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公開日 2008/10/02 19:26
<折原一也のCEATEC2008レポート>CEATECに見る薄型テレビの現在と未来
今年のCEATEC JAPAN 2008では、昨今の家電業界の状況を反映し、薄型大画面テレビの大々的な展示が行われている。テレビのラインナップは年々多様化しているが、会場を取材した中から、特にトレンドとなりそうな流れを2つ取り上げて紹介したい。
●LED部分制御液晶搭載のハイエンド液晶テレビ
今年のCEATECにおける薄型テレビのクオリティ面での目玉は、液晶テレビのLED部分駆動技術の製品化だ。CEATEC初日となった30日には、シャープがフラッグシップのAQUOS XS1シリーズを発表。既に発表されているソニーのBRAVIA XR1と合わせて、液晶テレビの2大フラッグシップ対決を見ることができる。
シャープのAQUOS XS1は、最高画質機種でありながら最薄部2.28cmという薄さを両立していることに注目したい。昨今の各社の薄型テレビラインナップは、最高画質のモデルとは別の路線として、超薄型のミドルハイとも呼ぶべきレンジが形成されつつあったが、シャープは一気に最高画質と最薄部22.8mmという超薄型化を両立して見せた。
それぞれのクオリティは、会場デモ映像同士の比較のため厳密なものではないが、色の発色の鮮烈さという点でシャープのデモ映像はNTSC比150%、SOCS(自然界に存在する物質の色データベース)比95%というスペックだけあって、特に赤色の深みは印象的だった。もっとも、実際にテレビとして使う場合は、パネル自体のポテンシャルをどう料理するか次第であり、仕上がりに期待したい。
ソニーのXR1は黒色の美しさを強調した展示で、DRC-MF v3の画作りを合わせた自然な映像である。LED部分駆動により、コントラスト比の向上以外にも動画解像度を高める効果もあり、全体の完成度が高い。
技術展示に目を向けると、ビクターもLEDバックライトモデルを参考展示している。LEDエリア駆動技術を導入することで、コントラスト比は100万対1を実現。NTSC比126%の鮮やかな色再現も実現した。また、昨年に続いてドルビーのブースでも、同社独自のLEDバックライトエリア制御技術である「ドルビーHDR(High-Dynamic-Range)」も注目だ。
今年の会場で意外だったのは、液晶・PDP以外の、いわゆる次世代テレビパネルの展示がほとんど見られなかったこと。ソニーの超薄型有機ELや27V型有機ELテレビ(プロトタイプ)が目立っていた程度で、毎年会場を賑わせてきたSED/FEDの出展も見られず、LEDバックライト液晶に主役の座を譲ってしまった感がある。
●ワイヤレス技術の登場で設置スタイルの多様化が加速
LEDバックライト液晶以外で多くのスペースが割かれていた展示に、ワイヤレス伝送技術と設置性の向上がある。
薄型テレビのワイヤレス技術については、昨年発売された日立のUTシリーズ、9月に発表されたソニーのZXシリーズの設置デモなどをはじめ、各社が技術デモなどを行っていた。
特に目立った展示が、60GHz帯を使って映像・音声をワイヤレス転送する「Wireless HD」だ。具体的には、パナソニック、東芝、三菱のブースでいずれも試作機として内蔵テレビとワイヤレスのユニット部の実機デモを行っており、離陸間近と思えるほどの完成度と感じられた。
ワイヤレス化で先行したソニー、日立は、薄型のディスプレイを活かした新たな設置提案を積極的に行っている。定番の壁掛け、壁寄せ以外にも、特に日立は設置ユニットの参考出展が盛んで、コーナー設置、ラックスタンドなどなど様々なバリエーションを紹介した。大画面テレビ+TVラックというスタイルが過去のものになるのではないかと思えるほどの力の入れようだった。
ワイヤレスではないが、ユニークな設置スタイルとして紹介したいのが東芝の「立て掛けREGZA」だ。壁に斜めにかかるようなデザインが斬新で未来的だ。「製品化は来場者の反応を見て検討したい」(説明員)とのことだった。コンセプトモデルも含め、今年は設置スタイルの提案が豊かで、未来のテレビ像として期待が高まる。
毎年CEATECの会場を回って思うのは、年々進むテレビの多様化ぶりだ。今回は画質と設置の2点を中心に見たが、他にもリンク機能やホームネットワークなど新機能も取り入れられ、多機能化はまだまだ止まりそうもない。
