公開日 2014/02/28 10:30
フィリップス“Fidelio”の最上位イヤホン「S2」で中林直樹が注目ハイレゾ音源を聴く
丁寧に調律された楽器のようなイヤホン
PHILIPSのプレミアムライン“Fidelio”シリーズの最上位イヤホン「S2」は、セミオープン方式を採用し、金属ハウジングや独自の13.5mmドライバーを用いるなど、Golden Earを擁する同社のこだわりが結晶したいモデルだ。中林直樹が「S2」で注目のハイレゾ音源を試聴し、そのサウンドに迫った。
■丁寧に調律された楽器のようなイヤホン
奇妙な表現かもしれないが、「S2」は丁寧に調律された楽器のようである。すなわち、イヤホンというオーディオ機器が奏でるべき音を、破綻なく、そして音楽的に鳴らすからだ。音場に関してもそうだ。本体に開けられた空気孔などによって、セミオープンバック形式とし、チューニングを追い込むことで、悠々とした景色が、耳の周囲に広がりだす。
今回「S2」を使用して多くのハイレゾファイルに接してみた。そこで、前述のような長所を最も感じさせてくれたのが、2つのファイルだった。ともにDSDフォーマットである。
ひとつは三宅純の『Lost Memory Theatre act-1』(DSF 5.6MHz)だ。音楽性と音質が高次元で調和した2013年9月発売の傑作アルバムである。推薦作品として、至る所でそこに展開されている音楽とその魅力(魔力といってもよかろう)について綴ってきた。
改めて簡単に紹介すると、三宅純はトランぺッターとしてのみならず、作曲家、編曲家として、海外でも高く評価されているミュージシャンだ。それを裏付けのひとつが、ソチ五輪の男子フィギュアスケートショートプログラムでの出来事だった。米国のアボット選手が、三宅が以前に関わった舞踊家ピナ・バウシュのドキュメンタリー映画のサウンドトラックからの1曲を使用し演技したのだ。
『Lost Memory Theatre act-1』は、「失われた記憶が流れ込む劇場」をテーマとし、アート・リンゼイ、デイヴィッド・バーン、ニナ・ハーゲン、ヴィニシウス・カントゥアーリアなどといった個性派たちが集結した。世界のどこかに存在する館で催される秘密パーティーのような雰囲気を、彼らが渾然となって織り上げている。
さて、アルバム幕開けの「Assimetrica」では、ストリングス、ベース、そしてアート・リンゼイの歌と順に登場するが、もうそれだけで異界へ誘われているようだ。弦楽器の広がり、ベースの深み、歌の生々しさなどが十分に表現される。また、それらが不自然に散らばらず、大きなひとつの空間で溶け合うようでもある。
4曲目の「White Rose」ではブルガリアンボイスの合唱がフィーチャーされる。ここでもやはり自然で、密度の高い音場が味わえる。さらに、弾むようなベースやパーカッションが加わりだす。それはまるで聖と俗が入り乱れているかのようだ。既に、妖しくミステリアスな領域に踏み込んでしまったのだ。と、はっとさせられる理由は、もちろん、イヤフォンが鼓膜に限りなく近いところで音楽が鳴る、そして極めてパーソナルなものであるからだ。それに加えてS2のクセがなく、均整がとれ、しかも立体的な音場のおかげでもある。それらが、高揚する気持ちを後押ししてくれるのだ。
■丁寧に調律された楽器のようなイヤホン
奇妙な表現かもしれないが、「S2」は丁寧に調律された楽器のようである。すなわち、イヤホンというオーディオ機器が奏でるべき音を、破綻なく、そして音楽的に鳴らすからだ。音場に関してもそうだ。本体に開けられた空気孔などによって、セミオープンバック形式とし、チューニングを追い込むことで、悠々とした景色が、耳の周囲に広がりだす。
今回「S2」を使用して多くのハイレゾファイルに接してみた。そこで、前述のような長所を最も感じさせてくれたのが、2つのファイルだった。ともにDSDフォーマットである。
ひとつは三宅純の『Lost Memory Theatre act-1』(DSF 5.6MHz)だ。音楽性と音質が高次元で調和した2013年9月発売の傑作アルバムである。推薦作品として、至る所でそこに展開されている音楽とその魅力(魔力といってもよかろう)について綴ってきた。
改めて簡単に紹介すると、三宅純はトランぺッターとしてのみならず、作曲家、編曲家として、海外でも高く評価されているミュージシャンだ。それを裏付けのひとつが、ソチ五輪の男子フィギュアスケートショートプログラムでの出来事だった。米国のアボット選手が、三宅が以前に関わった舞踊家ピナ・バウシュのドキュメンタリー映画のサウンドトラックからの1曲を使用し演技したのだ。
『Lost Memory Theatre act-1』は、「失われた記憶が流れ込む劇場」をテーマとし、アート・リンゼイ、デイヴィッド・バーン、ニナ・ハーゲン、ヴィニシウス・カントゥアーリアなどといった個性派たちが集結した。世界のどこかに存在する館で催される秘密パーティーのような雰囲気を、彼らが渾然となって織り上げている。
さて、アルバム幕開けの「Assimetrica」では、ストリングス、ベース、そしてアート・リンゼイの歌と順に登場するが、もうそれだけで異界へ誘われているようだ。弦楽器の広がり、ベースの深み、歌の生々しさなどが十分に表現される。また、それらが不自然に散らばらず、大きなひとつの空間で溶け合うようでもある。
4曲目の「White Rose」ではブルガリアンボイスの合唱がフィーチャーされる。ここでもやはり自然で、密度の高い音場が味わえる。さらに、弾むようなベースやパーカッションが加わりだす。それはまるで聖と俗が入り乱れているかのようだ。既に、妖しくミステリアスな領域に踏み込んでしまったのだ。と、はっとさせられる理由は、もちろん、イヤフォンが鼓膜に限りなく近いところで音楽が鳴る、そして極めてパーソナルなものであるからだ。それに加えてS2のクセがなく、均整がとれ、しかも立体的な音場のおかげでもある。それらが、高揚する気持ちを後押ししてくれるのだ。