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公開日 2007/08/22 18:58
シャープ、厚さ20mmの超薄型・次世代液晶ディスプレイを開発 − 量産化の目標は2010年
シャープ(株)は、同社最新の液晶技術をベースに、50型クラスで主要ディスプレイ部の“厚さ20mm”を実現した液晶ディスプレイを開発し、本日開催した記者発表会で試作機を展示した。
■試作機は「コントラスト10万対1」、「厚さ20mm」を実現
同社が発表した“未来の液晶テレビ”試作機の主な特徴は、「画質性能」「フォルム」「環境性能」の3点。画質性能ではコントラスト値100,000対1を実現。明るさ200ルクス時のリビングコントラストは3,000対1となる。その他にも、色再現性能はNTSC比で150%、動画性能(MPRT)は4ms、45度の斜め視聴時のコントラスト比は5,000対1としている。なお、解像度はフルHDとなっている。
形状性能は主要ディスプレイ部の厚み20mm、最厚部で29mmとし、重量は25kgを実現。ディスプレイベゼルの寸法は上20mm、左右25mmと、液晶テレビのデザイン、設置性能を大きく高める内容となっている。
また環境性能については、年間消費電力量140kWh/年を実現している。
■量産化の目標時期は2010年 − 片山社長が“近未来のテレビ”を語る
本日の記者発表会には同社代表取締役社長の片山幹雄氏が出席し、「未来の液晶テレビ創出」に向けた同社の戦略を語った。
片山氏は「世界中で放送のデジタル化が急激に進み、多くのコンシューマーが高精細な映像に触れる機会が増えたことによって、高画質で設置場所を選ばない薄型テレビのニーズが一気に拡大した。薄型テレビの大型化とフルハイビジョン化も昨今加速度を増し、今後は新しい映像文化を築く“近未来のテレビ”を求める声までもが高まりつつある」ことが、今回同社が新技術の発表を行った背景と説明した。
次世代ディスプレイの有力デバイスとして注目される有機ELやSEDについて、片山氏は「果たして本当にこれらのデバイスが今の薄型テレビに置き換わる存在となり得るのだろうか」と疑問を呈し、「自発光タイプのデバイスは表示性能で液晶よりも優れていると言われているが、これは従来のテレビの主役であったブラウン管が自発光型であったことや、初期の液晶テレビには性能上で多くの課題があったことが要因と思われる。しかし今日の液晶は、単に薄型なだけでなく映像の基本性能であるコントラストや色表現など表示性能においてもブラウン管を凌駕できるところまで高まっている」とし、液晶の優位性を改めて強調した。また液晶デバイスについては「材料の技術だけでなく、輝度向上の技術、高精細化技術、コントラスト向上の技術、色表現力を高める技術、大型化技術、あるいは低消費電力化技術など、複数の技術を積み重ね、摺り合わせてできている。それぞれの技術分野で懸命にブレイクスルーを重ねてきた液晶は、これからますます進化する無限の可能性を備えている」と自信を見せた。
シャープは7月末に記者会見を開催し、大阪府堺市に液晶パネルの新工場を2010年3月の稼働を目指して建設することを明らかにした(関連ニュース)。同社は新工場には「21世紀型のコンビナート」というコンセプトのもと、大型液晶工場を中核にした複数の有力工場を誘致し、亀山工場で培った垂直統合型のモノづくりを革新しながら、レベルの高い事業展開を図っていく戦略を打ち立てている。今回発表の試作機の量産化スケジュールについて、片山氏は「堺工場の立ち上げには間に合わせたい」という考えを明らかにした。
■“宙に浮かぶ映像”も可能に − シャープが考える未来型の液晶生活空間
記者発表会には同社取締役ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光氏も出席した。新しい液晶技術の解説を行った水嶋氏は、「現時点で発表したものが最終段階ではない。今後も更なる技術革新を実現して行きたい。液晶の次の世代も液晶。次世代の映像文化を支える本命が液晶だと自負している」と意気込みを語った。
続いて登壇した同社取締役オンリーワン商品企画推進本部長の大河原卓次氏からは、今回の試作機を活用した液晶テレビの新しいレイアウトと未来型生活空間が提案された。画面の奥行きサイズが最厚部で29mmという薄さを活かし、壁掛け配置だけでなく、丸窓の奥に液晶テレビの映像が宙に浮いているような「借景」設置や、「屏風」のような専用スタンドを用いた設置、専用ラックから視聴時に液晶が立ち上がる「ポップアップスタイル」やコンパクトな屋外スペースを活かした「坪庭」設置のイメージが紹介された。大河原氏は「今回の技術提案を北米や欧州でも積極的に展開していきたい」とした。また設置の自由度をさらに広げる展開として、今後ワイヤレスでフルHD映像をテレビに送信する技術も、同社で現在研究中であることを明らかにした。
