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公開日 2017/05/25 09:30

<HIGH END>Astell&Kern新旧フラグシップの違いとは?「A&ultima SP1000」をAK380と比較試聴

新フラグシップを速攻レポ
編集部:小澤貴信
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独ミュンヘンで21日まで開催された「HIGH END 2017」。Astell&Kernがこのタイミングに合わせて発表・初公開した新フラグシップ・ハイレゾプレーヤー「A&ultima SP1000」(以下SP1000)は、今年のHIGH ENDにおけるポータブル関連のハイライトのひとつだった。

「A&ultima SP1000」

ブースにはかなりの数のSP1000が用意されていたこともあり、会期中に比較的ゆっくりとSP1000を聴くことができた。また、自分が現地に持ち込んでいた「AK380」と比較試聴をすることもできたので(ブースには第三世代モデルのデモ機の出展はなかった)、ファーストインプレッションをお伝えしたいと思う。

試聴には私がリファレンスのひとつとして用いているUnique MelodyのカスタムIEM「MASON II」(3.5mステレオミニ接続)を用いた。また、ブースに用意されていたAstell&Kern/beyerdynamicのヘッドホン「AK T1p」(2.5mmバランス接続)でも補足的に試聴を行った。

Unique MelodyのカスタムIEM「MASON II」を用いて音質をチェックした

ちなみに、ブースに用意されたSP1000に、手持ちのAK380と同じ楽曲が1曲くらいはあるかと思ったら、まったくない。唯一同じ曲があったと思ったら、フォーマットが異なっている。SDカードを入れ替えるにも、SP1000は専用ピンでカバーを開けないとSDカードが交換できない。説明員を呼んでカバーを開けてもらい(入れ替えの度に呼んでしまった…)、手持ちのSDカードを入れ替えて試聴した。

「A&ultima SP1000」と「AK380」

最初にSP1000のサウンドを一聴して思い浮かんだのは、「正常進化」という言葉だ。音楽の細部を虫眼鏡で見るような圧倒的な分解能は、AK380のそれをさらに先に進めたもので、逆に言えば、サウンドキャラクターはAK380に近い、透徹としたタイプに思えた。だが、時間をかけて同じソースでAK380と聴き比べてみると、正常進化にはとどまらないSP1000の新しい方向性がみえてきた。

AK380は徹底したモニターライクなサウンドと個人的に感じるのだが、対してSP1000は、より明るいニュアンスを備えていて、音の響きが開放的だ。一聴したときはSP1000の解像感が目立ったが、例えばノラ・ジョーンズの「Don't Know Why」でアコースティックギターやピアノを聴き比べると、音色は同様なのだが、SP1000のほうがより音がほぐれ、朗らかに鳴っている。

SDカードスロットは専用ピンでカバーを外して入れ替える

この印象がどこに起因するのか、もう少し聴き込んで思い至ったのが、ダイナミックレンジの向上だ。カスタムIEMを使っているとはいえ会場の騒音はかなりのもので、良好な試聴環境とは言えなかったのだが、音の強弱の表現はSP1000が上回っていて、弱音のニュアンスまでしっかり伝わってくる。

試聴時のチェックソースに必ず用いているボニー・プリンス・ビリー「Nomadic Revery(All Around)」を聴くと、アコースティックギターの鳴りの自然な減衰や、つぶやくようなボーカルと絶叫の対比がすばらしい。SP1000で聴いた後だと、AK380ではこれら表現がどこか平板に聞こえてしまう。ダイナミックレンジの向上が音楽の濃淡や音の静・動を活き活きと有機的に描き出している。

低域表現の進化にも着目してみた。AK380の低音表現は、音階や音色は正確だが、比較的あっさりとしていると感じる。対してSP1000ではベースラインにより量感があり、実在感も増す。制動力も増したようで、音楽がよりグルーヴィーに聴こえる。

短時間ではあったが、AK T1pによるバランス出力の音も聴いた。普段使っているヘッドホンではないので断言しづらいのだが、バランス出力では上述のようなSP1000とAK380の差がさらに大きく出ていると感じた。

このようなサウンドの違いは、DACチップの変更など内部回路の差はもちろんあるだろうが、AK380の通常モデルの筐体がジュラルミンだったのに対して、SP1000では通常モデルの筐体がステンレスになっていることも当然起因しているだろう。

ちなみに会場にはSP1000のカッパーモデルも用意されていたので、通常のステンレスモデルと聴き比べてみた。カッパーでは、ステンレスに比べて音がより濃密になる印象で、特に低域においてその傾向が顕著だ。サウンドキャラクターもより温もりのある有機的なものに聴こえる。この差の出方は、AK380におけるカッパーモデルとほぼ同じ傾向と言える。

「A&ultima SP1000」のカッパーモデル

AK380が徹底したモニターサウンドならば、SP1000では解像感やダイナミックレンジの進化をベースとして、そこから一歩踏み出した音楽的表現の充実を目指している。私は両機の違いをそのように聴いた。ジェームス・リー氏にそのことを告げると、概ね同意してくれた。そしてダイナミックレンジの向上については特に強調したい点だと語っていた。

モニターライクを旨としてストイックに原音忠実を追求した第三世代から、さらに一歩踏み出したハイエンドオーディオ的な音楽再現を狙う第四世代へ。そう決めつけてしまうのはまだ尚早だろうか。日本での正式ローンチにも期待したい。

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