公開日 2013/01/16 10:39
DSD対応USB-DAC一斉レビュー<第5回>コード「Qute HD」
大本命7モデルを野村ケンジが一斉テスト
DSD対応USB-DACを7モデルにわたって一斉試聴する今回の企画。第5回目は、CHORD(コード)のコンパクトなコンポーネントライン“Chordetteシリーズ”のUSB-DAC「QuteHD」(関連ニュース)をレビューする。
※第1回 ラトック「RAL-DSDHA1」「RAL-DSDHA2」のレビューは(こちら)
※第2回 コルグ「DS-DAC-10」のレビューは(こちら)
※第3回 フォステクス「HP-A8」のレビューは(こちら)
※第4回 ティアック「UD-501」のレビューは(こちら)
■スタイリッシュかつ高音質なコンパクトDAC「Qute HD」
デスクトップにピッタリといえるコンパクトなボディサイズで、ディスプレイスタンドのような専用ラックを用意するなど、サウンドだけでなく設置スタイルについてもコーディネイトされているCHORDの“Chordetteシリーズ”。ラインナップには、Bluetooth搭載DACからヘッドホンアンプ、フォノイコライザーまで、様々なモデルが用意されているが、その中で最新モデルにして最大の注目を集めているのがこの「Qute HD」だ。
トラックサークル型ともいうべきユニークなデザインをもつ重厚なアルミボディや、再生されている音楽ファイルのビットレートなどにより輝きの色が変わる丸窓など、CHORDらしい洒落っ気に満ちた「Qute HD」だが、最大の注目ポイントはやはりDSDファイルの再生だろう。
一般的な汎用DACではなく、FPGAパッケージに上位モデル「QBD76/HD」と同じアルゴリズムを搭載するというオリジナルのシステムを用意することで、DoP(DSD over PCM)対応によるDSDファイル再生とともに、アシンクロナスUSB転送やデジタルPLLなどの高音質化機能も搭載。リニアPCMに関しては、384kHz/32bitまで対応(現時点ではUSB接続は192kHz/32bitまでとなっているが今後アップグレード予定)するという高機能ぶりを発揮。スペック面に関しては、最先端モデルならではの充実した内容を誇っている。
デザイン面でもスペック面でも魅力的な「Qute HD」だが、実際に試聴すると、ひとつだけ注意しなければならないポイントがあった。それは、DSD音源とリニアPCM音源が切り替わる際に、かなり盛大にポップノイズが出ることだ。これは、「Qute HD」に限った話ではないのだが、特に顕著に感じたのも事実。ウーファーのコーンがフルバンプしてしまいそうなほどの信号なので、特に耐入力の低い小型スピーカーと組み合わせる場合は要注意といえる。ただし、再生プレーヤー側のプレイリストでDSDとWAVを混同させないよう工夫するなど、ちょっとした気づかいをすればまず問題はない。
それに対して、再生に関する安定度はかなり高いと感じた。今回の試聴テストのように機器を頻繁に換えてDSD再生を行おうとすると、その都度設定を変えないと再生されなかったり、再生ができても音が安定しなかったりする場合があり、DSD環境はまだまだ発展途上だなと感じることが多い。しかし、「Qute HD」に関してはそういった不安定さは全くといっていいほど起こらなかった。
さて、肝心のサウンドはというと、こちらもなかなかのもの。DSDファイルを再生すると、丁寧できめ細やかな、まさに「DSD方式から連想される」イメージ通りのサウンドが楽しめる。いっぽうで、ユニークに感じたのがリニアPCMの音色傾向だ。ハイレゾ音源を再生すると、普段よりきめ細やかさが増したかのような、刺激臭の少ない、柔らかい印象のサウンドが聴こえてきたのだ。この傾向はCDリッピング音源も同じ。本機がもともとこのような、きめ細やかで柔らかいキャラクターを持ち合わせているようだ。
とはいえ、芯はしっかりしているし、S/N感も高い。当たり障りのない音というよりも、メイン楽器をしっかりと楽しませるタイプといったイメージだ。おかげで、小編成のクラシックなどは、かなり美しい響きを堪能することができる。一方、女性ボーカルも特徴的だ。普段よりも線は細くなるが、伸びやかで印象的な歌声を聴かせてくれる。好みが分かれるかもしれないが、こういった音楽表現もなかなか魅力的だ。ピュアで美しい音楽をゆったりとした気分で楽しみたい、という人にはとてもマッチしそうな製品といえる。
