公開日 2023/01/24 06:30
現代に継承される英国BBCモニターサウンド。名門・スペンドール「ニュークラシックシリーズ」の堂々たる表現力
【特別企画】英国家具風の格調あるデザインも魅力
1960年初頭、スペンサー・ヒューズとドロシー夫妻により英国で設立されたスペンドール社。BBCの音響技術局が集積した経験とノウハウを活用し、多くの銘機を手がけてきた名門ブランドである。今回は、英国家具調のデザインでも知られる「Classic100」と「Classic4/5」の魅力をお伝えしよう。
1960年代の初頭。英国BBC放送の流れを汲む、高級スピーカーブランドが多く誕生した。SPENDOR(スペンドール)はそうしたメーカーのひとつだ。スペンドールという社名は、BBCのエンジニアであったスペンサーと夫人のドロシーの名を合成したもの。
実は個人的に熱烈なスペンドールユーザーで、歴代のモデルを愛用してきた。最初期のBC-IIやBC-III、さらに初代S100も鳴らしていたのだ。良質なブリティッシュサウンドで育ってきた私である。だからスペンサーが開発したBC(ベクストレンコーン)ウーファーの音もよく知っているし、BC-IIはいまでも現役だ。
さて、現在は経営者が変わり新しい体制となった同社だが、すべて英国内工場での設計・生産が行われている生粋のメイド・イン・UKである。ここで紹介する「クラシックシリーズ」は50年間にわたり、何世代にもわたってリニューアルを重ねてきた、スペンドールを代表する主力シリーズだ。
ここではトラディショナルな風貌をもつ大型ブックシェルフの「Classic 100」。そして小型モニターの「Classic 4/5」を紹介するが、2017年から型名の呼称が変わったのでご注意いただきたい。ニューのついた「ニュークラシックシリーズ」だ。以前の「Classic SP100」は、SPをとってすっきり「Classic 100」となった。
まずClassic 100から見ていこう。その源流はかつての銘機SP100、S100からさらにSA3、BC-IIIへと溯る。30センチのベクストレンコーンウーファーをベースとした大型サイズ(幅370×奥行433×高さ700mm)で、バスレフの3ウェイ機だ。ミッドがEP77ポリマーコーン。トゥイーターはソフトドームと、素材の異なる3つのユニットを絶妙のバランスで使いこなす伝統はさすがである。
クロスオーバー周波数は490Hzと3.6kHz。89dBの高能率だ。木目の美しいエンクロージャーをもち、シンプルでソリッドな英国家具デザインはいつ見ても落ち着ける。スピーカーはこのくらいの風格が欲しい。
もう一台はシリーズ中いちばん小さなClassic 4/5だ。直近では2017年のClassic 3/5からの進化であるが、この型名はもともとBBCモニター直系。“LSナンバー”の3/5a(1982年)譲りであるなと気づいた方は、相当なマニアだと思う。
現代版のLS3/5aだから当然、密閉型のエンクロージャーを踏襲。サイズは手頃な幅190×奥行165×高さ306mm。シックな木目仕上げだ。150mmEP77ポリマーコーンのミッドバスとソフトドームの2ウェイ2スピーカーで、クロスオーバー周波数は4.2kHz。100Wの耐入力をもち、パワーハンドリングに余裕のある最新の仕様だ。入力端子はClassic 100と同じく、金メッキバナナプラグ対応となっている。
まず別売スタンドにセットしたClassic 100から聴く。これはサイズ感のあるサウンドで、低音域まで伸び堂々として音離れがよい。ああ、30センチウーファーはいいなと思う。かつてのS100を現代的にして上下にレンジを伸ばした感じだ。ユニット配置も理想に近く、定位と実像感のあるクラシック音楽やUKロック&ポップスをかけたらご機嫌だ。
