公開日 2021/02/11 07:00
『ガメラ2 レギオン襲来』出演の大泉洋もクッキリ! ドルビーシネマ版は“正直怖い”
名シーンがより魅力的に
『ガメラ2 レギオン襲来』のドルビーシネマ上映が、本日2月11日(木)からスタートする。
本サイトでも上映決定の報を取り上げたが、初報の段階では、暫定的に「3月公開予定」とされていたため、結果的に前倒しとなった。公開を待ちわびていたファンとしては嬉しい決定ではないだろうか? 少なくとも記者はその一人だ。コロナ禍で邦・洋の新作映画の公開スケジュールが軒並み延期している現状をふまえると尚更である。
「どの劇場に観に行くか…」と、封切りと同時に観ることを心に決めて記事を書いていたが、幸運にも試写会に参加する機会を得た。常日頃から「この手のものが好き」とアピールしておくものだ。
全国の劇場が休業していた前回の緊急事態宣言、その解除後に最初に鑑賞する作品を、渋谷HUMAXシネマにてリバイバル上映されていた「4Kリマスター版平成ガメラ3本」とする程度には、記者は平成ガメラに心奪われている。そんな視点から、ドルビーシネマ版『ガメラ2(G2)』の試写レポートをお届けしたい。
■ドルビーシネマ化にはオリジナル版スタッフが携わる
本作の試写は、2019年に設備を更新し、ドルビーシネマのカラーグレーディング、DCPマスタリング、映写作業を国内で初めて対応したIMAGICA Lab.第2試写室にて行われた。
改めてドルビーシネマという規格について触れておくと、まず採用する2つの主要技術として、広色域で鮮明な色彩と幅広いコントラストを表現するハイダイナミックレンジ映像を実現する「Dolby Vision(ドルビービジョン)」と、三次元空間の中にある物体の位置情報と音を記録したトラックを、再生環境に合わせて再現するオブジェクトベースのサウンドによって、より立体的な音響効果を獲得した「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」が挙げられる。
これらを劇場内の座席配置や、反射光を減らす黒を基調とした館内レイアウト、入場前のAVP(オーディオ・ビジュアル・パスウェイ)の設置などといった、観賞環境レベルで定められた要件を満たすシアターデザインに融合させたものが、ドルビーが最高の映画体験と提案するドルビーシネマとなる。
25年前(1996年公開)の作品である本作をドルビーシネマのフォーマットに落とし込むにあたり、映像面ではHDRグレーディング、音響効果においてはセリフ・音楽・効果音などの一部をドルビーアトモス用のトラックデータとして分離し、新たに効果音重低音の割付等を敢行。それらのアップデート作業を、オリジナル版スタッフが担当している。
前述の通り、作品自体は2020年に劇場で観賞しているように、何らかの形で年に1回は観ている。そういう意味では「特別感」や「高揚感」をあまり覚えること無く、ニュートラルな姿勢で試写に臨めた。……臨めたのだが、序盤からドルビーシネマ化された「G2」の凄みに気圧され、前のめり気味で終始釘付けにされたことは言うまでもない。
■ソルジャーレギオン登場に思わず仰け反る! 体感型の作品へと “深化”
本作は大きく分けて北海道、仙台、利根川(栃木)を舞台とした3幕構成なのだが、仙台での攻防を除くと、見せ場の全てがほぼナイトシーンという作品。その冒頭も北海道は恵庭岳にて、水野美紀演じる青少年科学館の学芸員の穂波 碧が流星雨を目撃するというシークエンスになるのだが、そこでアップになる水野美紀の、肌のきめ細やかさまで描画する高解像ぶりにまず驚く。2Kダウンコンされた状態とはいえ、昨年劇場で観賞した4Kリマスター版でもなかなかなものだったが、ドルビーシネマ版はそれ以上の表現力である。
