公開日 2012/11/16 10:30
革命的な進化を遂げた ー 東芝<レグザ>「Z7」シリーズの全貌に迫る
【特別企画】フラグシップモデルの画質・音質徹底レポート
東芝<レグザ>のフラグシップモデル「Z7」シリーズは、テレビ視聴に革新をもたらす「タイムシフトマシン」の機能をさらに進化させただけでなく、画質・音質の面でも大きな進化を遂げている。評論家の大橋氏が本機の魅力を徹底解剖する。
革命的な進化を遂げた<レグザ>「Z7」シリーズ
需要の踊り場にいるテレビを活性化させることを目的に、テレビのリーディングメーカー東芝が今期課したことは、他社の追随を許さない「東芝らしく」尖鋭なテレビを<レグザ>の新フラグシップとして送り出すことだった。
いわゆる一般的にスマートテレビと称するテレビは、アプリを追加してI/Pコンテンツを提供するものが多いが、どこまでユーザーに受け入れられているのかは疑問だ。テレビ番組が充実している日本ならではの、もっと新しい価値を提案できないだろうか?今回の「東芝らしさ」は、この命題に対する回答として、セルレグザで初搭載したタイムシフトマシン(地デジ6チャンネルの番組一時保管)で保管された膨大な番組の中から、ユーザーが観たい番組を探すのではなく、やはり同社が先鞭をつけたクラウドサービス等を組み合わせて、テレビが観たい番組をピックアップし、ユーザーに薦めてくれるという画期的な機能を盛り込んだ2K最高画質のテレビを作り出したことだ。
USB-HDD録画というコンセプトを初めて提案したのも東芝、タイムシフトマシンも東芝、それをクラウドも活用することで高機能化し、<レグザ>7周年の2012年にフラグシップを象徴する「Z」型番に仕立て上げて、本シリーズ「Z7」が誕生したのである。
「セルレグザ」や「ZG2シリーズ」のユーザーサーベイを分析して明らかになったこと。それは、6ch同時録画しても、録った番組を観切れないのではないかという懐疑が購入をためらわせる理由として存在したことだった。しかし、一度タイムシフトマシンを使ったユーザーはもう後には戻れないことも分析済み。このギャップは逆に潜在的なタイムシフトマシンユーザーが膨大にいることを暗示している。
もう一つのハードルはHDDが内蔵型だったので、好きなタイプや容量のHDDを選べないことにあった。これらを乗り越えて、タイムシフトマシンの高いユーザビリティを広く開放することが今回のシリーズの狙いにあった。
そこで「Z7」シリーズは、USBハードディスクを外付け対応とし、さらにタイムシフトマシンを最大限に活用する新機能「ざんまいプレイ」を搭載した。それは、サーチエンジンを駆使してタイムシフトマシンで一時保管された番組の「検索機能の充実」である。
さらに、<レグザ>のクラウド新サービスと結びつけることで、番組単位からシーン単位にまでその検索機能を充実させ、テレビの新たな視聴スタイルを提案。これで私たちユーザーが新たなフィールドを手にしたことは間違いない。静かに進行する「テレビ革命」の担い手が東芝なのである。
新しいフラグシップ「Z7」が進化を遂げたポイント
それでは、本シリーズのプロフィールを詳しく紹介することにしよう。タイムシフトマシン機能は、タイムシフトマシン対応USBハードディスク(別売)を接続して使用する。外付けにすることでハードディスクの容量が選べるのもメリットとなる。東芝純正品は背面に密着する薄型形状なので、内蔵HDD感覚で組み合わせが可能だ。
そして、本機に搭載されるデジタルチューナーは、地上デジタルチューナー9基、BS・110度CSチューナーが2基という構成。超薄型化のために、ZG2に搭載した6局対応地デジ用チューナーをブースター付きのシリコンチューナーにし小型・ワンボックス化した。
ディスプレイとして本機を見てみよう。IPS方式パネルを使用。2倍速(120Hz)駆動パネルだが「アクティブスキャン240」に対応する。注目したいのが「アドバンスド・クリアパネル」の新採用。表面の反射を抑えつつクリアパネルの画質の良さを引き出した新発想の光沢パネルである。
映像のより深い部分に分け入ると、高画質を司るのは独自の映像エンジン「レグザエンジンCEVO Duo」だ。前モデルに引き続いてクロマ(色)信号の処理に東芝独自のアプローチが見られる。外部プログレッシブ信号入力時に、キャプチャーバッファを4:4:4処理とすることで色解像度を向上させた他、新たに動き対応非巡回型の3Dカラーノイズリダクションを搭載、ライブの照明等で目に付くカラーノイズを抑えている。
