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公開日 2024/02/27 09:00

マランツ、一体型AVアンプ最上位機「CINEMA 30」。11.4ch対応、HiFiアンプのアプローチで設計

AV10/AMP10の技術をワンボディに凝縮
ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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マランツは、一体型AVアンプのトップモデルとなる11.4ch対応の「CINEMA 30」を3月15日に発売する。価格は770,000円(税込)でカラーはブラックのみ。セパレート型のフラグシップモデル「AV10」「AMP10」で培われた回路設計技術を引き継ぎ、一体型として再設計されている。

マランツ AVアンプ「CINEMA 30」

外観デザインは、MODEL 40nやCINEMA 40等にて採用される新世代のマランツデザイン踏襲。製造も上位モデルと同様、福島県の「白河オーディオワークス」において生産されているという。

マランツの最新デザインが踏襲されている

ひとつ下のクラスの「CINEMA 40」との違いとしては、アンプのチャンネル数の他、上位モデルの技術を投入したデジタル基板、新規開発のトランジスタや専用の大容量電源部、シャーシの剛性感を高めているなど、特に音質的面に配慮された設計が大きな特徴。「AV10」「AMP10」のスケールに迫る音質設計をワンボディで追求したという。

マランツのサウンドマスターである尾形氏は同社のAVアンプの設計思想について、「基本的なアプローチはHiFiと変わりません」と断言。CDなどの音楽ソースをHiFiアンプと同様に鳴らせることが土台となり、そこにデジタル入力やHDMI、ネットワーク入力などに対応し多チャンネル化を実現することにこそ、マランツの設計フィロソフィーがあるのだという。

マランツのサウンドマスター尾形好宣氏

本体内部には、フロント側中央に超大型の電源トランスを配置。その左右にヒートシンクに取り付けられたパワーアップブロックが配置されている。手前側(リア側)はHDMIやネットワークなどを処理するデジタル基板とマランツ独自のプリアンプHDAM-SA2を配置。信号経路の最短化と、ノイズ源と信号処理部を分離するといった配慮がなされていることが見てとれる。

CINEMA 30の内部構造。中央に大型トランス、左右にパワーアンプ基板を配置。手前側にデジタル処理部、HEOSモジュールなどが配置されている

パワーアンプ部は、デジタル処理からプリ部までに「AV10」にて培われた技術をそれぞれ投入。後段担当の渡邊敬太氏と前段担当の飯原弘樹氏が、それぞれの役割からCIMENA 30の開発のこだわりについて語ってくれた。

グロ−バルプロダクトディベロップメント プロダクトエンジニアリング シニアエンジニアの渡邊敬太氏

搭載される11ch分のパワーアンプは、すべて独立基板型のディスクリートで構成。実用最大出力で250Wを実現する。AVアンプは多機能をワンボディに投入するためにヒートコントロールが重要なファクターとなるが、パーツ類の選定と配置を徹底して検討することで、熱の低減とともに振動対策も施されている。

独立基板で構成されたパワーアンプブロック

高品位パーツも厳選して搭載

パワーアンプブロックはトランスから分離することでハムノイズを低減。さらにL/Rを分離することで、信号のクロストークも低減している。

トランジスタはメーカーと共同開発したカスタム製品で、リードフレームやはんだ、メッキにもこだわって新規開発。サイズの大きいリードフレームとパッケージを採用したことで、放熱性の向上と大電流時の動作の安定性が向上したという。フィルムコンデンサーや電解コンデンサーなどもオーディオグレードのパーツが選定されている。またヒートシンクとトランジスタの間に新たに銅板を追加。トランジスタの配列も千鳥配列にすることで、他チャンネルとの干渉も低減している。

