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公開日 2015/04/22 16:56

手持ちのレンズ資産を活かせる4Kカムコーダー JVC「GY-LS300」レビュー

会田肇がハンドリングテスト
会田肇
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ここのところ業務用ビデオカメラで4K対応が急速に進み始めている。なかでも活発な動きを見せているのがJVCケンウッドだ。昨年11月にはハンディサイズの「GY-HM200」(レビュー記事)を発表したのに続き、今年初めのCES2015ではレンズ交換式を実現した「GY-LS300」を出展。これらの機種を年が明けた2月以降、相次いで市場投入している。まさに4Kに対する市場の要求が着実に進んでいることの表れとも言えるだろう。今回はその中から、レンズ交換式のGY-LS300についてレポートする。

GY-LS300

GY-LS300を一見しただけではGY-HM200のレンズ交換式モデルか?とも見える。確かにモニターやEVF、操作系スイッチなどは同じで、外見上はそれほどの違いは見受けられない。しかし、レンズのマウント部分を見るとそのセンサーサイズに驚く。GY-HM200よりもはるかに大型のセンサーが備えられているのだ。

側面

そもそもGY-HM200は、ブライダルなどの一般的なビデオ撮影を主要目的として開発されている。そのため、センサーサイズは1/2.3型とビデオカメラとして標準的なサイズだ。それに対してGY-LS300は、そのセンサーに映画などで使われる35mmフィルムに近いサイズの“スーパー35mm”CMOSセンサー(総画素1350万画素)を採用。加えてレンズ交換式とすることで、主としてシネマ撮影など、映像表現にこだわるユーザー向けに開発されている。

ズームレバー類

中でも注目すべきは、メインの対応レンズを『マイクロフォーサーズ』としたことだ。このフォーマットは一眼ミラーレス機として、オリンパスやパナソニック等が採用するもので、センサーサイズはAPS-Cよりも小さい。JVCケンウッドによれば「その分だけレンズを小型軽量化しやすいメリットがある」という。ただ、冒頭でも述べたように、GY-LS300が採用したセンサーは“スーパー35mm”。このまま装着すればマウントに対してセンサーが大きいために周囲がケラレてしまうのは確実だ。

そこでGY-LS300に採用されたのが「バリアブルスキャンマッピング(VSM)技術」だ。これは、使用するレンズのイメージサークルに合わせてセンサーのスキャン範囲を自在に変更できるというもので、これにより、レンズ有効径がセンサーサイズより下回ってもスキャンサイズの変更で最適化を図れることになったのだ。

設定方法はメインメニューから「システム」→「記録設定」→「VSM」を選択してセットボタン(●)を押す。これでスキャン範囲が設定可能になるので、▲/▼ボタンで範囲を設定すればいい。一度設定すれば次回からはレンズフォーマットを変えない限りそのまま使えるので、とくに煩わしいといった印象はない。

今回組み合わせたレンズは、手持ちしていたパナソニック製マイクロフォーサーズ対応レンズ(LUMIX G VARIO 14-140mm/F3.5-5.6)。最初に装着した際は、予想通り広角側で周囲がケラレてしまっていたが、この設定でこのレンズの画角をフルに活用できるになった。

また、電動ズーム機能付き(LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm / F3.5-5.6)レンズを組み合わせると、GY-LS300側から電動でのズーム操作が可能になる。可変速操作にも対応しており、まさに電動ズームをラインナップするマイクロフォーサーズならではのメリットを活かしたものと言えるだろう。

とはいえ、映像関係者であればキヤノンやニコン系のレンズを手持ちしていることも少なくないだろう。そこで、GY-LS300では電子接点付きのマウントアダプターを使うことで、シネマ撮影で実績のあるキヤノンのEFや富士フィルムのPLマウントのレンズにも対応できるようになっている。この幅広い対応ができたのもVSM技術の実現があったからこそなのだ。

記録フレームレートは、4K(3,840×2,160)撮影では24/25/30p、HD撮影なら60/50pに対応し、記録ビットレートは4K時で150Mbps、HDでは50Mbps(4:2:2)。ファイル形式はいずれもH.264によるQuickTime(MOV)になるが、HDでなら30p/25p/24pのフレームレートに対応しないもののAVCHD形式での記録も行える。

撮影したデータの記録に際しては、GY-HM200と同様、2枚のSDカードを同時にセットしておける。4KやHD撮影時のバックアップやシームレスな連続記録にも対応し、さらに撮り逃しを防止するためとして、一方で必要なシーンだけをREC/STOPで撮影しながらもう一方でベタ撮りできる機能も備えた。

デュアルSDカードスロットを装備

撮影した映像は期待に十分応えるものだ。背景ボケは極めて美しく、被写体をアップで捉えた時のクローズアップ感は半端ではないリアル感がある。絞りで少しアンダー気味にすると陰影もクッキリとし、4Kならではの立体感が伝わって来た。撮影すればするほど表現力を試してみたくなる。

感度は0dB(L)/6dB(M)/12dB(H)の3段階で切り換えられ、AUTO設定も可能。暗所撮影でで12dBまで上がるとさすがにノイズは増えてくるが、明るいレンズを組み合わせればかなり軽減されるはずだ。

難点を挙げるとすれば、モニターは輝度が不足気味で屋外では囲いがないと少々厳しい点だろうか。また、AFはきちんと動作するものの、被写体によっては迷いを生じることもあった。ただ、ENG用途ならともかく、シネマ撮影ではAFの重要性はそれほど高くないだろうから、“いざという時のAF機能”でいいのかもしれない。

一眼レフカメラとは違い、長時間の動画撮影にも十分耐えられそうというのも専用機ならではのメリットだ。撮影の現場で突然停止されることは効率の上からもあってはならないこと。本機にはその点での安心感もある。

シネマ撮影に限らず、撮影現場では低コストで対応できることは常に求められている。4K撮影までサポートして実売50万円前後。この価格帯で、ここまで映像表現にこだわれる機材が登場するとは数年前でも想像すらできなかった。GY-HM200でも書いたことではあるが、この価格帯ならハイアマチュアでも十分に手が届く。自分が持つカメラのレンズ資産が活かせるメリットも大きい。本当に良い時代になったものである。

(会田肇)

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