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公開日 2018/12/21 10:07

マランツ「SA-12」をNA-11S1、オリジナルDAC試作機と比較試聴。見えてきた進化の道筋

SA-12連続レポート<その3>
山之内正
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先日の記事にて、SA-10/SA-12のオリジナルDACの詳細についてマランツの技術陣から話を聞いた。その際に、SA-10を開発する過程で生まれたという試作機が存在したことが明らかになった。マランツのオリジナルDAC開発の過程を示す興味深いこの試作機について、引き続き山之内氏がレポートする。

「SA-12」

前回の記事でお伝えしたとおり、マランツ独自のDAC回路の完成に至る過程は予想以上に困難な道のりだったという。完成した製品としてSA-10やSA-12でもちろんその成果を確かめられるわけだが、試作段階でどんな音が出ていたのかは知ることができない。

だが、今回は試作基板を見せていただいたあとで開発段階の音も確認してみようという流れになり、ネットワークプレーヤー/USB-DAC「NA-11S1」に載せた試作DACをUSB入力で聴いてみることにした。試聴はNA-11S1、このNA-11S1をベースとしたオリジナルDAC試作モデル、そして現行のSA-12とを比較するかたちになったが、マランツのDACの一連の進化の過程を確認できるわけだ。貴重な体験なので大いに楽しみである。

オリジナルDAC完成に至るまでの試作DAC群。右側にいくほど初期のものとなる

「NA-11S1」は、TIのDSD1792Aと自社開発のデジタルフィルターやノイズシェイパーを組み合わせたDAC回路を積み、強力なデジタルアイソレーターによるノイズ低減効果が注目された製品。メインのネットワーク再生だけでなくUSB-DACとして愛用する人も多い(生産完了)。

ネットワークプレーヤー/USB-DAC「NA-11S1」。USB入力に対して本格的なノイズアイソレーションを施して音質を追求し、エポックメイキングなモデルとなった

まずオリジナルのNA-11S1でピアノ二重奏のDSD音源を聴く。低音と高音の音色がきれいに揃い、付帯音が乗らないので見通しの良い音場が広がるなど、音色と空間どちらも澄み切った透明感の高さがそなわる。バックグラウンドのS/Nが優れているためか、旋律だけでなくハーモニーを支える低音や内声の響きにもくもりがなく、二人のピアニストがバランスと音色に強くこだわっていることが伝わってきた。

次にDAC部分だけをディスクリート構成の回路に置き換えたNA-11試作機で同じ音源を聴く。透明感の高い音色と見通しの良い空間表現をそのまま維持しながら、低音の動きがさらにスムーズになり、連弾曲をあえて2台のピアノで演奏している長所がいっそう伝わりやすくなったと感じる。試作段階のDACなので高音の音色などやや硬い部分が残っているが、音調は好ましい方向に進化していると言っていいだろう。

NA-11S1をベースとしたオリジナルDAC試作機


オリジナルDAC試作機の筐体内部
最後にSA-12のUSB入力で再生すると、低音部を受け持つピアノの鳴りっぷりが良くなり、大型のグランドピアノならではの深い響きが広がる。ちなみにフォルテの部分は試作機でもかなり深い響きが出ていたが、SA-12はピアニシモの低音からも深々とした余韻が広がり、空気の押し出し感が感じられた。高音にも光沢感が乗り、グロッケンシュピールのような純度の高いトーンを引き出す瞬間がある。

試作DACはDSD専用なので、PCM音源についてはオリジナルのNA-11とSA-12でオルガン伴奏の合唱を聴き比べてみた。声の高い音域はどちらも余分な音が乗らず純度の高いハーモニーを再現する半面、足鍵盤の低音はSA-12の方が空気の絶対的な振幅が大きく感じられ、同じ音でも基音の割合が高いような感触がある。暗騒音も低域側に伸びているのか、合唱の響きが消えた後に感じる空間の広がりがひとまわり大きくなったように思われた。そのほか、女声の高い音域は細かいささくれが消えてなめらかさな声に生まれ変わるなど、予想していたよりも大きな変化を聴き取ることができた。

1ステップごとの音質の変化はわずかでも、それが積み重なって生まれる最終的な音の違いは思いがけず大きくなものになる。その事実を確認することができ、非常に興味深い試聴であった。

(山之内 正)

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