公開日 2012/09/21 11:28
【レビュー】ラックスマンの新プリメイン「L-507uX」を石原俊が聴く
「総額100万円超のセパレート型を凌駕する部分すらある」
■終段回路が3パラレル・プッシュプル化
ラックスマンのAB級動作式プリメインアンプの「L-507」系がモデルチェンジし、「L-507uX」となった(関連ニュース)。本機は「L-507u」の後継機という位置づけにある。本機の登場によって、ラックスマンのプリメインアンプは全機種が「Xバージョン」になった。
前モデルとの大きな違いは、終段回路が3パラレル・プッシュプル化されたことである。これによって4Ω時でも理論通りの最大出力が得られるようになるとともに、スピーカーのドライブ能力が大幅に向上した。
なお、同社が3パラレル・プッシュプル回路を搭載するのは最上級機に限られていることから、今後は本機がAB級動作のプリメインアンプのトップモデルとして君臨することになる。
外見上の大きな変更点はボディのサイズで、X系のナロー&トールな筐体が与えられた。サイズの変化にともなって、内部ではドラスティックな進歩が起こっていることが推測される。
前作「L-507u」はスピーカー端子がリアパネルの右側にあったが、本機ではボトム側の中央に集約されている。これはボトム側の左右にマウントされた弟機の「L-505uX」とも異なるもので、開発者は筐体サイズの変更に際して、信号経路を徹底的に見直したようである。ご存じのように、同じ回路図のアンプを作っても配線の引き回しによって音は変わってくる。本機の外観を見ていると、配線が芸術の域にまで到達しているのではないかと思われるのである。
■「音像の立ち姿がより美しく、音場の聴感上のS/N比もより向上」
試聴は音元出版の試聴室で行った。スピーカーはB&Wの「804ダイヤモンド」を、ディスクプレーヤーはアキュフェーズの「DP-900/DC-901」を用いた。
まずは本機の操作感についてご報告しておこう。本機のボリュームとセレクターノブの感触は世界的にみても第一級である。とくにボリュームノブの繊細感は天下一品で、操作に慣れれば思った通りの音量が即座に得られる。
高域と低域のトーンコントロールノブも使いやすく、リモコンでオン/オフできるラウドネス機能と併せて使えば、深夜にひっそりと聴く場合でも高解像度な音質が得られるだろう。リアパネルは非常にしっかりと作られており、ケーブルの着脱は極めてしやすい。
さて、肝心なサウンドである。直接比較したわけではないが、前のモデルよりも音像の立ち姿がより美しく、音場の聴感上のS/N比もより向上したようだ。低域のドライブ能力は上々だ。
試聴に用いた804ダイヤモンドにマウントされたプラー振動板のダブルウーファーをグリップするのは、上位モデルと同じくらい、いや、小口径&ダブルであるがゆえに、場合によってはそれ以上に難しい。並みのアンプでは低音が空振りになることもしばしばあるのだが、「L-507uX」は低音が過大に入った録音でも常にウーファーを実音領域で動作させる。それにとどまらずバスレフダクトの共振すらグリップしているようだ。
B&Wのスピーカーのバスレフダクトには風切音防止のためのゴルフボールを思わせるディンプルがつけられているのだが、これはなかなかの曲者で、並みのアンプだと低音が大人しくなりすぎてしまうきらいがある。しかしながら「L-507uX」はエンクロージャー内部の空気を十分に動かすとともに、ディンプルの効果を尊重しつつもバスレフダクトから勢いのある重低音を放射させるのである。
高域のドライブ能力もすばらしい。このスピーカーのダイヤモンドトゥイーターは驚異的なポテンシャルを有してはいるものの、並みのアンプでは十全に動作させるのが難しく、聴感上のS/N比は高いものの、音場感が喪失するケースもなくはない。
しかしながら「L-507uX」は小音量から大音量に至るまでダイヤモンドトゥイーターをしっかりとグリップし、豊かで精密な空間を出現させてくれた。これは音楽にとって非常に大事なことで、演奏の意味合いを決定づける音と音の間にあるタイミングを把握するのに非常に効果的な振る舞いなのである。
また、高域のパワーも十二分にある。アンプにとって最も危険なソプラノの熱唱を常識的な範囲をいささかオーバーした音量で鳴らしても、「L-507uX」のパワーメーターの針はマイナス領域にとどまっていた。これならばどのようにハードな使い方をしてもスピーカーや「L-507uX」の自身が破損することはないだろう。
■「総額100万円をはるかに超えるセパレート型を凌駕している部分すらある」
本機はハイエンドクラスのサウンドをリーズナブルな価格で実現したい愛好家にお薦めである。本機のスピーカードライブ能力は総額100万円を超えるセパレート型に拮抗しており、音楽的にはその種の製品を凌駕している部分すらある。
ミドルクラスのトールボーイ型との組み合わせが最も順当なシステムアップではあるが、ドライブが極端に困難な平面型のスピーカーを中古市場で手に入れたとしても、アンプが力不足になることはないだろう。
