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公開日 2020/01/27 11:14
安心・安全な暮らしに知っておきたい電気製品の安全性。「Sマーク」取得による4つのメリットとは
電気製品認証協議会が製品安全セミナーを開催
電気製品認証協議会(SCEA)は、安心・安全な製品をお客様に提供するための品質管理や品質検査に対する企業の姿勢が一層問われる中、「知っておきたい電気製品の安全性」と題し、流通・販売事業者向けの製品安全セミナーを開催した。消費生活コンサルタント/SCEA広報専門部会長・三浦佳子氏による「消費者視点の製品安全」、一般財団法人 電気安全環境研究所 製品認証部・中村典生氏による「Sマーク認証の優位性」の2つの講演が行われた。
■安全が無ければ安心はあり得ない
「消費者視点の製品安全」(三浦佳子氏)では、消費者がどんな形で事故を起こしてしまうのかをデータを交えて解説。製品安全とは、製品の事故を防いで安全に使用するために、消費者、製造事業者、販売事業者それぞれが役割を果たすことが重要。「なかでも消費者と製造事業者間の意識のギャップが大きい」と指摘した。
「いわゆる“100均”の登場から日本の市場文化は大きく変わった。消費者は製品に対し、動けばいい、動かなくなったら捨てればいいと考えている。特に若い人にはそうした考え方が強く、モノへの感覚や愛着が世代間で違っていることを認識することが必要」と説明した。また、誤った使い方が事故の大きな原因のひとつだが、「知らないのは自分のせいではないとする他責な方が多くなっていることはとても残念」と消費者との意思疎通、それを実現していくための方策が課題となっている。
高齢化社会の到来により、判断力・注意力が低下する高齢者の事故対策も大きな課題のひとつ。危険が潜むのは“自宅”。「自宅は安心しているため、実は事故が起きやすい。思っているように体が動かなくなっていることも、ずっと自宅にいると認識できない」と指摘する。例えば、衰えの早い握力では、鍋の蓋を落として足を骨折するケースもよく見受けられ、ちょっとしたことから大きなケガにつながることが少なくない。
事故はどうして起こるのか。「例えば、製造事業者がホームページで製品の使い方に対する注意喚起をしっかり行っていたとしても、「消費者にはほとんど見られていない。デジタルデバイトで、特に気を付けなければならない高齢者はなおさら。高齢者に対応した製品や売り方、また、数が増える認知症の方へどう接するかという対応策も課題のひとつ」と語る。経済面での二極化により、食べることで精一杯の低所得層ほど、旧い製品を使い続け、事故が起こりやすくなっている。「製造事業者も販売事業者も、いろいろな消費者がいることを今一度認識してほしい」と注意を促した。
事故を防ぐためにはどうしたらいいか。「事故防止に向けて行わなければならないのは、事故情報を収集し、類似の事故が起こらないように幅広く注意喚起を実施すること。そのためにも関係者が情報を公表し合うことが大事」と語る。産業構造審議会では、メーカーや販売店に寄せられる製品クレーム情報のビッグデータを活用し、製品事故の予兆情報等を入力すると、予測された危害の程度や事故発生の可能性の情報が得られる「製品事故予測システム」を開発中だ。多くの事業者に情報を提供していくことで、事故の未然防止に繋げていく構えだ。
一層の製品安全の確保を図るためには、事業者、行政、消費者それぞれの安全意識を向上することが不可欠となる。リコール等の製品安全情報は、高齢者にもきちんと届く仕組みづくりが必要。また、情報を得た消費者が適切なアクションを起こせるようにする消費者教育も大切になる。安全で安心な社会づくりを目指す上からも、三浦氏は「まず安全が無ければ安心がない」と緊張感ある信頼関係の構築を訴えた。
■Sマーク認証制度の4つのメリット
「Sマーク認証の優位性」(中村典生氏)では、電気製品の安全・安心の目安となるSマーク認証制度について、発足の経緯や制度の概要、優位性について解説。理解を深め、認知を高めていくことの有用性を明確にした。
