公開日 2020/11/12 23:00
素早い音声認識で、スマートホーム連携もスムーズ
1万円ちょいで買える驚きの高音質。アップル「HomePod mini」の完成度が衝撃的
山本 敦
アップルが、AIアシスタントのSiriを内蔵するスマートスピーカー「HomePod mini」を11月16日に発売する。格段に小さく、価格も10,800円(税抜)と手頃になったアップル製スマートスピーカーのファーストインプレッションをレポートする。
■筆者が2020年に体験した中で『ベスト』と言えるスマートスピーカー
HomePod miniは、アップルのSiri内蔵スマートスピーカー第2弾モデルだ。最初の「HomePodは、日本では2019年8月に発売された。その多彩な機能と価格を考えれば、HomePodは上位機にあたる。だが初代HomePodは、アメリカでは2018年2月に発売されたこともあり、この約2年半の間にアップルが蓄積したノウハウを詰め込んだ最新鋭のSiri内蔵スマートスピーカーが今回のHomePod miniと位置づけられる。
使い方やサウンドのインプレッションはのちほど詳しく報告するが、先に筆者の感想をひと言でまとめてしまうと、HomePod miniは今年試した中で「総合的にベスト」と言えるスマートスピーカーだった。
今回は2機のHomePod miniを使い、ステレオ再生の音質も試した。Siriによるボイスコントロールも様々な面で使いやすくなっていたので、活用術についても触れてみたい。
最初に本機のセットアップ方法を振り返ろう。HomePod miniはソフトボールの天面・底面をフラットにカットしたような大きさとデザインだ。フラットなテーブルやラックの上に置いても、しっかり安定する。天面はタッチパネルになっており、指によるタッチ操作で、音楽再生や音量のアップダウン、Siri呼び出しなどが行える。
外装はHomePodと同じ継ぎ目のないメッシュ素材で覆われている。本体内部にはエコーキャンセレーション機能を内蔵する4つのマイクがある。
ケーブルは本体の後ろ側に固定されている。パッケージに同梱されている20WのUSB電源アダプターを装着して給電する。引っ張りや踏みつけに耐えられるように、ケーブルはメッシュの被覆で覆われている。ケーブルの長さが約1.5mとやや短いので、背の高いブックシェルフの棚に置いたり、壁コンセントから少し離れた場所にスピーカーを設置することを検討しているのであれば、延長ケーブルを用意したい。
スピーカーのセットアップはiPhoneを使って、とても簡単に行える。HomePod miniを電源につないでから、ワイヤレスイヤホンのAirPodsのように電源を入れ、Wi-FiとBluetoothをオンにしたiPhoneを側に近づけると、オートセットアップのアニメーションがiPhoneの画面に表示される。
スピーカーを設置する場所を決めた後に、スピーカーの天面をiPhoneのメインカメラでスキャニングすると、少し経ってからユーザーのApple IDでペアリングされる。この時に鳴るビープトーンも活用し、スピーカーとiPhoneを1対1でセキュアにペアリングする技術が採用されている。
■クリアな中高域。低音は筋肉質な力強さ
HomePod miniは、高さ84.3mmの球体エンクロージャーの中に高出力のフルレンジドライバーを内蔵し、開口部を下向きにレイアウトしている。側面に向けて対になる2基のパッシブラジエーターを設けて、コンパクトなサイズを超える低音を引き出す。
スピーカーユニットから出力された音は、アコースティックウェーブガイドにより本体の底面方向へと導かれ、360度へ均等に音が広がるようにデザインされたスリットを通過する。心地よい音場の広がり感が得られる秘密がここにある。
アップルが独自にデザインしたアコースティックウェーブガイドにより、スピーカーを設置したデスクトップやラックの天面に音が反射して生まれる音の乱れが回避される。特定のスイートスポットに縛られることなく、HomePod miniを置いた部屋のどこへ移動しても心地よいリスニング感が得られることに、筆者も驚いた。
HomePod miniのサウンドを一歩踏み込んでじっくりと聴いてみよう。
筆者はApple Musicのユーザーなので、再生したい楽曲のアーティストとタイトルをHomePod miniに話しかけると、目当てのタイトルをすばやく見つけて再生を始めてくれた。音声操作に対するSiriの反応はとても速い。なお、初代HomePodもソフトウェアバージョン14.2へのアップデートにより、Siriのレスポンスが向上している。
