公開日 2013/11/20 11:00
パナソニック「DMR-BZT9600」を検証 − DIGAのフラグシップがさらに進化した
VGP 2014 総合金賞受賞
パナソニックのDIGAフラグシップ機が、また長足の進歩を遂げた。HDMI2.0の最大転送レートに対応し、BDの4:2:0映像を、ダイレクトに4Kの4:4:4映像にアップコンバートし、出力することができる。音質対策にもさらにこだわり、画質・音質の両面でクオリティアップを実現した。その実力を山之内 正が検証する。
■BD収録の4:2:0映像をダイレクトに4K/4:4:4変換
DIGAのフラグシップ機はBDレコーダーの最先端を切り開く役割を担い続けてきたが、今年も期待を大きく超える進化を遂げ、その全貌を現した。4KとハイレゾオーディオというAV機器の2大潮流に照準を合わせて画質と音質を追い込み、確実な成果を上げている。まずは画質関連の注目技術から検証していこう。
映像信号の伝送方法は画質を大きく左右する。4Kディスプレイが浸透し始めた現在、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、再生機器とディスプレイ間の信号伝送を見直し、最良の結果を引き出す工夫が必要となる。具体的には4Kアップコンバートを再生機とディスプレイのどちらで行うかという問題があるが、本機は基本的に前者のスタンスをとる。BDの2K信号(4:2:0)をダイレクトに4K信号(4:4:4)にアップコンバートしてディスプレイに受け渡すことによって、ディスプレイ側でのアップコン処理に比べて画質劣化を抑えることができるというのが、その理由だ。
また、放送波、BD、DVDなど素材の種類を判別してそれぞれに最適なアップコン処理や超解像処理を適用できる点も、再生機器側で4Kアップコンを行うメリットととらえることができる。
その基本思想を支える技術として、HDMI2.0規格の最大転送レートによる4K/60p/36bit(4:2:2)出力をサポートし、さらに4Kアップコンバート時のマルチタップ処理能力を前作の1.3倍に高めたことが注目に値する。同社のTH-L65WT600などHDMI 2.0規格の最大転送レートに対応するディスプレイと組み合わせることにより、BDやHD放送を最高スペックの画質で楽しむ事ができる。
24bitから36bitへのビット拡張によってなめらかな階調再現を実現するマスターグレードビデオコーディング(MGVC)にももちろん対応しており、新たにbit出力を自動選択するモードを設けるなど、使い勝手を高めた。使用する4KディスプレイがHDMI2.0の映像フォーマットに対応していない場合でも、4:4:4から4:2:2への手動切り替えが不要になるメリットは大きい。
■スクリーン投影画質が向上、MGVCの効果も大きい
TH-L65WT600だけでなく、4Kプロジェクターとも組み合わせて本機の画質をじっくり検証した。本機の4Kアップコンバート及び超解像技術は、素材の情報量を最大限に引き出すことに主眼を置いており、精細な画を作り込むスタンスとは一線を画している。その姿勢は前作のBZT9300と同様だが、今回はマルチタップ処理の精度を上げるなど、画質改善につながる本質的なリファインを行っており、特にスクリーン投影時の質感向上が著しい。『007 スカイフォール』終盤のスコットランドの映像はその好例で、空撮シーンは現実と見紛うほど遠近感が豊かで、画面に吸い込まれそうな立体感がある。自然な立体感と緻密な質感の両立を狙うなら、画質モードを「ハイレゾシネマ」に切り替えて本機から4K信号を出力し、プロジェクター側の超解像をオフにするとよい。
MGVCの効果の大きさは前作でも確認済みだが、『009 RE:CYBORG』の暗部に目を向けると、階調表現がさらに緻密さを増し、微妙な階調差によってなめらかな立体感を引き出していることに気付く。明るいシーンも含めて画面全体の抜けが良くなることも以前確認していたが、その効果が事前の期待を大きく上回っている。実写作品の『藁の楯』では空気感や光線の微妙な揺らぎなど、アニメとはまた別の点で顕著な画質改善を見出せる。MGVCの真価を引き出す機器としても本機の存在意義は極めて大きい。
■ピュアオーディオ顔負けの音質対策でハイレゾにも対応
本機の筐体は共振の余地がないほどの高い剛性を誇る。しかし、今回はそれに加えてFETやコンデンサーの容量アップによる電源回路の強化、HDMI接続時のジッター低減、ハイクラリティサウンドのいっそうの進化など、音質対策をさらに徹底したことが見逃せない。また、アナログRCA出力端子は左右の間隔を20mmまで広げ、XLR端子と同様にケーブルの吟味によるグレードアップの可能性を広げた。前作のBZT9300も音質対策を徹底していたが、本機にはピュアオーディオ機器顔負けの装備とこだわりが投入されている。
その成果はハイレゾ音源の再生音にも現れている。上原ひろみの『MOVE』はピアノ、ドラム、ベースそれぞれの低音が重なったときのエネルギーに限界を感じさせず、重量級のサウンドでリズムが噛み合う心地良さは格別だ。オーケストラを聴くと低音楽器の重心の低さ、押し出しの強さに圧倒される。ヴァンスカ指揮ミネソタ響のシベリウス交響曲第2番は、コントラバスを中心にした低弦の深い響きに澄んだ音色の木管と高弦の旋律が乗り、その対比が絶妙な効果を生む。低音の持続音が鳴っていてもオーケストラ全体の響きが澄み切っているのはハイレゾならではだ。
