公開日 2024/08/10 07:00
「イマーシブでは音楽を立体的に捉えられる」AURO-3D録音に初挑戦した気鋭のジャズドラマー・石若駿に聞く
イマーシブ収録を前提に音楽を作ることが増えている
ジャズドラマー・石若駿率いる「The Shun Ishiwaka Septet」と、豪華ゲストたちによる競演ライヴ『JAZZ NOT ONLY JAZZ』のオンライン配信(Streaming+/Live Extreme)が、石若駿の誕生日である8月16日(金)より1週間限定でスタートする(後日WOWOWにて放送予定)。ゲストメンバーは堀込泰行(キリンジ)、田島貴男(ORIGINAL LOVE)、PUNPEE、アイナ・ジ・エンド、大橋トリオ、そして上原ひろみとビックネームが揃う。
そのライヴと収録現場の模様についてはすでにレポートしているが、改めて石若駿に、一夜限りのスペシャルセッションにかける思いを語ってもらった。
ーー今回のスペシャルセッションの企画はどのようにしてスタートしたのでしょうか?
石若 私が編成するバンドと、素晴らしいゲストアーティストのみなさんとのコラボレーションということでWOWOWのみなさんからお誘いをいただきました。
ーー共演メンバーが非常に豪華ですが、どのような理由で声をかけたのでしょうか?
石若 企画の段階で、共演をしてみたい方はいらっしゃいますか?と聞かれまして、熱烈にお名前を挙げさせていただいた方々です。このコラボレーションでどんな景色が見られるかとても楽しみで、正直にお願いいたしました。
ーー今回の選曲のこだわりについても教えて下さい。
石若 それぞれのアーティストの名曲と、ジャズミュージシャンとのコラボだったり、個人的に思入れがある好きな曲だったり、アレンジしたら面白そう!というのがあったり、お客様が聴きたいであろうものを教えていただいたり、リサーチしたりしてこのような選曲になりました。
ーー本当に素晴らしいライヴで、観客席で体験していた私も胸が熱くなりました。ライヴを終えての感想はいかがですか?
石若 やはり特別な夜になったと思います。ハイテンションにSeptetのバンドから始まり、「A LOVE SUPREME」の渡辺翔太のピアノソロでみんながさらに鼓舞されました。
堀込さんコーナーの「エイリアンズ」もとても曲の素晴らしさを噛み締めながら演奏できましたし、「New Day」もベースのマーティと共にナイスなグルーヴを提供できたと思います。
田島さんコーナーでは、アレンジさせていただきた「BODY AND SOUL」は非常にチャレンジングなものになりました。たくさんのリハーモナイズドしたコードに対して、美しく響く田島さんの歌声に演奏しながら感動しました。「bless You!」や「グッディガール」は念願の初共演である田島さんの世界に完全に引き込まれて心地よかったですね。
PUNPEEさんとも初共演で、あの名曲「Renaissance」を生ドラムで演奏させていただくという貴重な瞬間でした。リハーサルから彼のサウンドに対するこだわりもすごく感銘をうけましたし、とても良い時間でした。
アイナさんコーナーでは、僕が個人的に好きな「スイカ」をアレンジさせていただきましたが、歳の近い同世代な彼女と、このコンサートの醍醐味であるリアルタイムなジャズと交差する部分を味わうことができたと思います。「私の真心」ではレコーディングでも演奏させていただきましたが、ライヴでもご一緒できて、ほんとに良かったです。細井徳太郎のギターソロを伴った壮大なエンディングの景色はいつも脳裏に焼きついてます。
大橋さんコーナーの思い出としましては、大橋さんの楽曲は非常に美しいコードワークの数々でありながら、グルーヴやフィールの移り変わりの難易度があったり、演奏者側のスリリングがあってとても楽しいのです。リハでは調整をするのに時間をかけたのですが、本番が一番パズルのピースのはまったような充実した演奏になりました。僕の青春時代のファンであり、念願の初共演でした。MCで言っていただいたことはとても嬉しくもあり、これからも頑張ろうとと身が引き締まる思いでもありました、照れました。
上原ひろみさんとは、ライヴでは初共演でした。小学生の頃から聴いていた「XYZ」をご本人とやるプレッシャーもありつつ、それを演奏している自分に客観的に驚いているような実感が演奏中にありました。小学生の自分に教えてあげたいです。音楽をつくっていくことに対する姿勢にとても感銘をうけました。
ひろみさんの演奏の気迫にもとても鼓舞されました。世界中を圧倒してきた音をたくさん感じました。マーティも素晴らしかったし、ギターヒーロー西田修大のソロにも感動しました。西田修大と演奏後に明日からの生活変わるね、と話しました(笑)。
このようなドラマチックな時間を作れたことは本当に良かったと思います。お越しのみなさんスタッフ、演奏者のみなさんに改めて感謝申し上げます。
ーー2018年にはNet Audio誌で「Pin Inn」のライヴのハイレゾ音源付録にご協力いただき、2020年にはStudio DEDEさんでの生配信の現場にもご一緒しました。当時から、ハイレゾなど「高品位な録音手法」にも非常に興味を持っていると感じておりました。改めてハイレゾについて考えていることがありましたら教えてください。
石若 僕は、演奏者の楽器を鳴らす際の手触りや質感などの微細な表現がクリアに聴こえるような音楽が好きで、それを大切に音楽を作れた時の喜びも大きいです。演奏者の真理に迫ることができると思います。そしてそれを届けたい気持ちが大きいので、ハイレゾを取り入れるチャンスはとても嬉しいです。
ーー今回はハイレゾの他にAURO-3Dという特別なイマーシブ・フォーマットでも収録しています。過去にもイマーシブ録音を体験されたことがあると伺いましたが、音についてなにか印象的なことはありましたか?
