンのみならず、作品のファンがハイレゾに興味を持ち、裾野を広げることが期待できるタイトルだからだ。それだけに、そのハイレゾ音源がどのように制作されたものであるのかが気になる。
そこで今回、日本コロムビアでアイドルマスターに携わる柏谷智浩プロデューサー、スタジオ技術部の瀬戸大介技師に話をうかがった。
柏谷氏は以前、「アイドルマスターの音楽をどういう形でファンに届けていくのがベストかは、ハイレゾも含め簡単には決まらない」としていた(関連インタビュー)。それから時間が経ったいま、ハイレゾへの考えはどのように変わったのか?
▼“ハイレゾ”として出せるものができるようになった
−−早速ですが、アイドルマスターという作品の音楽タイトルをハイレゾでリリースされるに至った経緯についてお聞かせください。
柏谷:ひとつは『ORT Mastering』ができるようになったということがあります。と言うのも、48kHz/24bitをハイレゾと呼ぶかどうか、そこにモヤモヤとしている部分があったんです。ソフトメーカーが思うハイレゾと、ハードメーカーが考えるハイレゾが結構違っていて、「48kHz/24bitからハイレゾです」と言われますが、DVDでもそうだったよね、と思っていて。これまで48kHz/24bitで普通に録っていたものが、「じゃあハイレゾ」で良いのか、と。
−−録音時の数値としては、CDの時と変わらないわけですからね。
柏谷:こちらの感覚で言うと、まず数値的には96kHz/24bitくらいにならないとハイレゾじゃないよね、ということはあったんです。bitの違いによる差が大きいのは分かりますが、サンプリングレートも96kHzくらいはないとハイレゾと言えないんじゃないかと。だから、BDオーディオでの48kHz/24bitの音源についても、僕は基本的にはハイレゾではなく、“高音質”と言ってきました。
−−言われてみれば、公式サイトなどでの表記もそうなっていますね。
柏谷:2013年くらいから96kHz/24bitで録りはじめて、やっとハイレゾとして出せるものが徐々に増えてきた。けれど、例えば『お願い!シンデレラ』(2013年4月10日リリース)などそれ以前のタイトルは48kHz/24bitで録っているわけで、そういう中で「ハイレゾどうしようか」となった時に、ORTという技術ができてきた。これなら48kHz/24bitも96kHz/24bit相当、ハイレゾとして出せるかな、というのがきっかけになったと思います。
瀬戸:再生するためのハードウェアとか、ハイレゾの環境が整ってきたことも相まって、ですよね。
柏谷:実際「なんでこのタイミング?」というのはあるかもしれません。ただ、コラボヘッドホンやプレーヤーを出すということがあったり、ORTが使えたりと、外的要因もあった。作業としてハイレゾを出すのは大変なんですけど、ハイレゾをやる意味があるのであればやろう、ということになりました。
瀬戸:ハイレゾだから、というよりもリマスタリングをすることによって新しい楽しみ方を提示して、プロデューサーの皆さんがどう楽しんでくれるかな、という反応を見つつ作っていると思います。
−−率直に、ハイレゾ音源と、従来の音源との違いはどういったところにありますか?
柏谷:スペックの違い、というのもありますが、マスタリングのアプローチが異なるということが大きな違いだと思います。これは一概に波形やスペアナで見てもその違いが出てこないことも多い。
−−聴感上での違いがある、ということですね。
柏谷:もともと波形を見て作っているのではなく、音を聴いて作っているわけですからね。もちろん、自分が気になったところを確かめる意味で検証してみるといった楽しみは良いと思います。でも、それだけだと分からないはずです。
瀬戸:曲によっては「音が歪(ひず)んでいるのでは」と思う箇所がある場合もあるかもしれませんが、意図しない歪みがあったら製品検査の段階でNGとなるので出せないはずなんですよね。
柏谷:クリップのような音になっているとすれば、それはあえて、わざとそのように作っていますね。音圧が強めなアプローチでミックスされた曲は、その方向でマスタリングをしますから。
日本コロムビアからは『アイドルマスター』『アイドルマスター シンデレラガールズ』、ランティスからは『アイドルマスター ミリオンライブ!』のハイレゾ配信が行われるというニュースを耳にした時、記者もプロデューサーの末席を汚す者として色めき立った。「アイマスの音楽を良い音で聴けるなんて最高!」と。
そして同時に、「ハイレゾになったからといって、それほど変わるものなのか?」という疑問も抱いた。職業柄ハイレゾ音源を試聴する機会も多く、「“良いハイレゾ”は“スペックが高いだけの音源ではない”」ことを実感していたからだ。また、どういう考えに基いてハイレゾ化したのか、その意図とエンジニアの腕が仕上がりに影響を与えることも大きい。
個人的には、アイドルマスターのハイレゾ配信によって、ハイレゾまわりが賑わって欲しいと思う。それはオーディオファンのみならず、作品のファンがハイレゾに興味を持ち、裾野を広げることが期待できるタイトルだからだ。それだけに、そのハイレゾ音源がどのように制作されたものであるのかが気になる。
そこで今回、日本コロムビアでアイドルマスターに携わる柏谷智浩プロデューサー、スタジオ技術部の瀬戸大介技師に話をうかがった。
柏谷氏は以前、「アイドルマスターの音楽をどういう形でファンに届けていくのがベストかは、ハイレゾも含め簡単には決まらない」としていた(関連インタビュー)。それから時間が経ったいま、ハイレゾへの考えはどのように変わったのか?
