公開日 2021/08/25 06:30
TIGLONのオーディオラック「グランドマグネシア」で聴いた“真実のハイファイ”
【特別企画】特許技術を採用した人気モデルが全面進化
2009年の登場以来、世界的なロングセラーを続けているティグロンのマグネシウムオーディオラック「MAGNESIA」。同モデルをベースに、大幅な音質アップと使いやすさも追求した「GRAND MAGNESIA」が完成した。ティグロンの新たな歴史を刻む、最新ラックの音質のポイントをレポートしよう。
TIGLON GRAND MAGNESIA
オーディオラック
「GMR-1」(1段) 72,600円(税込)
「GMR-2」(2段) 145,200円(税込)
「GMR-3」(3段) 217,800円(税込)
「GMR-4」(4段) 290,400円(税込)
「GMR-5」(5段) 363,000円(税込)
■棚板、支柱、構造すべてに手を加えて最新リニューアル(鈴木)
2009年に発売したオーディオラック「MAGNESIA(マグネシア)」は日本だけでなく世界に輸出され、いまだにロングセラーを続けている。そして今回、そのマグネシアをベースにさらに音質を向上させた新しいラックが登場した。「GRAND MAGNESIA(グランドマグネシア)」だ。
そもそもマグネシアの特徴のひとつは支柱にあった。断面が二重の円筒形になっている複雑な形状で、素材としても振動吸収率の高いマグネシウム材を採用。さらに、より深く無駄な共鳴や振動をコントロールするため、二重円筒の内部には超微粒の砂を充填していた。そして棚板には気密性が高く、強度/耐水性に優れたロシアンバーチを採用し、金属と自然木のハイブリッドで自然な音質を追求したのがマグネシアだった。
新製品のグランドマグネシアでは、まず棚板は水分量をコントロールした特殊ロシアンバーチで製作した「GMR-RB」を採用。さらに支柱の構造も進化している。
ちょっと原理原則的なことを書くと、オーディオラックは、たとえば3段あれば、基本的には3台のコンポーネントを載せる場合が多いが、実はその3台はそれぞれに固有の振動を持っていて、それを載せているラックは棚板や支柱がその振動の影響を受け、複雑な振動モードを生み出していくことになる。筆者の言い方だと「オーディオラックは振動のデパート」状態なわけだ。
ティグロンでは機器間の共振抑制のため、1段ごとに “GMRスパイク” と名付けられた機構を新たに開発した。このスパイクには2019年に特許を取得した新技術、「D-REN RING」を投入し、幅広い帯域の振動抑制と静電対策を強化している。しかもマグネシウム合金支柱には、これも新開発の「特殊シリコン素材」を充填。棚板ごとに振動をアイソレートする設計思想が相当に徹底的なのだ。ちなみに、「マグネシア」からのグレードアップ対応も予定しているという。
■しっかりと実がつまった真実のハイファイの音
テストは3段のものを用意し、CDプレーヤーとプリアンプを載せて聴いた。まず、ルイージ指揮フィルハーモニア・チューリッヒの『ワーグナー:前奏曲と間奏曲集』から「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲。サウンドステージは左右のスピーカーを結んだ線のやや手前に展開し、奥行き方向もかなり深く見えてくる。ただし、特徴的なのは数多くの楽器、パートが見えてくるが、空間が開き過ぎることもない点だ。音の色彩感が濃い目に出てきて、しかも原色というよりシックな感じ。音楽のうねりやさまざまなメロディが対位法的に絡んでくる様子が実に音楽的だ。
ダイアナ・クラール『ディス・ドリーム・オブ・ユー』では音像が大きめで、歌と対峙しているインティメイトな感じが愉しい。絵で言えば、デッサンの線よりも濃く塗られた絵の具のような、存在感の大きい、太い音。ナチュラルで聴き応えのある再生音だ。同時に音自体の混濁した感じはなく、空間も出てくるところに、きちんと音を開発・熟成させて来たのを感じる。アイディア一発で作ったラックではない。