まずはHomePod miniを単体で鳴らしてみる。驚くほどに歪みがなく、クリアなサウンドだ。ボーカルや楽器の音像がとても近く鮮明に感じられる。音の輪郭ににじみやブレがない。
フラットバランスなサウンドは少しモニターライクで優等生的でもあるが、ソースに対して忠実で、とても真面目にサウンドが練り上げられていると感じる。例えば上原ひろみのピアノトリオによる演奏は、鍵盤を鋭く叩く音の立ち上がりのインパクトがとても立体的で生々しく、ドラムスのリズムから活き活きとした躍動感が伝わってくる。
そして特筆すべきは、HomePodとのサイズ差を感じさせないほど豊かな低音再生だ。音の芯がしなやかで筋肉質に引き締まった低音は、音量を上げても歪まず、軸がぶれない。上原ひろみのピアノトリオによる演奏は、エレキベースのスピーディーで緊張感あふれる低音が熱いグルーヴをつむぎだす。筆者の好きなジャズやロック、EDMのアップテンポな楽曲と見事にマッチするスピーカーだ。
■2台をステレオペアにして再生環境をスケールアップ
続いて、2台のHomePod miniによるステレオ再生をチェックした。初期セットアップの際、2台目のスピーカーを最初に設定したスピーカーと同じ部屋に割り当てようとすると、iPhoneの画面に、ステレオペアとしてこれらを設定するか確認が表示される。ふだんは各々を別の部屋に設置して、ステレオ再生を楽しみたい時に、あとから「ホーム」アプリでペアリングすることも可能だ。もちろんその解除も簡単に行える。
ステレオ再生の場合も、HomePod miniの持ち味であるクリアで鋭く力強いサウンドの醍醐味はそのまま伝わってくる。2台のスピーカーによって、例えばクラシックのオーケストラやジャズのビッグバンドによるスケールの大きな演奏の音場感が、より縦横や奥行き方向へといっぱいに広がった。この2台の小さなスピーカーが、わが家をコンサートホールに変えてくれるとは驚いた。
ボーカルやピアノの余韻はとても爽やかで、階調感もきめ細かく滑らかに再現する。音楽と静寂とのコントラスト感を明瞭に描き分けられるスピーカーなので、ぜひ静かな部屋で、ふだん聴き慣れた音楽をもう一度HomePod miniで聴いてみて欲しい。何度も聴き込んだはずのボーカリストの声の微細なニュアンスが伝わってきたり、J-POPの丁寧なアレンジの妙技を発見できたり、スピーカーによる音楽再生の醍醐味が実感できるはずだ。
■筆者が2020年に体験した中で『ベスト』と言えるスマートスピーカー
HomePod miniは、アップルのSiri内蔵スマートスピーカー第2弾モデルだ。最初の「HomePodは、日本では2019年8月に発売された。その多彩な機能と価格を考えれば、HomePodは上位機にあたる。だが初代HomePodは、アメリカでは2018年2月に発売されたこともあり、この約2年半の間にアップルが蓄積したノウハウを詰め込んだ最新鋭のSiri内蔵スマートスピーカーが今回のHomePod miniと位置づけられる。
使い方やサウンドのインプレッションはのちほど詳しく報告するが、先に筆者の感想をひと言でまとめてしまうと、HomePod miniは今年試した中で「総合的にベスト」と言えるスマートスピーカーだった。
今回は2機のHomePod miniを使い、ステレオ再生の音質も試した。Siriによるボイスコントロールも様々な面で使いやすくなっていたので、活用術についても触れてみたい。
最初に本機のセットアップ方法を振り返ろう。HomePod miniはソフトボールの天面・底面をフラットにカットしたような大きさとデザインだ。フラットなテーブルやラックの上に置いても、しっかり安定する。天面はタッチパネルになっており、指によるタッチ操作で、音楽再生や音量のアップダウン、Siri呼び出しなどが行える。
外装はHomePodと同じ継ぎ目のないメッシュ素材で覆われている。本体内部にはエコーキャンセレーション機能を内蔵する4つのマイクがある。
ケーブルは本体の後ろ側に固定されている。パッケージに同梱されている20WのUSB電源アダプターを装着して給電する。引っ張りや踏みつけに耐えられるように、ケーブルはメッシュの被覆で覆われている。ケーブルの長さが約1.5mとやや短いので、背の高いブックシェルフの棚に置いたり、壁コンセントから少し離れた場所にスピーカーを設置することを検討しているのであれば、延長ケーブルを用意したい。
