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公開日 2022/05/26 16:28

NASA、太陽光を受け宇宙船を動かす「ソーラーセイル」新技術開発に200万ドル支援【Gadget Gate】

SF発祥の概念を実現に向けて推進
Munenori Taniguchi
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NASAが、起業家やイノベーターとともに将来的に画期的な宇宙技術となる、実現可能性のあるアイデアを研究するNASA Innovative Advanced Concepts(NIAC)プログラムの一環としてDiffractive Solar Sailingプロジェクトを認定し、200万ドル(約2.5億円)の資金を支援すると発表した。

image:NASA

ソーラーセイルとは、その名のとおり太陽の光を受けて推進力を得る航法であり、それを実現する薄膜状の帆のことも指す。長らくSF小説の中で描かれる実現可能性の低い技術と考えられていたが、惑星協会が2015年および2019年に実証機を打ち上げて、宇宙空間での巨大な帆の展開と太陽光による軌道変更が可能であることを実証した。

日本でも、JAXAが実証機IKAROSを2010年に打上げ、薄膜太陽電池を兼ねるソーラーセイルを用いた光子加速を実証している。また、小惑星からのサンプルリターンを目的とする探査機はやぶさ2は、小型ソーラーセイルを利用した姿勢制御モードを通常の機能として備えている。

今回NASAが支援を決定したのは、光の回折現象を利用する回折(Diffractive)式ソーラーセイルについて研究開発を行うプロジェクト。通常のソーラーセイルは太陽光が反射する際に、帆にあたる光子の圧力を利用して推進するため、非常に大きな帆が必要となり、当たる光の方向によって宇宙機の進む方向もほぼ決まってしまう。

一方、回折式ソーラーセイルは、帆が回折格子(グレーティング)構造になっており、光を方向転換させる回折を利用する。この方向転換の角度を変えれば推進する方向も変わるため、軌道上で機体を制御しやすくなる。

Diffractive Solar Sailingプロジェクトはジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のAmber Dubill氏が率いており、今回研究のフェーズIIIとしてNASAの支援を受けることになった。このプロジェクトにはフェーズIおよびIIで研究開発を行ってきたロチェスター工科大学のGrover Swartzlander博士らが共同研究者として参加、さらにNASAマーシャル宇宙飛行センターでソーラーセイルミッションを担当するLes Johnson氏も参加している。

今回はフェーズIIIの研究にあたり、今後2年間、プロジェクトチームはいろいろな種類の素材を試験して、回折式ソーラーセイル実用化の可能性を高めていく。そして、従来の推進方式では実現が難しいとされる太陽極軌道を周回する探査機に適用し、それを多数使用して太陽のコロナと表面磁場の測定を実施、太陽風などの発生を予測する宇宙気象予報などに役立てて行くことを考えている。

なお、TechCrunchによれば、NIACのプログラムは非常に高度な目標を掲げ、実現すれば宇宙開発において飛躍的な進歩が得られるような技術の研究を支援するためのものであり、その大半はフェーズIIで終了するとのこと。フェーズIIIにコマを進めた回折式ソーラーセイルの研究にはそれだけ見込みがあると考えられ、実現に向けた研究開発が”軌道に乗る”ことを祈りたいところだ。

Source:NASA
via:TechCrunch



※テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」を近日中にローンチ予定です。本稿は、そのプレバージョンの記事として掲載しています。

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