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公開日 2006/02/08 11:23
ワンセグは可処分時間を獲得できるか? 話題のワンセグケータイ「W41H」を使ってみた
2006年4月1日、ワンセグがいよいよ本放送を開始する。開始まで2ヶ月を切り、ワンセグ対応のVAIO(関連記事)やワンセグチューナー搭載ポータブルDVDプレーヤー(関連記事)など、各社から対応機器が続々と発表されはじめた。
中でも注目を集めているのが携帯電話だ。これまでも地上アナログテレビチューナーを搭載した携帯電話は存在したが、電波状況が悪いと画面の乱れが大きく、クリアに視聴できる条件が限られていた。ワンセグなら、デジタルならではのノイズの少なさに加え、データ放送や字幕など、アナログ放送にはないメリットも享受できるというわけだ。
ワンセグ対応携帯電話のトップバッターとして登場したのは、auの三洋製端末「W33SA」(関連記事)で、昨年末に店頭に並んだ。そして今回、auからワンセグ携帯電話の第2弾として登場するのが、日立製端末「W41H」だ。2月中旬の発売がアナウンスされており、間もなく店頭発売を開始するものと見られる。タイムシフト再生が行えたり、テレビ視聴に最適な充電スタンドを同梱するなど、ワンセグ機能を前面に打ち出したモデルで、音楽機能も非常に充実している。さながら「携帯電話も使えるモバイルAV機器」といった印象だ。今回、この「W41H」を試用する機会が得られたので、ワンセグ機能を中心にしたテストレポートをお届けしよう。
なお、ワンセグ携帯電話については、NTTドコモも松下製の端末を近いうちに投入することが予想される。ボーダフォンは現在のところ発売を公表していないが、昨年秋には「V801SH」をベースにした試作機を展示しており、着々と開発を行っているものと思われる。
■ワンセグのキホンをおさらいする
「W41H」のテストレポートをお届けする前に、まずはかんたんにワンセグの基本情報をおさらいしておこう。
ワンセグは、地上デジタルテレビの携帯・移動体向け放送。地上デジタルテレビは、電波が13の帯域(セグメント)に分割されているが、そのうち1つのセグメントを使用するため、「ワンセグメント放送→ワンセグ」という愛称が付けられた。現在、東京地方などで試験電波が送出されているが、今年4月1日の本放送開始以後は、地上デジタル放送が受信できる地域ならワンセグの受信も可能になる。番組の内容は、基本的に通常の地上デジタル放送と同様のサイマル放送だ。
ワンセグ放送の映像圧縮にはH.264を用いる。これはBlu-ray DiscやHD DVDなど次世代光ディスクにも採用されているもので、DVDなどに使われているMPEG2に比べ圧縮効率が高く、低ビットレートでも滑らかな映像の再現が行える。画面の解像度は320×240または320×180で、音声はステレオ、モノラル、主/副2チャンネルに対応する。字幕や番組情報の表示も行える。
さらにワンセグ端末では、データ放送も受信が可能。視聴者参加型のクイズ番組や、番組中に登場した物品のショッピング、着メロのダウンロードサービスなどが想定されている。
■「W41H」のプロフィール
「W41H」は、2.7インチワイドQVGA液晶を搭載したワンセグ対応のCDMA 1X WIN端末。ワンセグ機能については後述するが、 画質調整設定を設けたり、タイムシフト再生や録画機能を設けたり、テレビスタンドを兼ねた充電台を同梱するなど、テレビ視聴機能を非常に充実させたのが最大の特徴だ。
ワンセグ以外の機能も充実しており、携帯電話とPCを連携させる音楽ソリューション「au LISTEN MOBILE SERVICE」(関連記事)に対応。着うたフルだけでなく、PCを使って音楽CDから取り込んだ楽曲や、4月に開始予定のPC用音楽配信サイトでダウンロードした楽曲を本機に転送し、再生することができる。