このほかにも時分割制御方式のヒストグラム検出回路を搭載した。従来は肌色等1種類の色の輝度ヒストグラムを取得していたが、今回CPUの能力をフル活用し、ヒストグラム検出回路をフレームごとにパラメータ設定を変更させながら動作させることで、複数の色の輝度ヒストグラムを取得できるようになった。この結果、グラフィックスNR、色階調リアライザー、色質感リアライザーを稼動、前2つはアニメーションのノイズ低減や色階調の改善、後者は例えばゴルフ中継の芝生のアンジュレーション(起伏)の鮮明化を行う。
同時にコンテンツモードの見直しも行われた。アニメモードは3つに分化、「デジタルアニメ(放送)」は、MPEG2のモスキートノイズが出やすい振幅領域にあえて超解像をかけないまま輪郭線をシャープにする設定。「デジタルアニメ(BD)」は、BDを想定し積極的に全体からディテールを引き出し精細感を向上させる設定。「レトロアニメ」は、セルアニメ旧作を想定し、3DNRでランダムノイズを軽減し、ディテールを抑えて視覚妨害のない映像にする。ゲームモードはノーマル、モニター、レトロに分化、モニターはPCモニターの画質に近づける。レトロはスーパーファミコンやWiiのバーチャルコンソールに適した設定である。
東芝が先鞭をつけた超解像は前モデルから引き続き「レゾリューションプラス7」を搭載、カラーテクスチャー復元(彩度に応じて輝度信号の高域成分を強調・加算し潰れやすい色の濃い映像の質感を復元する)が他機にない特長だ。
自動画質調整機能「おまかせドンピシャ高画質」は、照明、外光に加えて新たに「壁の色」を追加、視野に入っている壁の色の最大面積領域の色を「明暗」「白黒〜赤」をマニュアルで入力、前者をバックライトの制御で、後者をホワイトバランスの調整で肉眼の補色感度を利用して最適化する。
「タイムシフトマシン」の魅力を加速させる「ざんまいプレイ」
さて、先に触れたとおり非常に機能が豊富なZ7シリーズだが、ここでは新たに搭載された「ざんまいプレイ」とレグザクラウドサービス「TimeOn(タイムオン)の代表的な機能を紹介する。
「ざんまいプレイ」はEPG情報を利用し、タイムシフトマシンで一時保管した番組を独自のアルゴリズムによって検索し、ピックアップ、レコメンドする機能だ。視聴中の番組と同ジャンルの番組や関連する番組を子画面に表示、例えばゴルフ番組を視聴中なら、ゴルフのレッスン番組や海外のゴルフ中継などが、映画を観ていれば他の映画番組が表示され、すぐに観ることができる。その名の通りゴルフざんまい、映画ざんまいが味わえる。その他、自分で探さなくてもその人の視聴履歴からいつも観ている番組や嗜好に一致した番組探して提示してくれたり、気になる用語・人名に関連した番組を紹介する機能など、冒頭に書いたテレビ放送システムと検索エンジンの見事な合体がすでに始まったのである。
さらに、レグザクラウドサービス「TimeOn(タイムオン)」の代表的な機能が「みどころシーン再生」だ。これは「クラウド」にある番組情報を活用し、好きなアーティストの名前などのキーワードを入力すると、該当するシーンまで抽出してくれる。情報番組の1コーナー、歌番組の歌唱シーン、バラエティへの出演シーンなどを探してダイレクト再生できる。そのほか、友人からの情報や最も高い頻度で視聴されているシーンをクラウド情報から反映させることも可能な画期的なサービスだ。
REGZA Z7シリーズの「画質」「音質」に迫る
それでは最後に<レグザ>Z7シリーズの55V型モデル「55Z7」の画質を検証してみよう。最初に視聴したBDはSF大作『プロメテウス』(輸入盤)。宣伝では謳っていないが、本作は『エイリアン』第1作のリドリー・スコット自身によるセルフリメイクで、異星のエイリアンの基地が主要な舞台である。
暗いシーンが多くIPS方式の本機にはどちらかというと不利なはずだが、ガンマ設定が的確で無用な黒の引き込みを敢えて避け、正確な暗部階調に徹したモニター的潔さに好感した。輝度のボトムに近い階調の緻密さに驚かされる。セット美術のテクスチャーの描出力は圧巻で、劇場で観た時に気にならなかった「いかにも樹脂でモールド成型しました」という出来映えがバレバレで苦笑させられたほど。今回は超解像オンで視聴した。
「色画質」が本機のテーマの一つだが、彩度の高い部分でのS/Nと解像度の改善が奏功していて、黒に近い灰色で綾なす部分で不要な色成分の滲み、ちらつきが根絶されていて、思わず鳥肌が立つ冷たく硬質な色彩が描出される。