HDRグレーディングの効果は、暗部の階調表現に強く表れている。序盤の見どころとも言える、地下鉄を襲うソルジャーレギオンの群れのシーンは白眉である。ミニチュアや造形を交えた特撮的なカットではあるのだが、高解像化されたかと言って “見えすぎる” こともなく、トンネル内の沈んだ空気感の演出に磨きがかかる。
そして主観視点を交えながら、カメラは地下鉄の運転手にフォーカス。大写しになる破壊された路線。そしてその周囲を「何か」が蠢く様子を、ドルビーアトモスの見事な音場で再現する。劇場という箱状の空間が、まるで画面の向こうの地下鉄車両に置き換わったかのような没入感に包まれる。
前作『G1』のドルビーシネマ版での、「姫神島の漁船を襲うギャオス」のシーンでも感じたが、人間が怪獣に襲われるシーンにおける音響効果が並々ならぬレベルになっているのだ。怪獣同士の衝突シーンにおいても、迫力あるシーンをより補強する方向でドルビーシネマの音響効果が作用しているのだが、怪獣の意識が人間に向けられるシーンでは没入感、いや、恐怖感が倍増している。何度も見ているから流れを知っており、「そろそろかな」と身構えた上で、ソルジャーレギオンがその姿を現すシーンで思わず仰け反ってしまった。本当に怖かった……。
なお、前述の地下鉄のシーンには北海道を舞台とする作品という縁で、TEAM NACS所属の若き日の大泉洋が乗客の一人として登場する(ブルーレイの再生時間で言うと14分47秒前後が分かりやすい)。暗所のシーンで、しかも一瞬の登場なのだが、こちらもドルビーシネマ化の恩恵で、オリジナル版より画面上のコントラストが向上し、暗所における視認性が高まり、大泉洋をよりクッキリ確認することができる。若き日のヤスケンこと安田顕、ミスターこと鈴井貴之の出演シーンとあわせて、藩士の方にもぜひチェックしていただきたいところだ。
■特撮映画史に刻まれる名シーンがより美麗に!
続く仙台での第2幕では、作中唯一の陽光下でのガメラとレギオンの衝突が描かれる。こちらのシーンでは、巻き上がる土砂の粒状感がさらに際立ち、ガメラやレギオンの表皮の質感の違いがより細かに伝わる。
そして、この映画のすべて、傑作たる所以が詰まっていると言っても過言ではない、第3幕の利根川付近での最終攻防。自衛隊の火器のSE、翅レギオンの飛翔シーンなど立体的音響もさることながら、特技監督の名前を取り「樋口撃ち」などとも言われるシーンに始まる、復活したガメラのプラズマ火球の赤色、それと対になるような、レギオンの展開するマイクロ波シェルの青色が夜の闇に一際鮮やかに映えるほか、最後に訪れる夜明けのシーンなど、HDRの効果によって一層演出が冴え渡るシーンが続く。
すべて書き連ねると膨大なボリュームになってしまうため、お伝えしたいシーンを泣く泣く削って、だいぶ駆け足での紹介になってしまった。しかし、自分が『G1』を観た時に感激した以上に、『G2』はドルビーシネマ化によって魅力を増していると感じた。
2021年2月現在、ドルビーシネマを擁する劇場が全国で7館のみであるのと、緊急事態宣言下で外出を伴う劇場観賞を強く勧めることができないのがもどかしくもあるが、またとないこの機会をどうか無理のない範囲で体感していただければ、いち特撮ファンとしても嬉しい限りだ。先んじて試写で観賞したものの、記者もキチンと身銭を切り、劇場にて「ガメラを援護」したく思う。
『ガメラ2 レギオン襲来』 ドルビーシネマ版
監督:金子修介 特技監督:樋口真嗣
脚本:伊藤和典 撮影:戸澤潤一 音楽:大谷幸 美術:及川一 録音:橋本泰夫
[特殊技術] 撮影:木所寛 怪獣造型:原口智生 美術:三池敏夫 ビジュアルエフェクトスーパーバイザー:松本肇
出演:永島敏行 水野美紀 石橋保 吹越満 藤谷文子 川津祐介
1996年/本編100分/カラー/Dolby Atmos ® (ドルビーアトモス)/ヴィスタサイズ 配給:KADOKAWA
©KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 富士通 日販/1996
本サイトでも上映決定の報を取り上げたが、初報の段階では、暫定的に「3月公開予定」とされていたため、結果的に前倒しとなった。公開を待ちわびていたファンとしては嬉しい決定ではないだろうか? 少なくとも記者はその一人だ。コロナ禍で邦・洋の新作映画の公開スケジュールが軒並み延期している現状をふまえると尚更である。
「どの劇場に観に行くか…」と、封切りと同時に観ることを心に決めて記事を書いていたが、幸運にも試写会に参加する機会を得た。常日頃から「この手のものが好き」とアピールしておくものだ。
全国の劇場が休業していた前回の緊急事態宣言、その解除後に最初に鑑賞する作品を、渋谷HUMAXシネマにてリバイバル上映されていた「4Kリマスター版平成ガメラ3本」とする程度には、記者は平成ガメラに心奪われている。そんな視点から、ドルビーシネマ版『ガメラ2(G2)』の試写レポートをお届けしたい。
■ドルビーシネマ化にはオリジナル版スタッフが携わる
本作の試写は、2019年に設備を更新し、ドルビーシネマのカラーグレーディング、DCPマスタリング、映写作業を国内で初めて対応したIMAGICA Lab.第2試写室にて行われた。
改めてドルビーシネマという規格について触れておくと、まず採用する2つの主要技術として、広色域で鮮明な色彩と幅広いコントラストを表現するハイダイナミックレンジ映像を実現する「Dolby Vision(ドルビービジョン)」と、三次元空間の中にある物体の位置情報と音を記録したトラックを、再生環境に合わせて再現するオブジェクトベースのサウンドによって、より立体的な音響効果を獲得した「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」が挙げられる。
これらを劇場内の座席配置や、反射光を減らす黒を基調とした館内レイアウト、入場前のAVP(オーディオ・ビジュアル・パスウェイ)の設置などといった、観賞環境レベルで定められた要件を満たすシアターデザインに融合させたものが、ドルビーが最高の映画体験と提案するドルビーシネマとなる。
25年前(1996年公開)の作品である本作をドルビーシネマのフォーマットに落とし込むにあたり、映像面ではHDRグレーディング、音響効果においてはセリフ・音楽・効果音などの一部をドルビーアトモス用のトラックデータとして分離し、新たに効果音重低音の割付等を敢行。それらのアップデート作業を、オリジナル版スタッフが担当している。
前述の通り、作品自体は2020年に劇場で観賞しているように、何らかの形で年に1回は観ている。そういう意味では「特別感」や「高揚感」をあまり覚えること無く、ニュートラルな姿勢で試写に臨めた。……臨めたのだが、序盤からドルビーシネマ化された「G2」の凄みに気圧され、前のめり気味で終始釘付けにされたことは言うまでもない。
■ソルジャーレギオン登場に思わず仰け反る! 体感型の作品へと “深化”
本作は大きく分けて北海道、仙台、利根川(栃木)を舞台とした3幕構成なのだが、仙台での攻防を除くと、見せ場の全てがほぼナイトシーンという作品。その冒頭も北海道は恵庭岳にて、水野美紀演じる青少年科学館の学芸員の穂波 碧が流星雨を目撃するというシークエンスになるのだが、そこでアップになる水野美紀の、肌のきめ細やかさまで描画する高解像ぶりにまず驚く。2Kダウンコンされた状態とはいえ、昨年劇場で観賞した4Kリマスター版でもなかなかなものだったが、ドルビーシネマ版はそれ以上の表現力である。