石若 2023年の「Love Supreme Jazz Festival」にAnswer to Remeberで出演した際に、ソニーの「360 Reality Audio」でミックスしました。映像を見ながらの体感は、音楽体験として新しい感覚でした。音楽を立体的に捉えられて、視覚と共により具体的にその曲、その奏者の中に入っていけるような印象でした。
ーーイマーシブ収録が存在することで、演奏のスタイルややり方になにか違いが生まれる可能性はありますか?
石若 かつて、ヤニス・クセナキスという現代音楽家の作品で、1960年代後期に作られた打楽器6重奏による「ペルセファサ」を演奏したことがあります。オーディエンスを中心に集め、その周りに六角形を結ぶように打楽器を配置して、空間音響を主とした音楽です。それぞれの打楽器がオーディエンスの周りを実際に移動したり、回ったりするようにつくられていて、イマーシブの要素を生演奏、完全アコースティックで提供できた経験はとても貴重でした。
昨今イマーシブの収録を前提に、音楽を作るということはたくさん増えていあす。生のパフォーマンスもそれを前提に演奏することで、新しい道が拓けると思います。ミュージシャン側がイマーシブの収録と、それを前提とした生のパフォーマンスをしっかり把握して、その共存がスタンダードとなったことを想像するとわくわくしますね。
そして、オーディエンスは、非日常、非現実的なところまで体験できたりすると思いますし、そういう音楽から刺激を受けて、オーディエンスと共に音楽もどんどん発展していくような気もしています。
ーー貴重なお話をありがとうございました。配信も楽しみにしております。
そのライヴと収録現場の模様についてはすでにレポートしているが、改めて石若駿に、一夜限りのスペシャルセッションにかける思いを語ってもらった。
「ドラマチックな時間を作れたことが本当によかった」
ーー今回のスペシャルセッションの企画はどのようにしてスタートしたのでしょうか?
石若 私が編成するバンドと、素晴らしいゲストアーティストのみなさんとのコラボレーションということでWOWOWのみなさんからお誘いをいただきました。
ーー共演メンバーが非常に豪華ですが、どのような理由で声をかけたのでしょうか?
石若 企画の段階で、共演をしてみたい方はいらっしゃいますか?と聞かれまして、熱烈にお名前を挙げさせていただいた方々です。このコラボレーションでどんな景色が見られるかとても楽しみで、正直にお願いいたしました。
ーー今回の選曲のこだわりについても教えて下さい。
石若 それぞれのアーティストの名曲と、ジャズミュージシャンとのコラボだったり、個人的に思入れがある好きな曲だったり、アレンジしたら面白そう!というのがあったり、お客様が聴きたいであろうものを教えていただいたり、リサーチしたりしてこのような選曲になりました。
ーー本当に素晴らしいライヴで、観客席で体験していた私も胸が熱くなりました。ライヴを終えての感想はいかがですか?
