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ガジェット 公開日 2023/12/28 11:03
2023年に急低下したNTTドコモの通信品質、「コミケ」対策に見るその改善具合
【連載】佐野正弘のITインサイト 第89回
2023年、携帯電話業界における大きな出来事の1つとなったのが、NTTドコモの著しい通信品質低下である。2023年春頃から大都市圏を中心に、NTTドコモの通信速度が遅い、あるいはつながらないといった声が急増し、同社のネットワークに対する不満が一気に高まっていった。
事態を重く見たNTTドコモは、緊急的な対策として、とりわけ品質低下が著しい東京都心の4エリアに向けた通信品質改善策を2023年夏までに実施。さらに将来を見据えた通信品質対策として、2023年末までに300億円を先行投資し、全国規模での対策も推し進めるに至っている。
ただ同社の通信品質低下の問題は、日常的な利用だけでなく、大規模イベントでも顕著に起きていたようだ。実際、ソフトバンクが9月19日に実施した、モバイルネットワーク品質のあり方に関する説明会で提示していた資料を見ると、同社がいわゆる「三大夏フェス」におけるX(旧Twitter)での通信品質に関するネガティブな投稿を分析した結果、ある会社が突出して多いとされていた。同社は具体的な企業名を明らかにしていないものの、資料で示されたカラーなどを考慮するに、それがNTTドコモを指しているとの声が当時多く挙がっていた。
それだけにNTTドコモとしても、日常的に利用するネットワークだけでなく、大規模イベントに向けたネットワークの通信品質対策の強化を図っている。そして今回、12月30日から東京ビッグサイトで実施される同人誌即売会イベント「コミックマーケット103」に向けた、NTTドコモの通信品質対策を取材することができたので、その様子を紹介しよう。
「コミケ」として知られるコミックマーケットは、早朝から会場に行列ができるなど、非常に多くの人が集まるイベントの1つとして知られている。実際、コロナ禍による規制が大幅に緩和された2023年夏に実施された「コミックマーケット102」では、2日間の参加者総数が26万人と、再び多くの人が来場している。それだけに、冬のコミックマーケット103でも非常に多くの来場者が見込まれている。
それゆえ携帯各社も、コミックマーケット開催時は移動基地局車を多く設置するなどして、通常より一層力を入れて通信品質対策を実施している。だがNTTドコモは、コミックマーケット102においても通信品質の問題が多く指摘され、利用者の不満が高まっていたようだ。
そうしたことから今回、NTTドコモではコミックマーケット103に向けた通信品質を強化するとしている。とりわけ重点が置かれているのが、コミケ会場に入るまで多くの人が長時間並んでいる、待機列エリアでスマートフォンを利用している人に向けた通信品質の向上だ。
東京ビッグサイトの東棟側の待機列を例に挙げると、対策の1つとしてコミックマーケット102の時は3台だった移動基地局車を、4台に増やしているとのこと。こちらの移動基地局車は4Gだけでなく5G、しかもミリ波にも対応するほか、Wi-Fiの電波も射出することでトラフィック対策を進めているという。
それに加えて、屋外にも常設の5G基地局を増設しているとのことだが、5Gの基地局は他の待機列や会場内の通信品質向上のため、常設・仮設さまざまな形で設置が進められているようだ。大容量通信が可能な5Gに対応する基地局を増やすことで、5Gスマートフォン利用者の通信トラフィックをそちらで吸収し、混雑しやすい4Gに流れるトラフィックを抑えて混雑を減らそうとしている様子がうかがえる。
その一方で、会場の西方向や北方向にある基地局から射出されている電波は、臨時に設置した移動基地局車などとの干渉を抑えるため調整をしているとのこと。他のエリアでも基地局の電波を射出する方向を変えることで、トラフィックの集中するエリアの対策をしたり、臨時基地局との電波干渉を避けたりする取り組みが進められるようだ。
これら一連の対策を見るに、同社の通信品質対策に特別な技術などは使われておらず、かなりベーシックな対応が取られているようだ。それだけに、通信品質を維持する上で同社に不足していたのは、やはり5G対応基地局の設置であることが見えてくる。実際、NTTドコモのネットワーク本部 無線アクセスデザイン部 エリア品質部門 エリア品質企画担当 課長の福重勝氏は、一連の通信品質対策において最も有効なのはやはり5Gだと答えていた。
それゆえ、5Gの基地局の整備やイベントに応じた仮設基地局の増設などがうまく進めば、今後大規模イベントでの通信品質も改善していくことが予想される。ただ、今後さらに通信トラフィックが増えることを考えると、それだけでも足りない部分が出てくるだろう。
そこで競合他社は、新しい技術の導入による通信品質対策強化も推し進めているようだ。実際KDDIも、コミックマーケット103で5Gに対応した移動基地局車を投入するとしているが、そこに大容量通信に有効とされるアンテナ技術「Massive MIMO」などを取り入れて、通信品質対策を強化していることをアピールしていた。
一方のNTTドコモはどうなのか。移動基地局車へのMassive MIMOの導入について福重氏に聞いたところ、現在既存の基地局への導入を順々に進めている最中で、イベントでの利用はまだ予定していないとのこと。ただ、「いつ頃とは言えないが、夏以降には備える形で準備していきたい」とも話している。
