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2024年10月2日、総務省が携帯電話に関してある発表を実施したのだが、多くのニュースで取り上げられるなどして、意外にも多くの注目を集めたようだ。
それは携帯電話の電話番号として、新たに「060」から始まる番号を追加する方針を固めたというもの。現在、携帯電話で音声通話が可能な「音声伝送携帯電話番号」として携帯各社に割り当てられているのは、「090」「080」「070」から始まる11桁の番号であることは多くの人が知るところだろう。しかし、今回総務省が打ち出した案が通った場合、新たに「060」から始まる11桁の番号が加わることとなる。
実は音声伝送携帯電話番号は、非常に多くの人が利用しているだけに以前から不足傾向にあり、何度か番号の追加がなされている。そもそも携帯電話のサービス開始当初の番号は10桁だったのだが、不足を受けて1999年に桁を1つ追加。これが現在の「090」から始まる番号に当たるのだが、それでも利用者の増加により携帯電話番号は枯渇傾向にあった。
そこで、2002年には新たに「080」から始まる番号を追加。さらに2013年から2014年にかけては、利用者が減少していたPHS向けに割り当てられていた「070」から始まる番号を、携帯電話にも割り当てることで対処を図ってきた。
ただし、携帯電話向けに割り当てられている番号は、070〜090の次に当たる4桁目の番号が1〜9のもののみとなっている。これは、「0800」から始まる番号が、「0120」から始まる番号と同じ着信課金番号、いわゆるフリーダイヤル向けとして既に割り当てられているため。そちらと混同しないよう、090や070から始まる番号であっても4桁目が0の番号は意図的に割り当てがなされていないのだ。
そうしたことから現在、音声伝送携帯電話番号として割り当てられている番号の数は、単純計算で9,000万×3=2億7000万となっている。日本の人口は1億2000万くらいであるにもかかわらず、なぜ2億を超える番号があっても電話番号が不足してしまうのかというと、理由は大きく3つある。
1つ目の理由は、シンプルに1人が複数の携帯電話回線を持つ動きが強まっているためだ。とりわけ最近では多くのスマートフォンが物理SIMとeSIM、2つのSIMを同時に利用できる「デュアルSIM」に対応していることから、1台のスマートフォンで2つの回線を利用するのも容易となっている。
しかも最近では、大規模災害や通信障害への備えとして、メインの回線とは別にもう1つの予備回線をeSIMに登録しておける「副回線サービス」を携帯大手が提供するようになっている。またKDDIの「povo 2.0」のように、メイン回線としてだけでなくサブ回線としても利用しやすいサービスも増えており、緊急時や “ギガ不足” などへの備えなどとして、1人で複数の回線を保有する動きが強まっていることは確かだ。
2つ目の理由は、企業のモバイルデータ通信利用が増えているためだ。とりわけ増えているのが、電力やガスなどのスマートメーターなどに用いられている、いわゆる「M2M」(機械間通信)やIoT機器向けの通信サービス。こうした機器はデータ通信量自体はとても少ないのだが、数が非常に多く設置場所も多様なことから、低速・低価格の企業向けモバイル通信サービスが用いられることが多い。実際、各家庭の電力やガスのメーターが全てスマートメーターに置き変わっただけでも、相当数のモバイル回線が必要になることは想像に難くないだろう。
もちろん、そうしたデータ通信専用の回線であっても、携帯電話のネットワークを使っている以上、電話番号が必要になる。それゆえM2M/IoT向けの回線利用が増えたことも、電話番号の枯渇を加速させた大きな要因となっているのだ。
もう1つ、大きな理由として考えられるのが、携帯電話回線自体の解約がしやすくなったことだ。2019年の電気通信事業法改正により、携帯電話回線の契約とスマートフォンの販売をセットにして毎月の料金を割り引く「4年縛り」などと呼ばれた割引施策が禁止されたほか、長期間契約を前提に月額料金を大幅に値引く、いわゆる「2年縛り」も有名無実化。これによって携帯電話回線はほぼ自由に解約ができるようになった。