以下、本日の発表会場で行われた質疑応答の模様を掲載する。
Q:今回の試作機に活かされている部材は具体的にどのあたりが進化しているのか。
A:今日発表した液晶ディスプレイは、当社のバックライト技術やカラーフィルター技術など、全て最高レベルのものを結集してつくりあげたもので、具体的にどれか一つの秀でた技術だけで完成できるものではない。個々の技術に関する詳細については、本日コメントを申し上げることは控えさせて頂きたい。(水嶋氏)
Q:現在世界中で最も薄型・軽量で、エネルギー効率の高いディスプレイは液晶であると考えているか。
A:今日展示した製品はその両方でダントツのレベルにある。少なくとも商品レベルの製品とは比べものにならないだろう。(片山氏)
Q:今日の製品はいずれ大阪堺工場の主力になっていくものになるのか。
A:現在試作機をつくってお見できるレベルにまで到達した。堺工場の稼働は2010年3月を目指したいと考えているが、その時期にまで何とか量産できるレベルにまで引き上げて、堺工場の立ち上げに間に合わせたい。(片山氏)
Q:商品として発売する時期はいつ頃と考えているか。
A:当社にとっても堺工場は大きなプロジェクトなので、その頃には何とか間に合わせたい。今回発表した試作機の技術は、今後発表する予定の液晶製品に確立したものから順に導入していくつもりだ。(片山氏)
Q:本体質量を軽くすることや、電源のワイヤレス化など、ユーザーにとっての取り扱いを手軽にするための技術革新については検討しているのか。
A:たいへん良い提案をいただいたと思うので、開発のものに頑張るよう伝えたい。(片山氏)
本体のさらなる軽量化には力を入れて取り組みたい。現時点で当社が持てる限りの技術で完成させた試作機をご発表した背景には、シャープとして未来のテレビ像を少しでもはっきりとイメージできるものを早く皆様にご紹介したいと考えたからだ。(水嶋氏)
Q:今後試作機から量産機の実現までに、具体的に何が求められているのか。
A:量産に向けてはそれぞれの技術を確立させていくことがキーとなるだろう。(水嶋氏)
Q:今回発表された技術は、海外における液晶のライバルであるサムスンや台湾メーカーなどにも真似ができるものなのか。
A:当社としては基本的な知財対策に取り組んでいる。製品化後に解析を行われた場合、技術を真似ることは不可能ではないが、商品化を達成するためには様々な先端の液晶技術のすりあわせが不可欠となる。単なるコピーでは競争力のある製品が生まれることはないだろう。(水嶋氏)
Q:今回の技術は有機ELをも凌駕できるものになっていくと考えているか。
A:現時点で見る限りは全てのディスプレイデバイスを上回るものだと考えている。(水嶋氏)
(Phile-web編集部)
■試作機は「コントラスト10万対1」、「厚さ20mm」を実現
同社が発表した“未来の液晶テレビ”試作機の主な特徴は、「画質性能」「フォルム」「環境性能」の3点。画質性能ではコントラスト値100,000対1を実現。明るさ200ルクス時のリビングコントラストは3,000対1となる。その他にも、色再現性能はNTSC比で150%、動画性能(MPRT)は4ms、45度の斜め視聴時のコントラスト比は5,000対1としている。なお、解像度はフルHDとなっている。
形状性能は主要ディスプレイ部の厚み20mm、最厚部で29mmとし、重量は25kgを実現。ディスプレイベゼルの寸法は上20mm、左右25mmと、液晶テレビのデザイン、設置性能を大きく高める内容となっている。
また環境性能については、年間消費電力量140kWh/年を実現している。
■量産化の目標時期は2010年 − 片山社長が“近未来のテレビ”を語る
本日の記者発表会には同社代表取締役社長の片山幹雄氏が出席し、「未来の液晶テレビ創出」に向けた同社の戦略を語った。
片山氏は「世界中で放送のデジタル化が急激に進み、多くのコンシューマーが高精細な映像に触れる機会が増えたことによって、高画質で設置場所を選ばない薄型テレビのニーズが一気に拡大した。薄型テレビの大型化とフルハイビジョン化も昨今加速度を増し、今後は新しい映像文化を築く“近未来のテレビ”を求める声までもが高まりつつある」ことが、今回同社が新技術の発表を行った背景と説明した。
次世代ディスプレイの有力デバイスとして注目される有機ELやSEDについて、片山氏は「果たして本当にこれらのデバイスが今の薄型テレビに置き換わる存在となり得るのだろうか」と疑問を呈し、「自発光タイプのデバイスは表示性能で液晶よりも優れていると言われているが、これは従来のテレビの主役であったブラウン管が自発光型であったことや、初期の液晶テレビには性能上で多くの課題があったことが要因と思われる。しかし今日の液晶は、単に薄型なだけでなく映像の基本性能であるコントラストや色表現など表示性能においてもブラウン管を凌駕できるところまで高まっている」とし、液晶の優位性を改めて強調した。また液晶デバイスについては「材料の技術だけでなく、輝度向上の技術、高精細化技術、コントラスト向上の技術、色表現力を高める技術、大型化技術、あるいは低消費電力化技術など、複数の技術を積み重ね、摺り合わせてできている。それぞれの技術分野で懸命にブレイクスルーを重ねてきた液晶は、これからますます進化する無限の可能性を備えている」と自信を見せた。
