公開日 2019/05/17 12:30

FYNE AUDIOのCEOが語る、スピーカー開発理念 − 自宅でバランス良く鳴らせるモデルを目指す

FYNE AUDIOのCEO、Andrzej Sosna氏インタビュー
季刊analog編集部:樫出/人物撮影:田代法生
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世界には数多のスピーカーブランドがあるが、2017年に創業したスコットランドのスピーカーブランド「FYNE AUDIO」は、昨年日本に上陸を果たし、いま最も注目されるブランドといっていいだろう。


「FYNE AUDIO」に関してオーディオアクセサリー誌170号にて、集中試聴レポートと共に、開発を務めるドクター・ポール・ミルズ氏に登場いただいた。そしてこの程、FYNE AUDIOのマネージングディレクター(CEO)を務めるアンジー・ソスナ氏が、上海ショウを終えて来日。創業時の話と現在の状況について話を聞くことができたので紹介しよう。

FYNE AUDIO Andrzej Sosna氏

創業してからミュンヘンショウまで、全員が力を合わせて開発に携わった

ーーまずアンジー氏さんの役割を教えてください。

アンジー氏 FYNE AUDIOは5人で会社を始めましたが、私はCEOです。現在は、営業から投資まですべて見ています。

ーータンノイ時代は何をされていましたか?

アンジー氏 タンノイには17年間在籍していました。最初はプロダクト開発で最後の4年間はマネージングディレクター、いわゆるトップですが、2015年にタンノイの資本が変わるまで在籍しました。そしてその後、2017年1月にFYNE AUDIOを立ち上げたのです。タンノイ時代は、民生用とプロ機として空港などに設置する施設用やスタジオモニターにも携わっていました。


ーー創業して瞬く間に製品をラインアップしましたが、その秘訣を教えてください。

アンジー氏 創業からその年のミュンヘンのショウまで、全てのメンバーが総力をあげて開発に携わりました。もちろんタンノイ時代の経験が非常に役立っていて、通常では、こんな短期間では成しえないでしょう。ソーシング、パーツの選択、プロトタイプを作り上げてきた事とか、販売経験やお客様の反応も含め、自分たちの過去の経験がその要素になっています。そして、自己資本もありましたが、いい投資家に出会えたこともあります。

ーー外部からの協力はありましたか?

アンジー氏 試聴に関しては、ドクター・ポールが自宅での試聴を繰り返し行っていました。パーツに関しても、タンノイ時代の取引先による協力がありました。実は2017年5月のミュンヘンショウの時には、F1-10のプロトタイプしか、正式な音が出ていなかったのです。その時には、F300、F500シリーズはほぼモックアップで、仕上がりは85%程度。ショウでの来場者からのフィードバックがあって、その2カ月後に完成したのです。ミュンヘンで披露したF500シリーズの試作にはベーストラックス・ポート・デュフューザーシステムは装備していませんでした。この技術はF700シリーズからで、F500シリーズには搭載予定ではなかったのですが、来場者の意見もあって搭載することにしたのです。

進化を遂げた自然な音を目指し、さまざまなフューチャーを開発

ーー創業時には、目指す音の方向性は決まっていましたか?

アンジー氏 目指した音は自然な音。タンノイ時代からさらに良いものを作りたかったですし、別のタンノイというイメージで捉えられたくなかったので、相当ディスカッションしました。その中で、ベーストラックス、ファインフルートやアイソフレアというフィーチャーが出てきて、それらを基礎として、いまに至っています。

先般のミュンヘンで開催された「HIFI DELUXE」では、F700シリーズの新製品F703とフラッグシップモデルF1-10(¥2,980,000・ペア・税別)の12インチユニットバージョンF1-12が展示、デモされ、大きな反響を得ていた

ーースピーカーはバランス重視型と個性を重視するタイプがあるかと思います。FYNE AUDIOのモデルはバランス重視型だと思いますが……。

アンジー氏 その通りで、自分たちの好きな音を作る、という方向性から製品化された突出した音のスピーカーは販売店ではアピールしやすいかもしれません。しかし、そのスピーカーを家に持って行って聴いた場合、そのまま聴いていられるでしょうか? FYNE AUDIOのスピーカーは家に持ち込んでも、非常にバランスよく、ゆったりとして聴けるスピーカーを理想としています。そして5人それぞれ思っている音の方向性があって、誰かがイヤだったら小さな点でも直します。何度も何度もそれを繰り返して仕上げているのです。

日本のファンは音楽と共にスピーカーも愛してくれる

ーー日本のマーケットをどう感じますか?

アンジー氏 洗練されたマーケットだと思います。クラシックが好きな方が多くジャズも……。オーディオに対して、真面目に捉えていますね。音楽を愛するとともに、製品を愛してくれる点も嬉しいです。ホビーの一環として、車のようにスピーカーが大好きなのです、と言ってくれます。FYNE AUDIOとしても、その対象となれるようにしていきたいと思っています。

ーーすでに幅広いシリーズがありますが、今後の展開は?

アンジー氏 今年のミュンヘンでは、700シリーズで、703という10インチユニットのモデルと700というブックシェルフタイプも出展します。先行して12インチのF1-12は上海ショウに出展しました。いずれは、F1スタンドマウントタイプもリリースする予定です。ご期待ください。


本記事はオーディオアクセサリー173号に掲載のインタビューからの抜粋です。全記事は5月21日発売オーディオアクセサリー173号をご覧ください)

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