ボーカルのニュアンスを豊かに引き出すことも特筆に値する。ノラ・ジョーンズの『フィールズ・ライク・ホーム』はCDで聴くとボーカルやギターの鮮度に物足りなさを感じてしまうのだが、ハイレゾ音源はまるで別の音源のように生き生きとした音に蘇っている。この音源は本機のポテンシャルの高さを示す好例だ。
(山之内 正)
■BD収録の4:2:0映像をダイレクトに4K/4:4:4変換
DIGAのフラグシップ機はBDレコーダーの最先端を切り開く役割を担い続けてきたが、今年も期待を大きく超える進化を遂げ、その全貌を現した。4KとハイレゾオーディオというAV機器の2大潮流に照準を合わせて画質と音質を追い込み、確実な成果を上げている。まずは画質関連の注目技術から検証していこう。
映像信号の伝送方法は画質を大きく左右する。4Kディスプレイが浸透し始めた現在、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、再生機器とディスプレイ間の信号伝送を見直し、最良の結果を引き出す工夫が必要となる。具体的には4Kアップコンバートを再生機とディスプレイのどちらで行うかという問題があるが、本機は基本的に前者のスタンスをとる。BDの2K信号(4:2:0)をダイレクトに4K信号(4:4:4)にアップコンバートしてディスプレイに受け渡すことによって、ディスプレイ側でのアップコン処理に比べて画質劣化を抑えることができるというのが、その理由だ。
また、放送波、BD、DVDなど素材の種類を判別してそれぞれに最適なアップコン処理や超解像処理を適用できる点も、再生機器側で4Kアップコンを行うメリットととらえることができる。
その基本思想を支える技術として、HDMI2.0規格の最大転送レートによる4K/60p/36bit(4:2:2)出力をサポートし、さらに4Kアップコンバート時のマルチタップ処理能力を前作の1.3倍に高めたことが注目に値する。同社のTH-L65WT600などHDMI 2.0規格の最大転送レートに対応するディスプレイと組み合わせることにより、BDやHD放送を最高スペックの画質で楽しむ事ができる。
24bitから36bitへのビット拡張によってなめらかな階調再現を実現するマスターグレードビデオコーディング(MGVC)にももちろん対応しており、新たにbit出力を自動選択するモードを設けるなど、使い勝手を高めた。使用する4KディスプレイがHDMI2.0の映像フォーマットに対応していない場合でも、4:4:4から4:2:2への手動切り替えが不要になるメリットは大きい。
■スクリーン投影画質が向上、MGVCの効果も大きい
TH-L65WT600だけでなく、4Kプロジェクターとも組み合わせて本機の画質をじっくり検証した。本機の4Kアップコンバート及び超解像技術は、素材の情報量を最大限に引き出すことに主眼を置いており、精細な画を作り込むスタンスとは一線を画している。その姿勢は前作のBZT9300と同様だが、今回はマルチタップ処理の精度を上げるなど、画質改善につながる本質的なリファインを行っており、特にスクリーン投影時の質感向上が著しい。『007 スカイフォール』終盤のスコットランドの映像はその好例で、空撮シーンは現実と見紛うほど遠近感が豊かで、画面に吸い込まれそうな立体感がある。自然な立体感と緻密な質感の両立を狙うなら、画質モードを「ハイレゾシネマ」に切り替えて本機から4K信号を出力し、プロジェクター側の超解像をオフにするとよい。
MGVCの効果の大きさは前作でも確認済みだが、『009 RE:CYBORG』の暗部に目を向けると、階調表現がさらに緻密さを増し、微妙な階調差によってなめらかな立体感を引き出していることに気付く。明るいシーンも含めて画面全体の抜けが良くなることも以前確認していたが、その効果が事前の期待を大きく上回っている。実写作品の『藁の楯』では空気感や光線の微妙な揺らぎなど、アニメとはまた別の点で顕著な画質改善を見出せる。MGVCの真価を引き出す機器としても本機の存在意義は極めて大きい。
■ピュアオーディオ顔負けの音質対策でハイレゾにも対応
本機の筐体は共振の余地がないほどの高い剛性を誇る。しかし、今回はそれに加えてFETやコンデンサーの容量アップによる電源回路の強化、HDMI接続時のジッター低減、ハイクラリティサウンドのいっそうの進化など、音質対策をさらに徹底したことが見逃せない。また、アナログRCA出力端子は左右の間隔を20mmまで広げ、XLR端子と同様にケーブルの吟味によるグレードアップの可能性を広げた。前作のBZT9300も音質対策を徹底していたが、本機にはピュアオーディオ機器顔負けの装備とこだわりが投入されている。
その成果はハイレゾ音源の再生音にも現れている。上原ひろみの『MOVE』はピアノ、ドラム、ベースそれぞれの低音が重なったときのエネルギーに限界を感じさせず、重量級のサウンドでリズムが噛み合う心地良さは格別だ。オーケストラを聴くと低音楽器の重心の低さ、押し出しの強さに圧倒される。ヴァンスカ指揮ミネソタ響のシベリウス交響曲第2番は、コントラバスを中心にした低弦の深い響きに澄んだ音色の木管と高弦の旋律が乗り、その対比が絶妙な効果を生む。低音の持続音が鳴っていてもオーケストラ全体の響きが澄み切っているのはハイレゾならではだ。
ボーカルのニュアンスを豊かに引き出すことも特筆に値する。ノラ・ジョーンズの『フィールズ・ライク・ホーム』はCDで聴くとボーカルやギターの鮮度に物足りなさを感じてしまうのだが、ハイレゾ音源はまるで別の音源のように生き生きとした音に蘇っている。この音源は本機のポテンシャルの高さを示す好例だ。
(山之内 正)