公開日 2011/03/11 10:00
人気モデルHP-A7/A3譲りの高音質 − FOSTEXのポータブルヘッドホンアンプ「HP-P1」を聴く
iPhone/iPodデジタル接続対応
■人気モデルHP-A7/HP-A3に活かされた高音質化のノウハウを継承するポータブル機
本機はiPhone/iPodのデジタル接続に対応したDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ。同社は2010年初頭に、32bitDACを搭載したヘッドホンアンプ「HP-A7」「HP-A3」を発売したが、今回の「HP-P1」は、先行発売の人気モデルの高音質化技術を継承しながら、さらにボディをコンパクトにして、iPhone/iPodと一緒に持ち歩けるポータブルサイズを実現。「Made for iPod」「Works with iPhone」認証も取得している。
本体フロント側には、iPhone/iPod専用のA型USB端子を搭載。商品パッケージに付属するショートスケールのDockコネクターUSBケーブルを使って、iPhone/iPodをアンプ本体に載せた状態でスマートに接続し、音楽リスニングが楽しめる。ステレオミニタイプの外部音声入力も搭載しているので、例えばドック端子を持たない旧式のiPodや、Walkmanなど携帯音楽プレーヤーを接続することも可能だ。ヘッドホン出力はステレオミニ端子が1系統で、フロントパネルに備える。ちなみにiPhone/iPodをアンプにドック端子経由でつないでいる時は、iPod側のヘッドホン端子からは音が出ない仕様になっている。
デジタル音声出力として光端子も装備。USB入力からのデジタル信号をDD変換し、外部オーディオ機器などに出力することもできる。アナログ音声出力はステレオミニ端子を1系統搭載する。
ヘッドホン出力は32Ω負荷時で最大80mW×2を実現。適合負荷インピーダンスは16Ω以上。DACには旭化成エレクトロニクス(AKM)の「AK4480」が採用されており、DACのデジタルフィルターをシャープロールオフ/ミニマム・ディレイの2種類から切り替え、異なる特徴を持つサウンドが楽しめる。ミニマム・ディレイはAKMが開発したプリエコーの無いタイプのフィルターで「より生音に近い音」が楽しめるという。なおデジタルフィルターはUSB入力のみに適用できる。そのほか、ヘッドホン出力では3段階切り替え式のゲインスイッチも備えている。
■いい音を持ち歩いて聴くための使い勝手も良く考慮されている
電源にはリチウムイオン充電池を採用。内蔵バッテリーは本体OFF時・残量ゼロの状態から約5時間でフル充電でき、約7時間の連続駆動が可能。電源コネクターはUSB miniBタイプを採用しており、充電はUSBバスパワーで行える。
アルミ合金のシャーシと、黒色の樹脂素材を塗装したコンビカラーの本体は、手に取った感触が非常に心地よく、外観の質感も高い。同梱されているキャリングケースは、iPhone/iPodをアンプにつないだ状態で、一緒に包んで持ち歩けるデザインになっている。ケースの上蓋はマジックテープで留めるタイプなので、iPhone/iPodを操作するのにも邪魔にならない。またケース自体にストラップやカラビナが付けられるので、持ち運ぶスタイルもユーザー次第で自由にアレンジできる。
それでは本機のサウンドを確認してみよう。ヘッドホンはビクターの「HA-MX10」を使用。フィルターはシャープロールオフに設定して聴きはじめた。
はじめにAnn Sally「Over the Rainbow」(アルバム「こころうた」)を聴いた。本機を通さずに聴いたときに比べ、アン・サリーのボーカルがよりフルーティーに変化する。演奏はボーカルとアコギ、アコーディオン、スチールパンというシンプルなカルテット構成だが、各パートの音色にふわりと柔らかな厚みが乗る。楽しく華やかにセッションを繰り広げるバンドの姿が目の前に現れるようだ。