だが、携帯各社にとって携帯電話番号は限られた資源でもあるので、解約して使われなくなった携帯電話番号は、一定期間が過ぎた後にリサイクルされ、新たな契約者へと割り当てられている。それゆえ解約が増えれば必然的に “リサイクル待ち” 、つまり保有はしているがすぐには使えない携帯電話番号が増えてしまい、結果携帯各社が新たな番号の割り当てを国に求めることで、番号の枯渇を加速する要因になっていると考えられる。
こうした状況に対し、総務省もこれまでいくつかの手を打ってきている。とりわけ大きな対策となったのが、2021年に実施された「020」から始まる11〜14桁の電話番号の割り当てだ。これらはかつてポケットベル向けに使われていた番号で、大半が使われていなかったことからそれをデータ通信専用の番号として割り当てることにより、先に触れたM2M/IoT向け回線の需要を吸収するに至っている。
だがそれでも、サブ回線需要の増加や解約の増加といった流れは止まらず、未割当の電話番号も2024年9月末時点で530万にまで減少。いよいよ枯渇が見えてきたことから、ついに060から始まる新しい電話番号を割り当てる方針を打ち出したといえよう。
ちなみに、今回割り当てが打ち出された番号は元々、固定電話や企業の内線電話の子機として携帯電話を使えるようにするなど、固定・携帯電話を融合するFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス用に割り当てられていたもの。その需要が少なかったことから、FMCサービス向けの番号は「060」の次の桁が「0」から始まる番号に移行。1〜9から始まる番号は枯渇が予想される携帯電話向けとして確保がなされ、いつ割り当てるべきかという検討が2015年から進められていたのだ。
だが、先に触れた020から始まる番号の割り当てが優先されたことで、060から始まる番号の割り当ては見送られていた。それゆえこの番号の割り当てはおよそ9年越しでの実現となりそうなのだが、電話番号も貴重な資源だけあって国としても割り当てには慎重さが求められるのだろう。
現在は、060から始まる番号の解放などを含めた案に対するパブリックコメントを募集している状況だが、予定通りであれば実際に割り当てがなされるのは2024年12月中となるようだ。060から始まる番号を実際に目にする日が来るのは、そう遠い先のことではないのではないだろうか。
■新たに「060〜」番号が追加された背景とは
それは携帯電話の電話番号として、新たに「060」から始まる番号を追加する方針を固めたというもの。現在、携帯電話で音声通話が可能な「音声伝送携帯電話番号」として携帯各社に割り当てられているのは、「090」「080」「070」から始まる11桁の番号であることは多くの人が知るところだろう。しかし、今回総務省が打ち出した案が通った場合、新たに「060」から始まる11桁の番号が加わることとなる。
実は音声伝送携帯電話番号は、非常に多くの人が利用しているだけに以前から不足傾向にあり、何度か番号の追加がなされている。そもそも携帯電話のサービス開始当初の番号は10桁だったのだが、不足を受けて1999年に桁を1つ追加。これが現在の「090」から始まる番号に当たるのだが、それでも利用者の増加により携帯電話番号は枯渇傾向にあった。
そこで、2002年には新たに「080」から始まる番号を追加。さらに2013年から2014年にかけては、利用者が減少していたPHS向けに割り当てられていた「070」から始まる番号を、携帯電話にも割り当てることで対処を図ってきた。
ただし、携帯電話向けに割り当てられている番号は、070〜090の次に当たる4桁目の番号が1〜9のもののみとなっている。これは、「0800」から始まる番号が、「0120」から始まる番号と同じ着信課金番号、いわゆるフリーダイヤル向けとして既に割り当てられているため。そちらと混同しないよう、090や070から始まる番号であっても4桁目が0の番号は意図的に割り当てがなされていないのだ。
そうしたことから現在、音声伝送携帯電話番号として割り当てられている番号の数は、単純計算で9,000万×3=2億7000万となっている。日本の人口は1億2000万くらいであるにもかかわらず、なぜ2億を超える番号があっても電話番号が不足してしまうのかというと、理由は大きく3つある。
