公開日 2017/06/26 14:51
エキサイティングなエナジャイザー(1) ― iFI Audio「Pro iESL」テクニカルノート
近日発売の注目機の「全て」を解説
iFI-Audioから、近日日本国内でも発売が予定されているエナジャイザーモジュール「Pro iESL」(関連ニュース)。同社のトップエンドラインに位置するPro iESLは、先に発売されているPro iCAN等のヘッドホンアンプと組み合わせて使用するもので、STAXやKing Sound、SENNHEISERのORPHEUSなどエレクトロスタティック型やハイインピーダンスのヘッドホンを駆動させるという画期的なアイデアを盛り込み、発売前から大きな注目を集めている。
本項では、iFI-Audioから届いたPro iESLにまつわるテクニカルノートを数回に分けてお伝えしていく。まずは、前段となるPro iESLの登場背景と本機のサウンドの要となるトランスについてを解説する。
■エナジャイザーモジュール「Pro iESL」が登場した理由
Pro iESLは、エレクトロスタティック型ヘッドホンをドライブする最高の方法です。Pro iCANまたはお持ちのアンプでドライブされたPro iESLは、市場にあるエレクトロスタティック型ヘッドホン用の最高のアンプとでも対等に戦うことができると、私たちは確信しています。その明瞭な特徴は、透明性と、まったく自然でありながら超ワイドなダイナミックレンジです。
■なぜエレクトロスタティック型ヘッドホンアンプが必要なのか?
以下、Wikipedia(英語版)からの引用です。
エレクトロスタティック・ドライバーは、帯電した薄い振動板(コーティングされたPETフィルムの膜が一般的に用いられる)を、穴の開いた2枚の金属プレート(電極)の間に隙間をおいて配置した形になっている。サウンドの電気信号を電極に当てると、磁場が生じる。この磁場の極性に応じて、振動板がプレートのどちらかの側に引っ張られ、この力によって空気が穴を通り抜ける。常に変動する電気信号と組み合わせることで膜をドライブするという仕組みであり、こうしてサウンドの波が発生するのである。
エレクトロスタティック型ヘッドホンは、通常はムービングコイル・ヘッドホンよりも高価であり、また比較的珍しいものでもある。さらに、膜をどちらか一方に寄せるための信号を増幅させるには、特別なアンプ(100V〜1000Vの電気的能力が要求されることが多い)が必要である。
極端に薄くて軽い振動膜(数マイクロメーターの薄さしかないことも多い)を用い、しかも可動式の金属部分がまったくないので、エレクトロスタティック型ヘッドホンの周波数レスポンスは、通常は20kHzという可聴帯域をはるかに超える。周波数レスポンスが高いということは、可聴周波数帯域の上限に至るまで中域の歪みが低く抑えられているということであり、これは一般のムービングコイル・ドライバーでは望めない。
しかも、ムービングコイル・ドライバーの高域に見られる周波数レスポンスの「ピーク」も、存在しない。巧みに設計されたエレクトロスタティック型ヘッドホンは、他のタイプのヘッドホンよりも著しく良い音を生み出すことができるのである。
エレクトロスタティック型ヘッドホンは、100V〜1kVを生み出す電圧源を必要とし、頭上に装着されるが、大電流を流す必要はないので、たとえ故障してもユーザーへの電気的ダメージは限定的である。
※出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Headphones#Electrostatic
この解説について、数値とともに客観的に見てみましょう。ゼンハイザー「HD800」ダイナミック型ヘッドホン=102dB/1V、典型的なエレクトロスタティック型ヘッドホン=102dB/100V!!!
伝統的なヘッドホンアンプは、必要とされる超ハイテンション(EHT)電圧やオーディオ用電圧を引き出すことはできないので、エレクトロスタティック型ヘッドホンに適合した、特別な「エナジャイザー」(エネルギー供給源)が必要となります。通常は、最大出力300Vが必要ですが、これはヘッドホンの300Ωの負荷で300Wに相当するということです!
そういうわけで、エレクトロスタティック型ヘッドホンは以下を必要とするのです。
・「非常に」高い電圧……瞬間的に300Vを必要とする
・バイアス電圧……230V〜640Vの間で調節可能
エレクトロスタティック型ヘッドホンを「エナジャイズ(エネルギー供給)」するためのこういった製品を作るには、2つの選択肢があります。
・製品A:専用の高電圧アンプ
・製品B:エナジャイザー(真空管アンプとはほとんど正反対の解決法です。低電圧を高電圧に変換するのですから)
現実には、こういった高電圧を生み出すことのできるアンプはほとんどないので、だからこそエレクトロスタティック型ヘッドホンに高電圧を「チャージする」ためには「エナジャイザー」が必要なのです。
比較すると分かりますが、エナジャイザーは標準的なスピーカー駆動用のアンプや、適切なパワーを備えたヘッドホンアンプ(16Ωで10V以上、あるいは64Ωで20V以上が必要)を使うことができ、また、必要な高電圧を生み出すのにトランスを使うことができます。
Pro iESLは上記のBのタイプの製品、つまり「エナジャイザー」です。とはいえ、それは普通のエナジャイザーなどではありません。以下の3つの核となる構成要素のひとつひとつが、最高の古典的アプローチと最新のアプローチによって、しかもコスト、複雑さ、困難さをほとんど考慮に入れずに開発されているのです。
・トランス
・バイアス電圧発生装置
・コンポーネントの品質
本項では、iFI-Audioから届いたPro iESLにまつわるテクニカルノートを数回に分けてお伝えしていく。まずは、前段となるPro iESLの登場背景と本機のサウンドの要となるトランスについてを解説する。
■エナジャイザーモジュール「Pro iESL」が登場した理由
Pro iESLは、エレクトロスタティック型ヘッドホンをドライブする最高の方法です。Pro iCANまたはお持ちのアンプでドライブされたPro iESLは、市場にあるエレクトロスタティック型ヘッドホン用の最高のアンプとでも対等に戦うことができると、私たちは確信しています。その明瞭な特徴は、透明性と、まったく自然でありながら超ワイドなダイナミックレンジです。
■なぜエレクトロスタティック型ヘッドホンアンプが必要なのか?