PC向けのウェブサイトが見られるフルブラウザ機能「PCサイトビューアー」も搭載。2.7インチの大画面を使い、レイアウト崩れの少ない表示を可能にしている。また、PCで作成したOffice文書やPDFなどを表示する「PCドキュメントビューアー」も装備した。
また、非接触ICカード技術「FeliCa」も内蔵。EdyのEZアプリがプリインストールされており、おサイフケータイとして使用することもできる。さらに、2.1メガのオートフォーカス付きカメラ、SD-Audio/SD-Vide再生機能、赤外線通信機能、GPS機能なども装備。最先端の仕様を備えたフル機能の携帯電話となっている。
■ワンセグの受信性能を検証する
さて、いよいよ本機のワンセグ機能を試していこう。まず、本機が内蔵しているのがワンセグチューナーのみであると言うことを確認しておきたい。前述したワンセグ携帯電話の第一弾モデル「W33SA」は、ワンセグチューナーに加え、地上アナログチューナーも搭載し、電波状況に応じて2つのチューナーを使い分けることができるが、本機の場合、ワンセグ受信が行えない状況ではテレビ視聴ができない。
デジタル放送は、ふだんは非常にクリアな映像を表示できるが、その特性上、受信レベルが一定の水準を下回ると画面がフリーズし、表示が全面的にストップしてしまうことがある。一方アナログチューナーは、かなり劣悪な環境でもおぼろげながら映像が動き、音声も断片的に聞き取れる、という「粘り」を見せる。デジタルとアナログには得手不得手があるのだ。また、受信エリアが大きく拡大しているとは言え、まだ地上デジタル放送は全国をくまなくカバーしているとは言えない。これらの状況を考慮し、「W33SA」はダブルチューナーを搭載したのだろう。
ただし、数日間にわたり「W41H」をフル活用した印象では、戸外にいる限り、ワンセグ放送の映像がフリーズする場面はほとんど無かった。編集部が入っている秋葉原のビルでは大抵の場合、安定した受信が行えたし、映像がコマ落ちして「やや苦しいかな」という場面では、本体側面に収納されているアンテナを伸ばしたり、本体の向きを変えたりすると、かなり受信状況に改善が見られた。
移動時の受信性能も見事だ。通勤経路である秋葉原→池袋→西武池袋線のひばりヶ丘駅まで、テレビを付けっぱなしにしてテストしたが、地下に潜る場面以外は、ほぼ一貫してクリアな映像を表示し続けた。さすがに埼玉県新座市にある木造の自宅の中では、受信レベルがかなり落ちるらしく、映像の表示はほとんど行えなかったが、埼玉や墨田に新タワーでも建てば早晩解決する問題だろう。
■直感的に使いこなせる考え込まれた操作性
「W41H」でワンセグ放送を視聴するには、ディスプレイ側面にある「TV」ボタンを長押しするか、EZアプリの「ワンセグ」を起動する。ボタンを押してからアプリが起動するまでが約5秒、そこから映像が出画するまでが約5秒、といったところだ。
この起動時間にはほとんどストレスを感じないが、チャンネルを変える際も、毎回5秒程度のタイムラグが発生するのは少々じれったい。もっともこれは本機に限った話ではなく、最新の薄型テレビでも、デジタル放送の選局にかなりの時間を必要とするものがある。アナログテレビ並みとまでは言わないが、これを少なくとも半分程度にできたら、かなり心理的なストレスは軽減するものと思われる。
画面表示は、大きく縦表示と横表示の2通り。縦表示は通常の縦開きスタイル、横表示はディスプレイを回転したビューアースタイルの際に適している。縦開きの時には、受話器マークを押すと表示方向を切り替えられるほか、ビューアースタイルにすると自動的に画面も横表示に切り替わる。
