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公開日 2022/05/19 12:57
ソニー「LinkBuds S」速攻レビュー、穴のない完全ワイヤレスイヤホンとどう違う?
初代LinkBudsとの差は?
ソニーが完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds S」を発表した。常時装着をテーマに、穴のあいたドライバーを採用した独自のデザインが話題となった「LinkBuds」シリーズの第二弾だ。
注目すべきは、最大の特徴ともいえる “穴あき” をやめ、穴を塞いでノイズキャンセリング機能と外音取り込み機能を搭載したこと。LinkBudsユーザーからの要望に応えるかたちでの仕様というが、その見た目は、普通の完全ワイヤレスイヤホンと同じように感じられる。
LinkBudsは物理的に穴があいていたからこそ、その穴から外音が自然に耳に入ってくることで快適な “ながら聴き” ができるモデルだったように思う。外音取り込み機能はマイクを使って外音を収音するが、なかなか機械音くささが否めないものだ。どこまで自然な “外音再生” ができるのだろうか?
ノイズキャンセリング機能の搭載にしても、流行として求められるのもわかるが、一方で普通の完全ワイヤレスイヤホンでいいのでは、という疑問が湧いてくる。実際のところどのような違いがあるのか、実機を触ってみたインプレッションをお伝えしたい。
■装着感
まず、長時間イヤホンを使うのに欠かせない装着感について。初代LinkBudsは独自の形状とあわせて、装着性も独特だ。耳に入れるというより、耳の穴にスッポリ収めるといった感覚で、その他の完全ワイヤレスイヤホンに比べて確かに負担が少なく思う。耳にイヤホンを装着している感覚が薄く、着けているのを忘れそうになる。一方で、ポロリと落ちそうな感覚もあるので、いいポジションに収められるまで、最初に装着にかける時間は慣れるまでは少しかかる。
LinkBuds Sだが、装着感は一般的な完全ワイヤレスイヤホンにかなり近い。形状がそうなので当たり前といえばそれまでだが、ここは初代LinkBudsから大きく変化した。だが、普通の完全ワイヤレスイヤホンとは違う点もある。カナル型のモデルを着けていると、イヤホンが耳をグッと押してくるような圧迫感がある。LinkBuds Sもカナル型だが、その感覚が薄い。
とにかく、質量的にも肌触り的にも軽いというのが一番の印象だ。質感はサラリとしていて、肌への密着感がなく、しかしフィットしている感触はある。完全ワイヤレスイヤホンは耳穴だけでなくその周りも使って本体を支えるのが普通だが、サイズが大きかったりゴツゴツとした質感のモデルではそれが負荷になって、少しの時間でも辛くなってしまう。LinkBuds Sではそうしたマイナス要素が解消されている。
また、落ちそうという不安感が解消されたのは大きい。初代LinkBudsのように着けているのを忘れさせてくれるのもありがたいが、ふとしたときに「あっ落ちそう」と思って触ってしまうと台無しだ。この程度の耳への負荷であれば、トレードオフとしてちょうど良いバランスだろう。もちろんイヤーピースのサイズ感や、個々人の耳のかたちなどでつけ心地は変わるだろうが、おおむね快適な装着感といえそうだ。
■外音取り込み
初代LinkBudsの外音取り込み性能は、既存の完全ワイヤレスイヤホンのなかでトップクラスといえる。耳を塞いでいないので当然だが、ダイレクトに外音が耳に入る。
とはいえ、耳穴の一部は塞がっているため、多少聞き取りにくさはある。それなりの音量で音楽を再生しながら、コンビニなどで買い物をできるかといえば、マナーの面もさることながら、会話がスムーズにできない可能性があるのでやめたほうがよさそうだ。
LinkBuds Sだが、初代LinkBudsに比べれば、さすがに機械的な増幅であることがわかる。しかし、その他の外音取り込み機能を搭載するモデルに対しては、抜きん出て自然な印象で、違和感なく外音が聞き取れる。モデルによっては「ガヤガヤ」とした外音は「ガガガガ」とノイジーになってしまい、ただ取り込むだけで肝心の内容がわからない、ということもあるが、LinkBuds Sではちゃんと内容が掴める。この差はかなり大きい。
またノイズキャンセリングと外音取り込みの切り替え時、ボイスガイダンスではなくシンプルなSEを採用し、切り替え速度が早いのもポイント。イヤホンをタップすれば切り替えられるモデルでも、電車のアナウンスが鳴っていると思ってからタップすると、外音取り込みをオンにすることを知らせるボイスガイダンスがアナウンスに被さって邪魔になることがある。とっさに使うこともある機能だからこそ、わずかな気配りがありがたい。
■音楽再生能力
穴を塞いだのは、ノイズキャンセリング機能と、それに伴う没入感を得るため、というのが大きい。フラグシップ完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」でも採用された統合プロセッサーV1を搭載するLinkBuds Sでは、「WF-1000XM3」同等のノイズキャンセリング性能を叶えた。また新開発の5mmドライバーユニットの搭載、LDACコーデックへの対応など、音質面での強化が進化ポイントだ。