以下、Wikipedia(英語版)からの引用です。
エレクトロスタティック・ドライバーは、帯電した薄い振動板(コーティングされたPETフィルムの膜が一般的に用いられる)を、穴の開いた2枚の金属プレート(電極)の間に隙間をおいて配置した形になっている。サウンドの電気信号を電極に当てると、磁場が生じる。この磁場の極性に応じて、振動板がプレートのどちらかの側に引っ張られ、この力によって空気が穴を通り抜ける。常に変動する電気信号と組み合わせることで膜をドライブするという仕組みであり、こうしてサウンドの波が発生するのである。
エレクトロスタティック型ヘッドホンは、通常はムービングコイル・ヘッドホンよりも高価であり、また比較的珍しいものでもある。さらに、膜をどちらか一方に寄せるための信号を増幅させるには、特別なアンプ(100V〜1000Vの電気的能力が要求されることが多い)が必要である。
極端に薄くて軽い振動膜(数マイクロメーターの薄さしかないことも多い)を用い、しかも可動式の金属部分がまったくないので、エレクトロスタティック型ヘッドホンの周波数レスポンスは、通常は20kHzという可聴帯域をはるかに超える。周波数レスポンスが高いということは、可聴周波数帯域の上限に至るまで中域の歪みが低く抑えられているということであり、これは一般のムービングコイル・ドライバーでは望めない。
しかも、ムービングコイル・ドライバーの高域に見られる周波数レスポンスの「ピーク」も、存在しない。巧みに設計されたエレクトロスタティック型ヘッドホンは、他のタイプのヘッドホンよりも著しく良い音を生み出すことができるのである。
エレクトロスタティック型ヘッドホンは、100V〜1kVを生み出す電圧源を必要とし、頭上に装着されるが、大電流を流す必要はないので、たとえ故障してもユーザーへの電気的ダメージは限定的である。
※出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Headphones#Electrostatic
この解説について、数値とともに客観的に見てみましょう。ゼンハイザー「HD800」ダイナミック型ヘッドホン=102dB/1V、典型的なエレクトロスタティック型ヘッドホン=102dB/100V!!!
伝統的なヘッドホンアンプは、必要とされる超ハイテンション(EHT)電圧やオーディオ用電圧を引き出すことはできないので、エレクトロスタティック型ヘッドホンに適合した、特別な「エナジャイザー」(エネルギー供給源)が必要となります。通常は、最大出力300Vが必要ですが、これはヘッドホンの300Ωの負荷で300Wに相当するということです!
そういうわけで、エレクトロスタティック型ヘッドホンは以下を必要とするのです。
・「非常に」高い電圧……瞬間的に300Vを必要とする
・バイアス電圧……230V〜640Vの間で調節可能
エレクトロスタティック型ヘッドホンを「エナジャイズ(エネルギー供給)」するためのこういった製品を作るには、2つの選択肢があります。
・製品A:専用の高電圧アンプ
・製品B:エナジャイザー(真空管アンプとはほとんど正反対の解決法です。低電圧を高電圧に変換するのですから)
現実には、こういった高電圧を生み出すことのできるアンプはほとんどないので、だからこそエレクトロスタティック型ヘッドホンに高電圧を「チャージする」ためには「エナジャイザー」が必要なのです。
比較すると分かりますが、エナジャイザーは標準的なスピーカー駆動用のアンプや、適切なパワーを備えたヘッドホンアンプ(16Ωで10V以上、あるいは64Ωで20V以上が必要)を使うことができ、また、必要な高電圧を生み出すのにトランスを使うことができます。
Pro iESLは上記のBのタイプの製品、つまり「エナジャイザー」です。とはいえ、それは普通のエナジャイザーなどではありません。以下の3つの核となる構成要素のひとつひとつが、最高の古典的アプローチと最新のアプローチによって、しかもコスト、複雑さ、困難さをほとんど考慮に入れずに開発されているのです。
・トランス
・バイアス電圧発生装置
・コンポーネントの品質