PR 公開日 2024/07/19 06:30
王道の2ウェイブックシェルフ・DALI「MENUET」。歴史的モデルから最新鋭機への進化と変わらぬフィロソフィーを探る
30年以上も販売され続けるロングセラーシリーズ
2023年に創業40周年を迎えたデンマークのスピーカーブランドDALI(ダリ)。同社には、“小型高性能スピーカー”の代表格といえる「MENUET」シリーズが長く展開され日本のユーザーにも愛されている。
今回は、銘機と名高い歴史的モデル「ROYAL MENUET II」と「MENTOR MENUET」、そして現行モデルの現在の「MENUET」とそのファインチューンモデル「MENUET SE」の4機種の聴き比べを実施。スピーカー技術の進化と、それでも変わらないDALIの核となるサウンド思想を探った。
DALIの設立は1983年。その9年後の1992年に「MENUET」の初代機が誕生しているが、それから今日まで幾度かリファインを繰り返しながら生産が続けられてきた。実に30年に及ぶロングセラーで、DALIの現行品でこれより以前のものはない。それだけでなく今世紀初頭に登場し現在のDALIの基礎を築いた、初のファイバーコーン搭載フラグシップ「EUPHONIA」シリーズよりも古いのだ。スピーカーでこれだけ長寿命の製品は稀である。
現行モデルは「MENUET」と「MENUET SE」の2つだが、今回はそれ以前の製品も交えて聴きながら進化の流れと現在の立ち位置を見てみることにしたい。
始めに現行モデルに先行する2機種を聴いてみたい。
まず「ROYAL MENUET II」。初代機の2年後に発売された第2世代機である。ソフトドーム・トゥイーターと100mmウーファーの2ウェイで、これ自体が15年間のロングセラーとなった。
30年も前の製品だけにもっとナローかと思ったが意外にもそんなことはなく、まとまりのいい音調がとても耳になじみやすい。過度な刺激を避けて当たりがいいのは確かだが、なによりバランスが秀逸なのである。レスポンスに凹凸がなく、どの音も均等に鳴っている。バロックのトリオソナタだから楽器の数は多くないが、ヴァイオリンにしてもチェロやテオルボにしても余裕があって息苦しさを感じさせない。それに瞬発的なエネルギーも十分で、こなれた音が伸びやかに引き出されている。
ピアノもたっぷりとした鳴り方で、低音のずっしりと深く沈んだ響きがにじみなく描かれているし、タッチのまろやかさと繊細なニュアンスも丁寧な感触だ。やや下寄りに重心を持たせているのが時代の嗜好を感じさせるが、取り立てて重苦しくなることもなく輪郭がぼやけることもない。刺がないのは歪みが少ないことの反映だ。
元来メヌエットはどのシリーズにも属さない単独の製品だが、一度だけシリーズのラインアップに入ったことがある。それが「MENTOR MENUET」で、ロイヤルから6年後のことである。このときウーファーがウッドファイバー・コーンに変わっている。それも利いているのか切れがシャープになった。当然低域は深いところまで明瞭な輪郭線を保ち、立ち上がりが全体にくっきりとしている。それが6年間の進化ということである。
バロックは万事が円満に整ったロイヤルに比べて峻烈さが増し、瞬発的なダイナミズムに激しさが加わって音の一粒々々が明快に立ち上がる。ヴァイオリンがより艶やかに、テオルボがより鮮明に聴こえてくるのが時代背景の違いを感じさせるのだが、20年前と言えばオーディオソースが完全にデジタルへ切り替わったころである。それが製品作りの指向性に関係している可能性も考えられる。
ピアノはタッチの鮮明さが大分違っていて、特に高域の切れと芯の強さに明らかな差がある。それだけ音数も増し、細かな表情がはっきりと感じられるようになっているのが特色と言っていい。
いずれにしてもどちらも完成度が高い。結局非常によくできたモデルということで、だからこそ単独で現在までロングセラーを続けてくることができたのであろう。そういうことをあらためて確認したうえで、いよいよ現行モデルに移りたい。
2015年にMENTOR MENUETが生産終了となり、代わって登場したのが現在のMENUET。シリーズからは外れ、再び単独モデルとなった。115mmのウッドファイバー・コーン・ウーファーと28mmソフトドーム・トゥイーターという構成で、DALIとしてはすでに不動のものとなった観がある。
