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公開日 2013/02/06 13:19
KDDI、独自映像コーデックでスーパーハイビジョンのCATV伝送に成功
J:COMと共同で。記者発表会で伝送デモも実施
KDDI(株)、(株)KDDI研究所、(株)ジュピターテレコムは、スーパーハイビジョンの8K映像や4K映像を高効率に圧縮してフルHD映像と同時伝送する技術を開発し、CATV網を使って伝送する実験に世界で初めて成功した。
今回の技術開発研究は、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)の委託研究「超高精細映像符号化技術に冠する研究開発」の一環として行ったもので、8K映像の高圧縮技術とフルHD・4K・8K映像を同時伝送する技術の2種類を元にした実験が行われた。
本日行われた3社合同の記者発表会では、KDDI 理事 技術統括本部 技術開発本部長 渡辺文夫氏、KDDI研究所 代表取締役所長 中島康之氏、ジュピターテレコム 取締役 技術部門長 山添亮介氏が登壇し、今回の実験と技術について概要を説明した。また、会場では実際に伝送のデモも実施。練馬にあるJ:COMの施設と、記者発表会場となった丸の内のオフィス間で社内用のネットワークを使用した伝送実験を行った。
■フルHD・4K・8Kの同時伝送技術
CATVの1チャンネル分の伝送レートは38.88 Mbps(256QAM利用時)で、従来の伝送ではフルHD映像に1チャンネル、4K映像に2チャンネル、8K映像に5チャンネル分の帯域が必要だったが、今回開発された新技術により、従来比約1/2となる4チャンネル分の帯域で、フルHD映像・4K映像・8K映像の同時伝送が可能となった。
映像コーデックにはKDDIが独自に開発した新技術を採用している。先日ITUで国際標準規格として承認されたHEVCに比べても圧縮効率が高いという。今回の実験ではこの新コーデックを用いて、8K映像を62Mbps、4k映像を20Mbps、フルHDを8Mbpsでエンコードし、伝送した。
仕組みは、階層符号化方式を採用。送信機側に8K映像をマスターとして入力し、送信機内で4K映像とフルHD映像にダウンコンバートした映像をそれぞれ作り出す。これを伝送する際に、フルHD映像はそのまま圧縮するが、4K映像はフルHD映像を4Kにアップコンバートしたものを作り出し、本来の4K映像とフルHDからアップコンバートした4K映像の差分だけを圧縮して伝送する。8Kも同様で、4K映像を8Kにアップコンバートしたものを作り出し、本来の8K映像との差分だけを圧縮して伝送する。
この新技術について正式な名称はまだないとのことだが、今回の記者発表会でKDDI研究所の中島氏は「8K対応独自コーデック」と仮称した。なお、開発のフレームワークはH.264やHEVCと類似しているが、独自方式の開発であり、他コーデックとの互換性はないという。
音声はAACコーデックを採用。中島氏は「5.1chやロスレス音声も技術的には伝送可能であり、様々な技術と組み合わせていきたい」と語った。
■8K映像の高圧縮技術
また、8K単体の伝送を想定した技術として、新しい8K映像の高圧縮技術も開発された。隣の映像ブロックとの類似度が高いなどといった8K映像の特徴を利用し、ブロックサイズを大きくして隣り合うブロック同士で重複している制御情報を省略し、付属する情報を少なくすることで圧縮率を高めたという。
これによって、H.264方式と比較して半分以下、HEVC方式と比較しても12〜13%ほど容量を抑えた70Mbpsを実現した。この8K単体での圧縮技術と、先述の階層符号化方式による圧縮では、再生する際の8K映像のクオリティには差異がないとしている。また、4K映像も同様の仕組みで単体伝送が行える。
■既存の放送インフラであるCATVでの伝送に成功したという成果
KDDIの渡辺氏は、「昨年のオリンピックでは8Kのパブリックビューイングが実施されたり、今年のCESでは4Kテレビが大量に発表されたりと、今はアナログ停波を経て次の時代の到来が予感される時期だ。4K・8Kといった超高精細映像の登場に期待も高まっている。しかしそれを実際にどうやって配信していくかはまだ発展途上にある」と語った。
