公開日 2015/03/23 10:34
“免震”から誕生したオーディオボード兼インシュレーター「Sonic Improvement for MUSIC」の実力を探る
【特別企画】カットできるユニークなDIY性、AV機器でも免震性能発揮
「Sonic Improvement for MUSIC」は、通常のオーディオボード開発で重視される制振/防振/防音に加え、“免震”にも着目して開発されたオーディオボード。3層構造の「Sonic Improvement PAD(ソニック・インプルーブメント・パッド)」と、高密度ポリエチレンを採用した「Sonic Improvement BOARD(ソニック・インプルーブメント・ボード)」を組み合わせた構造は、「オーディオボード」であり同時に「無数のインシュレーター」とも考えられる独自のアプローチだ。さらに、ユーザーが自分で大きさをカットして使えるというユニークなDIY性も持ち合わせている。
今回はこの「Sonic Improvement for MUSIC」の実力を、評論家・貝山知弘が自宅試聴室「ボワ・ノワール」で長期にわたって徹底検証! 貝山氏の検証はスピーカーの下に設置するだけにとどまらず、回転メカを内蔵するトランスポートや、映像機器であるBDプレーヤーでの使用にまで及んだ。その驚きの結果とは?
■免震の発想から誕生したオーディオボード
「Sonic Improvement for MUSIC」は、最新の技術が生み出した新素材と新しい発想から生まれた斬新なアクセサリーだ(関連ニュース)。ダンパーによる3重構造のパッド(PAD)と自発泡率の高密度ポリエチレンボード(BOARD)を重ねた4層構造のオーディオ専用ボードである。この製品のミソは、制振/防振/防音の効果に免震効果も加えているところだ。30cm四方で厚さ6mmのパッドと30cm四方のボードを組合わせた自重は軽量だが、それで1トンの機器まで乗せられるというから驚きだ。
免震効果を発揮するために考えられたのは、軟質ポリ塩化ビニール(PVC)の特殊な形状成形である。具体的に言えば高さ2mm、直径数ミリの小さな円柱形ダンパーを多数並べたパッドの構造だ。高さ2mmは免震効果と強度が両立するサイズである。ここで言う免震効果は、無数のダンパーの水平剛性を利用したアイソレーションとエネルギー吸収効果を合わせ持った構造から生まれたものである。
表面のダンパーの中央には直径0.8mmの小さなピンホールがあり、あえて強度を弱くしていると同時にダンパーとダンパーの間には強度を補間するためのブリッジラインを設けて力の分散を計り、ダンパーの線が曲がらぬようになっている。
中央層は2mmの加工のないバッドである。裏面のパッドにはピンホールのないダンパー(高さ2mm)を設けているが、その配列は表のダンバーの間に位置するよう厳密に造られている。ダンバーの肉厚と強度が力を逃がしつつ振動や共振を吸収すためだ。このダンパーの数は30cm四方のバッドで最大3,481個であるという。驚いたのは、この複雑な構造のパッドが射出成形されているということだ。その制度は高く細部の寸法の誤差がない。さすが国産の製品と言えるポイントだ。
ボード部分の素材は高密度のポリエチレン。こちらはすでに高級車や空調機などの防音、遮音素材として使われている。これを振動抑制の為に開発したのが「Sonic Improvement BOARD」だ。これをパッドの下に敷くことで、気泡壁の反動性と気泡のクッション(独立気泡構造)の発泡体により音の共振を最大限少なくしている。裏面は熱加工を施しスリップ防止効果が得られている。
この製品発想の基本は「免震」にある。免震とは建築物の構造設計を工夫し、強大な地震の振動を抑制することで構造物の破壊を防止することを意味している。よく似た言葉には「耐震」「制振」などがある。耐震は建造物の強度を表し、「制振」は地震の揺れを抑制する工夫で、「免震」とは地震の揺れを建物に直接伝えない構造を意味する。この製品の原型は流通で使用するトラックの荷ずれや、荷崩れなどを防止するためのパッドであるという。Sonic Improvement for MUSICはそのオーディオ版であると言っていいだろう。極めて重量級の対加重が実現できているのはそのおかげである。
先月の初め、音元出版から電話があり、この製品を試聴してみないかと誘われた。すでにオーディオアクセサリー誌で井上千岳氏と炭山アキラ氏が製品紹介と短評を書いていたので一瞬迷ったが、この製品の設計思想に興味を抱いていたので、試聴してみることにした。だが、アクセサリーの試聴には時間がかかる。製品の試聴ならば試聴機を自宅の再生システムに組み込んで聴けば済むが、アクセサリーではさまざまな機器で使用してみなければその本質は判らぬことが多い。ことに今回の様に新しい設計思想が加わったケースでは、あらゆる機器の土台として使ってみることが必要だ。これはそのレポートである。
今回はこの「Sonic Improvement for MUSIC」の実力を、評論家・貝山知弘が自宅試聴室「ボワ・ノワール」で長期にわたって徹底検証! 貝山氏の検証はスピーカーの下に設置するだけにとどまらず、回転メカを内蔵するトランスポートや、映像機器であるBDプレーヤーでの使用にまで及んだ。その驚きの結果とは?
