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携帯料金引き下げに熱心だった菅義偉氏の政権下にあった2021年、そして記録的な円安の影響を強く受けた2023年に、それぞれ大きな動きのあった携帯電話料金。それだけに2024年は携帯電話料金に関する変化は少ないのだが、それでも携帯4社の動向を見ると、目立たないながらも携帯電話料金には何らかの手が加えられているようだ。
中でも大きな動きを見せているのがNTTドコモであり、2024年4月から「ドコモポイ活プラン」を開始している。こちらは競合が2023年より提供している、金融・決済サービスと連携してポイント付与率を高める新しい料金プランに追従する動きといえ、携帯電話の顧客基盤を活用して自社系列のサービスに囲い込む、経済圏ビジネスでの出遅れをキャッチアップが強いものと言える。
その第1弾として提供開始したのが「ahamoポイ活」であり、ポイント還元率を高めるには月額2,980円の「大盛りオプション」に月額2,200円の「ポイ活オプション」を追加する必要があることから、オプション料金の高さに還元率が見合わないとの声もあった。ただ、5月10日に実施された日本電信電話(NTT)の決算説明会で、当時NTTドコモの代表取締役社長であった井伊基之氏は、「少なくともahamo(ポイ活)は非常に好調」と話しており、意外と人気を獲得している様子だ。
同様に、金融・決済サービスと連携した料金プランで先行するKDDIやソフトバンクも、それらプランの加入状況は好調だとしている。それら料金プランはいずれも、携帯電話会社系列の金融・決済サービスを利用しなければ逆に損をしてしまう可能性のあるだけに、それらプランの好調ぶりは消費者はお得さのためなら、特定の会社のサービスや契約に縛られることに対して抵抗がない傾向を示したともいえそうだ。
もう1つ、そうした消費者の傾向を示しているのが楽天モバイルである。楽天モバイルはこれまで「シンプルな1プラン」を打ち出し、サービス開始当初の「Rakuten UN-LIMIT」から現在の「Rakuten最強プラン」に至るまで、スマートフォン向けの料金プランは1つのプランであることを継続してきている。
だが2024年は、「シンプル」という部分が大きく崩れる出来事が相次いで起きている。それは同社が従来シンプルであることに強くこだわり、導入を避けてきた割引施策を相次いで導入しているからだ。
実際2月には、複数の家族で契約することで月額100円を割り引く「最強家族プログラム」の提供を開始したほか、翌月の3月には22歳以下のユーザーに対して月当たり110ポイントを付与する「最強青春プログラム」を、5月には12歳以下のユーザーに対して月当たり440ポイントを還元する「最強こどもプログラム」を提供。かなり短期間のうちに、料金が複雑になりかねない割引施策を相次いで導入していることが分かるだろう。
だがそれらの割引を導入して以降、楽天モバイルの契約は大きく伸びているようで、2023年12月28日に600万契約を達成してから約4ヵ月後の2024年4月3日に650万契約を突破。さらに6月16日には700万契約を突破しており、半年のうちに契約数を100万増やしている。もちろんそこには法人契約の伸びも影響しているだろうが、時期的に見ても一連の割引施策が大きな効果を上げている様子を見て取ることができる。
楽天モバイルの代表取締役会長である三木谷浩史氏も、最強家族導入プログラムの導入に当たっては、ユーザーから家族割引を求める声が多かったことを理由に挙げていた。そうした楽天モバイルの様子からも、多くの消費者は特定のサービスに縛られることで安くなることを求めていることが理解できるだろう。
そこで改めて問われるのは、消費者はシンプルで分かりやすい料金を求めているとして、法律を変えてまで業界の商習慣を根底から覆し、その実現に力を費やしてきた総務省の姿勢が本当に正しかったのか?ということではないだろうか。シンプルさを重視してきたahamoや楽天モバイルの料金プランが複雑になることで支持を高めていることを、総務省はどう受け止めているのかが非常に気になるところである。
そしてもう1つ、楽天モバイルの好調を受けて気になる動きを見せているのがソフトバンクだ。同社はオンライン専用ブランド「LINEMO」の料金プランを2024年7月下旬以降にリニューアルし、新たに「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を導入することを打ち出している。
その内容はいずれも、月当たりの通信量に応じて料金が変わる、Rakuten最強プランと同じ段階制を採用。「ベスト」という名称もRakuten最強プランを意識しているのでは?という声も挙がっている。もちろん、同社としても楽天モバイルを全く意識していないわけではない様子だが、新プランの狙いはどちらかといえばソフトバンクの中でポジションが曖昧になっている、LINEMOの位置付けを明確にするためといえる。