電気用品の安全を取り締まる電気用品取締法(1961年制定)が、規制緩和により新たに「電気用品安全法」(1999年制定、2001年施行)として制定された。これに伴い、冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった身近な製品が、これまでの政府認証から製造事業者による自己確認へ移行。Sマーク認証制度は、こうした状況を不安視する声に応えて登場したものだ。欧米の制度を見本に、民間が自主的に実施する第三者認証制度として、公正な運営と普及を図り、日本における電気製品の安全性向上に貢献することを目的に電気製品認証協議会(SCEA)が1994年12月に発足し、翌年よりSマーク認証がスタートしている。
Sマーク認証制度の概要は、製造・輸入事業者から申し込みが行われた製品について、電気用品安全法の技術基準をはじめとするSマーク認証基準へ適合しているかを「製品試験」により確認。同時に、認証する製品が常に同じ品質で生産できる体制にあるかを「初回工場調査」により確認する。また、初回量産時の製品が認証時と同じ仕様かどうかを確認する「初回ロット検査」を実施。さらに、認証を継続するために年1回の「定期工場調査」を行いフォローアップする。安全な電気製品の供給を要望する社会ニーズに応え、製造・輸入事業者が安全性を確保する方策を支援する。
中村氏は「Sマーク認証は電気用品安全法と比較して、対象製品も認証基準も拡大されている。初回・定期工場調査を実施し、管理体制の審査も行っているモデルごとの認証だ。第三者認証機関により、このように基準適合性が確認されたSマーク認証製品は、より信頼性のある製品と言える」と説明した
Sマーク認証制度のメリットは大きく次の4点にまとめられる。1つ目は、豊富な経験を備えた第三者機関によるチェックが行われること。製造・輸入事業者は、製造・輸入・販売する製品について、技術適合確認を行う義務があり、技術基準に対する知識や評価を行うための技術・設備が必要とされるが、「Sマーク認証を取得することで、この確認義務を経験豊富な試験員に評価を任せることができる」と語る。
電気用品安全法では対象外の電気製品であっても、事故等が発生した場合には消費者生活用製品安全法の適用を受け、重大事故の報告義務、リコール対応が必要となる。このケースでも、Sマークでは対象外製品にも対応しており、認証機関と申請者間で合意した技術基準で適合性を確認し、Sマーク認証を取得することで、こうしたリスクを軽減することもできる。
製造・輸入事業者はまた、技術基準への適合を確認した製品と同等のものを製造・輸入する必要があるが、Sマーク認証の制度概要で前述した通り、初回工場調査により生産管理体制を確認するとともに、初回ロット検査で最初の出荷ロットと認証試験時との製品の同一性が確認される。また、技術基準への適合を維持する必要性に対しても、年1回、経験豊富な検査委員が工場を訪問し、認証製品に仕様の変更がないか、生産管理システムが適切に運用されているかを確認。仕様変更の際には、再評価、品質管理状態のチェックが行われる。
2つ目のメリットは、法令や技術基準改正等への対応サポート。経済産業省では毎年、市場から300機種程度の電気製品を買い上げ、技術基準への適合性の確認や立ち入り検査を実施する。Sマーク認証を取得していれば、これらのテストや検査での不適合を未然に防ぐことができる。
不適合となる原因のひとつが「サイレントチェンジ」。「輸入事業者でよく見受けられるケースで、認証時に問題は認められなかったのに、工場で同じスペックだから、また、コストダウンできるからと勝手に部品を交換することがあり、もっとも悩ましい問題のひとつ」と指摘する。前記の年1回行われる「定期工場調査」のフォローアップでは抜き取り調査が実施されている。法改正や技術基準解釈の改訂に伴う対応では、SCEAによるセミナー開催やSマーク認証機関からの認定取得者に向けた案内通知で必要な対応をサポートする。
3つ目は、製品事故等への対応サポート。Sマーク認証品に万が一事故が発生した場合は、原因究明、再発防止処置等を確認するととともに、状況に応じて追加試験や特別工場調査を行い、再発防止をサポートする。技術基準解釈でサポートできない事故に対しては、Sマーク追加基準を制定し、事故の防止に努めている。
そして4つ目が、こうして認証されるSマークを表示することによる安全性のアピール。「販売事業者にとっても、Sマークを確認することで、製造・輸入事業者が必要な義務を果たしていることを容易に確認することができる」とアピールした。