もうひとつ考えられるのは、思いっきり安価な2ウェイ・ブックシェルフ型機との組み合わせだ。湯水のごとくカネを使ったハイエンドシステムのオーナーが真っ青になるほどの、均整美を有するサウンドが得られるはずである。
ラックスマンのAB級動作式プリメインアンプの「L-507」系がモデルチェンジし、「L-507uX」となった(関連ニュース)。本機は「L-507u」の後継機という位置づけにある。本機の登場によって、ラックスマンのプリメインアンプは全機種が「Xバージョン」になった。
前モデルとの大きな違いは、終段回路が3パラレル・プッシュプル化されたことである。これによって4Ω時でも理論通りの最大出力が得られるようになるとともに、スピーカーのドライブ能力が大幅に向上した。
なお、同社が3パラレル・プッシュプル回路を搭載するのは最上級機に限られていることから、今後は本機がAB級動作のプリメインアンプのトップモデルとして君臨することになる。
外見上の大きな変更点はボディのサイズで、X系のナロー&トールな筐体が与えられた。サイズの変化にともなって、内部ではドラスティックな進歩が起こっていることが推測される。
前作「L-507u」はスピーカー端子がリアパネルの右側にあったが、本機ではボトム側の中央に集約されている。これはボトム側の左右にマウントされた弟機の「L-505uX」とも異なるもので、開発者は筐体サイズの変更に際して、信号経路を徹底的に見直したようである。ご存じのように、同じ回路図のアンプを作っても配線の引き回しによって音は変わってくる。本機の外観を見ていると、配線が芸術の域にまで到達しているのではないかと思われるのである。
■「音像の立ち姿がより美しく、音場の聴感上のS/N比もより向上」
試聴は音元出版の試聴室で行った。スピーカーはB&Wの「804ダイヤモンド」を、ディスクプレーヤーはアキュフェーズの「DP-900/DC-901」を用いた。
まずは本機の操作感についてご報告しておこう。本機のボリュームとセレクターノブの感触は世界的にみても第一級である。とくにボリュームノブの繊細感は天下一品で、操作に慣れれば思った通りの音量が即座に得られる。
高域と低域のトーンコントロールノブも使いやすく、リモコンでオン/オフできるラウドネス機能と併せて使えば、深夜にひっそりと聴く場合でも高解像度な音質が得られるだろう。リアパネルは非常にしっかりと作られており、ケーブルの着脱は極めてしやすい。
さて、肝心なサウンドである。直接比較したわけではないが、前のモデルよりも音像の立ち姿がより美しく、音場の聴感上のS/N比もより向上したようだ。低域のドライブ能力は上々だ。
試聴に用いた804ダイヤモンドにマウントされたプラー振動板のダブルウーファーをグリップするのは、上位モデルと同じくらい、いや、小口径&ダブルであるがゆえに、場合によってはそれ以上に難しい。並みのアンプでは低音が空振りになることもしばしばあるのだが、「L-507uX」は低音が過大に入った録音でも常にウーファーを実音領域で動作させる。それにとどまらずバスレフダクトの共振すらグリップしているようだ。
B&Wのスピーカーのバスレフダクトには風切音防止のためのゴルフボールを思わせるディンプルがつけられているのだが、これはなかなかの曲者で、並みのアンプだと低音が大人しくなりすぎてしまうきらいがある。しかしながら「L-507uX」はエンクロージャー内部の空気を十分に動かすとともに、ディンプルの効果を尊重しつつもバスレフダクトから勢いのある重低音を放射させるのである。
高域のドライブ能力もすばらしい。このスピーカーのダイヤモンドトゥイーターは驚異的なポテンシャルを有してはいるものの、並みのアンプでは十全に動作させるのが難しく、聴感上のS/N比は高いものの、音場感が喪失するケースもなくはない。
しかしながら「L-507uX」は小音量から大音量に至るまでダイヤモンドトゥイーターをしっかりとグリップし、豊かで精密な空間を出現させてくれた。これは音楽にとって非常に大事なことで、演奏の意味合いを決定づける音と音の間にあるタイミングを把握するのに非常に効果的な振る舞いなのである。
また、高域のパワーも十二分にある。アンプにとって最も危険なソプラノの熱唱を常識的な範囲をいささかオーバーした音量で鳴らしても、「L-507uX」のパワーメーターの針はマイナス領域にとどまっていた。これならばどのようにハードな使い方をしてもスピーカーや「L-507uX」の自身が破損することはないだろう。
■「総額100万円をはるかに超えるセパレート型を凌駕している部分すらある」
本機はハイエンドクラスのサウンドをリーズナブルな価格で実現したい愛好家にお薦めである。本機のスピーカードライブ能力は総額100万円を超えるセパレート型に拮抗しており、音楽的にはその種の製品を凌駕している部分すらある。
ミドルクラスのトールボーイ型との組み合わせが最も順当なシステムアップではあるが、ドライブが極端に困難な平面型のスピーカーを中古市場で手に入れたとしても、アンプが力不足になることはないだろう。
もうひとつ考えられるのは、思いっきり安価な2ウェイ・ブックシェルフ型機との組み合わせだ。湯水のごとくカネを使ったハイエンドシステムのオーナーが真っ青になるほどの、均整美を有するサウンドが得られるはずである。