▼“ハイレゾ”として出せるものができるようになった
−−早速ですが、アイドルマスターという作品の音楽タイトルをハイレゾでリリースされるに至った経緯についてお聞かせください。
柏谷:ひとつは『ORT Mastering』ができるようになったということがあります。と言うのも、48kHz/24bitをハイレゾと呼ぶかどうか、そこにモヤモヤとしている部分があったんです。ソフトメーカーが思うハイレゾと、ハードメーカーが考えるハイレゾが結構違っていて、「48kHz/24bitからハイレゾです」と言われますが、DVDでもそうだったよね、と思っていて。これまで48kHz/24bitで普通に録っていたものが、「じゃあハイレゾ」で良いのか、と。
−−録音時の数値としては、CDの時と変わらないわけですからね。
柏谷:こちらの感覚で言うと、まず数値的には96kHz/24bitくらいにならないとハイレゾじゃないよね、ということはあったんです。bitの違いによる差が大きいのは分かりますが、サンプリングレートも96kHzくらいはないとハイレゾと言えないんじゃないかと。だから、BDオーディオでの48kHz/24bitの音源についても、僕は基本的にはハイレゾではなく、“高音質”と言ってきました。
−−言われてみれば、公式サイトなどでの表記もそうなっていますね。
柏谷:2013年くらいから96kHz/24bitで録りはじめて、やっとハイレゾとして出せるものが徐々に増えてきた。けれど、例えば『お願い!シンデレラ』(2013年4月10日リリース)などそれ以前のタイトルは48kHz/24bitで録っているわけで、そういう中で「ハイレゾどうしようか」となった時に、ORTという技術ができてきた。これなら48kHz/24bitも96kHz/24bit相当、ハイレゾとして出せるかな、というのがきっかけになったと思います。
瀬戸:再生するためのハードウェアとか、ハイレゾの環境が整ってきたことも相まって、ですよね。
柏谷:実際「なんでこのタイミング?」というのはあるかもしれません。ただ、コラボヘッドホンやプレーヤーを出すということがあったり、ORTが使えたりと、外的要因もあった。作業としてハイレゾを出すのは大変なんですけど、ハイレゾをやる意味があるのであればやろう、ということになりました。
瀬戸:ハイレゾだから、というよりもリマスタリングをすることによって新しい楽しみ方を提示して、プロデューサーの皆さんがどう楽しんでくれるかな、という反応を見つつ作っていると思います。
−−率直に、ハイレゾ音源と、従来の音源との違いはどういったところにありますか?
柏谷:スペックの違い、というのもありますが、マスタリングのアプローチが異なるということが大きな違いだと思います。これは一概に波形やスペアナで見てもその違いが出てこないことも多い。
−−聴感上での違いがある、ということですね。
柏谷:もともと波形を見て作っているのではなく、音を聴いて作っているわけですからね。もちろん、自分が気になったところを確かめる意味で検証してみるといった楽しみは良いと思います。でも、それだけだと分からないはずです。
瀬戸:曲によっては「音が歪(ひず)んでいるのでは」と思う箇所がある場合もあるかもしれませんが、意図しない歪みがあったら製品検査の段階でNGとなるので出せないはずなんですよね。
柏谷:クリップのような音になっているとすれば、それはあえて、わざとそのように作っていますね。音圧が強めなアプローチでミックスされた曲は、その方向でマスタリングをしますから。
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