シャープは7月末に記者会見を開催し、大阪府堺市に液晶パネルの新工場を2010年3月の稼働を目指して建設することを明らかにした(関連ニュース)。同社は新工場には「21世紀型のコンビナート」というコンセプトのもと、大型液晶工場を中核にした複数の有力工場を誘致し、亀山工場で培った垂直統合型のモノづくりを革新しながら、レベルの高い事業展開を図っていく戦略を打ち立てている。今回発表の試作機の量産化スケジュールについて、片山氏は「堺工場の立ち上げには間に合わせたい」という考えを明らかにした。
■“宙に浮かぶ映像”も可能に − シャープが考える未来型の液晶生活空間
記者発表会には同社取締役ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光氏も出席した。新しい液晶技術の解説を行った水嶋氏は、「現時点で発表したものが最終段階ではない。今後も更なる技術革新を実現して行きたい。液晶の次の世代も液晶。次世代の映像文化を支える本命が液晶だと自負している」と意気込みを語った。
続いて登壇した同社取締役オンリーワン商品企画推進本部長の大河原卓次氏からは、今回の試作機を活用した液晶テレビの新しいレイアウトと未来型生活空間が提案された。画面の奥行きサイズが最厚部で29mmという薄さを活かし、壁掛け配置だけでなく、丸窓の奥に液晶テレビの映像が宙に浮いているような「借景」設置や、「屏風」のような専用スタンドを用いた設置、専用ラックから視聴時に液晶が立ち上がる「ポップアップスタイル」やコンパクトな屋外スペースを活かした「坪庭」設置のイメージが紹介された。大河原氏は「今回の技術提案を北米や欧州でも積極的に展開していきたい」とした。また設置の自由度をさらに広げる展開として、今後ワイヤレスでフルHD映像をテレビに送信する技術も、同社で現在研究中であることを明らかにした。
以下、本日の発表会場で行われた質疑応答の模様を掲載する。
Q:今回の試作機に活かされている部材は具体的にどのあたりが進化しているのか。
A:今日発表した液晶ディスプレイは、当社のバックライト技術やカラーフィルター技術など、全て最高レベルのものを結集してつくりあげたもので、具体的にどれか一つの秀でた技術だけで完成できるものではない。個々の技術に関する詳細については、本日コメントを申し上げることは控えさせて頂きたい。(水嶋氏)
Q:現在世界中で最も薄型・軽量で、エネルギー効率の高いディスプレイは液晶であると考えているか。
A:今日展示した製品はその両方でダントツのレベルにある。少なくとも商品レベルの製品とは比べものにならないだろう。(片山氏)
Q:今日の製品はいずれ大阪堺工場の主力になっていくものになるのか。
A:現在試作機をつくってお見できるレベルにまで到達した。堺工場の稼働は2010年3月を目指したいと考えているが、その時期にまで何とか量産できるレベルにまで引き上げて、堺工場の立ち上げに間に合わせたい。(片山氏)
Q:商品として発売する時期はいつ頃と考えているか。
A:当社にとっても堺工場は大きなプロジェクトなので、その頃には何とか間に合わせたい。今回発表した試作機の技術は、今後発表する予定の液晶製品に確立したものから順に導入していくつもりだ。(片山氏)
Q:本体質量を軽くすることや、電源のワイヤレス化など、ユーザーにとっての取り扱いを手軽にするための技術革新については検討しているのか。
A:たいへん良い提案をいただいたと思うので、開発のものに頑張るよう伝えたい。(片山氏)
本体のさらなる軽量化には力を入れて取り組みたい。現時点で当社が持てる限りの技術で完成させた試作機をご発表した背景には、シャープとして未来のテレビ像を少しでもはっきりとイメージできるものを早く皆様にご紹介したいと考えたからだ。(水嶋氏)
Q:今後試作機から量産機の実現までに、具体的に何が求められているのか。
A:量産に向けてはそれぞれの技術を確立させていくことがキーとなるだろう。(水嶋氏)
Q:今回発表された技術は、海外における液晶のライバルであるサムスンや台湾メーカーなどにも真似ができるものなのか。
A:当社としては基本的な知財対策に取り組んでいる。製品化後に解析を行われた場合、技術を真似ることは不可能ではないが、商品化を達成するためには様々な先端の液晶技術のすりあわせが不可欠となる。単なるコピーでは競争力のある製品が生まれることはないだろう。(水嶋氏)
Q:今回の技術は有機ELをも凌駕できるものになっていくと考えているか。
A:現時点で見る限りは全てのディスプレイデバイスを上回るものだと考えている。(水嶋氏)
(Phile-web編集部)