外観に大きな変化はないが録音技術の進化を意識したこともあったのか、それまでとは方向性が変わって明らかに高解像度を指向しているのがわかる。音数が多いだけでなく、それぞれの音の関係が非常に正確になって再現性が緻密さを増した。バランスの取れたブックシェルフ型の典型という立ち位置から、最先端の技術と音質を凝縮したハイエンド2ウェイという格付けへ飛躍したように思える。
バロックが鮮烈極まりない手触りで引き出されるのに驚かされるが、それはヴァイオリンだけでなくチェロにもチェンバロにも共通する特徴である。また立ち上がり・引き下がりの変化が速く、申し分ないほどのハイスピードな再現性を発揮する。シャープで峻烈さに満ちた劇的な再現である。
ピアノは録音の音質にちょうどぴったり合っている感覚で、非常に無理のない鳴り方をする。タッチが重くならずまた硬質感もなく、細かな手触りがそのまま滑らかに出てくる印象である。高域のシャープネスと低音部の引き締まった深さが、それを実現する鍵になっているようだ。ニュアンスは豊富だが無駄な響きがなく、音の隙間や背景の空間が曇りなく見えているように感じる。
女声コーラスのようなピアノとは正反対のソースだと、切れの鋭さは影をひそめるがハーモニーの明瞭さが音楽の立体感を高めて説得力に富んでいる。声の肉質感にも節度が感じられて嫌みがなく、ふっくらとした響きが空間に満ち渡って美しく優雅だ。
オーケストラは小型2ウェイの場合解像度の勝負という一面があるが、その点で本機には全く不安がない。長い間に磨き上げられてきた充実度がものを言って、多彩なアンサンブルの展開を全く混濁することなく明確に描き出している。どの楽器にもにじみや曇りがなく、どれだけ音が重なっても行方不明になることがない。
さらに感心させられるのは、瞬発力が大変強力なことだ。ことに低域のそれが利いて、ここというときの表現力に物足りなさを感じさせないのである。木管楽器やパーカッションの鋭さはいうまでもなく、それらが塊となってクライマックへ高まってゆくフォルテの描き方も堂に入ったものである。強弱の起伏が大きいのだ。小型2ウェイとしては出色のものと言っていい。
MENUET SEはこれをベースに細部を詰めた特別バージョンで、独ムンドルフ製コンデンサーを採用してネットワークを再チューニング。仕上げもよりエレガントな豪華さを加え、また端子はEPICONグレードだという。
音の面では低域の出方に余裕が増した。振動板の動きがいいというイメージで、一回り深いところまで楽について行っている気がする。例えばバロックだとチェロの量感と音色が豊かになっている。そして重要なのはこれによってトゥイーターとのなじみがさらに滑らかになり、位相が揃って音調のバランスが整ったということである。このため楽器の位置感や音場の実体感が高まっている。違いとしては小さなことだが、結果的には様々な部分に影響が及んで再現性が大きく改善されることになった。
バロックは聴いていてどこにも引っ掛かりを感じない。そこで音楽が鳴っているという感覚だけが湧き上がってくるが、それは全てがあるべき形に整っているからである。
ピアノは実在感が強い。ことに低音の出方がすぐそこで鳴っているような存在感に富んでリアリズムを強く感じさせる。高域の方も同じことで、つまりピントがいいのである。出方が楽に感じられるのはそのためだ。
コーラスはいっそう鮮度が高く、ディテールのデリカシーに富んで新鮮そのものだ。表情が生き生きしているのとともに、凹凸の幅が広くまたスピードも速い。そういったことが空間の奥行を明瞭にして、さらにリアリティを増すという具合である。
オーケストラでも空間の実体感が高く、楽器それぞれの音色がさらに生々しく感じられる。情報の隅々まで取り出されてきているためで、音どうしの立体的な関係がはっきりと正確に描き出されているため音楽が生き生きしてくるのである。ライブ感に溢れた再現で、ソースの信号が全開になった印象である。
30年を越すロングセラーというのは伊達ではない。その間細かな改善が緻密に施され、それが積み重ねられていまの音に到達したのである。できたばかりではこの完成度は得られない。まさしく技術の熟成がもたらした成果である。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