初代LinkBudsが耳元の超小型スピーカーから音が鳴っているのを聴いているようなサウンドだったのに対して、はっきりと完全ワイヤレスイヤホンらしい鳴り方だ。クリアでフラットだが、モニター的ではなく中高域に厚みがあり、ボーカルが美しく響く。低音は強調せず、しかし情報量を削がれてもいない。それぞれが前に出すぎず、バランスよく整えられている印象を受けた。
Aimer「残響散歌」やNiziU「Chopstick」のように音数が多い楽曲も、渾然一体とした音の塊としてではなく、それぞれの音をしっかりほぐしたうえで、音楽としての調和を保ちバラバラにならずに聴かせてくれる。“ながら聴き” という使い方とは別に、単純に完全ワイヤレスイヤホンとしての音楽再生能力が高い。
ノイズキャンセリング性能も優秀だ。ノイズキャンセリングを使うと特有の圧迫感があるものだが、それがかなり抑えられている。またある程度騒がしい環境であっても、小音量での音楽再生でディテールを掴むことができるのは、初代LinkBudsではどうしてもできなかったところ。音楽への没入を可能としたのは進化といえるだろう。
◇
ソニーはLinkBuds Sについて、「多くの人は完全ワイヤレスイヤホンを1台だけ所有するため、その1台で様々なシーンに対応できるように」と開発意図を説明している。穴を塞いだことで、こと外音取り込みに関しては初代Linkbudsより性能が劣ることを承知したうえでだ。
その結果、LinkBuds Sは同社がラインナップするこれまでの完全ワイヤレスイヤホンとの差別化が難しくなる、という課題を抱えたが、NIANTICやSpotifyとの協業などのアプローチも含めて、イヤホンによる新しいエンターテインメント体験の提供を付加価値に据えることでシリーズを確立していく狙いだろう。
実際、装着者の行動に応じてノイズキャンセリングや外音取り込み、Spotifyでの自動音楽再生・停止といった機能は、イヤホンを着けたままでの生活というものをかなり現実的にしてくれる。ベースとしてクオリティの高い完全ワイヤレスイヤホンを開発できるからこそ、プラスαがおまけではなく魅力的なオプションになるわけなので、LinkBudsシリーズとして、迷走しているのではなく、目的となる方向に進んでいることが理解できた。
同社のモデルでより高音質を求めるのであればWF-1000XM4などの選択肢がある。“ながら聴き” がメインであれば初代LinkBudsでいいだろう。であれば、LinkBuds Sはオールマイティな対応力が魅力のモデル、といった位置づけとして注目したい。
注目すべきは、最大の特徴ともいえる “穴あき” をやめ、穴を塞いでノイズキャンセリング機能と外音取り込み機能を搭載したこと。LinkBudsユーザーからの要望に応えるかたちでの仕様というが、その見た目は、普通の完全ワイヤレスイヤホンと同じように感じられる。
LinkBudsは物理的に穴があいていたからこそ、その穴から外音が自然に耳に入ってくることで快適な “ながら聴き” ができるモデルだったように思う。外音取り込み機能はマイクを使って外音を収音するが、なかなか機械音くささが否めないものだ。どこまで自然な “外音再生” ができるのだろうか?
ノイズキャンセリング機能の搭載にしても、流行として求められるのもわかるが、一方で普通の完全ワイヤレスイヤホンでいいのでは、という疑問が湧いてくる。実際のところどのような違いがあるのか、実機を触ってみたインプレッションをお伝えしたい。
■装着感
まず、長時間イヤホンを使うのに欠かせない装着感について。初代LinkBudsは独自の形状とあわせて、装着性も独特だ。耳に入れるというより、耳の穴にスッポリ収めるといった感覚で、その他の完全ワイヤレスイヤホンに比べて確かに負担が少なく思う。耳にイヤホンを装着している感覚が薄く、着けているのを忘れそうになる。一方で、ポロリと落ちそうな感覚もあるので、いいポジションに収められるまで、最初に装着にかける時間は慣れるまでは少しかかる。
LinkBuds Sだが、装着感は一般的な完全ワイヤレスイヤホンにかなり近い。形状がそうなので当たり前といえばそれまでだが、ここは初代LinkBudsから大きく変化した。だが、普通の完全ワイヤレスイヤホンとは違う点もある。カナル型のモデルを着けていると、イヤホンが耳をグッと押してくるような圧迫感がある。LinkBuds Sもカナル型だが、その感覚が薄い。
とにかく、質量的にも肌触り的にも軽いというのが一番の印象だ。質感はサラリとしていて、肌への密着感がなく、しかしフィットしている感触はある。完全ワイヤレスイヤホンは耳穴だけでなくその周りも使って本体を支えるのが普通だが、サイズが大きかったりゴツゴツとした質感のモデルではそれが負荷になって、少しの時間でも辛くなってしまう。LinkBuds Sではそうしたマイナス要素が解消されている。