BDのもう一本が『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』。メリル・ストリープに2度目のアカデミー主演女優賞をもたらしたことに加え、ベストメーキャップ賞を受賞した本作は、老境の元首相の回想という設定。2人の主演女優のクローズアップ等がソフトフォーカス気味に撮影されている。しかし、現代映画らしく実は非常に情報量が豊かである。解像力のないテレビの場合、単に甘くボンヤリした映像になってしまうのだが、本機は解像の手を緩めない。
この映画は保守政治家サッチャーの政治信条と功績にあえて踏み込まず、職業婦人(古い!)としての生き様と喜怒哀楽を描くが、本機の場合、老若をあえてぼかさず鋭く対比的に描くことで、肉体を持った一人の女の連続した内面が逆説的に浮かび上がるのだ。女流監督が「こう描きたかった」という意図が、まさにこの映像に表現されていると言えるだろう。
地味なトピックかもしれないが、音質の面では「レグザサウンドイコライザー」を新しく搭載していることも付け加えておこう。超薄型テレビの音質改善と、リスニングエリアの拡大を図っている。
BDオペラ輸入盤『ラ・ディドーネ』第一幕は、舞台上に設えられたトロイアの城壁の高みから女声歌手が歌いかけるが、広角ショットで捉えているため、画面の上隅に歌手がいる。普通に再生すると声が下から聴こえ、映像との不一致が大きいが、本機の場合、仮想音源シミュレートで発声位置が上に引き上げられ、違和感のないオペラ鑑賞が楽しめる。
本機はパッシブ方式3Dに対応している。別売のシアターグラス「FPT-P200」は非常に軽量で装着感が良い。『タイタニック3D』は輝度落ちと色彩バランスの変化が少なく、本作でしばしば目立つ広角ショット(冒頭の出航シーン)での周辺部のクロストークがよく抑えられている。映画ソフトに重点を置くなら迷わずZ7だろう。
<レグザ>Z7シリーズ「55Z7」は、4K革命が進むさなかに登場した、いかにも東芝らしい尖鋭な存在感の2Kテレビの力作である。デザイン面でも、スリムデザインを極限まで追求したフォルムといい、ガラス素材の質感高いマテリアルといい、テレビの理想像がそこにある。東芝<レグザ>に集大成の文字はない。つねに未来を映し出すのが<レグザ>であり、その最新フラグシップにふさわしく本機に「Z」の型番が与えられたのである。
【SPEC】
<55Z7>
●サイズ:55V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:218W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:1234W×795H×288Dmm(卓上スタンド含) ●質量:26.5kg(卓上スタンド含)
<47Z7>
●サイズ:47V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:180W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:1064W×696H×235Dmm(卓上スタンド含) ●質量:19.0kg(卓上スタンド含)
<42Z7>
●サイズ:42V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:154W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:954W×634H×215Dmm(卓上スタンド含) ●質量:15.5kg(卓上スタンド含)
※1 タイムシフトマシン機能等の利用には別売のタイムシフトマシン対応USBハードディスクが必要です。
※2 タイムシフトマシン機能のシステムメンテナンス用に設定した時間は一時保管が一時中断されます。
※3 「タイムシフトマシン」「ざんまいプレイ」「TimeOn」の機能・サービスには各種制限や制約があります。詳細はHP等で確認下さい。
※4「TimeOn」は、インターネット接続が必要です。
※5 本記事で紹介している<レグザ>Z7シリーズのGUIはイメージです。
【問い合わせ先】
東芝テレビご相談センター
TEL/0120-97-9674
◆大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。