シューベルトの『ザ・グレート』は、スケールの大きなピラミッドバランスだ。音色が実に豊かだしソロの木管やゆったりとしたピチカート。浮きあがるような高弦の瑞々しさは素晴らしい。このスピーカーの醍醐味を味わうために『スター・ウォーズ』のオーケストラ盤を聴いた。さらに迫力や立体感を増して、ブラスや打楽器の放射エネルギーに圧倒された。オペラは声量豊かで、ツヤとハリがあって伸びやかだ。ピアノはややクール。鮮明な響きの室内楽など、クラシックは何でもこいという感じである。能率が高いメリットか、ボリュームをしぼっても音痩せしないのがよい。
全体にもう少し渋めの音かと思ったが違うようだ。派手でない程度に迫力があってクリアだし、アデルは聴き応えたっぷりに歌い上げてくれた。ジャズも数枚聴いたが、先端的なものより、モダンジャズなどの方がしっくりきそうだ。ビッグバンドは音圧高め。ステージ感たっぷりで、ライブの雰囲気に包まれた。ちょっとトラッドな空気感がこのスピーカーの持ち味といえそうだ。
次にClassic 4/5を鳴らそう。このサイズで密閉型はレアだが、反応がよく低音もほどよい量感で気持ちよく楽しめる。そんなスピーカーだ。いろいろ聴いてみると、ダンピングがうまくコントロールされ、楽しく聴きやすいサウンドの出方をする。新型ポリマーウーファーの性能と空気バネが巧妙にナイスマッチ。あわせてワイドエッジソフトドームの素姓が引き出された感じだ。
オーケストラものなどは小振りだが、アデルはボディから発した声が輝くように響く。自然な音場の広がりや定位性が見事なのだ。よい意味で節度やバランスを保った鳴り方というべきで、現代のコンパクトタイプにありがちなオーバーな低域や華やかさを演出したものとは違う。
幸田浩子の『アリア』も実にナチュラルな高域表現で、すっきりとした鮮度を保ちはしゃがないのがよい。遠近のコントラストも上々。背景の合奏陣が深く配置され、包み込むハーモニーが美しい。ジャズは前にせりだし、ニッキ・パロットの歌うベーシストぶりが楽しめた。
スペンドールの代表2モデル。その魅力をおわかり頂けただろうか。トライオードはこれまでクラシックシリーズのみを発売してきたが、Aライン、Dラインの現代シリーズも国内導入されている。名門ブランド・スペンドールの新しい時代を期待しよう。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.186』からの転載です。
BBCモニターの系譜を受け継ぐ生粋のメイド・イン・UKブランド
1960年代の初頭。英国BBC放送の流れを汲む、高級スピーカーブランドが多く誕生した。SPENDOR(スペンドール)はそうしたメーカーのひとつだ。スペンドールという社名は、BBCのエンジニアであったスペンサーと夫人のドロシーの名を合成したもの。
実は個人的に熱烈なスペンドールユーザーで、歴代のモデルを愛用してきた。最初期のBC-IIやBC-III、さらに初代S100も鳴らしていたのだ。良質なブリティッシュサウンドで育ってきた私である。だからスペンサーが開発したBC(ベクストレンコーン)ウーファーの音もよく知っているし、BC-IIはいまでも現役だ。
さて、現在は経営者が変わり新しい体制となった同社だが、すべて英国内工場での設計・生産が行われている生粋のメイド・イン・UKである。ここで紹介する「クラシックシリーズ」は50年間にわたり、何世代にもわたってリニューアルを重ねてきた、スペンドールを代表する主力シリーズだ。
英国家具風デザインも美しいニュークラシックシリーズ
ここではトラディショナルな風貌をもつ大型ブックシェルフの「Classic 100」。そして小型モニターの「Classic 4/5」を紹介するが、2017年から型名の呼称が変わったのでご注意いただきたい。ニューのついた「ニュークラシックシリーズ」だ。以前の「Classic SP100」は、SPをとってすっきり「Classic 100」となった。
まずClassic 100から見ていこう。その源流はかつての銘機SP100、S100からさらにSA3、BC-IIIへと溯る。30センチのベクストレンコーンウーファーをベースとした大型サイズ(幅370×奥行433×高さ700mm)で、バスレフの3ウェイ機だ。ミッドがEP77ポリマーコーン。トゥイーターはソフトドームと、素材の異なる3つのユニットを絶妙のバランスで使いこなす伝統はさすがである。
