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公開日 2016/06/29 11:46

「VRにはグループ一体で取り組む」。ソニー、中期経営計画の進捗は“総じて良いスタート”

2016年度経営方針説明会を開催
編集部:小澤貴信
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ソニー(株)は本日、2016年度経営方針説明会を開催。同社社長兼CEOの平井一夫氏らが出席し、2015年度〜2017年度中期経営計画の進捗や、2018年度以降への布石としての取り組みについて説明を行った。

ソニー(株)社長兼CEOの平井一夫氏

2015年2月に発表された中期経営計画では、それまでの構造改革を中心とした経営から、「利益創出と成長への投資」をテーマとする新たなフェーズへの移行が掲げられた。'16年度は3年にわたる中期計画の中期を迎えることになるが、平井氏は「総じて良いスタートを切れた」とコメント。計画の最終年度となる'17年度に向けて、と当初から掲げている「ソニーグループ連結でROE10%以上、営業利益5,000億円以上」という数値目標を堅持するとした。

2015年度〜2017年度中期経営計画は、“利益創出と成長への投資”のフェーズと位置付けられる

第二次中期経営計画の基本方針

「営業利益5,000億円以上を計上したのは、ソニーの歴史においてこれまで1997年度の一度しかない。その意味でも大きなチャンレンジだが、この目標達成はソニーが高収益企業に変容するための重要なマイルストーンだと考えている」(平井氏)。

2016年度の連結業績については、連結営業利益が'15年度の2,942億円に対して3,000億円(熊本地震の影響は-1,150億円)、純利益が'15年度の1,478億円に対して800億円になるという見通しを発表した。

2016年度の連結業績見通し

熊本地震による影響については、イメージセンサーやディスプレイセンサーを製造する熊本テクノロジーセンターが大きな被害を受けたが、多くの工程で順調に復旧が進んでおり、8月にはフル稼働状態に復帰できるとした。

一方、'17年度の分野別経営数値目標については、外部環境の変化や各事業の状況を鑑みて、数値目標の変更も行った。数値の詳細は下記表の通り。

2017年度の分野別経営数値目標の見直しも発表

'15年度においては前年度比で営業利益および純利益を大幅に改善したが、そこにはソニーブランドを冠したコンシューマーエレクトロニクス事業の復活が大きく貢献した。特にテレビ事業やモバイル・コミュニケーション分野における改善が大きく寄与したとのこと。

また中期計画の進捗の要とする主要分野として、「ゲーム&ネットワークサービス分野」「映画・音楽分野」「デバイス分野」「金融分野」についての進捗について言及された。

ゲーム&ネットワークサービスは、平井氏が中期計画における成長の中核と捉える分野で、「当初の期待を上回る成長を遂げている」と紹介。PlayStation4の累計実売台数が4,000万台を超え、歴代のPlayStationの中で最速ペースで普及しているとのこと。さらにネットワークサービス事業でも2015年度の売上が前年比で5割伸びるなど、順調な拡大が続いている。

PlayStation4の累計実売台数が4,000万台を超え、歴代のPlayStationの中で最速ペースで普及

ネットワーク事業は、2015年度の売上が前年比で5割伸びるなど順調な拡大

平井氏は2016年10月発売予定のPlayStation VRにも触れ、「VRはゲーム領域以外にも、ソニーグループが有するカメラや撮影技術、コンテンツ制作力、エンターテイメント資産を活かせる領域と捉えている。新たな事業領域に育つ可能性も視野に入れて、グループ一体で取り組む」と述べた。

PlayStation VRにも言及。VRにはグループ一丸となって取り組むとのこと

質疑応答ではVRへの同社の期待感の大きさについても質問が挙がった。同社 執行役副社長の鈴木智行氏は「VRという言葉は、360度の多視点映像を包括すると捉えている。PlayStation VRはヘッドマウント式ディスプレイという形式だが、ドーム型を含む360度・大画面ディスプレイでこうした映像を視聴することもVRだと考えている。大画面によるVRなら、画質・音質の両面でさらにクオリティが高いものを実現できる」とコメント。

平井氏は「今回はゲーム分野で参入するが、ノンゲーム領域においてもソニーの資産を投入できるアドバンテージがある」と、改めてゲーム以外の分野でもVRに取り組んでいくことを強調した。

映画・音楽分野については、デジタル化の進展やストリーミングサービスの隆盛による産業構造の大きな変化が起きているが、優秀なクリエイターとコンテンツを有するソニーにとって、こうした環境変化はむしろ「成長のチャンス」だと捉えているとのこと。

