公開日 2016/02/17 10:34
SHURE「KSE1500」レビュー:ダイナミックでもBAでも味わえない音を実現した“究極のイヤホン”
岩井喬がレポート
2015年秋に発表された新製品のなかでも特に大きな驚きを持って迎え入れられたものが、SHUREのイヤホン「KSE1500」ではなかっただろうか。そのポイントとなっているのは、これまでのSEシリーズと変わらない使い勝手の良さを実現した、世界初の遮音性密閉方式コンデンサー型システムという点である。
小型コンデンサー発音ユニットを収めたハウジングは、むしろ従来のSEシリーズの中でも軽量かつ薄型にまとめられており、より装着性が増していると感じる。そして、コンデンサー型システムに必要不可欠なアンプユニットは、96kHz/24bit対応のUSB-DACも内蔵。iOSやAndroid端末のデジタル接続にも対応するほか、5段階の音質プリセットや、より綿密な設定が可能となる4バンドパラメトリックEQも装備しており、機能性も十分だ。アンプユニットの存在はコンデンサー型の弱点とされてきたが、ポタアンがある程度認知されてきたご時世ということに加えこの機能の豊かさもあり、本機のメリットへと転化されている。
コンデンサー型は微細な信号まで再現できるのがメリット
しかし製造には高い技術を要する
コンデンサー型はバイアス電圧を与えた振動膜を固定電極で挟み込んだ構造であり、一般的なダイナミック型ドライバーで用いるマグネットやボイスコイルは存在しない。固定電極には音声信号が供給され、その信号の正負に応じ、+電荷を与えた振動膜がどちらかの固定電極に吸引、もしくは反発しあうプッシュプル動作の振動運動を行う。この振動運動によって音波が発せられる仕組みだが、高いバイアス電圧(KSE1500では直流200V)が必要となるため、ダイナミック型よりも構造が複雑になること、薄い振動膜の製造・組み込みに高いノウハウが求められる。メーカーにとってもハードルの高い手法なのだ。
一方でコンデンサー型を採用する最大のメリットは、極めて薄く軽量な振動膜を用いることにある。振動膜は実質的な質量が小さく、重いボイスコイルを装着したダイナミック型のダイアフラムとは比較にならないほどに軽い。ゆえにダイナミック型では対応できないような微細な信号にもきちんと追随可能なのだ。
マイク製造やマルチBA機で培った技術を活かす
SHUREがコンデンサー型イヤホンを開発するきっかけのひとつとして、同社の歴史を語る上でも大きなウェイトを占めるマイク開発のノウハウが挙げられるだろう。
その代表的なラインナップは「SM58」に代表されるダイナミック型マイクであるが、「SM87A」や「SM94」、プレミアムクラスの「KSM9」「KSM44A」といったコンデンサー型マイクの数々も世に送り出している。KSE1500の頭文字“K”も、このプレミアムクラスのマイクラインナップに倣った形で導入されたという経緯もあるようだ。
そしてKSE1500に繋がる小口径のコンデンサー型ダイアフラムを備えるモデルとしては、ピンマイクとして用いるラベリア型の「MX183/184/185」といった小型コンデンサーマイクなどがあるが、マイクエレメントをそのままイヤホン用ドライバーとして流用したわけではなく、KSE1500用として新たに設計し直したものが搭載されている。
SHUREはユニバーサルモデルにおけるバランスド・アーマチュア型(以下、BA型)のマルチウェイ機を早い段階で開発していたこともあり、複数のドライバーを使うことによるメリット・デメリットも良く理解していた。現在ハイエンドイヤホンはBA型マルチウェイ仕様、もしくはダイナミック型を低域に用いたハイブリッド機が中心だ。これは、BA型単発ユニットでは再生帯域をカバーしきれないこと、音の密度が確保できないことを表している。ハイエンド機に求められる広帯域再生を実現する上で、BA型特有の問題を解決するためには複数のユニットを組み合わせる必要があるのだ。
