公開日 2019/01/22 06:00
開発者インタビュー<前編>
物量も技術もケタ違いのポータブルプレーヤー。ソニー「DMP-Z1」の中身はもはやハイエンドオーディオだった
山之内 正
2018年夏に香港で発表されて以来、ポータブルオーディオやヘッドホンリスニングの枠を超えて話題になったソニー“超弩級”ポータブルオーディオプレーヤー「DMP-Z1」が、昨年12月についに発売された。同社の技術を結集したことはもちろん、誰もが驚くチャレンジを実現した本機について、山之内 正氏が前後編にわたりインタビュー。前編では、開発コンセプトや投入された技術の詳細について話を聞いた。
■ハイエンドオーディオの視点から見て注目すべきポイントが多い
ソニーの「DMP-Z1」は、据え置き型ながら持ち運びもできるデジタルミュージックプレーヤーというコンセプトの新しさに注目が集まりがちだが、音質改善のために導入した技術のなかにはハイエンドオーディオの視点から見て注目すべき点がある。技術の内容自体が興味深いだけでなく、なかには他の機器に応用できる技術もありそうだ。
ヘッドホンの室内リスニングが増えてきたことに応えつつ最上級の音を目指して開発したというDMP-Z1。そのアイデアの背景や技術的なノウハウを企画と設計のメンバーに具体的に聞いてみた。
ソースコンポーネントとアンプを合体したDMP-Z1の注目すべきポイントを大きく4つに分けて詳しく見ていこう。4つの注目ポイントは以下の通りだ。
1、プレーヤー&ヘッドホンアンプ一体型設計
2、バッテリー駆動
3、アナログ4連ボリューム
4、DAC
プレーヤー&ヘッドホンアンプ一体型設計
■H型シャーシでアナログ/デジタル基板を分離。振動対策も音質に寄与
まずは内部にメカ的な稼動部を持たないこと。さらにデータの読み込みから増幅回路まで最短経路で信号を受け渡すというトータルの構成が重要だ。振動や接点などの音質劣化要因を取り除くことは高音質再生の理想だが、プレーヤーとアンプが別筐体に分かれた既存のオーディオ機器ではそこまで徹底できない。
商品企画の田中光謙氏は「オール・イン・ワンに統合することで音質に大きなメリットが生まれます。デジタル伝送でもUSBケーブルで音が変わるなど、音質に影響を与える要素がいくつかありますが、基板上だけで信号を伝送できれば、そうした影響を抑えることができます」と一体型を選んだ理由を説明する。
DMP-Z1はH型シャーシの両側にアナログとデジタルの各回路を分けて配置しているため、両者の基板は背中合わせのような構造になり、平面に展開する場合に比べて伝送距離が圧倒的に短くなる。H型シャーシは本機のオリジナルだが、異種信号を扱う基板を隔壁で区切って上下に配置する構造はハイエンドオーディオではいくつか採用例があり、その効果は実証済み。H型シャーシは剛性を高めて振動の影響を受けにくくする効果も期待できる。
ヘッドホンアンプでも振動の影響があるのか疑問に思うかもしれないが、対策がもたらす効果はウォークマンの高音質モデルでも明らかになった。コイルやコンデンサーなど部品の微振動も含め、いくつか要因が考えられる。
バッテリー駆動
■強力かつ高品位なバッテリー電源でハイインピーダンスヘッドホンにも対応
2番めの注目ポイントはバッテリー駆動のメリットを徹底して追求していることだ。商用100Vから直流に変換する過程でノイズの影響を完璧に排除するのは非常に難しいが、バッテリーで駆動すればその課題を一気に解決できる。室内リスニングのための製品でも用途をヘッドホン再生に絞れば電池駆動が視野に入り、AC電源に対するアドバンテージが期待できる。
とはいえバッテリーで鳴らすことへの心配もある。電池駆動で十分な力強さを引き出せるのか、あるいは実用的な動作時間を実現できるのかといった点が気になる。