なお、Sマークの付いた製品の店頭普及率について、毎年約1万件の調査を実施している。2018年は71.1%。2011年から2014年にかけては77.6%から78.7%で推移しており、ここ数年、普及率が下がってきている。製品別では、普及率が高いのは電気洗濯機97.1%、TV受信機95.3%、電気冷蔵庫92.1%、電子レンジ91.3%、反対に低いのはフードプロセッサー37.4%、ルームエアコン42.8%、電気掃除機46.3%。「海外製品でなかなか認証をとらないところがるが、各認証機関の営業活動により増えてきており、今年は少し数値が上向くのではないか」と説明した。
■安全が無ければ安心はあり得ない
「消費者視点の製品安全」(三浦佳子氏)では、消費者がどんな形で事故を起こしてしまうのかをデータを交えて解説。製品安全とは、製品の事故を防いで安全に使用するために、消費者、製造事業者、販売事業者それぞれが役割を果たすことが重要。「なかでも消費者と製造事業者間の意識のギャップが大きい」と指摘した。
「いわゆる“100均”の登場から日本の市場文化は大きく変わった。消費者は製品に対し、動けばいい、動かなくなったら捨てればいいと考えている。特に若い人にはそうした考え方が強く、モノへの感覚や愛着が世代間で違っていることを認識することが必要」と説明した。また、誤った使い方が事故の大きな原因のひとつだが、「知らないのは自分のせいではないとする他責な方が多くなっていることはとても残念」と消費者との意思疎通、それを実現していくための方策が課題となっている。
高齢化社会の到来により、判断力・注意力が低下する高齢者の事故対策も大きな課題のひとつ。危険が潜むのは“自宅”。「自宅は安心しているため、実は事故が起きやすい。思っているように体が動かなくなっていることも、ずっと自宅にいると認識できない」と指摘する。例えば、衰えの早い握力では、鍋の蓋を落として足を骨折するケースもよく見受けられ、ちょっとしたことから大きなケガにつながることが少なくない。
事故はどうして起こるのか。「例えば、製造事業者がホームページで製品の使い方に対する注意喚起をしっかり行っていたとしても、「消費者にはほとんど見られていない。デジタルデバイトで、特に気を付けなければならない高齢者はなおさら。高齢者に対応した製品や売り方、また、数が増える認知症の方へどう接するかという対応策も課題のひとつ」と語る。経済面での二極化により、食べることで精一杯の低所得層ほど、旧い製品を使い続け、事故が起こりやすくなっている。「製造事業者も販売事業者も、いろいろな消費者がいることを今一度認識してほしい」と注意を促した。
事故を防ぐためにはどうしたらいいか。「事故防止に向けて行わなければならないのは、事故情報を収集し、類似の事故が起こらないように幅広く注意喚起を実施すること。そのためにも関係者が情報を公表し合うことが大事」と語る。産業構造審議会では、メーカーや販売店に寄せられる製品クレーム情報のビッグデータを活用し、製品事故の予兆情報等を入力すると、予測された危害の程度や事故発生の可能性の情報が得られる「製品事故予測システム」を開発中だ。多くの事業者に情報を提供していくことで、事故の未然防止に繋げていく構えだ。
一層の製品安全の確保を図るためには、事業者、行政、消費者それぞれの安全意識を向上することが不可欠となる。リコール等の製品安全情報は、高齢者にもきちんと届く仕組みづくりが必要。また、情報を得た消費者が適切なアクションを起こせるようにする消費者教育も大切になる。安全で安心な社会づくりを目指す上からも、三浦氏は「まず安全が無ければ安心がない」と緊張感ある信頼関係の構築を訴えた。
■Sマーク認証制度の4つのメリット
「Sマーク認証の優位性」(中村典生氏)では、電気製品の安全・安心の目安となるSマーク認証制度について、発足の経緯や制度の概要、優位性について解説。理解を深め、認知を高めていくことの有用性を明確にした。
電気用品の安全を取り締まる電気用品取締法(1961年制定)が、規制緩和により新たに「電気用品安全法」(1999年制定、2001年施行)として制定された。これに伴い、冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった身近な製品が、これまでの政府認証から製造事業者による自己確認へ移行。Sマーク認証制度は、こうした状況を不安視する声に応えて登場したものだ。欧米の制度を見本に、民間が自主的に実施する第三者認証制度として、公正な運営と普及を図り、日本における電気製品の安全性向上に貢献することを目的に電気製品認証協議会(SCEA)が1994年12月に発足し、翌年よりSマーク認証がスタートしている。