続けて、「現在のフルHDテレビ、新しい4Kテレビ、いずれ登場するれあろう8Kテレビ、それらが各家庭で同時に使われる将来を想定し、今回の技術開発を行ってきた。既存の放送インフラである商用のCATVでしっかり伝送できることを実証できたことは、大きな成果だと思う」と述べた。
技術の詳細説明を行ったKDDI研究所の中島氏は、今後の取り組みについて「CATVやIPTVを使った伝送実験を今後とも行い、イベント展開して利用者の動向も探っていきたい。また、放送サービスについても、IPマルチキャストやCATVのRF伝送を含め、ネットワーク環境の自由道をいかしたサービスの実用化を検討していく」と説明した。
放送事業者側となるジュピターテレコムの山添氏は、「デジタル放送に移行していく際、放送局側はアナログ放送とデジタル放送を両方配信していた。ハイビジョン放送から4K放送、8K放送へ移行するときにも同じことが起こると思う。私たちとしては、そこでどれだけ映像を圧縮して伝送できるかがポイントになる」と、4K・8K放送が開始する時期を見据えた。
同氏は今回の実験について「既存モデムで対応できるインターネットCATV技術DOCSIS 3.0で伝送できることがポイント。既存のサービスで対応できるため、事業者の設備投資負担が軽く導入しやすい。また、放送・インターネット・電話・緊急地震速報などの既存サービスに影響を与えることなく、4K・8K映像を伝送できることは大きなことだ」と語った。
J:COMとしては、現在使用していない帯域が複数あるうえ、アナログ放送が完全に終了する2015年3月以降にはさらに現在のVHF帯10チャンネルほどが使用可能になることを想定している。山添氏は「どれほどのch数でどれほどの帯域が必要かはわからない」としたが、4K・8K放送への対応を視野に入れて「20チャンネルほどあれば大丈夫だと考える」とした。
なお、今回の実験については「あくまでも通信用のネット技術を放送に応用したもの」とし、「さらなる圧縮技術の進展や、チャンネル切替時間短縮など、ここから放送向けの技術に展開していくことが課題だ」とした。J:COMとしては、まずはパブリックビューイングなどB to B分野での展開に期待し、徐々に放送局の番組を伝送していくことを想定しているという。
今回の技術開発研究は、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)の委託研究「超高精細映像符号化技術に冠する研究開発」の一環として行ったもので、8K映像の高圧縮技術とフルHD・4K・8K映像を同時伝送する技術の2種類を元にした実験が行われた。
本日行われた3社合同の記者発表会では、KDDI 理事 技術統括本部 技術開発本部長 渡辺文夫氏、KDDI研究所 代表取締役所長 中島康之氏、ジュピターテレコム 取締役 技術部門長 山添亮介氏が登壇し、今回の実験と技術について概要を説明した。また、会場では実際に伝送のデモも実施。練馬にあるJ:COMの施設と、記者発表会場となった丸の内のオフィス間で社内用のネットワークを使用した伝送実験を行った。
■フルHD・4K・8Kの同時伝送技術
CATVの1チャンネル分の伝送レートは38.88 Mbps(256QAM利用時)で、従来の伝送ではフルHD映像に1チャンネル、4K映像に2チャンネル、8K映像に5チャンネル分の帯域が必要だったが、今回開発された新技術により、従来比約1/2となる4チャンネル分の帯域で、フルHD映像・4K映像・8K映像の同時伝送が可能となった。
映像コーデックにはKDDIが独自に開発した新技術を採用している。先日ITUで国際標準規格として承認されたHEVCに比べても圧縮効率が高いという。今回の実験ではこの新コーデックを用いて、8K映像を62Mbps、4k映像を20Mbps、フルHDを8Mbpsでエンコードし、伝送した。