GUIや操作ボタンも、縦開き時とビューアー時で巧みに配置を変えている。縦開き時は、左右キーでチャンネルを、上下キーで音量を調整。録画やキャプチャーはメニューに入って操作を行う。ビューアースタイルの際は、本体側面に配置された独立の選局ボタン、音量ボタンで調整が可能。また、シャッターボタンを押すと録画やキャプチャーを、TVボタンを押すと画面表示を、テープマークを押すとタイムシフトを、それぞれダイレクトに操作することができる。特にTVボタンを押してフル画面表示にすると、ワイド番組の場合、2.7型の画面いっぱいに映像が表示され、非常に迫力ある映像を表示できる。
データ放送を見ることができるのは縦開き時のみ。ビューアースタイルではデータ放送が見られてもカーソルキーが使えないから、ある意味で当然の仕様といえる。また、本機はインターネットを介した番組表の表示にも対応しているが、これも縦開き時のみアクセスが行える。
なお、起動した際にどの画面表示スタイルを表示するかは、「メニュー→各種設定→画面表示設定→視聴画面モード設定」から設定できる。縦表示・横表示の設定はもちろん、字幕を表示するか、データ放送を表示するかなど、詳細な設定項目が用意されている。
本機には充電機兼用のスタンドも付属している。ビューアースタイルにして本機をスタンドに置くと、自動的にワンセグが起動する。このスタンドにより、本機の充実したテレビ機能を、屋内でも気軽に楽しむことができる。
ワンセグ放送の連続視聴時間は、同社公表値で最大約3時間45分。実際に試してみたが、ほぼこの数値通りの連続視聴が行えた。3時間以上あれば、長時間通勤の方でも十分実用に耐えるはずだ。また、電池残量が1になると自動的にテレビをオフにする機能も装備しているので、突然の電池切れの心配もない。
本機の性能とは直接関係ないが、ワンセグの字幕表示機能は非常に便利だと感じた。聴覚障害の方に有用であることは言うまでもないが、それ以外の場合でも、音を聞かなくても番組の内容をしっかりと追うことができるのはありがたい。
字幕をどう制作するかは各局ごとにノウハウがあるだろうが、たとえば最近のテレビ番組に氾濫しているテロップと字幕をどう処理するかといったことも、地味ながら使いやすさを大きく変える部分だと思う。テスト中に見たNHKの番組では、テロップで説明している部分を字幕がうまく省略し、二つを組み合わせると意味がきちんとわかるようになっており、きめ細かな制作姿勢に感心した。
個人的に興味を持っているのは、生放送に字幕を付けるのか、付けるならどうやってやるのか、という問題だ。NHK技研では、番組内の音声を自動認識してテキストデータ化し、メタデータを付与するという研究を行っており、この精度が高まれば、人手を介さずに字幕データを生成することも可能になりそうだ。
■タイムシフト再生機能、録画機能
本機の特徴的な機能にタイムシフト再生機能がある。DVDレコーダーなどでもおなじみの機能で、番組の録画と再生を同時に行い、時間をずらして視聴ができるものだ。本機では、テレビ視聴中に電話がかかってくると、自動的に番組の保存を開始。通話終了後にタイムシフト再生を行うことができる。タイムシフトを行えるのは約2分間だが、電話を取って「いま手が離せないから後で電話する」と伝えるには十分な時間だろう。タイムシフト再生中は、1.3倍速再生や早送りが行え、通常放送に追いつくことができる。
録画機能は、ビューアースタイルの時は、前述したとおりシャッターボタンを押しただけで利用できる。最大約30分の録画が可能で、データの保存先は本体のデータフォルダのみ。静止画のキャプチャーも可能なので、料理番組のレシピをメモしたりすることもできる。
ここまで機能が充実すると、家電並みに予約録画機能も欲しくなるが、本機では対応していない。深夜番組などを予約録画し、通勤時間に楽しむなどといったことができれば非常に便利だと思うのだが。もっとも、この機能を実現するには、録画時間が30分では少なすぎる。実現には、内蔵メモリーがさらに大容量化するか、SDメモリーカードへの記録が行えるようになる必要があるだろう。参考までに、このようなソリューションは、SD-Video再生機能を使うことで、若干手間はかかるが実現できる。PriusなどのPCで録画した番組をSD-Video形式に変換しminiSDメモリーカードに記録、そのメモリーカードを本機に挿入し、プレーヤーで再生するという手順だ。