スピーカーのセットアップはiPhoneを使って、とても簡単に行える。HomePod miniを電源につないでから、ワイヤレスイヤホンのAirPodsのように電源を入れ、Wi-FiとBluetoothをオンにしたiPhoneを側に近づけると、オートセットアップのアニメーションがiPhoneの画面に表示される。
スピーカーを設置する場所を決めた後に、スピーカーの天面をiPhoneのメインカメラでスキャニングすると、少し経ってからユーザーのApple IDでペアリングされる。この時に鳴るビープトーンも活用し、スピーカーとiPhoneを1対1でセキュアにペアリングする技術が採用されている。
■クリアな中高域。低音は筋肉質な力強さ
HomePod miniは、高さ84.3mmの球体エンクロージャーの中に高出力のフルレンジドライバーを内蔵し、開口部を下向きにレイアウトしている。側面に向けて対になる2基のパッシブラジエーターを設けて、コンパクトなサイズを超える低音を引き出す。
スピーカーユニットから出力された音は、アコースティックウェーブガイドにより本体の底面方向へと導かれ、360度へ均等に音が広がるようにデザインされたスリットを通過する。心地よい音場の広がり感が得られる秘密がここにある。
アップルが独自にデザインしたアコースティックウェーブガイドにより、スピーカーを設置したデスクトップやラックの天面に音が反射して生まれる音の乱れが回避される。特定のスイートスポットに縛られることなく、HomePod miniを置いた部屋のどこへ移動しても心地よいリスニング感が得られることに、筆者も驚いた。
HomePod miniのサウンドを一歩踏み込んでじっくりと聴いてみよう。
筆者はApple Musicのユーザーなので、再生したい楽曲のアーティストとタイトルをHomePod miniに話しかけると、目当てのタイトルをすばやく見つけて再生を始めてくれた。音声操作に対するSiriの反応はとても速い。なお、初代HomePodもソフトウェアバージョン14.2へのアップデートにより、Siriのレスポンスが向上している。
まずはHomePod miniを単体で鳴らしてみる。驚くほどに歪みがなく、クリアなサウンドだ。ボーカルや楽器の音像がとても近く鮮明に感じられる。音の輪郭ににじみやブレがない。
フラットバランスなサウンドは少しモニターライクで優等生的でもあるが、ソースに対して忠実で、とても真面目にサウンドが練り上げられていると感じる。例えば上原ひろみのピアノトリオによる演奏は、鍵盤を鋭く叩く音の立ち上がりのインパクトがとても立体的で生々しく、ドラムスのリズムから活き活きとした躍動感が伝わってくる。
そして特筆すべきは、HomePodとのサイズ差を感じさせないほど豊かな低音再生だ。音の芯がしなやかで筋肉質に引き締まった低音は、音量を上げても歪まず、軸がぶれない。上原ひろみのピアノトリオによる演奏は、エレキベースのスピーディーで緊張感あふれる低音が熱いグルーヴをつむぎだす。筆者の好きなジャズやロック、EDMのアップテンポな楽曲と見事にマッチするスピーカーだ。
■2台をステレオペアにして再生環境をスケールアップ
続いて、2台のHomePod miniによるステレオ再生をチェックした。初期セットアップの際、2台目のスピーカーを最初に設定したスピーカーと同じ部屋に割り当てようとすると、iPhoneの画面に、ステレオペアとしてこれらを設定するか確認が表示される。ふだんは各々を別の部屋に設置して、ステレオ再生を楽しみたい時に、あとから「ホーム」アプリでペアリングすることも可能だ。もちろんその解除も簡単に行える。
ステレオ再生の場合も、HomePod miniの持ち味であるクリアで鋭く力強いサウンドの醍醐味はそのまま伝わってくる。2台のスピーカーによって、例えばクラシックのオーケストラやジャズのビッグバンドによるスケールの大きな演奏の音場感が、より縦横や奥行き方向へといっぱいに広がった。この2台の小さなスピーカーが、わが家をコンサートホールに変えてくれるとは驚いた。
ボーカルやピアノの余韻はとても爽やかで、階調感もきめ細かく滑らかに再現する。音楽と静寂とのコントラスト感を明瞭に描き分けられるスピーカーなので、ぜひ静かな部屋で、ふだん聴き慣れた音楽をもう一度HomePod miniで聴いてみて欲しい。何度も聴き込んだはずのボーカリストの声の微細なニュアンスが伝わってきたり、J-POPの丁寧なアレンジの妙技を発見できたり、スピーカーによる音楽再生の醍醐味が実感できるはずだ。