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公開日 2022/04/11 12:29
浅い睡眠を改善するヘッドギア風ウェアラブル「SleepLoop」スイスの大学が開発中【Gadget Gate】
科学的根拠ある安眠グッズ
深い眠り(ノンレム睡眠)は記憶力を向上させたり、脳をリフレッシュするために重要であり、身体の循環機能の健康維持にも影響するため日々の生活において重要な役割を果たす。しかし、この深い眠りの時間は加齢によってだんだん短く浅くなっていく傾向があり、一部の高齢者は眠りが浅いせいで疲れが取れず、睡眠の途中で目が覚めてしまうことも多くなるとされる。
過去の研究では眠りが深い時の脳波、いわゆる “徐波” が現れている人に、イヤホンから正確なタイミングでクリック音を聞かせると、徐波が音に同期するように整い、より強く表れるような反応が見られた。つまり、深い睡眠の質が改善されるということがわかっている。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(チューリッヒ工科大学)の研究者らは、この実験と同じ効果を自宅で簡単に得られるようにするため、電極とマイクロチップを搭載したヘッドギア風のバンドを開発した。
「SleepLoop」と名付けられたそのデバイスは、睡眠中の使用者の脳波をモニタリングし、徐波を検出すればすぐにそれに同期するようにイヤホンから短いクリック音を発する。この音は深く眠っている使用者には認識されないものの、神経細胞はその活動を同期するように作用し、徐波を増強する。
実験では62〜78歳の16人のボランティアに、それぞれの自宅で4週間にわたり毎日、SleepLoopを着用して睡眠に就いてもらった。ただし、深い眠りを増強する聴覚的な刺激を与えるのは4週間のうち2週間だけにとどめ、残りの2週間は刺激を与えなかった。また、ボランティアには実験期間のどの2週間が刺激なしだったかは秘密とした。
その結果、ほとんどのボランティアはクリック音、つまり聴覚的な刺激があった期間の睡眠で徐波が増強され、SleepLoopを使用することで自宅でも睡眠を深くする効果が得られることが示された。ただ、結果には個人差が比較的大きく現れ、ほとんど効果がない人もいた。また、効果の出かたがその人の日中の健康状態に左右されないこともわかった。
研究者らはこの個人差を調べることで、どのような人なら聴覚への刺激による効果を得やすいかを予測し、今後SleepLoopの性能の最適化と向上をはかるための道すじとした。また、チューリッヒ工科大学からのスピンオフ企業Tosoo AGによって、このヘッドギア風デバイスの臨床研究のための開発と市場投入に向けた準備を進めている。
なお、市場投入と聞くと一般発売のための準備が進んでいるように思えてしまうが、実際のところは医療用機器としての開発であり、通販などでよく見かける安眠グッズの類いではないところには注意が必要。
チューリッヒ工科大学でSleepLoopの開発を率いたWalter Karlen氏(現在は独ウルム大学の医用生体工学研究所所長)は「医学的な診断のもと、医師の指導によって使われなければならない」と述べている。
Source: Communications Medicine
via: ETH Zurich
Coverage: SleepLoop
※テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」を近日中にローンチ予定です。本稿は、そのプレバージョンの記事として掲載しています。
過去の研究では眠りが深い時の脳波、いわゆる “徐波” が現れている人に、イヤホンから正確なタイミングでクリック音を聞かせると、徐波が音に同期するように整い、より強く表れるような反応が見られた。つまり、深い睡眠の質が改善されるということがわかっている。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(チューリッヒ工科大学)の研究者らは、この実験と同じ効果を自宅で簡単に得られるようにするため、電極とマイクロチップを搭載したヘッドギア風のバンドを開発した。
「SleepLoop」と名付けられたそのデバイスは、睡眠中の使用者の脳波をモニタリングし、徐波を検出すればすぐにそれに同期するようにイヤホンから短いクリック音を発する。この音は深く眠っている使用者には認識されないものの、神経細胞はその活動を同期するように作用し、徐波を増強する。
実験では62〜78歳の16人のボランティアに、それぞれの自宅で4週間にわたり毎日、SleepLoopを着用して睡眠に就いてもらった。ただし、深い眠りを増強する聴覚的な刺激を与えるのは4週間のうち2週間だけにとどめ、残りの2週間は刺激を与えなかった。また、ボランティアには実験期間のどの2週間が刺激なしだったかは秘密とした。
その結果、ほとんどのボランティアはクリック音、つまり聴覚的な刺激があった期間の睡眠で徐波が増強され、SleepLoopを使用することで自宅でも睡眠を深くする効果が得られることが示された。ただ、結果には個人差が比較的大きく現れ、ほとんど効果がない人もいた。また、効果の出かたがその人の日中の健康状態に左右されないこともわかった。
研究者らはこの個人差を調べることで、どのような人なら聴覚への刺激による効果を得やすいかを予測し、今後SleepLoopの性能の最適化と向上をはかるための道すじとした。また、チューリッヒ工科大学からのスピンオフ企業Tosoo AGによって、このヘッドギア風デバイスの臨床研究のための開発と市場投入に向けた準備を進めている。
なお、市場投入と聞くと一般発売のための準備が進んでいるように思えてしまうが、実際のところは医療用機器としての開発であり、通販などでよく見かける安眠グッズの類いではないところには注意が必要。
チューリッヒ工科大学でSleepLoopの開発を率いたWalter Karlen氏(現在は独ウルム大学の医用生体工学研究所所長)は「医学的な診断のもと、医師の指導によって使われなければならない」と述べている。
Source: Communications Medicine
via: ETH Zurich
Coverage: SleepLoop
※テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」を近日中にローンチ予定です。本稿は、そのプレバージョンの記事として掲載しています。