■「W41H」の画質・音質をチェック
ワンセグ受信時の画質は、電波状況に大きく依存する。また、映像と音声を合わせたビットレートが312kbps程度なので、いくらH.264の圧縮効率が高いとは言っても、動きの激しい場面ではそれなりにガタつきが目立つ。ただしアナログテレビ放送と比べたら、その美しさは圧倒的だ。VHSがDVDに進化したような、あるいはそれ以上の画質差が感じられる。H.264のコーデックがさらにこなれて、端末の受信性能やノイズ除去技術がさらに発展すれば、さらにその真価を発揮できるようになるはずだ。
本機の2.7型液晶ディスプレイは非常に高精細で、視野角も広く、H.264の映像をかなり忠実に再現している。だが、全体の印象としては、本機のディスプレイやH.264デコーダー、映像回路の性能をくわしく論じる必要性はまだないように思う。電波状況やもともとの映像の品質など、それ以外の画質決定要素があまりに大きいからだ。
本機は画質調整機能も装備し、カラーマネージメントと明るさの2種類が調整できる。カラーマネージメントでは、「標準」「色鮮やか」「シネマ」「OFF」を切り替え可能。「標準」と「シネマ」では色温度と彩度の調整を、「色鮮やか」では彩度のみの調整を行っているようだ。なお、この調整を行うと、テレビ画面だけでなく、ディスプレイ全体の色調が変化する。また、画面の明るさは「光センサー」「明るさ1〜5」の6段階から選択が可能だ。「光センサー」では、本体操作部右上にある乳白色のセンサーを使い、環境光に応じて自動的に画面の明るさを調整する。目に優しい表示が行えるほか、消費電力の低減にも貢献する。
内蔵のスピーカーについても触れておこう。ビューアースタイルにすると左右にスピーカーがあるように見えるが、実は右側のメッシュ部分はデザイン的な処理。スピーカーは左側(ヒンジ部分)のみだが、その部分にステレオスピーカーを装備している。サラウンド効果も働かせることができ、小さいながらも臨場感の高い音質を実現している。
■ワンセグは「放送と通信の融合」を成し遂げられるか
「W41H」は、ワンセグ対応携帯電話の第1世代機として非常に完成度が高く、アーリーアダプターのみならず、多くのユーザーに受け入れられる実力を持っている。わかりやすく機能的な操作体系により直感的な操作が行えるほか、タイムシフト再生や録画機能も備えるなど非常に多機能で、日常的に使用する機器としての高い資質を有している。LISMOへの対応、FeliCaの搭載など、ワンセグ以外の機能にも死角が無く、率直に言って、auユーザーでテレビ機能に魅力を感じている方ならば、ぜひ購入をおすすめしたいモデルだ。
本機のテスト期間中、通勤時間のほとんどをワンセグ視聴に充てていたが、これは本機の完成度もさることながら、ワンセグ自体の魅力によるところも大きい。これまでにないクリアな映像や音声、字幕、データ放送などワンセグが持つ様々な機能は、移動時の時間の過ごし方を一変させうるインパクトを秘めている。また、「無料」という点もこのサービスの魅力を一層大きな物にしている。端末さえ手に入れれば、この高機能なサービスをタダで楽しめるというのはありがたい話だ。
個人的には、携帯電話のネットやゲーム機能に魅力を感じていなかったこともあり、これまで電車での移動時にあまり携帯電話を活用してこなかったが、視聴にあまり集中力を必要としないテレビ放送ならば、雑誌や本に代わるものとして気軽に活用できそうだ。
4月1日にワンセグの本放送がスタートすれば、データ放送と連動したネットショッピングなど、これまでにない新たなサービスが続々と登場するはずだ。そして、それが世の中に受け入れられれば、モバイルコマースへの強力な誘導路としてワンセグが台頭し、ワンセグオリジナル番組が登場するなどというシナリオも考えられる。