エリック・クラプトン『アンプラグド』では、オーディエンスの拍手が、横にも前後に幅広くいて、実在感が高い。音調自体は肉厚な感じがありつつ、きちんと高音は立っている。低域も分離させ過ぎないが、最低域の音像はちゃんとある。重心の低い低音感も魅力。
何を聴いても、表面的と言うか、上っつらの感じがなく、しっかりと実の詰まった感じの音だ。ハイファイ調ではなく、真実のハイファイの音とお伝えしたい。魅力のある音を持ったオーディオラックだ。
■静寂感がさらに冴え、ニュアンス豊かな表情を聴かせる(井上)
「グランドマグネシア」と「マグネシア」の最も大きな違いは構造である。従来モデルは棚板を接続した一体型だが、「グランドマグネシア」は一段ごとに分離したセパレート構造に変更されている。
抜けのいい静かな鳴り方で、余韻のきめ細かな緻密さが音調のベースとなっている。天然木の棚板と新開発の制振パーツの効果は確かだが、何よりも各段をスパイクで分離したのが利いているのである。
バロックでは特にヴァイオリンの艶と潤いが秀逸だ。古楽器らしい軽さと粘りが、密度のある質感に支えられて瑞々しい。ピアノも表情が繊細で、ひっそりした情景が浮かぶような出方をする。タッチの粒が揃って暴れがなく、静かではあるが表情は細かな変化に富んでニュアンス豊かだ。
室内楽もそうだが、低域に不要な膨らみや重苦しさがない。またオーケストラは峻烈だが、刺々しい濁りがなく当たりが柔らかい。周辺ノイズが低いため、音に絡む汚れがなく耳障りな雑音が聴こえないのだ。静寂感が冴えている。
◇
標準セットの他、支柱やスパイクをオプションで購入することも可能
オプション価格
●支柱「GMR-M」
41,800円(4本セット/税込)
長さは70/150/200/280/330oの5種類から選択可能
●支柱用スパイク受け 「GMR-BASE/4」
13,200円(4個セット/税込)
●支柱用スパイク 「GMR-S/4」
15,840円(4個セット/税込)
●棚板「GMR-RB」
33,000円(1枚/税込)
●チューニングベルト(2段連結用)「TB-MG20W」
7,700円(税込)
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.181』からの転載です
オーディオラック
「GMR-1」(1段) 72,600円(税込)
「GMR-2」(2段) 145,200円(税込)
「GMR-3」(3段) 217,800円(税込)
「GMR-4」(4段) 290,400円(税込)
「GMR-5」(5段) 363,000円(税込)
■棚板、支柱、構造すべてに手を加えて最新リニューアル(鈴木)
2009年に発売したオーディオラック「MAGNESIA(マグネシア)」は日本だけでなく世界に輸出され、いまだにロングセラーを続けている。そして今回、そのマグネシアをベースにさらに音質を向上させた新しいラックが登場した。「GRAND MAGNESIA(グランドマグネシア)」だ。
そもそもマグネシアの特徴のひとつは支柱にあった。断面が二重の円筒形になっている複雑な形状で、素材としても振動吸収率の高いマグネシウム材を採用。さらに、より深く無駄な共鳴や振動をコントロールするため、二重円筒の内部には超微粒の砂を充填していた。そして棚板には気密性が高く、強度/耐水性に優れたロシアンバーチを採用し、金属と自然木のハイブリッドで自然な音質を追求したのがマグネシアだった。
新製品のグランドマグネシアでは、まず棚板は水分量をコントロールした特殊ロシアンバーチで製作した「GMR-RB」を採用。さらに支柱の構造も進化している。
ちょっと原理原則的なことを書くと、オーディオラックは、たとえば3段あれば、基本的には3台のコンポーネントを載せる場合が多いが、実はその3台はそれぞれに固有の振動を持っていて、それを載せているラックは棚板や支柱がその振動の影響を受け、複雑な振動モードを生み出していくことになる。筆者の言い方だと「オーディオラックは振動のデパート」状態なわけだ。