エンタテインメント事業については、産業構造の変化を「成長のチャンス」と捉えている

映画分野では、定額制動画配信サービスの普及による良質なドラマコンテンツに対するニーズの高まりに対して、「ブレイキング・バッド」や「ブラックリスト」などのヒット作を手がけたソニーのテレビ番組製作部門をもって応えていく。音楽分野については、インディーズのデジタル配信を担うOrchard Media. Incや音楽出版社 Sony/ATVの完全子会社化をはじめ、リカーリング型ビジネスの強化に向けた戦略投資を引き続き行っていく。

デバイス分野については、スマートフォンの成長鈍を背景に業績見込みを下方修正。「大きな資本を投入している事業なので、現状を重く捉えている」と平井氏はコメント。一方で、デバイス分野が潜在的には大きな成長領域であることは変わりなく、特にイメージセンサーの用途の広がりと市場規模の拡大を受け、監視カメラや車載センサーなどに積極的に投資を行っていくとした。また、このデバイス分野においては社内の研究開発だけに依存せず、M&Aを視野にいれて投資を行っていくという。

イメージセンサーの用途の広がりと市場規模の拡大を受け、監視カメラや車載センサーなどに積極的に投資を行っていく

金融分野については、超低金利環境から中期計画の数値見直しを行ったものの、高品質かつ利便性の高い金融サービスの提供により中期的な利益成長を目指す。

2018年度以降の取り組みへの布石についても発表。平井氏は「ソニーのミッションは、ユーザーに感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続けること」と述べ、エレクトロニクス、エンタテインメント、金融の3領域に特に力をいれていくと紹介した。

「人のやらないことにチャレンジし続けるのがソニーであると考えている。そのためには高収益体制と経営の規律の確立が不可欠。コンシューマーエレクトロニクス事業が復活を遂げつつあり、この領域で新規事業の立ち上げを加速させていく」(平井氏)

特にエレクトロニクスについては、「ハードウェアはコモディティ化がますます進み、付加価値はネットワークやクラウドに移行するという意見がある。しかし、お客様が直接触れるハードウェアの重要性は変わらないと考えていて、そこにこそソニーの新しい成長の源泉がある」と意気込みを語った。また、「ラストワンインチ」というコンセプトを掲げ、ユーザーと最も距離の近いハード領域において感性を刺激する製品を実現し、感動を提供することの重要性を説いた。

将来への布石として「ラストワンインチ」というコンセプトを掲げた

リカーリング型ビジネスも将来への施策の根幹になるとし、ユーザーとの継続した付き合いを通して安定した収益を得ることを目指していく。平井氏はリカーリング領域について、特にゲーム&ネットワークサービス分野や金融分野における顧客との深いつながりについて言及していた。

リカーリング型ビジネスにもさらに注力していく

また、人工知能(AI)およびロボティクスにも力を入れていくとのこと。コンシューマー向けに加え、将来的には製造や物流にも利用していきたいとの考えを示した。

AIやロボティクスは、エレクトロニクスの「場」を広げる施策としても重要とのこと。他にも、Life Space UXやXperiaスマートプロダクト、ドローンを用いた産業用ソリューションなど、ハードウェアとサービスを組み合わせた、ユーザーに感動体験をもたらす新たな事業モデルの提案を今後も展開していくという。

こうした先端領域の成長において、外部の優れた研究者・技術者、ベンチャー企業との協業も重要になっていくと語る平井氏。こうした協業の一環として、コーポレートベンチャーキャピタル「Sony Innovation Found」を2016年7月に設立すると発表した。

質疑応答では、東京・銀座のソニービルの建て替えについて「なぜ五輪後の立て替えとしたのか」と質問が出た。

平井氏は「ソニービルは学生のころから待ち合わせの場所の定番で、ソニーの新製品が出たらまずはソニービルに見に行った。個人的にもとても思い出深い場所だ。老朽化もあり立て替えを決定したが、どうせならソニーらしく建て替えたいと考えた。複数のプランが出たなかで、跡地を「パーク」として開放してから立て直すというプランが、恩返しができるという意味でもソニーらしいやり方だと判断した」と答えた。

英国のEU離脱などを発端とした為替の変化などの業績への影響については、平井氏は「外部環境の変化はあるが、営業利益5,000億円以上という目標は達成しなければいけない」と述べた。

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