続いてAnne Sofie von Otterのメゾ・ソプラノ、Brad Mehldauのピアノによるデュオ演奏「I'm Calling You」(アルバム「LOVE SONGS」)を試聴。歌とピアノの伴奏との合間を紡ぐ静寂も味わい深い本作品だが、HP-P1ではどこかざわついて感じられた静寂時のノイズがスッキリと晴れ上がり、空間の透明度が一気に高まる。ハスキーなメゾ・ソプラノの声、硬質なピアノのタッチが醸し出す本作の音楽的な世界は、モノトーンな色調で統一されたクールな魅力に包まれているが、そこにほんのりと暖かい陽が射してくるような印象を受けた。音楽の情報量が増し、演奏の奥行き感や空間の密度感が高まる。
TOTOのアルバム「Falling In Between」から、タイトル曲の「Falling In Between」を聴いた。HP-P1を通すと、ボーカルの声はドッシリと足腰が据わり、エレキのサウンドにも煌びやかさと力強さが加わる。ドラムスはシャリシャリと聴こえていたハイハットやシンバルの高音域が、音の一粒ごとに輪郭を明確に描き出すようになる。バスドラやタムの音は立体感が高まり、演奏全体のワクワク感が加速していく。
同じ曲を、フィルターをミニマム・ディレイに変更して聴いてみた。ボーカルと各楽器の音のセパレーションがいっそう良くなる印象だ。スタジオ録音の作品だが、コンサートのライブ録音を聴いているかのように、サウンドに広がりが生まれる。ボーカルは歌詞の滑舌がより明瞭になるようにも感じられ、シンセサイザーの音もキレとスピード感が高まる。ギターは高音弦の音色がより豊かに、味わい深くなる。
シャープロールオフの音に比べると、ミニマム・ディレイは和音のハーモニー感がややあっさりとするよう思えるが、ドラムスの音の立ち上がり/立ち下がりがいっそうスピーディーになり、エレキやベースなど弦楽器も生の音に近づく印象だ。シャープロールオフの熱っぽさに対して、ミニマム・ディレイはクールさとスピード感が味わえる。それぞれを聴きたい音楽のタイプごとに使い分けて楽しめる点も、本機の大きな魅力と感じられた。
【SPEC】●入力端子:iPhone/iPod Dock対応USB端子、アナログ音声(ステレオミニ) ●出力端子:ヘッドホン(ステレオミニ)、ラインアウト(ステレオミニ)、デジタル音声(オプティカル) ●電源:内蔵リチウムイオン電池 ●外形寸法:75W×25H×130Dmm(足・突起物を含まず) ●質量:約260g
【問い合わせ先】
フォステクス カンパニー
TEL/042-546-6355
本機はiPhone/iPodのデジタル接続に対応したDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ。同社は2010年初頭に、32bitDACを搭載したヘッドホンアンプ「HP-A7」「HP-A3」を発売したが、今回の「HP-P1」は、先行発売の人気モデルの高音質化技術を継承しながら、さらにボディをコンパクトにして、iPhone/iPodと一緒に持ち歩けるポータブルサイズを実現。「Made for iPod」「Works with iPhone」認証も取得している。
本体フロント側には、iPhone/iPod専用のA型USB端子を搭載。商品パッケージに付属するショートスケールのDockコネクターUSBケーブルを使って、iPhone/iPodをアンプ本体に載せた状態でスマートに接続し、音楽リスニングが楽しめる。ステレオミニタイプの外部音声入力も搭載しているので、例えばドック端子を持たない旧式のiPodや、Walkmanなど携帯音楽プレーヤーを接続することも可能だ。ヘッドホン出力はステレオミニ端子が1系統で、フロントパネルに備える。ちなみにiPhone/iPodをアンプにドック端子経由でつないでいる時は、iPod側のヘッドホン端子からは音が出ない仕様になっている。
デジタル音声出力として光端子も装備。USB入力からのデジタル信号をDD変換し、外部オーディオ機器などに出力することもできる。アナログ音声出力はステレオミニ端子を1系統搭載する。
ヘッドホン出力は32Ω負荷時で最大80mW×2を実現。適合負荷インピーダンスは16Ω以上。DACには旭化成エレクトロニクス(AKM)の「AK4480」が採用されており、DACのデジタルフィルターをシャープロールオフ/ミニマム・ディレイの2種類から切り替え、異なる特徴を持つサウンドが楽しめる。ミニマム・ディレイはAKMが開発したプリエコーの無いタイプのフィルターで「より生音に近い音」が楽しめるという。なおデジタルフィルターはUSB入力のみに適用できる。そのほか、ヘッドホン出力では3段階切り替え式のゲインスイッチも備えている。
