公開日 2010/01/21 20:26
360度ムービーが撮れる!ソニーのMP4ムービーカメラ“bloggie”をケースイがチェック
動画レポート付
ソニーからHD画質で撮影できるコンパクトなムービーカメラ“bloggie(ブロギー)”2機種が登場した。本体に動画・静止画のアップロード機能も備えるアプリケーション「PMB Portable」を内蔵し、本体にUSB端子を備えたことで、パソコンに直接つないで簡単にYouTubeなどに動画をアップできるのが特徴だ。
タテ型の「MHS-CM5」は、光学式5倍ズームと電子式手ブレ補正を搭載した、お手軽機ながらも撮影機能に優れるモデル。回転式レンズを搭載する「MHS-PM5K」は、光学式ズームを備えない単焦点タイプで、シンプルな構成ながらもデジタル4倍ズームと電子式手ブレ補正機能を備えている。MHS-PM5Kは付属する「360ビデオレンズ」を使うことでユニークな動画を撮影できる。後述するが、この機能がとても面白い。
どちらも動画のファイル形式はMPEG-4 AVC/H.264になっており、解像度は「1920×1080/30p」、「1280×720/60p」、「1280×720/30p」、「640×480(VGA)/30p」から選ぶ。静止画は最大500万画素での撮影が可能。画角によって画質が異なり、「5M/画角4対3」、「4M/画角3対2」、「3M/4対3」、「2M/画角16対9」から選択できる。
記録は「メモリースティック PRO デュオ(MARK2)」、「メモリースティック PRO-HG デュオ」に加え、「SDメモリーカード」、「SDHCメモリーカード(class4以上推奨)」にも対応している。
このラインアップについてスペックを見る限り、筆者はデジタルガジェット的な印象を受けた。いまどきHDムービーだけなら同社のデジカメ“Cyber-shot”シリーズでも撮影できるし、高画質ならハンディカムシリーズがある。レビューに入る前に商品コンセプトを明確にすべく、なぜこのジャンルにソニーが参入したのか、開発担当者にインタビューした。お話しをうかがったのは商品の企画に携わった西村欣彦氏と設計の桶川秀治氏だ。
━━bloggieの開発コンセプトについてお聞かせください。
西村氏:地デジ対応テレビの普及にともない、ハイビジョン画質が身近になっています。このドレンドに合わせて、もっと手軽にHD動画を楽しめる製品はできないかというコンセプトで開発に着手しました。
━━そういう意味ではCyber-shotや携帯電話などもHD動画の撮影に対応していますが、これらの製品とはどのように差別化していく考えでしょうか。
西村氏:bloggieが備える最大の特徴は2つあります。一つは本体にUSB端子を内蔵していることです。ケーブルなしでもパソコンに接続できます。もう一つは本体に映像の管理や動画共有サイトへのアップロードができる「PMB Portable」を内蔵しています。これにより出先のパソコンでWebに繋ぐだけで、撮影した動画をネット上へ簡単にアップできます。今後、ビデオブログなど動画を活用したサイトが増えると予想できるので、本体を接続するだけで動画を投稿できるbloggieが活躍するシーンは増えるはずです。
個別の機能としては、MHS-CM5には光学式5倍ズームがあり、MHS-PM5Kだと360度の全周囲撮影ができます。とくにMHS-PM5Kの「360ビデオレンズ」撮影はデジカメやムービーでは対応機がまだ無い新しい機能なので、注目していただけると思っています。
桶川氏:MHS-PM5Kの「360ビデオレンズ」撮影は、本体の機能だけでなく管理ソフトの出来も重要です。この機能は付属の専用レンズを使ってドーナッツ状の映像として360度撮影をします。これを専用のソフトで帯状の映像に変換して再生することができます。通常の360度撮影ではカメラマンがフレームインするはずですが、ドーナツ状の映像をどのポイントで切り離して帯状に展開するか、調整もできるようになっています。
西村氏:「360ビデオレンズ」撮影や本体だけで動画をアップロードする機能は、ハードだけでなくソフトも同時に開発できるソニーだからこそ実現できた機能だと言えるでしょう。
━━「360ビデオレンズ」を使ったおすすめの撮影方法があれば教えてください。