しかし複数のユニットをクロスオーバーさせることで位相のずれや歪みが生じるというデメリットもある。単に多数のドライバーを組み合わせただけでは、色付けや定位の正確さを欠くなどの問題が起こってしまう。だからこそSHUREは、このデメリットを解消するために、ひとつのユニットで広帯域再生が実現できるコンデンサー型に活路を見出したのだ。
小型コンデンサー発音ユニットを収めたハウジングは、むしろ従来のSEシリーズの中でも軽量かつ薄型にまとめられており、より装着性が増していると感じる。そして、コンデンサー型システムに必要不可欠なアンプユニットは、96kHz/24bit対応のUSB-DACも内蔵。iOSやAndroid端末のデジタル接続にも対応するほか、5段階の音質プリセットや、より綿密な設定が可能となる4バンドパラメトリックEQも装備しており、機能性も十分だ。アンプユニットの存在はコンデンサー型の弱点とされてきたが、ポタアンがある程度認知されてきたご時世ということに加えこの機能の豊かさもあり、本機のメリットへと転化されている。
コンデンサー型は微細な信号まで再現できるのがメリット
しかし製造には高い技術を要する
コンデンサー型はバイアス電圧を与えた振動膜を固定電極で挟み込んだ構造であり、一般的なダイナミック型ドライバーで用いるマグネットやボイスコイルは存在しない。固定電極には音声信号が供給され、その信号の正負に応じ、+電荷を与えた振動膜がどちらかの固定電極に吸引、もしくは反発しあうプッシュプル動作の振動運動を行う。この振動運動によって音波が発せられる仕組みだが、高いバイアス電圧(KSE1500では直流200V)が必要となるため、ダイナミック型よりも構造が複雑になること、薄い振動膜の製造・組み込みに高いノウハウが求められる。メーカーにとってもハードルの高い手法なのだ。
一方でコンデンサー型を採用する最大のメリットは、極めて薄く軽量な振動膜を用いることにある。振動膜は実質的な質量が小さく、重いボイスコイルを装着したダイナミック型のダイアフラムとは比較にならないほどに軽い。ゆえにダイナミック型では対応できないような微細な信号にもきちんと追随可能なのだ。
マイク製造やマルチBA機で培った技術を活かす
SHUREがコンデンサー型イヤホンを開発するきっかけのひとつとして、同社の歴史を語る上でも大きなウェイトを占めるマイク開発のノウハウが挙げられるだろう。
その代表的なラインナップは「SM58」に代表されるダイナミック型マイクであるが、「SM87A」や「SM94」、プレミアムクラスの「KSM9」「KSM44A」といったコンデンサー型マイクの数々も世に送り出している。KSE1500の頭文字“K”も、このプレミアムクラスのマイクラインナップに倣った形で導入されたという経緯もあるようだ。
そしてKSE1500に繋がる小口径のコンデンサー型ダイアフラムを備えるモデルとしては、ピンマイクとして用いるラベリア型の「MX183/184/185」といった小型コンデンサーマイクなどがあるが、マイクエレメントをそのままイヤホン用ドライバーとして流用したわけではなく、KSE1500用として新たに設計し直したものが搭載されている。
SHUREはユニバーサルモデルにおけるバランスド・アーマチュア型(以下、BA型)のマルチウェイ機を早い段階で開発していたこともあり、複数のドライバーを使うことによるメリット・デメリットも良く理解していた。現在ハイエンドイヤホンはBA型マルチウェイ仕様、もしくはダイナミック型を低域に用いたハイブリッド機が中心だ。これは、BA型単発ユニットでは再生帯域をカバーしきれないこと、音の密度が確保できないことを表している。ハイエンド機に求められる広帯域再生を実現する上で、BA型特有の問題を解決するためには複数のユニットを組み合わせる必要があるのだ。
しかし複数のユニットをクロスオーバーさせることで位相のずれや歪みが生じるというデメリットもある。単に多数のドライバーを組み合わせただけでは、色付けや定位の正確さを欠くなどの問題が起こってしまう。だからこそSHUREは、このデメリットを解消するために、ひとつのユニットで広帯域再生が実現できるコンデンサー型に活路を見出したのだ。