石若 やはり特別な夜になったと思います。ハイテンションにSeptetのバンドから始まり、「A LOVE SUPREME」の渡辺翔太のピアノソロでみんながさらに鼓舞されました。
堀込さんコーナーの「エイリアンズ」もとても曲の素晴らしさを噛み締めながら演奏できましたし、「New Day」もベースのマーティと共にナイスなグルーヴを提供できたと思います。
田島さんコーナーでは、アレンジさせていただきた「BODY AND SOUL」は非常にチャレンジングなものになりました。たくさんのリハーモナイズドしたコードに対して、美しく響く田島さんの歌声に演奏しながら感動しました。「bless You!」や「グッディガール」は念願の初共演である田島さんの世界に完全に引き込まれて心地よかったですね。
PUNPEEさんとも初共演で、あの名曲「Renaissance」を生ドラムで演奏させていただくという貴重な瞬間でした。リハーサルから彼のサウンドに対するこだわりもすごく感銘をうけましたし、とても良い時間でした。
アイナさんコーナーでは、僕が個人的に好きな「スイカ」をアレンジさせていただきましたが、歳の近い同世代な彼女と、このコンサートの醍醐味であるリアルタイムなジャズと交差する部分を味わうことができたと思います。「私の真心」ではレコーディングでも演奏させていただきましたが、ライヴでもご一緒できて、ほんとに良かったです。細井徳太郎のギターソロを伴った壮大なエンディングの景色はいつも脳裏に焼きついてます。
大橋さんコーナーの思い出としましては、大橋さんの楽曲は非常に美しいコードワークの数々でありながら、グルーヴやフィールの移り変わりの難易度があったり、演奏者側のスリリングがあってとても楽しいのです。リハでは調整をするのに時間をかけたのですが、本番が一番パズルのピースのはまったような充実した演奏になりました。僕の青春時代のファンであり、念願の初共演でした。MCで言っていただいたことはとても嬉しくもあり、これからも頑張ろうとと身が引き締まる思いでもありました、照れました。
上原ひろみさんとは、ライヴでは初共演でした。小学生の頃から聴いていた「XYZ」をご本人とやるプレッシャーもありつつ、それを演奏している自分に客観的に驚いているような実感が演奏中にありました。小学生の自分に教えてあげたいです。音楽をつくっていくことに対する姿勢にとても感銘をうけました。
ひろみさんの演奏の気迫にもとても鼓舞されました。世界中を圧倒してきた音をたくさん感じました。マーティも素晴らしかったし、ギターヒーロー西田修大のソロにも感動しました。西田修大と演奏後に明日からの生活変わるね、と話しました(笑)。
このようなドラマチックな時間を作れたことは本当に良かったと思います。お越しのみなさんスタッフ、演奏者のみなさんに改めて感謝申し上げます。
イマーシブサウンドは音楽体験として新しい感覚をもたらす
ーー2018年にはNet Audio誌で「Pin Inn」のライヴのハイレゾ音源付録にご協力いただき、2020年にはStudio DEDEさんでの生配信の現場にもご一緒しました。当時から、ハイレゾなど「高品位な録音手法」にも非常に興味を持っていると感じておりました。改めてハイレゾについて考えていることがありましたら教えてください。
石若 僕は、演奏者の楽器を鳴らす際の手触りや質感などの微細な表現がクリアに聴こえるような音楽が好きで、それを大切に音楽を作れた時の喜びも大きいです。演奏者の真理に迫ることができると思います。そしてそれを届けたい気持ちが大きいので、ハイレゾを取り入れるチャンスはとても嬉しいです。
ーー今回はハイレゾの他にAURO-3Dという特別なイマーシブ・フォーマットでも収録しています。過去にもイマーシブ録音を体験されたことがあると伺いましたが、音についてなにか印象的なことはありましたか?
石若 2023年の「Love Supreme Jazz Festival」にAnswer to Remeberで出演した際に、ソニーの「360 Reality Audio」でミックスしました。映像を見ながらの体感は、音楽体験として新しい感覚でした。音楽を立体的に捉えられて、視覚と共により具体的にその曲、その奏者の中に入っていけるような印象でした。
ーーイマーシブ収録が存在することで、演奏のスタイルややり方になにか違いが生まれる可能性はありますか?
石若 かつて、ヤニス・クセナキスという現代音楽家の作品で、1960年代後期に作られた打楽器6重奏による「ペルセファサ」を演奏したことがあります。オーディエンスを中心に集め、その周りに六角形を結ぶように打楽器を配置して、空間音響を主とした音楽です。それぞれの打楽器がオーディエンスの周りを実際に移動したり、回ったりするようにつくられていて、イマーシブの要素を生演奏、完全アコースティックで提供できた経験はとても貴重でした。
昨今イマーシブの収録を前提に、音楽を作るということはたくさん増えていあす。生のパフォーマンスもそれを前提に演奏することで、新しい道が拓けると思います。ミュージシャン側がイマーシブの収録と、それを前提とした生のパフォーマンスをしっかり把握して、その共存がスタンダードとなったことを想像するとわくわくしますね。
そして、オーディエンスは、非日常、非現実的なところまで体験できたりすると思いますし、そういう音楽から刺激を受けて、オーディエンスと共に音楽もどんどん発展していくような気もしています。
ーー貴重なお話をありがとうございました。配信も楽しみにしております。
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