Sマーク認証制度の概要は、製造・輸入事業者から申し込みが行われた製品について、電気用品安全法の技術基準をはじめとするSマーク認証基準へ適合しているかを「製品試験」により確認。同時に、認証する製品が常に同じ品質で生産できる体制にあるかを「初回工場調査」により確認する。また、初回量産時の製品が認証時と同じ仕様かどうかを確認する「初回ロット検査」を実施。さらに、認証を継続するために年1回の「定期工場調査」を行いフォローアップする。安全な電気製品の供給を要望する社会ニーズに応え、製造・輸入事業者が安全性を確保する方策を支援する。
中村氏は「Sマーク認証は電気用品安全法と比較して、対象製品も認証基準も拡大されている。初回・定期工場調査を実施し、管理体制の審査も行っているモデルごとの認証だ。第三者認証機関により、このように基準適合性が確認されたSマーク認証製品は、より信頼性のある製品と言える」と説明した
Sマーク認証制度のメリットは大きく次の4点にまとめられる。1つ目は、豊富な経験を備えた第三者機関によるチェックが行われること。製造・輸入事業者は、製造・輸入・販売する製品について、技術適合確認を行う義務があり、技術基準に対する知識や評価を行うための技術・設備が必要とされるが、「Sマーク認証を取得することで、この確認義務を経験豊富な試験員に評価を任せることができる」と語る。
電気用品安全法では対象外の電気製品であっても、事故等が発生した場合には消費者生活用製品安全法の適用を受け、重大事故の報告義務、リコール対応が必要となる。このケースでも、Sマークでは対象外製品にも対応しており、認証機関と申請者間で合意した技術基準で適合性を確認し、Sマーク認証を取得することで、こうしたリスクを軽減することもできる。
製造・輸入事業者はまた、技術基準への適合を確認した製品と同等のものを製造・輸入する必要があるが、Sマーク認証の制度概要で前述した通り、初回工場調査により生産管理体制を確認するとともに、初回ロット検査で最初の出荷ロットと認証試験時との製品の同一性が確認される。また、技術基準への適合を維持する必要性に対しても、年1回、経験豊富な検査委員が工場を訪問し、認証製品に仕様の変更がないか、生産管理システムが適切に運用されているかを確認。仕様変更の際には、再評価、品質管理状態のチェックが行われる。
2つ目のメリットは、法令や技術基準改正等への対応サポート。経済産業省では毎年、市場から300機種程度の電気製品を買い上げ、技術基準への適合性の確認や立ち入り検査を実施する。Sマーク認証を取得していれば、これらのテストや検査での不適合を未然に防ぐことができる。
不適合となる原因のひとつが「サイレントチェンジ」。「輸入事業者でよく見受けられるケースで、認証時に問題は認められなかったのに、工場で同じスペックだから、また、コストダウンできるからと勝手に部品を交換することがあり、もっとも悩ましい問題のひとつ」と指摘する。前記の年1回行われる「定期工場調査」のフォローアップでは抜き取り調査が実施されている。法改正や技術基準解釈の改訂に伴う対応では、SCEAによるセミナー開催やSマーク認証機関からの認定取得者に向けた案内通知で必要な対応をサポートする。
3つ目は、製品事故等への対応サポート。Sマーク認証品に万が一事故が発生した場合は、原因究明、再発防止処置等を確認するととともに、状況に応じて追加試験や特別工場調査を行い、再発防止をサポートする。技術基準解釈でサポートできない事故に対しては、Sマーク追加基準を制定し、事故の防止に努めている。
そして4つ目が、こうして認証されるSマークを表示することによる安全性のアピール。「販売事業者にとっても、Sマークを確認することで、製造・輸入事業者が必要な義務を果たしていることを容易に確認することができる」とアピールした。
なお、Sマークの付いた製品の店頭普及率について、毎年約1万件の調査を実施している。2018年は71.1%。2011年から2014年にかけては77.6%から78.7%で推移しており、ここ数年、普及率が下がってきている。製品別では、普及率が高いのは電気洗濯機97.1%、TV受信機95.3%、電気冷蔵庫92.1%、電子レンジ91.3%、反対に低いのはフードプロセッサー37.4%、ルームエアコン42.8%、電気掃除機46.3%。「海外製品でなかなか認証をとらないところがるが、各認証機関の営業活動により増えてきており、今年は少し数値が上向くのではないか」と説明した。