革命的な進化を遂げた<レグザ>「Z7」シリーズ
需要の踊り場にいるテレビを活性化させることを目的に、テレビのリーディングメーカー東芝が今期課したことは、他社の追随を許さない「東芝らしく」尖鋭なテレビを<レグザ>の新フラグシップとして送り出すことだった。
いわゆる一般的にスマートテレビと称するテレビは、アプリを追加してI/Pコンテンツを提供するものが多いが、どこまでユーザーに受け入れられているのかは疑問だ。テレビ番組が充実している日本ならではの、もっと新しい価値を提案できないだろうか?今回の「東芝らしさ」は、この命題に対する回答として、セルレグザで初搭載したタイムシフトマシン(地デジ6チャンネルの番組一時保管)で保管された膨大な番組の中から、ユーザーが観たい番組を探すのではなく、やはり同社が先鞭をつけたクラウドサービス等を組み合わせて、テレビが観たい番組をピックアップし、ユーザーに薦めてくれるという画期的な機能を盛り込んだ2K最高画質のテレビを作り出したことだ。
USB-HDD録画というコンセプトを初めて提案したのも東芝、タイムシフトマシンも東芝、それをクラウドも活用することで高機能化し、<レグザ>7周年の2012年にフラグシップを象徴する「Z」型番に仕立て上げて、本シリーズ「Z7」が誕生したのである。
「セルレグザ」や「ZG2シリーズ」のユーザーサーベイを分析して明らかになったこと。それは、6ch同時録画しても、録った番組を観切れないのではないかという懐疑が購入をためらわせる理由として存在したことだった。しかし、一度タイムシフトマシンを使ったユーザーはもう後には戻れないことも分析済み。このギャップは逆に潜在的なタイムシフトマシンユーザーが膨大にいることを暗示している。
もう一つのハードルはHDDが内蔵型だったので、好きなタイプや容量のHDDを選べないことにあった。これらを乗り越えて、タイムシフトマシンの高いユーザビリティを広く開放することが今回のシリーズの狙いにあった。
そこで「Z7」シリーズは、USBハードディスクを外付け対応とし、さらにタイムシフトマシンを最大限に活用する新機能「ざんまいプレイ」を搭載した。それは、サーチエンジンを駆使してタイムシフトマシンで一時保管された番組の「検索機能の充実」である。
さらに、<レグザ>のクラウド新サービスと結びつけることで、番組単位からシーン単位にまでその検索機能を充実させ、テレビの新たな視聴スタイルを提案。これで私たちユーザーが新たなフィールドを手にしたことは間違いない。静かに進行する「テレビ革命」の担い手が東芝なのである。
新しいフラグシップ「Z7」が進化を遂げたポイント
それでは、本シリーズのプロフィールを詳しく紹介することにしよう。タイムシフトマシン機能は、タイムシフトマシン対応USBハードディスク(別売)を接続して使用する。外付けにすることでハードディスクの容量が選べるのもメリットとなる。東芝純正品は背面に密着する薄型形状なので、内蔵HDD感覚で組み合わせが可能だ。
そして、本機に搭載されるデジタルチューナーは、地上デジタルチューナー9基、BS・110度CSチューナーが2基という構成。超薄型化のために、ZG2に搭載した6局対応地デジ用チューナーをブースター付きのシリコンチューナーにし小型・ワンボックス化した。
ディスプレイとして本機を見てみよう。IPS方式パネルを使用。2倍速(120Hz)駆動パネルだが「アクティブスキャン240」に対応する。注目したいのが「アドバンスド・クリアパネル」の新採用。表面の反射を抑えつつクリアパネルの画質の良さを引き出した新発想の光沢パネルである。
映像のより深い部分に分け入ると、高画質を司るのは独自の映像エンジン「レグザエンジンCEVO Duo」だ。前モデルに引き続いてクロマ(色)信号の処理に東芝独自のアプローチが見られる。外部プログレッシブ信号入力時に、キャプチャーバッファを4:4:4処理とすることで色解像度を向上させた他、新たに動き対応非巡回型の3Dカラーノイズリダクションを搭載、ライブの照明等で目に付くカラーノイズを抑えている。
このほかにも時分割制御方式のヒストグラム検出回路を搭載した。従来は肌色等1種類の色の輝度ヒストグラムを取得していたが、今回CPUの能力をフル活用し、ヒストグラム検出回路をフレームごとにパラメータ設定を変更させながら動作させることで、複数の色の輝度ヒストグラムを取得できるようになった。この結果、グラフィックスNR、色階調リアライザー、色質感リアライザーを稼動、前2つはアニメーションのノイズ低減や色階調の改善、後者は例えばゴルフ中継の芝生のアンジュレーション(起伏)の鮮明化を行う。