桶川氏:開発中にいろいろテストしたのですが、パーティの席の中心に360ビデオレンズを装着したMHS-PM5Kを置いておくと、今まで撮れなかったような面白い映像が撮影できました。再生してみると参加者が横並びになっているように見え、皆がしゃべったことも記録できます。ビジネスシーンなら会議の記録用に使ってもよさそうですね。また車のダッシュボードに固定して撮影した映像もおもしろかったですよ。運転中のドライバーと車窓の風景を同時に記録することができます。まだまだ他にもおもしろい撮影ができると思いますので、ぜひ皆さんに試していただきたいと思います。
開発を担当したお二人の話をうかがって、ソニーがこのジャンルのムービーに参入した理由がわかったように思う。これまでのコンパクトムービーは海外製のチープな製品が主流で、使い勝手や機能などは二の次という印象があった。しかしふたつのbloggieはそれぞれ個性的な機能があり、さらにソフトも同時に開発することで、誰でも使えるより手軽に楽しめるムービーになっている。
それでは実機を見てゆこう。まずはタテ型のMHS-CM5からだ。本体はバッテリー込みで196gなのでかなり軽い。この手のコンパクトムービーというとかなり安っぽい印象を受けるが、悪くはない仕上がりだ。ただし、ハンディカムなどの本格的ムービーに比べると樹脂製のパーツが多いので好みは別れそうだ。
撮影した映像をHDMI端子で46型の液晶テレビで再生しチェックした。ちなみに本体にはミニHDMI端子があるので、ケーブル一本でテレビに接続できる。まず1920×1080/30pの画像だが、さすがにフルHDなので、解像度的には納得のいくレベルだ。ただ、テストで撮影した新幹線の映像では、窓のあたりを見ると残像のようにノイズが引きずられる印象を受けた。ハンディカムとは明らかに画質の違いが感じられる。
【動画レポート】1920×1080/30p解像度での動画撮影テスト
1280×720/60pの映像は良好で、こちらではフルHDよりも若干解像度が甘くなるが、より滑らかな動画が楽しめた。動きの多い被写体を撮影するならこのモードがベストだろう。
光学式5倍ズームはデジカメと考えれば及第点だが、ムービーと考えるとちょっと物足りなさを感じた。焦点距離がワイド撮影時で41〜205mm、4対3の画角で38〜190mmなので、できればもっと広角よりのレンズだと自分撮りなどが楽しめたと思う。
「帯に短し…」的なMHS-CM5に比べて、製品の立ち位置が明確なのがMHS-PM5Kだ。最近めっきり姿を消した回転式レンズを採用しており、スナップ写真やスナップ動画の撮影に適した製品だ。外装が若干チープな印象を受けたMHS-CM5に比べて、MHS-PM5Kの仕上がりは上々。携帯電話のような質感と手になじむ丸みを帯びたデザインは、いつでもポケットに入れて持ち歩きたくなる。回転式レンズなので、撮りたいときにくるっと回してパチッと撮影できるのもいい。
MHS-CM5はレンズカバーが別なので、そのあたりの操作性にもたつきを感じた。MHS-CM5に比べて液晶モニターも見やすかった。これなら日中の撮影でもそれほど苦にはならないだろう。
本体に360ビデオレンズを取り付けて撮影した。付属のレンズ側にツメがあり、ここで本体と接続するのだが、これがかなり硬くて参ってしまった。撮影中に落ちないようにすることを考えると仕方がないが、他に何か良い方法はなかっただろうか。
歩きながらの360度撮影では自分が写ってしまうが、カメラを頭上に乗せれば、景色だけを撮影できる。ちょっと間抜けになるが、カメラを頭に乗せて歩きながら撮影してみた。
【動画レポート】360度動画の撮影テスト
360度動画はドーナッツ状に撮影されるので、付属ソフトを使って変換した後に再生する。360度動画の再生方法は2種類あり、付属の「360プレーヤー」を使えばマウスを使って視点移動ができる。ちょっとしたストリートビューのような感じで再生できて楽しかった。
360度動画をWMVやMPEG2に変換して保存することも可能だ。その場合、WMPなどのソフトで再生できるが、細い帯状の映像となってしまう。
360度動画の画質はかなり荒く、鮮明さに欠けるのであまり期待しない方がいい。ただ、前述したようにストリートビューのような映像が撮影できたり、パーティーの撮影などに使うと楽しく遊べそうだ。不鮮明ながらも撮影した人物の特定はできるので、筆者は会議などの議事録作成に使えると感じた。