なお、本稿で取り上げた2つの流れ以外にも、CEATEC会場では3D上映技術の展示も盛んに行われていたことも印象的だった。これは別記事でまとめてレポートされているので、あわせて参照してほしい。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
●LED部分制御液晶搭載のハイエンド液晶テレビ
今年のCEATECにおける薄型テレビのクオリティ面での目玉は、液晶テレビのLED部分駆動技術の製品化だ。CEATEC初日となった30日には、シャープがフラッグシップのAQUOS XS1シリーズを発表。既に発表されているソニーのBRAVIA XR1と合わせて、液晶テレビの2大フラッグシップ対決を見ることができる。
シャープのAQUOS XS1は、最高画質機種でありながら最薄部2.28cmという薄さを両立していることに注目したい。昨今の各社の薄型テレビラインナップは、最高画質のモデルとは別の路線として、超薄型のミドルハイとも呼ぶべきレンジが形成されつつあったが、シャープは一気に最高画質と最薄部22.8mmという超薄型化を両立して見せた。
それぞれのクオリティは、会場デモ映像同士の比較のため厳密なものではないが、色の発色の鮮烈さという点でシャープのデモ映像はNTSC比150%、SOCS(自然界に存在する物質の色データベース)比95%というスペックだけあって、特に赤色の深みは印象的だった。もっとも、実際にテレビとして使う場合は、パネル自体のポテンシャルをどう料理するか次第であり、仕上がりに期待したい。
ソニーのXR1は黒色の美しさを強調した展示で、DRC-MF v3の画作りを合わせた自然な映像である。LED部分駆動により、コントラスト比の向上以外にも動画解像度を高める効果もあり、全体の完成度が高い。
技術展示に目を向けると、ビクターもLEDバックライトモデルを参考展示している。LEDエリア駆動技術を導入することで、コントラスト比は100万対1を実現。NTSC比126%の鮮やかな色再現も実現した。また、昨年に続いてドルビーのブースでも、同社独自のLEDバックライトエリア制御技術である「ドルビーHDR(High-Dynamic-Range)」も注目だ。
今年の会場で意外だったのは、液晶・PDP以外の、いわゆる次世代テレビパネルの展示がほとんど見られなかったこと。ソニーの超薄型有機ELや27V型有機ELテレビ(プロトタイプ)が目立っていた程度で、毎年会場を賑わせてきたSED/FEDの出展も見られず、LEDバックライト液晶に主役の座を譲ってしまった感がある。
●ワイヤレス技術の登場で設置スタイルの多様化が加速
LEDバックライト液晶以外で多くのスペースが割かれていた展示に、ワイヤレス伝送技術と設置性の向上がある。
薄型テレビのワイヤレス技術については、昨年発売された日立のUTシリーズ、9月に発表されたソニーのZXシリーズの設置デモなどをはじめ、各社が技術デモなどを行っていた。
特に目立った展示が、60GHz帯を使って映像・音声をワイヤレス転送する「Wireless HD」だ。具体的には、パナソニック、東芝、三菱のブースでいずれも試作機として内蔵テレビとワイヤレスのユニット部の実機デモを行っており、離陸間近と思えるほどの完成度と感じられた。
ワイヤレス化で先行したソニー、日立は、薄型のディスプレイを活かした新たな設置提案を積極的に行っている。定番の壁掛け、壁寄せ以外にも、特に日立は設置ユニットの参考出展が盛んで、コーナー設置、ラックスタンドなどなど様々なバリエーションを紹介した。大画面テレビ+TVラックというスタイルが過去のものになるのではないかと思えるほどの力の入れようだった。
ワイヤレスではないが、ユニークな設置スタイルとして紹介したいのが東芝の「立て掛けREGZA」だ。壁に斜めにかかるようなデザインが斬新で未来的だ。「製品化は来場者の反応を見て検討したい」(説明員)とのことだった。コンセプトモデルも含め、今年は設置スタイルの提案が豊かで、未来のテレビ像として期待が高まる。
毎年CEATECの会場を回って思うのは、年々進むテレビの多様化ぶりだ。今回は画質と設置の2点を中心に見たが、他にもリンク機能やホームネットワークなど新機能も取り入れられ、多機能化はまだまだ止まりそうもない。
なお、本稿で取り上げた2つの流れ以外にも、CEATEC会場では3D上映技術の展示も盛んに行われていたことも印象的だった。これは別記事でまとめてレポートされているので、あわせて参照してほしい。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。