■いい音を持ち歩いて聴くための使い勝手も良く考慮されている
電源にはリチウムイオン充電池を採用。内蔵バッテリーは本体OFF時・残量ゼロの状態から約5時間でフル充電でき、約7時間の連続駆動が可能。電源コネクターはUSB miniBタイプを採用しており、充電はUSBバスパワーで行える。
アルミ合金のシャーシと、黒色の樹脂素材を塗装したコンビカラーの本体は、手に取った感触が非常に心地よく、外観の質感も高い。同梱されているキャリングケースは、iPhone/iPodをアンプにつないだ状態で、一緒に包んで持ち歩けるデザインになっている。ケースの上蓋はマジックテープで留めるタイプなので、iPhone/iPodを操作するのにも邪魔にならない。またケース自体にストラップやカラビナが付けられるので、持ち運ぶスタイルもユーザー次第で自由にアレンジできる。
それでは本機のサウンドを確認してみよう。ヘッドホンはビクターの「HA-MX10」を使用。フィルターはシャープロールオフに設定して聴きはじめた。
はじめにAnn Sally「Over the Rainbow」(アルバム「こころうた」)を聴いた。本機を通さずに聴いたときに比べ、アン・サリーのボーカルがよりフルーティーに変化する。演奏はボーカルとアコギ、アコーディオン、スチールパンというシンプルなカルテット構成だが、各パートの音色にふわりと柔らかな厚みが乗る。楽しく華やかにセッションを繰り広げるバンドの姿が目の前に現れるようだ。
続いてAnne Sofie von Otterのメゾ・ソプラノ、Brad Mehldauのピアノによるデュオ演奏「I'm Calling You」(アルバム「LOVE SONGS」)を試聴。歌とピアノの伴奏との合間を紡ぐ静寂も味わい深い本作品だが、HP-P1ではどこかざわついて感じられた静寂時のノイズがスッキリと晴れ上がり、空間の透明度が一気に高まる。ハスキーなメゾ・ソプラノの声、硬質なピアノのタッチが醸し出す本作の音楽的な世界は、モノトーンな色調で統一されたクールな魅力に包まれているが、そこにほんのりと暖かい陽が射してくるような印象を受けた。音楽の情報量が増し、演奏の奥行き感や空間の密度感が高まる。
TOTOのアルバム「Falling In Between」から、タイトル曲の「Falling In Between」を聴いた。HP-P1を通すと、ボーカルの声はドッシリと足腰が据わり、エレキのサウンドにも煌びやかさと力強さが加わる。ドラムスはシャリシャリと聴こえていたハイハットやシンバルの高音域が、音の一粒ごとに輪郭を明確に描き出すようになる。バスドラやタムの音は立体感が高まり、演奏全体のワクワク感が加速していく。
同じ曲を、フィルターをミニマム・ディレイに変更して聴いてみた。ボーカルと各楽器の音のセパレーションがいっそう良くなる印象だ。スタジオ録音の作品だが、コンサートのライブ録音を聴いているかのように、サウンドに広がりが生まれる。ボーカルは歌詞の滑舌がより明瞭になるようにも感じられ、シンセサイザーの音もキレとスピード感が高まる。ギターは高音弦の音色がより豊かに、味わい深くなる。
シャープロールオフの音に比べると、ミニマム・ディレイは和音のハーモニー感がややあっさりとするよう思えるが、ドラムスの音の立ち上がり/立ち下がりがいっそうスピーディーになり、エレキやベースなど弦楽器も生の音に近づく印象だ。シャープロールオフの熱っぽさに対して、ミニマム・ディレイはクールさとスピード感が味わえる。それぞれを聴きたい音楽のタイプごとに使い分けて楽しめる点も、本機の大きな魅力と感じられた。
【SPEC】●入力端子:iPhone/iPod Dock対応USB端子、アナログ音声(ステレオミニ) ●出力端子:ヘッドホン(ステレオミニ)、ラインアウト(ステレオミニ)、デジタル音声(オプティカル) ●電源:内蔵リチウムイオン電池 ●外形寸法:75W×25H×130Dmm(足・突起物を含まず) ●質量:約260g
【問い合わせ先】
フォステクス カンパニー
TEL/042-546-6355