<もくじ> |
● “免震”の発想から誕生したオーディオボード |
● 貝山知弘が自宅試聴室『ボワ・ノワール』で徹底検証! |
● スピーカーでの効果 − パッドのみを敷いたら音質が一変 |
● トランスポートやBDプレーヤーでの効果 − プロジェクションの映像が安定 |
■免震の発想から誕生したオーディオボード
「Sonic Improvement for MUSIC」は、最新の技術が生み出した新素材と新しい発想から生まれた斬新なアクセサリーだ(関連ニュース)。ダンパーによる3重構造のパッド(PAD)と自発泡率の高密度ポリエチレンボード(BOARD)を重ねた4層構造のオーディオ専用ボードである。この製品のミソは、制振/防振/防音の効果に免震効果も加えているところだ。30cm四方で厚さ6mmのパッドと30cm四方のボードを組合わせた自重は軽量だが、それで1トンの機器まで乗せられるというから驚きだ。
免震効果を発揮するために考えられたのは、軟質ポリ塩化ビニール(PVC)の特殊な形状成形である。具体的に言えば高さ2mm、直径数ミリの小さな円柱形ダンパーを多数並べたパッドの構造だ。高さ2mmは免震効果と強度が両立するサイズである。ここで言う免震効果は、無数のダンパーの水平剛性を利用したアイソレーションとエネルギー吸収効果を合わせ持った構造から生まれたものである。
表面のダンパーの中央には直径0.8mmの小さなピンホールがあり、あえて強度を弱くしていると同時にダンパーとダンパーの間には強度を補間するためのブリッジラインを設けて力の分散を計り、ダンパーの線が曲がらぬようになっている。
中央層は2mmの加工のないバッドである。裏面のパッドにはピンホールのないダンパー(高さ2mm)を設けているが、その配列は表のダンバーの間に位置するよう厳密に造られている。ダンバーの肉厚と強度が力を逃がしつつ振動や共振を吸収すためだ。このダンパーの数は30cm四方のバッドで最大3,481個であるという。驚いたのは、この複雑な構造のパッドが射出成形されているということだ。その制度は高く細部の寸法の誤差がない。さすが国産の製品と言えるポイントだ。
ボード部分の素材は高密度のポリエチレン。こちらはすでに高級車や空調機などの防音、遮音素材として使われている。これを振動抑制の為に開発したのが「Sonic Improvement BOARD」だ。これをパッドの下に敷くことで、気泡壁の反動性と気泡のクッション(独立気泡構造)の発泡体により音の共振を最大限少なくしている。裏面は熱加工を施しスリップ防止効果が得られている。
この製品発想の基本は「免震」にある。免震とは建築物の構造設計を工夫し、強大な地震の振動を抑制することで構造物の破壊を防止することを意味している。よく似た言葉には「耐震」「制振」などがある。耐震は建造物の強度を表し、「制振」は地震の揺れを抑制する工夫で、「免震」とは地震の揺れを建物に直接伝えない構造を意味する。この製品の原型は流通で使用するトラックの荷ずれや、荷崩れなどを防止するためのパッドであるという。Sonic Improvement for MUSICはそのオーディオ版であると言っていいだろう。極めて重量級の対加重が実現できているのはそのおかげである。
先月の初め、音元出版から電話があり、この製品を試聴してみないかと誘われた。すでにオーディオアクセサリー誌で井上千岳氏と炭山アキラ氏が製品紹介と短評を書いていたので一瞬迷ったが、この製品の設計思想に興味を抱いていたので、試聴してみることにした。だが、アクセサリーの試聴には時間がかかる。製品の試聴ならば試聴機を自宅の再生システムに組み込んで聴けば済むが、アクセサリーではさまざまな機器で使用してみなければその本質は判らぬことが多い。ことに今回の様に新しい設計思想が加わったケースでは、あらゆる機器の土台として使ってみることが必要だ。これはそのレポートである。
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