新規開発のパワートランジスタ

熱効率を最大化するためにヒートシンクとパワーアンプの間に銅板も配置

AVアンプのもうひとつの課題は、デジタル要素とアナログ要素が混在することにあり、デジタルノイズをいかに低減させるかは大きなテーマとなる。今回のCINEMA 30においては、「AV10」同様にESSの電流出力型DAコンバーターを採用。DAC直近にジッター除去回路を配置することで、ノイズ対策を徹底したとのこと。またDSPやHDMI Rx/Txといった消費電流の変動の激しいデバイスは直近にレギュレーターを配置するといった工夫がなされている。

電流出力型のDACを搭載したDACボード

プリアンプ部には、マランツ得意の電流帰還型「HDAM-SA2」を搭載。カスタムの電解コンデンサーと小型のコンプリメンタリー低ノイズトランジスターを採用し、内部配線も最短化。アナログ伝送回路のインピーダンスを低く抑え、純度の高い信号伝送をおこなっている。

マランツ独自のプリアンプ技術「HDAM-SA2」を搭載

飯原氏によると、DACから電子ボリューム、パワーアンプまでを最短経路で結線するために、「立体的なパズルを組み立てるように」構築していったのだという。基板配置は最大で5階建てとなっており、HiFiとは違ったさまざまな機能をいかにひとつの筐体に収めるかということに設計の難しさがあったと語る。

グロ−バルプロダクトディベロップメント プロダクトエンジニアリング シニアエンジニアの飯原弘樹氏

電源部についても、大型で重量級のトロイダルコアトランスを採用、珪砂などを充填したケースに収め振動対策を施している。またブロックコンデンサーも本機専用モデルの22,000μF製品を採用、その他のキーパーツもリスニングテストによって選び抜かれた部品を採用している。

新規開発の大容量コンデンサ

キャビネットも強化されており、銅メッキのメインシャーシに加え、2層のベースプレートを追加した複合構造を採用。特にトロイダルトランス部は3層となっており、電気回路に与える振動の悪影響を抑えこんでいる。また放熱対策として各所に穴が開けられている他、ビスにも音質に配慮した銅メッキビスが選定されている。

高品位なリモコンも同梱される

フロントパネルを開いたところ

発表会では、まずステレオ再生において「CINEMA 40」との聴き比べを実施。Bowers&Wilkinsの現在のフラグシップモデル「801 D4」がメインスピーカーとして選定し、アンプとしての素性をチェック。ヴァイオリニストの佐藤俊介の「ヴィヴァルディ:四季」では、空間再現性から質感表現までCINEMA 30の表現力は圧倒的。雑味まで含めてその楽器の「生」の音をすべて捉えようという録音、そのありのままの姿が提示され、生命の奔流のようなヴァイオリンのエネルギーに翻弄される。

「801 D4」をメインステレオに据えたシステムで聴き比べ

映画ではフルBowers&Wilkinsでサラウンドシステムを構築し音質をチェック。「ウエスト・サイド・ストーリー」(スティーヴン・スピルバーグ監督)ではジャズバンドを華やかさを描き出し、エルトン・ジョンの自伝映画「ロケットマン」では、トルバドゥールという小さなライヴハウスでの演奏の熱気、観客興奮の高まりを見事に伝えてくれる。

CINEMA 30はDolby Atmos、DTS:X Pro、IMAX Enhanced、Auro-3D、MPEG-H(360 Reality Audio)、MPEG-4 AACに対応。またプロセッサーとしては13.4chまでに対応する。HEOSモジュールも搭載しており、Amazon Music HD等のストリーミングサービスとネットワーク再生、Wi-Fi、AirPlay2、Bluetooth、Alexa操作等にも対応する。またMM対応のフォノ入力も搭載する。

CINEMA 30の背面端子

映像面では、HDMIは入力7系統、出力2系統を装備し、4K/120Hzの映像信号のパススルーに対応。HDR10+、ドルビービジョン、Dynamic HDRにも対応。またeARC、HDMI CEC機能も搭載する。またゲーム&VR体験を向上させる低遅延技術ALLM、VRR、QFTにも対応。

サイズは442×189H×457Dmm(アンテナを寝かせた場合)、質量は19.4kg。

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