最後にアップロードの方法だが、本体内にアップロード用のソフトが内蔵されているので、アプリケーションの手順に従って操作するだけでYouTubeへの動画アップロードが完了する。このあたりの使い勝手は秀逸だった。
ソニーが新しい切り口で世に送った2種類のbloggieだが、動画を使って積極的にコミュニケーションしたいと考えるユーザーにはおすすめできる製品だ。筆者はコンセプトが明確なMHS-PM5Kにより魅力を感じたが、皆さんはいかがだろうか?360度動画撮影はとても面白いので、ぜひハンディカムなどの高画質機でも採用してもらいたい。
タテ型の「MHS-CM5」は、光学式5倍ズームと電子式手ブレ補正を搭載した、お手軽機ながらも撮影機能に優れるモデル。回転式レンズを搭載する「MHS-PM5K」は、光学式ズームを備えない単焦点タイプで、シンプルな構成ながらもデジタル4倍ズームと電子式手ブレ補正機能を備えている。MHS-PM5Kは付属する「360ビデオレンズ」を使うことでユニークな動画を撮影できる。後述するが、この機能がとても面白い。
どちらも動画のファイル形式はMPEG-4 AVC/H.264になっており、解像度は「1920×1080/30p」、「1280×720/60p」、「1280×720/30p」、「640×480(VGA)/30p」から選ぶ。静止画は最大500万画素での撮影が可能。画角によって画質が異なり、「5M/画角4対3」、「4M/画角3対2」、「3M/4対3」、「2M/画角16対9」から選択できる。
記録は「メモリースティック PRO デュオ(MARK2)」、「メモリースティック PRO-HG デュオ」に加え、「SDメモリーカード」、「SDHCメモリーカード(class4以上推奨)」にも対応している。
このラインアップについてスペックを見る限り、筆者はデジタルガジェット的な印象を受けた。いまどきHDムービーだけなら同社のデジカメ“Cyber-shot”シリーズでも撮影できるし、高画質ならハンディカムシリーズがある。レビューに入る前に商品コンセプトを明確にすべく、なぜこのジャンルにソニーが参入したのか、開発担当者にインタビューした。お話しをうかがったのは商品の企画に携わった西村欣彦氏と設計の桶川秀治氏だ。
━━bloggieの開発コンセプトについてお聞かせください。
西村氏:地デジ対応テレビの普及にともない、ハイビジョン画質が身近になっています。このドレンドに合わせて、もっと手軽にHD動画を楽しめる製品はできないかというコンセプトで開発に着手しました。
西村氏:bloggieが備える最大の特徴は2つあります。一つは本体にUSB端子を内蔵していることです。ケーブルなしでもパソコンに接続できます。もう一つは本体に映像の管理や動画共有サイトへのアップロードができる「PMB Portable」を内蔵しています。これにより出先のパソコンでWebに繋ぐだけで、撮影した動画をネット上へ簡単にアップできます。今後、ビデオブログなど動画を活用したサイトが増えると予想できるので、本体を接続するだけで動画を投稿できるbloggieが活躍するシーンは増えるはずです。
個別の機能としては、MHS-CM5には光学式5倍ズームがあり、MHS-PM5Kだと360度の全周囲撮影ができます。とくにMHS-PM5Kの「360ビデオレンズ」撮影はデジカメやムービーでは対応機がまだ無い新しい機能なので、注目していただけると思っています。
西村氏:「360ビデオレンズ」撮影や本体だけで動画をアップロードする機能は、ハードだけでなくソフトも同時に開発できるソニーだからこそ実現できた機能だと言えるでしょう。
━━「360ビデオレンズ」を使ったおすすめの撮影方法があれば教えてください。
桶川氏:開発中にいろいろテストしたのですが、パーティの席の中心に360ビデオレンズを装着したMHS-PM5Kを置いておくと、今まで撮れなかったような面白い映像が撮影できました。再生してみると参加者が横並びになっているように見え、皆がしゃべったことも記録できます。ビジネスシーンなら会議の記録用に使ってもよさそうですね。また車のダッシュボードに固定して撮影した映像もおもしろかったですよ。運転中のドライバーと車窓の風景を同時に記録することができます。まだまだ他にもおもしろい撮影ができると思いますので、ぜひ皆さんに試していただきたいと思います。