同時にコンテンツモードの見直しも行われた。アニメモードは3つに分化、「デジタルアニメ(放送)」は、MPEG2のモスキートノイズが出やすい振幅領域にあえて超解像をかけないまま輪郭線をシャープにする設定。「デジタルアニメ(BD)」は、BDを想定し積極的に全体からディテールを引き出し精細感を向上させる設定。「レトロアニメ」は、セルアニメ旧作を想定し、3DNRでランダムノイズを軽減し、ディテールを抑えて視覚妨害のない映像にする。ゲームモードはノーマル、モニター、レトロに分化、モニターはPCモニターの画質に近づける。レトロはスーパーファミコンやWiiのバーチャルコンソールに適した設定である。
東芝が先鞭をつけた超解像は前モデルから引き続き「レゾリューションプラス7」を搭載、カラーテクスチャー復元(彩度に応じて輝度信号の高域成分を強調・加算し潰れやすい色の濃い映像の質感を復元する)が他機にない特長だ。
自動画質調整機能「おまかせドンピシャ高画質」は、照明、外光に加えて新たに「壁の色」を追加、視野に入っている壁の色の最大面積領域の色を「明暗」「白黒〜赤」をマニュアルで入力、前者をバックライトの制御で、後者をホワイトバランスの調整で肉眼の補色感度を利用して最適化する。
「タイムシフトマシン」の魅力を加速させる「ざんまいプレイ」
さて、先に触れたとおり非常に機能が豊富なZ7シリーズだが、ここでは新たに搭載された「ざんまいプレイ」とレグザクラウドサービス「TimeOn(タイムオン)の代表的な機能を紹介する。
「ざんまいプレイ」はEPG情報を利用し、タイムシフトマシンで一時保管した番組を独自のアルゴリズムによって検索し、ピックアップ、レコメンドする機能だ。視聴中の番組と同ジャンルの番組や関連する番組を子画面に表示、例えばゴルフ番組を視聴中なら、ゴルフのレッスン番組や海外のゴルフ中継などが、映画を観ていれば他の映画番組が表示され、すぐに観ることができる。その名の通りゴルフざんまい、映画ざんまいが味わえる。その他、自分で探さなくてもその人の視聴履歴からいつも観ている番組や嗜好に一致した番組探して提示してくれたり、気になる用語・人名に関連した番組を紹介する機能など、冒頭に書いたテレビ放送システムと検索エンジンの見事な合体がすでに始まったのである。
さらに、レグザクラウドサービス「TimeOn(タイムオン)」の代表的な機能が「みどころシーン再生」だ。これは「クラウド」にある番組情報を活用し、好きなアーティストの名前などのキーワードを入力すると、該当するシーンまで抽出してくれる。情報番組の1コーナー、歌番組の歌唱シーン、バラエティへの出演シーンなどを探してダイレクト再生できる。そのほか、友人からの情報や最も高い頻度で視聴されているシーンをクラウド情報から反映させることも可能な画期的なサービスだ。
REGZA Z7シリーズの「画質」「音質」に迫る
それでは最後に<レグザ>Z7シリーズの55V型モデル「55Z7」の画質を検証してみよう。最初に視聴したBDはSF大作『プロメテウス』(輸入盤)。宣伝では謳っていないが、本作は『エイリアン』第1作のリドリー・スコット自身によるセルフリメイクで、異星のエイリアンの基地が主要な舞台である。
暗いシーンが多くIPS方式の本機にはどちらかというと不利なはずだが、ガンマ設定が的確で無用な黒の引き込みを敢えて避け、正確な暗部階調に徹したモニター的潔さに好感した。輝度のボトムに近い階調の緻密さに驚かされる。セット美術のテクスチャーの描出力は圧巻で、劇場で観た時に気にならなかった「いかにも樹脂でモールド成型しました」という出来映えがバレバレで苦笑させられたほど。今回は超解像オンで視聴した。
「色画質」が本機のテーマの一つだが、彩度の高い部分でのS/Nと解像度の改善が奏功していて、黒に近い灰色で綾なす部分で不要な色成分の滲み、ちらつきが根絶されていて、思わず鳥肌が立つ冷たく硬質な色彩が描出される。
BDのもう一本が『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』。メリル・ストリープに2度目のアカデミー主演女優賞をもたらしたことに加え、ベストメーキャップ賞を受賞した本作は、老境の元首相の回想という設定。2人の主演女優のクローズアップ等がソフトフォーカス気味に撮影されている。しかし、現代映画らしく実は非常に情報量が豊かである。解像力のないテレビの場合、単に甘くボンヤリした映像になってしまうのだが、本機は解像の手を緩めない。