こうした点からもやはり、NTTドコモの通信対対策にはまだ他社に及んでいない部分もあると感じてしまう。だが、一連の品質低下で同社の危機感が相当高まっており、急ピッチで対策強化を図っていることも間違いないようだ。2024年こそは通信品質が大幅に改善し、信頼を取り戻すことに期待したい。
■通信品質の対策強化を図るNTTドコモ
事態を重く見たNTTドコモは、緊急的な対策として、とりわけ品質低下が著しい東京都心の4エリアに向けた通信品質改善策を2023年夏までに実施。さらに将来を見据えた通信品質対策として、2023年末までに300億円を先行投資し、全国規模での対策も推し進めるに至っている。
ただ同社の通信品質低下の問題は、日常的な利用だけでなく、大規模イベントでも顕著に起きていたようだ。実際、ソフトバンクが9月19日に実施した、モバイルネットワーク品質のあり方に関する説明会で提示していた資料を見ると、同社がいわゆる「三大夏フェス」におけるX(旧Twitter)での通信品質に関するネガティブな投稿を分析した結果、ある会社が突出して多いとされていた。同社は具体的な企業名を明らかにしていないものの、資料で示されたカラーなどを考慮するに、それがNTTドコモを指しているとの声が当時多く挙がっていた。
それだけにNTTドコモとしても、日常的に利用するネットワークだけでなく、大規模イベントに向けたネットワークの通信品質対策の強化を図っている。そして今回、12月30日から東京ビッグサイトで実施される同人誌即売会イベント「コミックマーケット103」に向けた、NTTドコモの通信品質対策を取材することができたので、その様子を紹介しよう。
「コミケ」として知られるコミックマーケットは、早朝から会場に行列ができるなど、非常に多くの人が集まるイベントの1つとして知られている。実際、コロナ禍による規制が大幅に緩和された2023年夏に実施された「コミックマーケット102」では、2日間の参加者総数が26万人と、再び多くの人が来場している。それだけに、冬のコミックマーケット103でも非常に多くの来場者が見込まれている。
それゆえ携帯各社も、コミックマーケット開催時は移動基地局車を多く設置するなどして、通常より一層力を入れて通信品質対策を実施している。だがNTTドコモは、コミックマーケット102においても通信品質の問題が多く指摘され、利用者の不満が高まっていたようだ。
そうしたことから今回、NTTドコモではコミックマーケット103に向けた通信品質を強化するとしている。とりわけ重点が置かれているのが、コミケ会場に入るまで多くの人が長時間並んでいる、待機列エリアでスマートフォンを利用している人に向けた通信品質の向上だ。
東京ビッグサイトの東棟側の待機列を例に挙げると、対策の1つとしてコミックマーケット102の時は3台だった移動基地局車を、4台に増やしているとのこと。こちらの移動基地局車は4Gだけでなく5G、しかもミリ波にも対応するほか、Wi-Fiの電波も射出することでトラフィック対策を進めているという。
それに加えて、屋外にも常設の5G基地局を増設しているとのことだが、5Gの基地局は他の待機列や会場内の通信品質向上のため、常設・仮設さまざまな形で設置が進められているようだ。大容量通信が可能な5Gに対応する基地局を増やすことで、5Gスマートフォン利用者の通信トラフィックをそちらで吸収し、混雑しやすい4Gに流れるトラフィックを抑えて混雑を減らそうとしている様子がうかがえる。
その一方で、会場の西方向や北方向にある基地局から射出されている電波は、臨時に設置した移動基地局車などとの干渉を抑えるため調整をしているとのこと。他のエリアでも基地局の電波を射出する方向を変えることで、トラフィックの集中するエリアの対策をしたり、臨時基地局との電波干渉を避けたりする取り組みが進められるようだ。
■通信品質対策の鍵を握る5G対応
これら一連の対策を見るに、同社の通信品質対策に特別な技術などは使われておらず、かなりベーシックな対応が取られているようだ。それだけに、通信品質を維持する上で同社に不足していたのは、やはり5G対応基地局の設置であることが見えてくる。実際、NTTドコモのネットワーク本部 無線アクセスデザイン部 エリア品質部門 エリア品質企画担当 課長の福重勝氏は、一連の通信品質対策において最も有効なのはやはり5Gだと答えていた。
それゆえ、5Gの基地局の整備やイベントに応じた仮設基地局の増設などがうまく進めば、今後大規模イベントでの通信品質も改善していくことが予想される。ただ、今後さらに通信トラフィックが増えることを考えると、それだけでも足りない部分が出てくるだろう。
そこで競合他社は、新しい技術の導入による通信品質対策強化も推し進めているようだ。実際KDDIも、コミックマーケット103で5Gに対応した移動基地局車を投入するとしているが、そこに大容量通信に有効とされるアンテナ技術「Massive MIMO」などを取り入れて、通信品質対策を強化していることをアピールしていた。
一方のNTTドコモはどうなのか。移動基地局車へのMassive MIMOの導入について福重氏に聞いたところ、現在既存の基地局への導入を順々に進めている最中で、イベントでの利用はまだ予定していないとのこと。ただ、「いつ頃とは言えないが、夏以降には備える形で準備していきたい」とも話している。
こうした点からもやはり、NTTドコモの通信対対策にはまだ他社に及んでいない部分もあると感じてしまう。だが、一連の品質低下で同社の危機感が相当高まっており、急ピッチで対策強化を図っていることも間違いないようだ。2024年こそは通信品質が大幅に改善し、信頼を取り戻すことに期待したい。