1つ目の理由は、シンプルに1人が複数の携帯電話回線を持つ動きが強まっているためだ。とりわけ最近では多くのスマートフォンが物理SIMとeSIM、2つのSIMを同時に利用できる「デュアルSIM」に対応していることから、1台のスマートフォンで2つの回線を利用するのも容易となっている。
しかも最近では、大規模災害や通信障害への備えとして、メインの回線とは別にもう1つの予備回線をeSIMに登録しておける「副回線サービス」を携帯大手が提供するようになっている。またKDDIの「povo 2.0」のように、メイン回線としてだけでなくサブ回線としても利用しやすいサービスも増えており、緊急時や “ギガ不足” などへの備えなどとして、1人で複数の回線を保有する動きが強まっていることは確かだ。
2つ目の理由は、企業のモバイルデータ通信利用が増えているためだ。とりわけ増えているのが、電力やガスなどのスマートメーターなどに用いられている、いわゆる「M2M」(機械間通信)やIoT機器向けの通信サービス。こうした機器はデータ通信量自体はとても少ないのだが、数が非常に多く設置場所も多様なことから、低速・低価格の企業向けモバイル通信サービスが用いられることが多い。実際、各家庭の電力やガスのメーターが全てスマートメーターに置き変わっただけでも、相当数のモバイル回線が必要になることは想像に難くないだろう。
もちろん、そうしたデータ通信専用の回線であっても、携帯電話のネットワークを使っている以上、電話番号が必要になる。それゆえM2M/IoT向けの回線利用が増えたことも、電話番号の枯渇を加速させた大きな要因となっているのだ。
もう1つ、大きな理由として考えられるのが、携帯電話回線自体の解約がしやすくなったことだ。2019年の電気通信事業法改正により、携帯電話回線の契約とスマートフォンの販売をセットにして毎月の料金を割り引く「4年縛り」などと呼ばれた割引施策が禁止されたほか、長期間契約を前提に月額料金を大幅に値引く、いわゆる「2年縛り」も有名無実化。これによって携帯電話回線はほぼ自由に解約ができるようになった。
だが、携帯各社にとって携帯電話番号は限られた資源でもあるので、解約して使われなくなった携帯電話番号は、一定期間が過ぎた後にリサイクルされ、新たな契約者へと割り当てられている。それゆえ解約が増えれば必然的に “リサイクル待ち” 、つまり保有はしているがすぐには使えない携帯電話番号が増えてしまい、結果携帯各社が新たな番号の割り当てを国に求めることで、番号の枯渇を加速する要因になっていると考えられる。
こうした状況に対し、総務省もこれまでいくつかの手を打ってきている。とりわけ大きな対策となったのが、2021年に実施された「020」から始まる11〜14桁の電話番号の割り当てだ。これらはかつてポケットベル向けに使われていた番号で、大半が使われていなかったことからそれをデータ通信専用の番号として割り当てることにより、先に触れたM2M/IoT向け回線の需要を吸収するに至っている。
だがそれでも、サブ回線需要の増加や解約の増加といった流れは止まらず、未割当の電話番号も2024年9月末時点で530万にまで減少。いよいよ枯渇が見えてきたことから、ついに060から始まる新しい電話番号を割り当てる方針を打ち出したといえよう。
ちなみに、今回割り当てが打ち出された番号は元々、固定電話や企業の内線電話の子機として携帯電話を使えるようにするなど、固定・携帯電話を融合するFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス用に割り当てられていたもの。その需要が少なかったことから、FMCサービス向けの番号は「060」の次の桁が「0」から始まる番号に移行。1〜9から始まる番号は枯渇が予想される携帯電話向けとして確保がなされ、いつ割り当てるべきかという検討が2015年から進められていたのだ。
だが、先に触れた020から始まる番号の割り当てが優先されたことで、060から始まる番号の割り当ては見送られていた。それゆえこの番号の割り当てはおよそ9年越しでの実現となりそうなのだが、電話番号も貴重な資源だけあって国としても割り当てには慎重さが求められるのだろう。
現在は、060から始まる番号の解放などを含めた案に対するパブリックコメントを募集している状況だが、予定通りであれば実際に割り当てがなされるのは2024年12月中となるようだ。060から始まる番号を実際に目にする日が来るのは、そう遠い先のことではないのではないだろうか。