仕組みは、階層符号化方式を採用。送信機側に8K映像をマスターとして入力し、送信機内で4K映像とフルHD映像にダウンコンバートした映像をそれぞれ作り出す。これを伝送する際に、フルHD映像はそのまま圧縮するが、4K映像はフルHD映像を4Kにアップコンバートしたものを作り出し、本来の4K映像とフルHDからアップコンバートした4K映像の差分だけを圧縮して伝送する。8Kも同様で、4K映像を8Kにアップコンバートしたものを作り出し、本来の8K映像との差分だけを圧縮して伝送する。
この新技術について正式な名称はまだないとのことだが、今回の記者発表会でKDDI研究所の中島氏は「8K対応独自コーデック」と仮称した。なお、開発のフレームワークはH.264やHEVCと類似しているが、独自方式の開発であり、他コーデックとの互換性はないという。
音声はAACコーデックを採用。中島氏は「5.1chやロスレス音声も技術的には伝送可能であり、様々な技術と組み合わせていきたい」と語った。
■8K映像の高圧縮技術
また、8K単体の伝送を想定した技術として、新しい8K映像の高圧縮技術も開発された。隣の映像ブロックとの類似度が高いなどといった8K映像の特徴を利用し、ブロックサイズを大きくして隣り合うブロック同士で重複している制御情報を省略し、付属する情報を少なくすることで圧縮率を高めたという。
これによって、H.264方式と比較して半分以下、HEVC方式と比較しても12〜13%ほど容量を抑えた70Mbpsを実現した。この8K単体での圧縮技術と、先述の階層符号化方式による圧縮では、再生する際の8K映像のクオリティには差異がないとしている。また、4K映像も同様の仕組みで単体伝送が行える。
■既存の放送インフラであるCATVでの伝送に成功したという成果
KDDIの渡辺氏は、「昨年のオリンピックでは8Kのパブリックビューイングが実施されたり、今年のCESでは4Kテレビが大量に発表されたりと、今はアナログ停波を経て次の時代の到来が予感される時期だ。4K・8Kといった超高精細映像の登場に期待も高まっている。しかしそれを実際にどうやって配信していくかはまだ発展途上にある」と語った。
続けて、「現在のフルHDテレビ、新しい4Kテレビ、いずれ登場するれあろう8Kテレビ、それらが各家庭で同時に使われる将来を想定し、今回の技術開発を行ってきた。既存の放送インフラである商用のCATVでしっかり伝送できることを実証できたことは、大きな成果だと思う」と述べた。
技術の詳細説明を行ったKDDI研究所の中島氏は、今後の取り組みについて「CATVやIPTVを使った伝送実験を今後とも行い、イベント展開して利用者の動向も探っていきたい。また、放送サービスについても、IPマルチキャストやCATVのRF伝送を含め、ネットワーク環境の自由道をいかしたサービスの実用化を検討していく」と説明した。
放送事業者側となるジュピターテレコムの山添氏は、「デジタル放送に移行していく際、放送局側はアナログ放送とデジタル放送を両方配信していた。ハイビジョン放送から4K放送、8K放送へ移行するときにも同じことが起こると思う。私たちとしては、そこでどれだけ映像を圧縮して伝送できるかがポイントになる」と、4K・8K放送が開始する時期を見据えた。
同氏は今回の実験について「既存モデムで対応できるインターネットCATV技術DOCSIS 3.0で伝送できることがポイント。既存のサービスで対応できるため、事業者の設備投資負担が軽く導入しやすい。また、放送・インターネット・電話・緊急地震速報などの既存サービスに影響を与えることなく、4K・8K映像を伝送できることは大きなことだ」と語った。
J:COMとしては、現在使用していない帯域が複数あるうえ、アナログ放送が完全に終了する2015年3月以降にはさらに現在のVHF帯10チャンネルほどが使用可能になることを想定している。山添氏は「どれほどのch数でどれほどの帯域が必要かはわからない」としたが、4K・8K放送への対応を視野に入れて「20チャンネルほどあれば大丈夫だと考える」とした。
なお、今回の実験については「あくまでも通信用のネット技術を放送に応用したもの」とし、「さらなる圧縮技術の進展や、チャンネル切替時間短縮など、ここから放送向けの技術に展開していくことが課題だ」とした。J:COMとしては、まずはパブリックビューイングなどB to B分野での展開に期待し、徐々に放送局の番組を伝送していくことを想定しているという。