「ウォークマンを手がけてきた設計メンバーは、バッテリー駆動モデルについて独自の高音質技術を蓄積してきました。いわばDCオーディオが得意な設計者が作ることの強みがあるのです。出力や瞬発力の確保には電気二重層コンデンサーをアナログオーディオ回路に投入するなどの工夫で対応しています」(田中氏)。
■ハイエンドオーディオの視点から見て注目すべきポイントが多い
ソニーの「DMP-Z1」は、据え置き型ながら持ち運びもできるデジタルミュージックプレーヤーというコンセプトの新しさに注目が集まりがちだが、音質改善のために導入した技術のなかにはハイエンドオーディオの視点から見て注目すべき点がある。技術の内容自体が興味深いだけでなく、なかには他の機器に応用できる技術もありそうだ。
ヘッドホンの室内リスニングが増えてきたことに応えつつ最上級の音を目指して開発したというDMP-Z1。そのアイデアの背景や技術的なノウハウを企画と設計のメンバーに具体的に聞いてみた。
ソースコンポーネントとアンプを合体したDMP-Z1の注目すべきポイントを大きく4つに分けて詳しく見ていこう。4つの注目ポイントは以下の通りだ。
1、プレーヤー&ヘッドホンアンプ一体型設計
2、バッテリー駆動
3、アナログ4連ボリューム
4、DAC
プレーヤー&ヘッドホンアンプ一体型設計
■H型シャーシでアナログ/デジタル基板を分離。振動対策も音質に寄与
まずは内部にメカ的な稼動部を持たないこと。さらにデータの読み込みから増幅回路まで最短経路で信号を受け渡すというトータルの構成が重要だ。振動や接点などの音質劣化要因を取り除くことは高音質再生の理想だが、プレーヤーとアンプが別筐体に分かれた既存のオーディオ機器ではそこまで徹底できない。
商品企画の田中光謙氏は「オール・イン・ワンに統合することで音質に大きなメリットが生まれます。デジタル伝送でもUSBケーブルで音が変わるなど、音質に影響を与える要素がいくつかありますが、基板上だけで信号を伝送できれば、そうした影響を抑えることができます」と一体型を選んだ理由を説明する。
DMP-Z1はH型シャーシの両側にアナログとデジタルの各回路を分けて配置しているため、両者の基板は背中合わせのような構造になり、平面に展開する場合に比べて伝送距離が圧倒的に短くなる。H型シャーシは本機のオリジナルだが、異種信号を扱う基板を隔壁で区切って上下に配置する構造はハイエンドオーディオではいくつか採用例があり、その効果は実証済み。H型シャーシは剛性を高めて振動の影響を受けにくくする効果も期待できる。
ヘッドホンアンプでも振動の影響があるのか疑問に思うかもしれないが、対策がもたらす効果はウォークマンの高音質モデルでも明らかになった。コイルやコンデンサーなど部品の微振動も含め、いくつか要因が考えられる。
バッテリー駆動
■強力かつ高品位なバッテリー電源でハイインピーダンスヘッドホンにも対応
2番めの注目ポイントはバッテリー駆動のメリットを徹底して追求していることだ。商用100Vから直流に変換する過程でノイズの影響を完璧に排除するのは非常に難しいが、バッテリーで駆動すればその課題を一気に解決できる。室内リスニングのための製品でも用途をヘッドホン再生に絞れば電池駆動が視野に入り、AC電源に対するアドバンテージが期待できる。
とはいえバッテリーで鳴らすことへの心配もある。電池駆動で十分な力強さを引き出せるのか、あるいは実用的な動作時間を実現できるのかといった点が気になる。
「ウォークマンを手がけてきた設計メンバーは、バッテリー駆動モデルについて独自の高音質技術を蓄積してきました。いわばDCオーディオが得意な設計者が作ることの強みがあるのです。出力や瞬発力の確保には電気二重層コンデンサーをアナログオーディオ回路に投入するなどの工夫で対応しています」(田中氏)。
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