いずれにしてもワンセグは、世の中に広く受け入れられる可能性が高い。至るところで「放送と通信の融合」が叫ばれているが、ワンセグは、文字通りテレビ放送と通信機能が融合したサービスで、その意味でも意義深いものと言えよう。この新たな試みがどのような展開をたどるのか、注意深く見守っていきたい。
(Phile-web編集部)
中でも注目を集めているのが携帯電話だ。これまでも地上アナログテレビチューナーを搭載した携帯電話は存在したが、電波状況が悪いと画面の乱れが大きく、クリアに視聴できる条件が限られていた。ワンセグなら、デジタルならではのノイズの少なさに加え、データ放送や字幕など、アナログ放送にはないメリットも享受できるというわけだ。
ワンセグ対応携帯電話のトップバッターとして登場したのは、auの三洋製端末「W33SA」(関連記事)で、昨年末に店頭に並んだ。そして今回、auからワンセグ携帯電話の第2弾として登場するのが、日立製端末「W41H」だ。2月中旬の発売がアナウンスされており、間もなく店頭発売を開始するものと見られる。タイムシフト再生が行えたり、テレビ視聴に最適な充電スタンドを同梱するなど、ワンセグ機能を前面に打ち出したモデルで、音楽機能も非常に充実している。さながら「携帯電話も使えるモバイルAV機器」といった印象だ。今回、この「W41H」を試用する機会が得られたので、ワンセグ機能を中心にしたテストレポートをお届けしよう。
なお、ワンセグ携帯電話については、NTTドコモも松下製の端末を近いうちに投入することが予想される。ボーダフォンは現在のところ発売を公表していないが、昨年秋には「V801SH」をベースにした試作機を展示しており、着々と開発を行っているものと思われる。
■ワンセグのキホンをおさらいする
「W41H」のテストレポートをお届けする前に、まずはかんたんにワンセグの基本情報をおさらいしておこう。
ワンセグは、地上デジタルテレビの携帯・移動体向け放送。地上デジタルテレビは、電波が13の帯域(セグメント)に分割されているが、そのうち1つのセグメントを使用するため、「ワンセグメント放送→ワンセグ」という愛称が付けられた。現在、東京地方などで試験電波が送出されているが、今年4月1日の本放送開始以後は、地上デジタル放送が受信できる地域ならワンセグの受信も可能になる。番組の内容は、基本的に通常の地上デジタル放送と同様のサイマル放送だ。
ワンセグ放送の映像圧縮にはH.264を用いる。これはBlu-ray DiscやHD DVDなど次世代光ディスクにも採用されているもので、DVDなどに使われているMPEG2に比べ圧縮効率が高く、低ビットレートでも滑らかな映像の再現が行える。画面の解像度は320×240または320×180で、音声はステレオ、モノラル、主/副2チャンネルに対応する。字幕や番組情報の表示も行える。
さらにワンセグ端末では、データ放送も受信が可能。視聴者参加型のクイズ番組や、番組中に登場した物品のショッピング、着メロのダウンロードサービスなどが想定されている。
■「W41H」のプロフィール
「W41H」は、2.7インチワイドQVGA液晶を搭載したワンセグ対応のCDMA 1X WIN端末。ワンセグ機能については後述するが、 画質調整設定を設けたり、タイムシフト再生や録画機能を設けたり、テレビスタンドを兼ねた充電台を同梱するなど、テレビ視聴機能を非常に充実させたのが最大の特徴だ。
ワンセグ以外の機能も充実しており、携帯電話とPCを連携させる音楽ソリューション「au LISTEN MOBILE SERVICE」(関連記事)に対応。着うたフルだけでなく、PCを使って音楽CDから取り込んだ楽曲や、4月に開始予定のPC用音楽配信サイトでダウンロードした楽曲を本機に転送し、再生することができる。