ティグロンでは機器間の共振抑制のため、1段ごとに “GMRスパイク” と名付けられた機構を新たに開発した。このスパイクには2019年に特許を取得した新技術、「D-REN RING」を投入し、幅広い帯域の振動抑制と静電対策を強化している。しかもマグネシウム合金支柱には、これも新開発の「特殊シリコン素材」を充填。棚板ごとに振動をアイソレートする設計思想が相当に徹底的なのだ。ちなみに、「マグネシア」からのグレードアップ対応も予定しているという。
■しっかりと実がつまった真実のハイファイの音
テストは3段のものを用意し、CDプレーヤーとプリアンプを載せて聴いた。まず、ルイージ指揮フィルハーモニア・チューリッヒの『ワーグナー:前奏曲と間奏曲集』から「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲。サウンドステージは左右のスピーカーを結んだ線のやや手前に展開し、奥行き方向もかなり深く見えてくる。ただし、特徴的なのは数多くの楽器、パートが見えてくるが、空間が開き過ぎることもない点だ。音の色彩感が濃い目に出てきて、しかも原色というよりシックな感じ。音楽のうねりやさまざまなメロディが対位法的に絡んでくる様子が実に音楽的だ。
ダイアナ・クラール『ディス・ドリーム・オブ・ユー』では音像が大きめで、歌と対峙しているインティメイトな感じが愉しい。絵で言えば、デッサンの線よりも濃く塗られた絵の具のような、存在感の大きい、太い音。ナチュラルで聴き応えのある再生音だ。同時に音自体の混濁した感じはなく、空間も出てくるところに、きちんと音を開発・熟成させて来たのを感じる。アイディア一発で作ったラックではない。
エリック・クラプトン『アンプラグド』では、オーディエンスの拍手が、横にも前後に幅広くいて、実在感が高い。音調自体は肉厚な感じがありつつ、きちんと高音は立っている。低域も分離させ過ぎないが、最低域の音像はちゃんとある。重心の低い低音感も魅力。
何を聴いても、表面的と言うか、上っつらの感じがなく、しっかりと実の詰まった感じの音だ。ハイファイ調ではなく、真実のハイファイの音とお伝えしたい。魅力のある音を持ったオーディオラックだ。
■静寂感がさらに冴え、ニュアンス豊かな表情を聴かせる(井上)
「グランドマグネシア」と「マグネシア」の最も大きな違いは構造である。従来モデルは棚板を接続した一体型だが、「グランドマグネシア」は一段ごとに分離したセパレート構造に変更されている。
抜けのいい静かな鳴り方で、余韻のきめ細かな緻密さが音調のベースとなっている。天然木の棚板と新開発の制振パーツの効果は確かだが、何よりも各段をスパイクで分離したのが利いているのである。
バロックでは特にヴァイオリンの艶と潤いが秀逸だ。古楽器らしい軽さと粘りが、密度のある質感に支えられて瑞々しい。ピアノも表情が繊細で、ひっそりした情景が浮かぶような出方をする。タッチの粒が揃って暴れがなく、静かではあるが表情は細かな変化に富んでニュアンス豊かだ。
室内楽もそうだが、低域に不要な膨らみや重苦しさがない。またオーケストラは峻烈だが、刺々しい濁りがなく当たりが柔らかい。周辺ノイズが低いため、音に絡む汚れがなく耳障りな雑音が聴こえないのだ。静寂感が冴えている。
標準セットの他、支柱やスパイクをオプションで購入することも可能
オプション価格
●支柱「GMR-M」
41,800円(4本セット/税込)
長さは70/150/200/280/330oの5種類から選択可能
●支柱用スパイク受け 「GMR-BASE/4」
13,200円(4個セット/税込)
●支柱用スパイク 「GMR-S/4」
15,840円(4個セット/税込)
●棚板「GMR-RB」
33,000円(1枚/税込)
●チューニングベルト(2段連結用)「TB-MG20W」
7,700円(税込)
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.181』からの転載です