今回は、銘機と名高い歴史的モデル「ROYAL MENUET II」と「MENTOR MENUET」、そして現行モデルの現在の「MENUET」とそのファインチューンモデル「MENUET SE」の4機種の聴き比べを実施。スピーカー技術の進化と、それでも変わらないDALIの核となるサウンド思想を探った。
ソフトドームトゥイーターとウーファーの2ウェイスタイルを継承
DALIの設立は1983年。その9年後の1992年に「MENUET」の初代機が誕生しているが、それから今日まで幾度かリファインを繰り返しながら生産が続けられてきた。実に30年に及ぶロングセラーで、DALIの現行品でこれより以前のものはない。それだけでなく今世紀初頭に登場し現在のDALIの基礎を築いた、初のファイバーコーン搭載フラグシップ「EUPHONIA」シリーズよりも古いのだ。スピーカーでこれだけ長寿命の製品は稀である。
現行モデルは「MENUET」と「MENUET SE」の2つだが、今回はそれ以前の製品も交えて聴きながら進化の流れと現在の立ち位置を見てみることにしたい。
始めに現行モデルに先行する2機種を聴いてみたい。
まず「ROYAL MENUET II」。初代機の2年後に発売された第2世代機である。ソフトドーム・トゥイーターと100mmウーファーの2ウェイで、これ自体が15年間のロングセラーとなった。
30年も前の製品だけにもっとナローかと思ったが意外にもそんなことはなく、まとまりのいい音調がとても耳になじみやすい。過度な刺激を避けて当たりがいいのは確かだが、なによりバランスが秀逸なのである。レスポンスに凹凸がなく、どの音も均等に鳴っている。バロックのトリオソナタだから楽器の数は多くないが、ヴァイオリンにしてもチェロやテオルボにしても余裕があって息苦しさを感じさせない。それに瞬発的なエネルギーも十分で、こなれた音が伸びやかに引き出されている。
ピアノもたっぷりとした鳴り方で、低音のずっしりと深く沈んだ響きがにじみなく描かれているし、タッチのまろやかさと繊細なニュアンスも丁寧な感触だ。やや下寄りに重心を持たせているのが時代の嗜好を感じさせるが、取り立てて重苦しくなることもなく輪郭がぼやけることもない。刺がないのは歪みが少ないことの反映だ。
ターミナルやキャビネット形状を進化させたMENTOR MENUET
元来メヌエットはどのシリーズにも属さない単独の製品だが、一度だけシリーズのラインアップに入ったことがある。それが「MENTOR MENUET」で、ロイヤルから6年後のことである。このときウーファーがウッドファイバー・コーンに変わっている。それも利いているのか切れがシャープになった。当然低域は深いところまで明瞭な輪郭線を保ち、立ち上がりが全体にくっきりとしている。それが6年間の進化ということである。
バロックは万事が円満に整ったロイヤルに比べて峻烈さが増し、瞬発的なダイナミズムに激しさが加わって音の一粒々々が明快に立ち上がる。ヴァイオリンがより艶やかに、テオルボがより鮮明に聴こえてくるのが時代背景の違いを感じさせるのだが、20年前と言えばオーディオソースが完全にデジタルへ切り替わったころである。それが製品作りの指向性に関係している可能性も考えられる。
ピアノはタッチの鮮明さが大分違っていて、特に高域の切れと芯の強さに明らかな差がある。それだけ音数も増し、細かな表情がはっきりと感じられるようになっているのが特色と言っていい。
いずれにしてもどちらも完成度が高い。結局非常によくできたモデルということで、だからこそ単独で現在までロングセラーを続けてくることができたのであろう。そういうことをあらためて確認したうえで、いよいよ現行モデルに移りたい。
録音技術の進化を受け高解像度志向に進化
2015年にMENTOR MENUETが生産終了となり、代わって登場したのが現在のMENUET。シリーズからは外れ、再び単独モデルとなった。115mmのウッドファイバー・コーン・ウーファーと28mmソフトドーム・トゥイーターという構成で、DALIとしてはすでに不動のものとなった観がある。