PC向けのウェブサイトが見られるフルブラウザ機能「PCサイトビューアー」も搭載。2.7インチの大画面を使い、レイアウト崩れの少ない表示を可能にしている。また、PCで作成したOffice文書やPDFなどを表示する「PCドキュメントビューアー」も装備した。
また、非接触ICカード技術「FeliCa」も内蔵。EdyのEZアプリがプリインストールされており、おサイフケータイとして使用することもできる。さらに、2.1メガのオートフォーカス付きカメラ、SD-Audio/SD-Vide再生機能、赤外線通信機能、GPS機能なども装備。最先端の仕様を備えたフル機能の携帯電話となっている。
■ワンセグの受信性能を検証する
デジタル放送は、ふだんは非常にクリアな映像を表示できるが、その特性上、受信レベルが一定の水準を下回ると画面がフリーズし、表示が全面的にストップしてしまうことがある。一方アナログチューナーは、かなり劣悪な環境でもおぼろげながら映像が動き、音声も断片的に聞き取れる、という「粘り」を見せる。デジタルとアナログには得手不得手があるのだ。また、受信エリアが大きく拡大しているとは言え、まだ地上デジタル放送は全国をくまなくカバーしているとは言えない。これらの状況を考慮し、「W33SA」はダブルチューナーを搭載したのだろう。
ただし、数日間にわたり「W41H」をフル活用した印象では、戸外にいる限り、ワンセグ放送の映像がフリーズする場面はほとんど無かった。編集部が入っている秋葉原のビルでは大抵の場合、安定した受信が行えたし、映像がコマ落ちして「やや苦しいかな」という場面では、本体側面に収納されているアンテナを伸ばしたり、本体の向きを変えたりすると、かなり受信状況に改善が見られた。
移動時の受信性能も見事だ。通勤経路である秋葉原→池袋→西武池袋線のひばりヶ丘駅まで、テレビを付けっぱなしにしてテストしたが、地下に潜る場面以外は、ほぼ一貫してクリアな映像を表示し続けた。さすがに埼玉県新座市にある木造の自宅の中では、受信レベルがかなり落ちるらしく、映像の表示はほとんど行えなかったが、埼玉や墨田に新タワーでも建てば早晩解決する問題だろう。
■直感的に使いこなせる考え込まれた操作性
「W41H」でワンセグ放送を視聴するには、ディスプレイ側面にある「TV」ボタンを長押しするか、EZアプリの「ワンセグ」を起動する。ボタンを押してからアプリが起動するまでが約5秒、そこから映像が出画するまでが約5秒、といったところだ。
この起動時間にはほとんどストレスを感じないが、チャンネルを変える際も、毎回5秒程度のタイムラグが発生するのは少々じれったい。もっともこれは本機に限った話ではなく、最新の薄型テレビでも、デジタル放送の選局にかなりの時間を必要とするものがある。アナログテレビ並みとまでは言わないが、これを少なくとも半分程度にできたら、かなり心理的なストレスは軽減するものと思われる。
画面表示は、大きく縦表示と横表示の2通り。縦表示は通常の縦開きスタイル、横表示はディスプレイを回転したビューアースタイルの際に適している。縦開きの時には、受話器マークを押すと表示方向を切り替えられるほか、ビューアースタイルにすると自動的に画面も横表示に切り替わる。
GUIや操作ボタンも、縦開き時とビューアー時で巧みに配置を変えている。縦開き時は、左右キーでチャンネルを、上下キーで音量を調整。録画やキャプチャーはメニューに入って操作を行う。ビューアースタイルの際は、本体側面に配置された独立の選局ボタン、音量ボタンで調整が可能。また、シャッターボタンを押すと録画やキャプチャーを、TVボタンを押すと画面表示を、テープマークを押すとタイムシフトを、それぞれダイレクトに操作することができる。特にTVボタンを押してフル画面表示にすると、ワイド番組の場合、2.7型の画面いっぱいに映像が表示され、非常に迫力ある映像を表示できる。
