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公開日 2013/10/17 12:00

パイオニア旗艦AVアンプ「SC-LX87」ー 山之内 正が実力を徹底検証

【特別企画】
山之内 正
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クラスDアンプを導入する理由として、効率の良さを活かして筐体を小型化できる点に注目が集まることが多い。実際に従来のアナログアンプに比べてコンパクトな製品が多いのは、デジタルアンプでは放熱対策を大幅に簡略化できるためだ。

パイオニアの2013年フラグシップAVアンプ「SC-LX87」

一方、筐体の小型化と同時に音質面でのメリットに注目してクラスDアンプを導入する例も存在する。パイオニアがAVアンプにデジタルアンプを導入したのはまさにそこに理由があり、2008年以降、「SC-LX90」を皮切りに積極的に導入を進め、結果として大きな成功を収めた。デジタルアンプの可能性を最大限に引き出すことを目標に、まずはフラグシップ機に導入したことが成功の秘密だろう。

性能面でのアドバンテージは、多チャンネル同時出力時の圧倒的なパワー、そして質感の高い低音再生に集約できる。私自身、クラスDの「ダイレクトエナジーHDアンプ」を積んだ同社の歴代モデルを聴いてきたが、特に低音の質感の高さにはいまも感心させられることが多い。

2011年に発売された「SC-LX85」以降は出力素子をIR社製のデバイスに変更し、回路構成と音質はいっそう洗練度を高めている。新旧モデルを聴き比べてみると、アタックと立ち下がりが俊敏さを増し、その結果として音場の透明感が大きく向上していることに気付くはずだ。9ch同時出力時のパワーは800Wを超えており、他社の同クラスのAVアンプを大きく上回っている。余裕あるパワーが生むスケールの大きさと見通しの良さが、この数年の80/70シリーズに共通する美点といえるだろう。

完成度を更に高めたクラスDアンプと
ESS「SABRE32 Ultra DAC」が生み出す音の新次元
再生可能音源の幅広さも最先端をゆく


この秋に登場した最新の「SC-LX87」は、DACを変更することによって、ダイレクトエナジーHDアンプの完成度をさらに高めたことが新しい。音質の吟味を重ねたうえで同社設計陣が新たに採用したDACは、ESS製の高性能デバイス「SABRE32 Ultra DAC」。ピュアオーディオ機器でも搭載例が多い人気の素子だが、本機は仕様と設計条件を全9chで完全に統一した点にアドバンテージがある。専用DAC基板上ではDACと周辺回路を等距離に配置してチャンネル間の条件を揃えるなど、精度の高い信号処理を実現しており、DACの性能を最大限まで引き出す努力を怠っていない。

本機から新たに搭載されたESS社の新DAC「SABRE32 Ultra DAC」(写真左)。全ch仕様を揃えたことで、「ダイレクトエナジーHDアンプ」(写真右)の全ch同一出力実現に大きく寄与している

効率の良いクラスDアンプを積むことによって、パワーアンプブロックが占める容積を最小に抑えられるわけだが、チャンネル数が多いAVアンプは特にそのメリットが大きい。パワーアンプ部が占めるスペースが小さくなると、DACと周辺回路など音質の要となる部分にも余裕が生まれ、今回のような妥協のない基板設計が可能になるのだ。もちろん、信号間の干渉を抑えるという点でも適度な物理スペースの確保は意味がある。

各種ファイル音源への対応は本機でさらに大きく進化し、いまやAVアンプのなかでも対応力の広さで最先端を行く存在になっている。本機ではギャップレス再生の対応、DSD音源のネイティブ再生という大きなステップアップを果たしており、特に後者はUSBメモリで5.6MHzと2.8MHzの両形式をサポート。さらにDSD配信に対応したNASと組み合わせることでDLNA再生でもDSDがかかるし、USB-DACモードでも2.8MHzのみながらDSD音源を聴くことができる。ネイティブ再生はSC-LX87だけのプレミアム機能なので、ネットワークオーディオに関心のある読者はぜひ本機を候補に入れておくことをお薦めする。

●視聴レポート
ESS製DACと「ダイレクトエナジーHDアンプ」のマッチングを検証

ここで実際に「SC-LX87」の音を聴いてみることにしよう。

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