開発を担当したお二人の話をうかがって、ソニーがこのジャンルのムービーに参入した理由がわかったように思う。これまでのコンパクトムービーは海外製のチープな製品が主流で、使い勝手や機能などは二の次という印象があった。しかしふたつのbloggieはそれぞれ個性的な機能があり、さらにソフトも同時に開発することで、誰でも使えるより手軽に楽しめるムービーになっている。
それでは実機を見てゆこう。まずはタテ型のMHS-CM5からだ。本体はバッテリー込みで196gなのでかなり軽い。この手のコンパクトムービーというとかなり安っぽい印象を受けるが、悪くはない仕上がりだ。ただし、ハンディカムなどの本格的ムービーに比べると樹脂製のパーツが多いので好みは別れそうだ。
撮影した映像をHDMI端子で46型の液晶テレビで再生しチェックした。ちなみに本体にはミニHDMI端子があるので、ケーブル一本でテレビに接続できる。まず1920×1080/30pの画像だが、さすがにフルHDなので、解像度的には納得のいくレベルだ。ただ、テストで撮影した新幹線の映像では、窓のあたりを見ると残像のようにノイズが引きずられる印象を受けた。ハンディカムとは明らかに画質の違いが感じられる。
1280×720/60pの映像は良好で、こちらではフルHDよりも若干解像度が甘くなるが、より滑らかな動画が楽しめた。動きの多い被写体を撮影するならこのモードがベストだろう。
光学式5倍ズームはデジカメと考えれば及第点だが、ムービーと考えるとちょっと物足りなさを感じた。焦点距離がワイド撮影時で41〜205mm、4対3の画角で38〜190mmなので、できればもっと広角よりのレンズだと自分撮りなどが楽しめたと思う。
「帯に短し…」的なMHS-CM5に比べて、製品の立ち位置が明確なのがMHS-PM5Kだ。最近めっきり姿を消した回転式レンズを採用しており、スナップ写真やスナップ動画の撮影に適した製品だ。外装が若干チープな印象を受けたMHS-CM5に比べて、MHS-PM5Kの仕上がりは上々。携帯電話のような質感と手になじむ丸みを帯びたデザインは、いつでもポケットに入れて持ち歩きたくなる。回転式レンズなので、撮りたいときにくるっと回してパチッと撮影できるのもいい。
MHS-CM5はレンズカバーが別なので、そのあたりの操作性にもたつきを感じた。MHS-CM5に比べて液晶モニターも見やすかった。これなら日中の撮影でもそれほど苦にはならないだろう。
本体に360ビデオレンズを取り付けて撮影した。付属のレンズ側にツメがあり、ここで本体と接続するのだが、これがかなり硬くて参ってしまった。撮影中に落ちないようにすることを考えると仕方がないが、他に何か良い方法はなかっただろうか。
歩きながらの360度撮影では自分が写ってしまうが、カメラを頭上に乗せれば、景色だけを撮影できる。ちょっと間抜けになるが、カメラを頭に乗せて歩きながら撮影してみた。
360度動画はドーナッツ状に撮影されるので、付属ソフトを使って変換した後に再生する。360度動画の再生方法は2種類あり、付属の「360プレーヤー」を使えばマウスを使って視点移動ができる。ちょっとしたストリートビューのような感じで再生できて楽しかった。
360度動画をWMVやMPEG2に変換して保存することも可能だ。その場合、WMPなどのソフトで再生できるが、細い帯状の映像となってしまう。
360度動画の画質はかなり荒く、鮮明さに欠けるのであまり期待しない方がいい。ただ、前述したようにストリートビューのような映像が撮影できたり、パーティーの撮影などに使うと楽しく遊べそうだ。不鮮明ながらも撮影した人物の特定はできるので、筆者は会議などの議事録作成に使えると感じた。
最後にアップロードの方法だが、本体内にアップロード用のソフトが内蔵されているので、アプリケーションの手順に従って操作するだけでYouTubeへの動画アップロードが完了する。このあたりの使い勝手は秀逸だった。
ソニーが新しい切り口で世に送った2種類のbloggieだが、動画を使って積極的にコミュニケーションしたいと考えるユーザーにはおすすめできる製品だ。筆者はコンセプトが明確なMHS-PM5Kにより魅力を感じたが、皆さんはいかがだろうか?360度動画撮影はとても面白いので、ぜひハンディカムなどの高画質機でも採用してもらいたい。