この映画は保守政治家サッチャーの政治信条と功績にあえて踏み込まず、職業婦人(古い!)としての生き様と喜怒哀楽を描くが、本機の場合、老若をあえてぼかさず鋭く対比的に描くことで、肉体を持った一人の女の連続した内面が逆説的に浮かび上がるのだ。女流監督が「こう描きたかった」という意図が、まさにこの映像に表現されていると言えるだろう。
地味なトピックかもしれないが、音質の面では「レグザサウンドイコライザー」を新しく搭載していることも付け加えておこう。超薄型テレビの音質改善と、リスニングエリアの拡大を図っている。
BDオペラ輸入盤『ラ・ディドーネ』第一幕は、舞台上に設えられたトロイアの城壁の高みから女声歌手が歌いかけるが、広角ショットで捉えているため、画面の上隅に歌手がいる。普通に再生すると声が下から聴こえ、映像との不一致が大きいが、本機の場合、仮想音源シミュレートで発声位置が上に引き上げられ、違和感のないオペラ鑑賞が楽しめる。
本機はパッシブ方式3Dに対応している。別売のシアターグラス「FPT-P200」は非常に軽量で装着感が良い。『タイタニック3D』は輝度落ちと色彩バランスの変化が少なく、本作でしばしば目立つ広角ショット(冒頭の出航シーン)での周辺部のクロストークがよく抑えられている。映画ソフトに重点を置くなら迷わずZ7だろう。
<レグザ>Z7シリーズ「55Z7」は、4K革命が進むさなかに登場した、いかにも東芝らしい尖鋭な存在感の2Kテレビの力作である。デザイン面でも、スリムデザインを極限まで追求したフォルムといい、ガラス素材の質感高いマテリアルといい、テレビの理想像がそこにある。東芝<レグザ>に集大成の文字はない。つねに未来を映し出すのが<レグザ>であり、その最新フラグシップにふさわしく本機に「Z」の型番が与えられたのである。
【SPEC】
<55Z7>
●サイズ:55V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:218W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:1234W×795H×288Dmm(卓上スタンド含) ●質量:26.5kg(卓上スタンド含)
<47Z7>
●サイズ:47V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:180W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:1064W×696H×235Dmm(卓上スタンド含) ●質量:19.0kg(卓上スタンド含)
<42Z7>
●サイズ:42V型 ●映像処理システム:レグザエンジンCEVO Duo ●パネル:IPS方式 倍速LEDパネル(フルHDアドバンスド・クリアパネル) ●解像度:1,920×1,080 ●コントラスト比:1600対1(ダイナミックコントラスト:580万対1) ●チューナー:地上デジタル×9、BS・110度CSデジタル×2 ●入出力端子:HDMI入力×4、D5入力×1、ビデオ入力×1、HDMIアナログ音声入力×1(音声入力端子用と兼用)、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB×4(タイムシフトマシン専用2/通常録画用1/汎用1)、LAN×1 ●消費電力:154W(リモコン待機時:0.15W)●外形寸法:954W×634H×215Dmm(卓上スタンド含) ●質量:15.5kg(卓上スタンド含)
※1 タイムシフトマシン機能等の利用には別売のタイムシフトマシン対応USBハードディスクが必要です。
※2 タイムシフトマシン機能のシステムメンテナンス用に設定した時間は一時保管が一時中断されます。
※3 「タイムシフトマシン」「ざんまいプレイ」「TimeOn」の機能・サービスには各種制限や制約があります。詳細はHP等で確認下さい。
※4「TimeOn」は、インターネット接続が必要です。
※5 本記事で紹介している<レグザ>Z7シリーズのGUIはイメージです。
【問い合わせ先】
東芝テレビご相談センター
TEL/0120-97-9674
◆大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。