データ放送を見ることができるのは縦開き時のみ。ビューアースタイルではデータ放送が見られてもカーソルキーが使えないから、ある意味で当然の仕様といえる。また、本機はインターネットを介した番組表の表示にも対応しているが、これも縦開き時のみアクセスが行える。
なお、起動した際にどの画面表示スタイルを表示するかは、「メニュー→各種設定→画面表示設定→視聴画面モード設定」から設定できる。縦表示・横表示の設定はもちろん、字幕を表示するか、データ放送を表示するかなど、詳細な設定項目が用意されている。
本機には充電機兼用のスタンドも付属している。ビューアースタイルにして本機をスタンドに置くと、自動的にワンセグが起動する。このスタンドにより、本機の充実したテレビ機能を、屋内でも気軽に楽しむことができる。
ワンセグ放送の連続視聴時間は、同社公表値で最大約3時間45分。実際に試してみたが、ほぼこの数値通りの連続視聴が行えた。3時間以上あれば、長時間通勤の方でも十分実用に耐えるはずだ。また、電池残量が1になると自動的にテレビをオフにする機能も装備しているので、突然の電池切れの心配もない。
本機の性能とは直接関係ないが、ワンセグの字幕表示機能は非常に便利だと感じた。聴覚障害の方に有用であることは言うまでもないが、それ以外の場合でも、音を聞かなくても番組の内容をしっかりと追うことができるのはありがたい。
字幕をどう制作するかは各局ごとにノウハウがあるだろうが、たとえば最近のテレビ番組に氾濫しているテロップと字幕をどう処理するかといったことも、地味ながら使いやすさを大きく変える部分だと思う。テスト中に見たNHKの番組では、テロップで説明している部分を字幕がうまく省略し、二つを組み合わせると意味がきちんとわかるようになっており、きめ細かな制作姿勢に感心した。
個人的に興味を持っているのは、生放送に字幕を付けるのか、付けるならどうやってやるのか、という問題だ。NHK技研では、番組内の音声を自動認識してテキストデータ化し、メタデータを付与するという研究を行っており、この精度が高まれば、人手を介さずに字幕データを生成することも可能になりそうだ。
■タイムシフト再生機能、録画機能
本機の特徴的な機能にタイムシフト再生機能がある。DVDレコーダーなどでもおなじみの機能で、番組の録画と再生を同時に行い、時間をずらして視聴ができるものだ。本機では、テレビ視聴中に電話がかかってくると、自動的に番組の保存を開始。通話終了後にタイムシフト再生を行うことができる。タイムシフトを行えるのは約2分間だが、電話を取って「いま手が離せないから後で電話する」と伝えるには十分な時間だろう。タイムシフト再生中は、1.3倍速再生や早送りが行え、通常放送に追いつくことができる。
録画機能は、ビューアースタイルの時は、前述したとおりシャッターボタンを押しただけで利用できる。最大約30分の録画が可能で、データの保存先は本体のデータフォルダのみ。静止画のキャプチャーも可能なので、料理番組のレシピをメモしたりすることもできる。
ここまで機能が充実すると、家電並みに予約録画機能も欲しくなるが、本機では対応していない。深夜番組などを予約録画し、通勤時間に楽しむなどといったことができれば非常に便利だと思うのだが。もっとも、この機能を実現するには、録画時間が30分では少なすぎる。実現には、内蔵メモリーがさらに大容量化するか、SDメモリーカードへの記録が行えるようになる必要があるだろう。参考までに、このようなソリューションは、SD-Video再生機能を使うことで、若干手間はかかるが実現できる。PriusなどのPCで録画した番組をSD-Video形式に変換しminiSDメモリーカードに記録、そのメモリーカードを本機に挿入し、プレーヤーで再生するという手順だ。
■「W41H」の画質・音質をチェック
