HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
公開日 2019/06/26 14:36
「PCやスマホも私的録音録画補償金制度の対象に」。JASRACなどが政府へ要望
CISACでの決議を文化庁に提出
日本音楽著作権協会(JASRAC)らコンテンツ権利者団体5者は、PCやスマートフォンを私的録音録画補償金制度の対象にすることなどについて日本政府の対応を求めた。
■日本の私的録音録画補償金制度の「形骸化」を指摘
5月30日に開催されたCISAC(著作権協会国際連合)総会で採択された決議のうち、日本に関係する3つの決議書を文化庁に提出。国としての対応を要望したもの。JASRACのほか、日本映画監督協会、日本脚本家連盟、日本美術家連盟、日本美術著作権協会が今回の動きに参加している。
私的録音録画補償金制度は、コンテンツを録音・録画する機器やメディアに対して、コンテンツ権利者への補償金をあらかじめ上乗せして販売し、ユーザーが私的録音や録画を行った際の権利者への補償金を徴収しようというもの。私的録音や録画を行うたびにユーザーが権利者へ都度補償金を支払う煩雑さを回避するために採用されている。
JASRACでは、日本の私的録音録画補償金制度がMD、DAT、DCCや、アナログデジタル変換した映像を録画する機器など既に一般的に利用されていない複製機器と媒体のみを対象としているおり、一般に広く利用されているポータブルオーディオプレイヤー、ハードディスク内蔵型ブルーレイディスクレコーダーなどは、現在も補償金の対象とはなっていないと説明。
これにより、制度が形骸化していると指摘。国際的な団体であるCISACにもこのことを報告し、5月30日に開催されたCISACにおいて「日本政府に対し早急に新しい、機能的で公平な私的複製補償金制度を構築することを強く求める」とする決議が採択された。
そして今回、JASRACなどが6月25日に文化庁を訪問し、これらの決議を提出。政府に対してあらためて正式に要望した格好となる。
JASRACでは、日本における私的録音録画補償金の総額が、40億円を超えた2000年をピークに下降し、2012年には録画補償金が消滅、現在では録音補償金が数千万円に留まっていると現在の状況を説明。
一方で、CISAC加盟団体全体の私的複製補償金の総額は、日本円にして数百億円規模に達しており、現在も増加傾向にあるとコメント。また、音楽著作権管理団体の徴収額に占める補償金の割合で見ると、日本の場合はドイツやフランスなどの主要国に比べ100分の1以下の状況であること、OECD(経済協力開発機構)加盟国の多くで私的複製補償金制度が導入されていることなども紹介している。
そして、こうした日本の状況を各国の著作権管理団体も看過できずにCISACでの決議に至ったと説明。ジャン・ミシェル・ジャールCISAC会長が「私的複製補償金制度は著作者と大手企業との利益の調和を図る一つの方法であり、迅速な対応が求められている」と訴えたほか、ガディ・オロンCISAC事務局長が「世界的に私的複製補償金は著作者にとって大きな収入源である。ただ、日本での補償金は非常に少ない。市場の変化に応じた補償金制度の改定を求めてきたい」と説明している。
■PC/タブレット/スマホなどを制度の対象にすることを要望
CISRACでの決議においては、私的録音録画補償金制度に関する日本の法律が1998年以降更新されておらず、「現行補償金制度がその適用と効果において著しく制限されている」とし、「PC、タブレット端末やスマートフォン等現在消費者によって私的複製のために市場で広く利用されている機器や媒体が補償金の対象になっておらず、制度から実質的に除外されている」と指摘。
一方で、フランスやドイツなど諸外国では「私的複製補償金制度の対象となる機器や媒体は定期的に更改され、消費者行動を反映し、創作者のために公平な報酬を確保している」とし、「補償金制度の立法趣旨からして、機器や媒体の製造業者や輸入業者の法に規定された協力義務が明確で法的強制力のあるものと判断されるべきところ、裁判所が当該義務は不明確であると判断したことに失望」していると日本の現状に対してコメント。
そして「国内外の創作者の権利を私的複製において制限する一方で、公平な補償金制度を提供しないことは不公平であり世界中の創作者にとって重大な損失である」と強調。
「本件に関するJASRACとJASPAR(美術著作権団体)の主張、活動と努力を全面的に支持し、そして日本政府に対し早急に新しい、機能的で公平な私的複製補償金制度を構築することを強く求める」としている。
なお、5月のCISAC総会後に開かれた記者会見において、報道関係者から「現在はサブスクリプション型の聴き放題サービスが増えている。複製行為を根拠に補償金を徴収する仕組みが有効なのか、時代に合わせた新しい制度も必要ではないか」との質問があったが、JASRACの浅石理事長は、「諸外国と比べ、日本の音楽市場はまだフィジカル(CD、DVD等の複製物)の割合が多い。世界のフィジカルの売り上げの46%が日本である」と説明。そのため、制度の早急な機能回復が求められると回答していた。
そして、「文化審議会・著作権分科会での論点整理、見解を尊重するとともに、補償金の対象を拙速に『複製』全般に拡大することを求めず、まずは『録音』『録画』に係る専用機器(補償金の対象として政令指定されていないポータブルオーディオプレイヤー、ハードディスク内蔵型ブルーレイディスクレコーダーなど)が対象となるよう、CISAC総会の決議を踏まえて、各方面にはたらきかけていく」としていた。
なお、今回の5団体による政府への要望においては、私的録音録画補償金制度に関する決議のほか、「日本における美術創作者の追及権に関する決議」、および「日本映画監督協会への支援に関する決議」についても文化庁へ提出。