外観に大きな変化はないが録音技術の進化を意識したこともあったのか、それまでとは方向性が変わって明らかに高解像度を指向しているのがわかる。音数が多いだけでなく、それぞれの音の関係が非常に正確になって再現性が緻密さを増した。バランスの取れたブックシェルフ型の典型という立ち位置から、最先端の技術と音質を凝縮したハイエンド2ウェイという格付けへ飛躍したように思える。
バロックが鮮烈極まりない手触りで引き出されるのに驚かされるが、それはヴァイオリンだけでなくチェロにもチェンバロにも共通する特徴である。また立ち上がり・引き下がりの変化が速く、申し分ないほどのハイスピードな再現性を発揮する。シャープで峻烈さに満ちた劇的な再現である。
ピアノは録音の音質にちょうどぴったり合っている感覚で、非常に無理のない鳴り方をする。タッチが重くならずまた硬質感もなく、細かな手触りがそのまま滑らかに出てくる印象である。高域のシャープネスと低音部の引き締まった深さが、それを実現する鍵になっているようだ。ニュアンスは豊富だが無駄な響きがなく、音の隙間や背景の空間が曇りなく見えているように感じる。
女声コーラスのようなピアノとは正反対のソースだと、切れの鋭さは影をひそめるがハーモニーの明瞭さが音楽の立体感を高めて説得力に富んでいる。声の肉質感にも節度が感じられて嫌みがなく、ふっくらとした響きが空間に満ち渡って美しく優雅だ。
オーケストラは小型2ウェイの場合解像度の勝負という一面があるが、その点で本機には全く不安がない。長い間に磨き上げられてきた充実度がものを言って、多彩なアンサンブルの展開を全く混濁することなく明確に描き出している。どの楽器にもにじみや曇りがなく、どれだけ音が重なっても行方不明になることがない。
さらに感心させられるのは、瞬発力が大変強力なことだ。ことに低域のそれが利いて、ここというときの表現力に物足りなさを感じさせないのである。木管楽器やパーカッションの鋭さはいうまでもなく、それらが塊となってクライマックへ高まってゆくフォルテの描き方も堂に入ったものである。強弱の起伏が大きいのだ。小型2ウェイとしては出色のものと言っていい。
低域の出方に余裕が増し音場の実態感も高まる
MENUET SEはこれをベースに細部を詰めた特別バージョンで、独ムンドルフ製コンデンサーを採用してネットワークを再チューニング。仕上げもよりエレガントな豪華さを加え、また端子はEPICONグレードだという。
音の面では低域の出方に余裕が増した。振動板の動きがいいというイメージで、一回り深いところまで楽について行っている気がする。例えばバロックだとチェロの量感と音色が豊かになっている。そして重要なのはこれによってトゥイーターとのなじみがさらに滑らかになり、位相が揃って音調のバランスが整ったということである。このため楽器の位置感や音場の実体感が高まっている。違いとしては小さなことだが、結果的には様々な部分に影響が及んで再現性が大きく改善されることになった。
バロックは聴いていてどこにも引っ掛かりを感じない。そこで音楽が鳴っているという感覚だけが湧き上がってくるが、それは全てがあるべき形に整っているからである。
ピアノは実在感が強い。ことに低音の出方がすぐそこで鳴っているような存在感に富んでリアリズムを強く感じさせる。高域の方も同じことで、つまりピントがいいのである。出方が楽に感じられるのはそのためだ。
コーラスはいっそう鮮度が高く、ディテールのデリカシーに富んで新鮮そのものだ。表情が生き生きしているのとともに、凹凸の幅が広くまたスピードも速い。そういったことが空間の奥行を明瞭にして、さらにリアリティを増すという具合である。
オーケストラでも空間の実体感が高く、楽器それぞれの音色がさらに生々しく感じられる。情報の隅々まで取り出されてきているためで、音どうしの立体的な関係がはっきりと正確に描き出されているため音楽が生き生きしてくるのである。ライブ感に溢れた再現で、ソースの信号が全開になった印象である。
30年を越すロングセラーというのは伊達ではない。その間細かな改善が緻密に施され、それが積み重ねられていまの音に到達したのである。できたばかりではこの完成度は得られない。まさしく技術の熟成がもたらした成果である。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)