また、落ちそうという不安感が解消されたのは大きい。初代LinkBudsのように着けているのを忘れさせてくれるのもありがたいが、ふとしたときに「あっ落ちそう」と思って触ってしまうと台無しだ。この程度の耳への負荷であれば、トレードオフとしてちょうど良いバランスだろう。もちろんイヤーピースのサイズ感や、個々人の耳のかたちなどでつけ心地は変わるだろうが、おおむね快適な装着感といえそうだ。
■外音取り込み
初代LinkBudsの外音取り込み性能は、既存の完全ワイヤレスイヤホンのなかでトップクラスといえる。耳を塞いでいないので当然だが、ダイレクトに外音が耳に入る。
とはいえ、耳穴の一部は塞がっているため、多少聞き取りにくさはある。それなりの音量で音楽を再生しながら、コンビニなどで買い物をできるかといえば、マナーの面もさることながら、会話がスムーズにできない可能性があるのでやめたほうがよさそうだ。
LinkBuds Sだが、初代LinkBudsに比べれば、さすがに機械的な増幅であることがわかる。しかし、その他の外音取り込み機能を搭載するモデルに対しては、抜きん出て自然な印象で、違和感なく外音が聞き取れる。モデルによっては「ガヤガヤ」とした外音は「ガガガガ」とノイジーになってしまい、ただ取り込むだけで肝心の内容がわからない、ということもあるが、LinkBuds Sではちゃんと内容が掴める。この差はかなり大きい。
またノイズキャンセリングと外音取り込みの切り替え時、ボイスガイダンスではなくシンプルなSEを採用し、切り替え速度が早いのもポイント。イヤホンをタップすれば切り替えられるモデルでも、電車のアナウンスが鳴っていると思ってからタップすると、外音取り込みをオンにすることを知らせるボイスガイダンスがアナウンスに被さって邪魔になることがある。とっさに使うこともある機能だからこそ、わずかな気配りがありがたい。
■音楽再生能力
穴を塞いだのは、ノイズキャンセリング機能と、それに伴う没入感を得るため、というのが大きい。フラグシップ完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」でも採用された統合プロセッサーV1を搭載するLinkBuds Sでは、「WF-1000XM3」同等のノイズキャンセリング性能を叶えた。また新開発の5mmドライバーユニットの搭載、LDACコーデックへの対応など、音質面での強化が進化ポイントだ。
初代LinkBudsが耳元の超小型スピーカーから音が鳴っているのを聴いているようなサウンドだったのに対して、はっきりと完全ワイヤレスイヤホンらしい鳴り方だ。クリアでフラットだが、モニター的ではなく中高域に厚みがあり、ボーカルが美しく響く。低音は強調せず、しかし情報量を削がれてもいない。それぞれが前に出すぎず、バランスよく整えられている印象を受けた。
Aimer「残響散歌」やNiziU「Chopstick」のように音数が多い楽曲も、渾然一体とした音の塊としてではなく、それぞれの音をしっかりほぐしたうえで、音楽としての調和を保ちバラバラにならずに聴かせてくれる。“ながら聴き” という使い方とは別に、単純に完全ワイヤレスイヤホンとしての音楽再生能力が高い。
ノイズキャンセリング性能も優秀だ。ノイズキャンセリングを使うと特有の圧迫感があるものだが、それがかなり抑えられている。またある程度騒がしい環境であっても、小音量での音楽再生でディテールを掴むことができるのは、初代LinkBudsではどうしてもできなかったところ。音楽への没入を可能としたのは進化といえるだろう。
ソニーはLinkBuds Sについて、「多くの人は完全ワイヤレスイヤホンを1台だけ所有するため、その1台で様々なシーンに対応できるように」と開発意図を説明している。穴を塞いだことで、こと外音取り込みに関しては初代Linkbudsより性能が劣ることを承知したうえでだ。
その結果、LinkBuds Sは同社がラインナップするこれまでの完全ワイヤレスイヤホンとの差別化が難しくなる、という課題を抱えたが、NIANTICやSpotifyとの協業などのアプローチも含めて、イヤホンによる新しいエンターテインメント体験の提供を付加価値に据えることでシリーズを確立していく狙いだろう。
実際、装着者の行動に応じてノイズキャンセリングや外音取り込み、Spotifyでの自動音楽再生・停止といった機能は、イヤホンを着けたままでの生活というものをかなり現実的にしてくれる。ベースとしてクオリティの高い完全ワイヤレスイヤホンを開発できるからこそ、プラスαがおまけではなく魅力的なオプションになるわけなので、LinkBudsシリーズとして、迷走しているのではなく、目的となる方向に進んでいることが理解できた。
同社のモデルでより高音質を求めるのであればWF-1000XM4などの選択肢がある。“ながら聴き” がメインであれば初代LinkBudsでいいだろう。であれば、LinkBuds Sはオールマイティな対応力が魅力のモデル、といった位置づけとして注目したい。