LINEMOは、ソフトバンクのサブブランド「ワイモバイル」と重複する部分が多いため、契約数が思うように伸びていない。それゆえ新プランの提供により、家族やブロードバンド契約による割引のあるワイモバイルは家族向け、そうした割引がなくても安く使えるLINEMOは単身者向けと、違いをはっきりさせてそれぞれが得意とする契約の獲得に重点を入れる狙いがあるといえそうだ。
しかもソフトバンクは6月19日より、ソフトバンクの全ての料金プランを対象として、AI技術を活用した検索エンジン「Perplexity」の有料プラン「Perplexity Pro」を1年間無料で利用できる施策を開始。月額990円から利用できるLINEMOベストプランは、Perplexity Proの月額料金(2,950円)より安いとして注目を集めている。そうしたサービスとの相乗効果で契約数を伸ばすことができるかも、今後注目されるところであろう。
一方で、比較的安定的な状況にあるのがKDDIだ。同社は「au」ブランドで「auマネ活プラン」を、「UQ mobile」ブランドでahamoなどに対抗する「コミコミプラン」を2023年に導入しており、それらが一定の成果を出していることもあって、2024年の新料金プランはスマートフォン初心者に向けたauの「スマホスタートプランベーシック」くらいである。
だがここ最近動きが非常に激しいのが、オンライン専用の「povo 2.0」である。実際povo 2.0は3月に、本人確認不要でeSIMに登録してすぐ利用できる「povo 2.0データ専用」の提供を開始。データ通信の利用拡大を図っている一方で、5月には留守番電話サービスのトッピングを提供するなど、電話サービスとしての充実も推し進められている。
その一方で、2024年6月末をもって「#ギガ活」のau PAY支払いによる特典提供を終了することが明らかにされ、一部のユーザーに大きな衝撃を与えたようだ。なぜならこの特典を利用すれば、対象の店舗で「au PAY」による支払いをすることで無料で通信量を得ることができ、買い物にお金を支払う必要はあるが通信料0円での運用が可能だったからだ。
それだけに今回の特典終了は、povo 2.0が認知を高め利用者を増やすフェーズから、ビジネスを成立させ収益化するフェーズへと明確に移ったことを示したともいえる。実際povo 2.0では、先の特典を終了させる一方で、コンビニエンスストアやファーストフードなどの商品と通信量がセットでお得に購入できる「+αトッピング」の販売に力を入れており、特典のお得さは維持しながらも、明確にお金を取る姿勢に転換した様子がうかがえる。
各社の施策を見るとまさに “4者4様” という様子ではあるが、2024年も各社ともに料金に関する施策を積極的に実施していることが分かる。2024年も後半に入っているだけに、今後さらなる動きが起きる可能性も十分考えられるのではないだろうか。
■2024年前半における携帯4社の動向を考察
中でも大きな動きを見せているのがNTTドコモであり、2024年4月から「ドコモポイ活プラン」を開始している。こちらは競合が2023年より提供している、金融・決済サービスと連携してポイント付与率を高める新しい料金プランに追従する動きといえ、携帯電話の顧客基盤を活用して自社系列のサービスに囲い込む、経済圏ビジネスでの出遅れをキャッチアップが強いものと言える。
その第1弾として提供開始したのが「ahamoポイ活」であり、ポイント還元率を高めるには月額2,980円の「大盛りオプション」に月額2,200円の「ポイ活オプション」を追加する必要があることから、オプション料金の高さに還元率が見合わないとの声もあった。ただ、5月10日に実施された日本電信電話(NTT)の決算説明会で、当時NTTドコモの代表取締役社長であった井伊基之氏は、「少なくともahamo(ポイ活)は非常に好調」と話しており、意外と人気を獲得している様子だ。
同様に、金融・決済サービスと連携した料金プランで先行するKDDIやソフトバンクも、それらプランの加入状況は好調だとしている。それら料金プランはいずれも、携帯電話会社系列の金融・決済サービスを利用しなければ逆に損をしてしまう可能性のあるだけに、それらプランの好調ぶりは消費者はお得さのためなら、特定の会社のサービスや契約に縛られることに対して抵抗がない傾向を示したともいえそうだ。
もう1つ、そうした消費者の傾向を示しているのが楽天モバイルである。楽天モバイルはこれまで「シンプルな1プラン」を打ち出し、サービス開始当初の「Rakuten UN-LIMIT」から現在の「Rakuten最強プラン」に至るまで、スマートフォン向けの料金プランは1つのプランであることを継続してきている。
だが2024年は、「シンプル」という部分が大きく崩れる出来事が相次いで起きている。それは同社が従来シンプルであることに強くこだわり、導入を避けてきた割引施策を相次いで導入しているからだ。
実際2月には、複数の家族で契約することで月額100円を割り引く「最強家族プログラム」の提供を開始したほか、翌月の3月には22歳以下のユーザーに対して月当たり110ポイントを付与する「最強青春プログラム」を、5月には12歳以下のユーザーに対して月当たり440ポイントを還元する「最強こどもプログラム」を提供。かなり短期間のうちに、料金が複雑になりかねない割引施策を相次いで導入していることが分かるだろう。