ワンセグ受信時の画質は、電波状況に大きく依存する。また、映像と音声を合わせたビットレートが312kbps程度なので、いくらH.264の圧縮効率が高いとは言っても、動きの激しい場面ではそれなりにガタつきが目立つ。ただしアナログテレビ放送と比べたら、その美しさは圧倒的だ。VHSがDVDに進化したような、あるいはそれ以上の画質差が感じられる。H.264のコーデックがさらにこなれて、端末の受信性能やノイズ除去技術がさらに発展すれば、さらにその真価を発揮できるようになるはずだ。
本機の2.7型液晶ディスプレイは非常に高精細で、視野角も広く、H.264の映像をかなり忠実に再現している。だが、全体の印象としては、本機のディスプレイやH.264デコーダー、映像回路の性能をくわしく論じる必要性はまだないように思う。電波状況やもともとの映像の品質など、それ以外の画質決定要素があまりに大きいからだ。
本機は画質調整機能も装備し、カラーマネージメントと明るさの2種類が調整できる。カラーマネージメントでは、「標準」「色鮮やか」「シネマ」「OFF」を切り替え可能。「標準」と「シネマ」では色温度と彩度の調整を、「色鮮やか」では彩度のみの調整を行っているようだ。なお、この調整を行うと、テレビ画面だけでなく、ディスプレイ全体の色調が変化する。また、画面の明るさは「光センサー」「明るさ1〜5」の6段階から選択が可能だ。「光センサー」では、本体操作部右上にある乳白色のセンサーを使い、環境光に応じて自動的に画面の明るさを調整する。目に優しい表示が行えるほか、消費電力の低減にも貢献する。
内蔵のスピーカーについても触れておこう。ビューアースタイルにすると左右にスピーカーがあるように見えるが、実は右側のメッシュ部分はデザイン的な処理。スピーカーは左側(ヒンジ部分)のみだが、その部分にステレオスピーカーを装備している。サラウンド効果も働かせることができ、小さいながらも臨場感の高い音質を実現している。
■ワンセグは「放送と通信の融合」を成し遂げられるか
「W41H」は、ワンセグ対応携帯電話の第1世代機として非常に完成度が高く、アーリーアダプターのみならず、多くのユーザーに受け入れられる実力を持っている。わかりやすく機能的な操作体系により直感的な操作が行えるほか、タイムシフト再生や録画機能も備えるなど非常に多機能で、日常的に使用する機器としての高い資質を有している。LISMOへの対応、FeliCaの搭載など、ワンセグ以外の機能にも死角が無く、率直に言って、auユーザーでテレビ機能に魅力を感じている方ならば、ぜひ購入をおすすめしたいモデルだ。
本機のテスト期間中、通勤時間のほとんどをワンセグ視聴に充てていたが、これは本機の完成度もさることながら、ワンセグ自体の魅力によるところも大きい。これまでにないクリアな映像や音声、字幕、データ放送などワンセグが持つ様々な機能は、移動時の時間の過ごし方を一変させうるインパクトを秘めている。また、「無料」という点もこのサービスの魅力を一層大きな物にしている。端末さえ手に入れれば、この高機能なサービスをタダで楽しめるというのはありがたい話だ。
個人的には、携帯電話のネットやゲーム機能に魅力を感じていなかったこともあり、これまで電車での移動時にあまり携帯電話を活用してこなかったが、視聴にあまり集中力を必要としないテレビ放送ならば、雑誌や本に代わるものとして気軽に活用できそうだ。
4月1日にワンセグの本放送がスタートすれば、データ放送と連動したネットショッピングなど、これまでにない新たなサービスが続々と登場するはずだ。そして、それが世の中に受け入れられれば、モバイルコマースへの強力な誘導路としてワンセグが台頭し、ワンセグオリジナル番組が登場するなどというシナリオも考えられる。
いずれにしてもワンセグは、世の中に広く受け入れられる可能性が高い。至るところで「放送と通信の融合」が叫ばれているが、ワンセグは、文字通りテレビ放送と通信機能が融合したサービスで、その意味でも意義深いものと言えよう。この新たな試みがどのような展開をたどるのか、注意深く見守っていきたい。
(Phile-web編集部)