「日本における美術創作者の追及権に関する決議」では、現在90ヶ国以上で立法化されている美術創作者の追及権を日本の著作権法にも導入すること、「日本映画監督協会への支援に関する決議」では、映画監督が公正な報酬を得ることを目的とする日本映画監督協会の活動を支持するとともに、公正な報酬を得られるための立法措置をとることを求めている。
■日本の私的録音録画補償金制度の「形骸化」を指摘
5月30日に開催されたCISAC(著作権協会国際連合)総会で採択された決議のうち、日本に関係する3つの決議書を文化庁に提出。国としての対応を要望したもの。JASRACのほか、日本映画監督協会、日本脚本家連盟、日本美術家連盟、日本美術著作権協会が今回の動きに参加している。
私的録音録画補償金制度は、コンテンツを録音・録画する機器やメディアに対して、コンテンツ権利者への補償金をあらかじめ上乗せして販売し、ユーザーが私的録音や録画を行った際の権利者への補償金を徴収しようというもの。私的録音や録画を行うたびにユーザーが権利者へ都度補償金を支払う煩雑さを回避するために採用されている。
JASRACでは、日本の私的録音録画補償金制度がMD、DAT、DCCや、アナログデジタル変換した映像を録画する機器など既に一般的に利用されていない複製機器と媒体のみを対象としているおり、一般に広く利用されているポータブルオーディオプレイヤー、ハードディスク内蔵型ブルーレイディスクレコーダーなどは、現在も補償金の対象とはなっていないと説明。
これにより、制度が形骸化していると指摘。国際的な団体であるCISACにもこのことを報告し、5月30日に開催されたCISACにおいて「日本政府に対し早急に新しい、機能的で公平な私的複製補償金制度を構築することを強く求める」とする決議が採択された。
そして今回、JASRACなどが6月25日に文化庁を訪問し、これらの決議を提出。政府に対してあらためて正式に要望した格好となる。
JASRACでは、日本における私的録音録画補償金の総額が、40億円を超えた2000年をピークに下降し、2012年には録画補償金が消滅、現在では録音補償金が数千万円に留まっていると現在の状況を説明。
一方で、CISAC加盟団体全体の私的複製補償金の総額は、日本円にして数百億円規模に達しており、現在も増加傾向にあるとコメント。また、音楽著作権管理団体の徴収額に占める補償金の割合で見ると、日本の場合はドイツやフランスなどの主要国に比べ100分の1以下の状況であること、OECD(経済協力開発機構)加盟国の多くで私的複製補償金制度が導入されていることなども紹介している。
そして、こうした日本の状況を各国の著作権管理団体も看過できずにCISACでの決議に至ったと説明。ジャン・ミシェル・ジャールCISAC会長が「私的複製補償金制度は著作者と大手企業との利益の調和を図る一つの方法であり、迅速な対応が求められている」と訴えたほか、ガディ・オロンCISAC事務局長が「世界的に私的複製補償金は著作者にとって大きな収入源である。ただ、日本での補償金は非常に少ない。市場の変化に応じた補償金制度の改定を求めてきたい」と説明している。
■PC/タブレット/スマホなどを制度の対象にすることを要望
CISRACでの決議においては、私的録音録画補償金制度に関する日本の法律が1998年以降更新されておらず、「現行補償金制度がその適用と効果において著しく制限されている」とし、「PC、タブレット端末やスマートフォン等現在消費者によって私的複製のために市場で広く利用されている機器や媒体が補償金の対象になっておらず、制度から実質的に除外されている」と指摘。
一方で、フランスやドイツなど諸外国では「私的複製補償金制度の対象となる機器や媒体は定期的に更改され、消費者行動を反映し、創作者のために公平な報酬を確保している」とし、「補償金制度の立法趣旨からして、機器や媒体の製造業者や輸入業者の法に規定された協力義務が明確で法的強制力のあるものと判断されるべきところ、裁判所が当該義務は不明確であると判断したことに失望」していると日本の現状に対してコメント。
そして「国内外の創作者の権利を私的複製において制限する一方で、公平な補償金制度を提供しないことは不公平であり世界中の創作者にとって重大な損失である」と強調。
「本件に関するJASRACとJASPAR(美術著作権団体)の主張、活動と努力を全面的に支持し、そして日本政府に対し早急に新しい、機能的で公平な私的複製補償金制度を構築することを強く求める」としている。
なお、5月のCISAC総会後に開かれた記者会見において、報道関係者から「現在はサブスクリプション型の聴き放題サービスが増えている。複製行為を根拠に補償金を徴収する仕組みが有効なのか、時代に合わせた新しい制度も必要ではないか」との質問があったが、JASRACの浅石理事長は、「諸外国と比べ、日本の音楽市場はまだフィジカル(CD、DVD等の複製物)の割合が多い。世界のフィジカルの売り上げの46%が日本である」と説明。そのため、制度の早急な機能回復が求められると回答していた。
そして、「文化審議会・著作権分科会での論点整理、見解を尊重するとともに、補償金の対象を拙速に『複製』全般に拡大することを求めず、まずは『録音』『録画』に係る専用機器(補償金の対象として政令指定されていないポータブルオーディオプレイヤー、ハードディスク内蔵型ブルーレイディスクレコーダーなど)が対象となるよう、CISAC総会の決議を踏まえて、各方面にはたらきかけていく」としていた。
なお、今回の5団体による政府への要望においては、私的録音録画補償金制度に関する決議のほか、「日本における美術創作者の追及権に関する決議」、および「日本映画監督協会への支援に関する決議」についても文化庁へ提出。
「日本における美術創作者の追及権に関する決議」では、現在90ヶ国以上で立法化されている美術創作者の追及権を日本の著作権法にも導入すること、「日本映画監督協会への支援に関する決議」では、映画監督が公正な報酬を得ることを目的とする日本映画監督協会の活動を支持するとともに、公正な報酬を得られるための立法措置をとることを求めている。