＜CEATEC＞新DRM「SeeQVault」で番組録画はこう変わる − NSM担当者インタビュー

■海外向けにはVODサービスへのライセンス提供も検討中

NSMは今後、SeeQVaultのグローバル展開を積極的に行う計画という。日本国内ではデジタル放送の録画番組のプロテクト技術としてスタートを切ったわけだが、そもそもテレビ番組の録画文化が定着していないアメリカをはじめ、海外ではその魅力をどのようにアピールしていくのだろうか。蒲田氏に考えを聞いた。

「放送以外の分野でSeeQVaultの技術をどのように展開できるのか、いま多くの質問を受けています。欧米で映像コンテンツといえばVODが中心ということもあり、NSMでは今回発表したカードメディア向けのライセンススキームとは別に、クラウドベースのネット配信コンテンツに対応するライセンススキームについても検討を進めています」（蒲田氏）。

これは、動画配信のコンテンツプロバイダーに向けてSeeQVaultのライセンスを提供するイメージだ。VODコンテンツにSeeQVaultのコンテンツ保護技術を適用することで、ダウンロードしたコンテンツをサービスプロバイダーが認証する専用プレーヤーだけで再生可能にするといったような、セキュアなコンテンツインフラが構築できる。このインフラを活用し、契約ユーザーだけが楽しめるプレミアムコンテンツを専用の対応機器とともに提供するといったビジネスモデルも考えられる。

この動画配信サービス向けのSeeQVault技術については、現在発表されているカードメディア向けのそれと互換性が確保されておらず、別枠のモデルで運用されることになるという。

その理由について蒲田氏は「VODサービスを想定した場合、サービスプロバイダーごとに映像ファイルのエンコードやエンクリプションの方法が異なってきます。機器やサービスの互換性という意味では、反対にサービスプロバイダーごとに技術をカスタマイズして提供すべきと考えています」と説明する。

確かにBtoBのサービスモデルに対しては、SeeQVaultのコンテンツ保護技術の特徴を活かしながら、オーダーメイドで提供していく方が理にかなっている。いずれにせよ、海外の動画配信サービス向けのビジネススキームについては「まだこれから詳細を検討しながら訴求していく段階」（鎌田氏）とのことだ。

SeeQVault対応製品は、microSDカードが商品化されることが既に決まっている。既にメモリーカードのデファクトスタンダードとなったSDカードだが、同じ外観で種類の違うメディアが店頭に並ぶことで混乱は起きないのだろうか。

「NSMではSeeQVaultのロゴを制作しました。対応製品にはこのロゴを大きく配置することで、既存製品と簡単に識別できるようになると思います」と山本氏は説明する。そしてロゴを作っただけではなく、NSMではSeeQVaultのブランディングについて「ユースケース」の側から既存製品との違いをアピールしていくことも検討しているという。

例えば商品のパッケージに「HDコンテンツ対応」を表記し、既存のSD画質対応の製品と用途や機能、使い勝手の面での差別化を図ったり、あるいは「テレビを買い換えてもHDコンテンツが見られるHDD」といった具合に、具体的なユーザーメリットをパッケージ等でしっかりと説明することで、SeeQVault対応製品を選ぶメリットを、よりわかりやすく伝えていくとも山本氏は語る。

まだその姿を現したばかりのSeeQVaultだが、今後デジタル放送の録画・視聴環境の整備を行う上で、重要な役割を担う技術であることが見えてきた。今回はmicroSDカードやポータブルワイヤレスサーバーが先行して発売されたため、モバイル用途での利便性に目が行きがちだが、録画対応テレビ向けの外付HDDが商品化されたら、AV機器まわりでもそのメリットが実感できるようになるはずだ。

直近の課題としては、対応製品の普及拡大を加速させ、なるべく多くのユーザーにそのメリットを体感させることが挙げられる。ファウンダー4社に世界的な大手メーカーが並んでいることもあり、近いうちに多くのSeeQVault対応製品が商品化され、店頭に並ぶことも期待できそうだ。