【執筆者プロフィール】
野村ケンジ
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。
※第1回 ラトック「RAL-DSDHA1」「RAL-DSDHA2」のレビューは(こちら)
※第2回 コルグ「DS-DAC-10」のレビューは(こちら)
※第3回 フォステクス「HP-A8」のレビューは(こちら)
※第4回 ティアック「UD-501」のレビューは(こちら)
■スタイリッシュかつ高音質なコンパクトDAC「Qute HD」
デスクトップにピッタリといえるコンパクトなボディサイズで、ディスプレイスタンドのような専用ラックを用意するなど、サウンドだけでなく設置スタイルについてもコーディネイトされているCHORDの“Chordetteシリーズ”。ラインナップには、Bluetooth搭載DACからヘッドホンアンプ、フォノイコライザーまで、様々なモデルが用意されているが、その中で最新モデルにして最大の注目を集めているのがこの「Qute HD」だ。
トラックサークル型ともいうべきユニークなデザインをもつ重厚なアルミボディや、再生されている音楽ファイルのビットレートなどにより輝きの色が変わる丸窓など、CHORDらしい洒落っ気に満ちた「Qute HD」だが、最大の注目ポイントはやはりDSDファイルの再生だろう。
一般的な汎用DACではなく、FPGAパッケージに上位モデル「QBD76/HD」と同じアルゴリズムを搭載するというオリジナルのシステムを用意することで、DoP(DSD over PCM)対応によるDSDファイル再生とともに、アシンクロナスUSB転送やデジタルPLLなどの高音質化機能も搭載。リニアPCMに関しては、384kHz/32bitまで対応(現時点ではUSB接続は192kHz/32bitまでとなっているが今後アップグレード予定)するという高機能ぶりを発揮。スペック面に関しては、最先端モデルならではの充実した内容を誇っている。
デザイン面でもスペック面でも魅力的な「Qute HD」だが、実際に試聴すると、ひとつだけ注意しなければならないポイントがあった。それは、DSD音源とリニアPCM音源が切り替わる際に、かなり盛大にポップノイズが出ることだ。これは、「Qute HD」に限った話ではないのだが、特に顕著に感じたのも事実。ウーファーのコーンがフルバンプしてしまいそうなほどの信号なので、特に耐入力の低い小型スピーカーと組み合わせる場合は要注意といえる。ただし、再生プレーヤー側のプレイリストでDSDとWAVを混同させないよう工夫するなど、ちょっとした気づかいをすればまず問題はない。
それに対して、再生に関する安定度はかなり高いと感じた。今回の試聴テストのように機器を頻繁に換えてDSD再生を行おうとすると、その都度設定を変えないと再生されなかったり、再生ができても音が安定しなかったりする場合があり、DSD環境はまだまだ発展途上だなと感じることが多い。しかし、「Qute HD」に関してはそういった不安定さは全くといっていいほど起こらなかった。
さて、肝心のサウンドはというと、こちらもなかなかのもの。DSDファイルを再生すると、丁寧できめ細やかな、まさに「DSD方式から連想される」イメージ通りのサウンドが楽しめる。いっぽうで、ユニークに感じたのがリニアPCMの音色傾向だ。ハイレゾ音源を再生すると、普段よりきめ細やかさが増したかのような、刺激臭の少ない、柔らかい印象のサウンドが聴こえてきたのだ。この傾向はCDリッピング音源も同じ。本機がもともとこのような、きめ細やかで柔らかいキャラクターを持ち合わせているようだ。
とはいえ、芯はしっかりしているし、S/N感も高い。当たり障りのない音というよりも、メイン楽器をしっかりと楽しませるタイプといったイメージだ。おかげで、小編成のクラシックなどは、かなり美しい響きを堪能することができる。一方、女性ボーカルも特徴的だ。普段よりも線は細くなるが、伸びやかで印象的な歌声を聴かせてくれる。好みが分かれるかもしれないが、こういった音楽表現もなかなか魅力的だ。ピュアで美しい音楽をゆったりとした気分で楽しみたい、という人にはとてもマッチしそうな製品といえる。
【執筆者プロフィール】
野村ケンジ
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。