HDRグレーディングの効果は、暗部の階調表現に強く表れている。序盤の見どころとも言える、地下鉄を襲うソルジャーレギオンの群れのシーンは白眉である。ミニチュアや造形を交えた特撮的なカットではあるのだが、高解像化されたかと言って “見えすぎる” こともなく、トンネル内の沈んだ空気感の演出に磨きがかかる。
そして主観視点を交えながら、カメラは地下鉄の運転手にフォーカス。大写しになる破壊された路線。そしてその周囲を「何か」が蠢く様子を、ドルビーアトモスの見事な音場で再現する。劇場という箱状の空間が、まるで画面の向こうの地下鉄車両に置き換わったかのような没入感に包まれる。
前作『G1』のドルビーシネマ版での、「姫神島の漁船を襲うギャオス」のシーンでも感じたが、人間が怪獣に襲われるシーンにおける音響効果が並々ならぬレベルになっているのだ。怪獣同士の衝突シーンにおいても、迫力あるシーンをより補強する方向でドルビーシネマの音響効果が作用しているのだが、怪獣の意識が人間に向けられるシーンでは没入感、いや、恐怖感が倍増している。何度も見ているから流れを知っており、「そろそろかな」と身構えた上で、ソルジャーレギオンがその姿を現すシーンで思わず仰け反ってしまった。本当に怖かった……。
なお、前述の地下鉄のシーンには北海道を舞台とする作品という縁で、TEAM NACS所属の若き日の大泉洋が乗客の一人として登場する(ブルーレイの再生時間で言うと14分47秒前後が分かりやすい)。暗所のシーンで、しかも一瞬の登場なのだが、こちらもドルビーシネマ化の恩恵で、オリジナル版より画面上のコントラストが向上し、暗所における視認性が高まり、大泉洋をよりクッキリ確認することができる。若き日のヤスケンこと安田顕、ミスターこと鈴井貴之の出演シーンとあわせて、藩士の方にもぜひチェックしていただきたいところだ。
■特撮映画史に刻まれる名シーンがより美麗に!
続く仙台での第2幕では、作中唯一の陽光下でのガメラとレギオンの衝突が描かれる。こちらのシーンでは、巻き上がる土砂の粒状感がさらに際立ち、ガメラやレギオンの表皮の質感の違いがより細かに伝わる。
そして、この映画のすべて、傑作たる所以が詰まっていると言っても過言ではない、第3幕の利根川付近での最終攻防。自衛隊の火器のSE、翅レギオンの飛翔シーンなど立体的音響もさることながら、特技監督の名前を取り「樋口撃ち」などとも言われるシーンに始まる、復活したガメラのプラズマ火球の赤色、それと対になるような、レギオンの展開するマイクロ波シェルの青色が夜の闇に一際鮮やかに映えるほか、最後に訪れる夜明けのシーンなど、HDRの効果によって一層演出が冴え渡るシーンが続く。
すべて書き連ねると膨大なボリュームになってしまうため、お伝えしたいシーンを泣く泣く削って、だいぶ駆け足での紹介になってしまった。しかし、自分が『G1』を観た時に感激した以上に、『G2』はドルビーシネマ化によって魅力を増していると感じた。
2021年2月現在、ドルビーシネマを擁する劇場が全国で7館のみであるのと、緊急事態宣言下で外出を伴う劇場観賞を強く勧めることができないのがもどかしくもあるが、またとないこの機会をどうか無理のない範囲で体感していただければ、いち特撮ファンとしても嬉しい限りだ。先んじて試写で観賞したものの、記者もキチンと身銭を切り、劇場にて「ガメラを援護」したく思う。
『ガメラ2 レギオン襲来』 ドルビーシネマ版
監督:金子修介 特技監督:樋口真嗣
脚本:伊藤和典 撮影:戸澤潤一 音楽:大谷幸 美術:及川一 録音:橋本泰夫
[特殊技術] 撮影:木所寛 怪獣造型:原口智生 美術:三池敏夫 ビジュアルエフェクトスーパーバイザー:松本肇
出演:永島敏行 水野美紀 石橋保 吹越満 藤谷文子 川津祐介
1996年/本編100分/カラー/Dolby Atmos ® (ドルビーアトモス)/ヴィスタサイズ 配給:KADOKAWA
©KADOKAWA 日本テレビ 博報堂DYメディアパートナーズ 富士通 日販/1996