だがそれらの割引を導入して以降、楽天モバイルの契約は大きく伸びているようで、2023年12月28日に600万契約を達成してから約4ヵ月後の2024年4月3日に650万契約を突破。さらに6月16日には700万契約を突破しており、半年のうちに契約数を100万増やしている。もちろんそこには法人契約の伸びも影響しているだろうが、時期的に見ても一連の割引施策が大きな効果を上げている様子を見て取ることができる。
楽天モバイルの代表取締役会長である三木谷浩史氏も、最強家族導入プログラムの導入に当たっては、ユーザーから家族割引を求める声が多かったことを理由に挙げていた。そうした楽天モバイルの様子からも、多くの消費者は特定のサービスに縛られることで安くなることを求めていることが理解できるだろう。
そこで改めて問われるのは、消費者はシンプルで分かりやすい料金を求めているとして、法律を変えてまで業界の商習慣を根底から覆し、その実現に力を費やしてきた総務省の姿勢が本当に正しかったのか?ということではないだろうか。シンプルさを重視してきたahamoや楽天モバイルの料金プランが複雑になることで支持を高めていることを、総務省はどう受け止めているのかが非常に気になるところである。
そしてもう1つ、楽天モバイルの好調を受けて気になる動きを見せているのがソフトバンクだ。同社はオンライン専用ブランド「LINEMO」の料金プランを2024年7月下旬以降にリニューアルし、新たに「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を導入することを打ち出している。
その内容はいずれも、月当たりの通信量に応じて料金が変わる、Rakuten最強プランと同じ段階制を採用。「ベスト」という名称もRakuten最強プランを意識しているのでは?という声も挙がっている。もちろん、同社としても楽天モバイルを全く意識していないわけではない様子だが、新プランの狙いはどちらかといえばソフトバンクの中でポジションが曖昧になっている、LINEMOの位置付けを明確にするためといえる。
LINEMOは、ソフトバンクのサブブランド「ワイモバイル」と重複する部分が多いため、契約数が思うように伸びていない。それゆえ新プランの提供により、家族やブロードバンド契約による割引のあるワイモバイルは家族向け、そうした割引がなくても安く使えるLINEMOは単身者向けと、違いをはっきりさせてそれぞれが得意とする契約の獲得に重点を入れる狙いがあるといえそうだ。
しかもソフトバンクは6月19日より、ソフトバンクの全ての料金プランを対象として、AI技術を活用した検索エンジン「Perplexity」の有料プラン「Perplexity Pro」を1年間無料で利用できる施策を開始。月額990円から利用できるLINEMOベストプランは、Perplexity Proの月額料金(2,950円)より安いとして注目を集めている。そうしたサービスとの相乗効果で契約数を伸ばすことができるかも、今後注目されるところであろう。
一方で、比較的安定的な状況にあるのがKDDIだ。同社は「au」ブランドで「auマネ活プラン」を、「UQ mobile」ブランドでahamoなどに対抗する「コミコミプラン」を2023年に導入しており、それらが一定の成果を出していることもあって、2024年の新料金プランはスマートフォン初心者に向けたauの「スマホスタートプランベーシック」くらいである。
だがここ最近動きが非常に激しいのが、オンライン専用の「povo 2.0」である。実際povo 2.0は3月に、本人確認不要でeSIMに登録してすぐ利用できる「povo 2.0データ専用」の提供を開始。データ通信の利用拡大を図っている一方で、5月には留守番電話サービスのトッピングを提供するなど、電話サービスとしての充実も推し進められている。
その一方で、2024年6月末をもって「#ギガ活」のau PAY支払いによる特典提供を終了することが明らかにされ、一部のユーザーに大きな衝撃を与えたようだ。なぜならこの特典を利用すれば、対象の店舗で「au PAY」による支払いをすることで無料で通信量を得ることができ、買い物にお金を支払う必要はあるが通信料0円での運用が可能だったからだ。
それだけに今回の特典終了は、povo 2.0が認知を高め利用者を増やすフェーズから、ビジネスを成立させ収益化するフェーズへと明確に移ったことを示したともいえる。実際povo 2.0では、先の特典を終了させる一方で、コンビニエンスストアやファーストフードなどの商品と通信量がセットでお得に購入できる「+αトッピング」の販売に力を入れており、特典のお得さは維持しながらも、明確にお金を取る姿勢に転換した様子がうかがえる。
各社の施策を見るとまさに “4者4様” という様子ではあるが、2024年も各社ともに料金に関する施策を積極的に実施していることが分かる。2024年も後半に入っているだけに、今後さらなる動きが起きる可能性も十分考えられるのではないだろうか。