クロスオーバー周波数は490Hzと3.6kHz。89dBの高能率だ。木目の美しいエンクロージャーをもち、シンプルでソリッドな英国家具デザインはいつ見ても落ち着ける。スピーカーはこのくらいの風格が欲しい。
もう一台はシリーズ中いちばん小さなClassic 4/5だ。直近では2017年のClassic 3/5からの進化であるが、この型名はもともとBBCモニター直系。“LSナンバー”の3/5a(1982年)譲りであるなと気づいた方は、相当なマニアだと思う。
現代版のLS3/5aだから当然、密閉型のエンクロージャーを踏襲。サイズは手頃な幅190×奥行165×高さ306mm。シックな木目仕上げだ。150mmEP77ポリマーコーンのミッドバスとソフトドームの2ウェイ2スピーカーで、クロスオーバー周波数は4.2kHz。100Wの耐入力をもち、パワーハンドリングに余裕のある最新の仕様だ。入力端子はClassic 100と同じく、金メッキバナナプラグ対応となっている。
Classic 100はステージ感たっぷり、少しトラッドな空気感が持ち味
まず別売スタンドにセットしたClassic 100から聴く。これはサイズ感のあるサウンドで、低音域まで伸び堂々として音離れがよい。ああ、30センチウーファーはいいなと思う。かつてのS100を現代的にして上下にレンジを伸ばした感じだ。ユニット配置も理想に近く、定位と実像感のあるクラシック音楽やUKロック&ポップスをかけたらご機嫌だ。
シューベルトの『ザ・グレート』は、スケールの大きなピラミッドバランスだ。音色が実に豊かだしソロの木管やゆったりとしたピチカート。浮きあがるような高弦の瑞々しさは素晴らしい。このスピーカーの醍醐味を味わうために『スター・ウォーズ』のオーケストラ盤を聴いた。さらに迫力や立体感を増して、ブラスや打楽器の放射エネルギーに圧倒された。オペラは声量豊かで、ツヤとハリがあって伸びやかだ。ピアノはややクール。鮮明な響きの室内楽など、クラシックは何でもこいという感じである。能率が高いメリットか、ボリュームをしぼっても音痩せしないのがよい。
全体にもう少し渋めの音かと思ったが違うようだ。派手でない程度に迫力があってクリアだし、アデルは聴き応えたっぷりに歌い上げてくれた。ジャズも数枚聴いたが、先端的なものより、モダンジャズなどの方がしっくりきそうだ。ビッグバンドは音圧高め。ステージ感たっぷりで、ライブの雰囲気に包まれた。ちょっとトラッドな空気感がこのスピーカーの持ち味といえそうだ。
Classic 4/5は珍しい密閉型。節度やバランスを保った鳴り方
次にClassic 4/5を鳴らそう。このサイズで密閉型はレアだが、反応がよく低音もほどよい量感で気持ちよく楽しめる。そんなスピーカーだ。いろいろ聴いてみると、ダンピングがうまくコントロールされ、楽しく聴きやすいサウンドの出方をする。新型ポリマーウーファーの性能と空気バネが巧妙にナイスマッチ。あわせてワイドエッジソフトドームの素姓が引き出された感じだ。
オーケストラものなどは小振りだが、アデルはボディから発した声が輝くように響く。自然な音場の広がりや定位性が見事なのだ。よい意味で節度やバランスを保った鳴り方というべきで、現代のコンパクトタイプにありがちなオーバーな低域や華やかさを演出したものとは違う。
幸田浩子の『アリア』も実にナチュラルな高域表現で、すっきりとした鮮度を保ちはしゃがないのがよい。遠近のコントラストも上々。背景の合奏陣が深く配置され、包み込むハーモニーが美しい。ジャズは前にせりだし、ニッキ・パロットの歌うベーシストぶりが楽しめた。
スペンドールの代表2モデル。その魅力をおわかり頂けただろうか。トライオードはこれまでクラシックシリーズのみを発売してきたが、Aライン、Dラインの現代シリーズも国内導入されている。名門ブランド・スペンドールの新しい時代を期待しよう。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.186』からの転載です。