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「映画館で観るのと遜色ない」

『この世界の片隅に』BD/DVD本日発売! 片渕須直監督 単独ロングインタビュー

公開日 2017/09/15 06:00 聞き手:オーディオ編集部 樫出浩雅
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―― 『この世界の片隅に』は観客動員数が200万人を超え、公開館数も63館からスタートして、今では累計370館以上での公開におよびました。これだけたくさんの方に見ていただけるようになった要因について、どうお考えでしょうか?

片渕氏 今まではアニメだけでなく映画も含め、送り出す側にひとつの基準みたいなものがあって、こういうものが受けるなら同じものを出せばいいだろう、ということを繰り返していた気がするんです。

でもこの作品に関しては、クラウドファンディングで反応していただいたみたいに、お客さんの方からこういうものを見たいんだ、と言っていただいた作品だと思うんです。しばしば「草の根的」と言われるんですけど、そもそも出発点からしてお客さんが望んだ作品だったんじゃないかな、という気がします。

―― と言うことは、今はSNSも評判が拡がるツールの一つだと思いますが、この作品はそれだけではない、ということですね。

片渕氏 そうですね。SNSだと反応してくださる方には年齢的な上限があるんです。例えば、SNSの書き込みであったのは、ご覧になった方が自分の両親や親族の方に電話して薦めてくれていたんです。そんな風に本当の意味での口コミで拡がっていった感じがあるんですよ。

―― これ、観に行った方がいいよ、と?

片渕氏 はい。もしくは一緒に観に行こう、ですね。

―― なるほど。観客の年齢層はどうでしょうか。

片渕氏 従来アニメ界で言われていた観客の層とはかなり逸脱していると思います。

―― 本作品では、クラウドファンディングで制作資金を調達されていますが、そうした経緯についてお聞かせください。

片渕氏 そもそもは『マイマイ新子と千年の魔法』という映画にあります。この作品は公開当初は告知や宣伝がうまく進んでいなかったんですけど、SNSで徐々に拡がっていったんです。

そうしたら、一般のファンの中から、わざわざ自力でチラシを作ってくださる方々まで現れて。例えば、大坂で上映があると京都のあたりまでその地方一円に「チラシを置いてください」と言ってくださった方がいたんですよ。チラシといっても自分の家のプリンターで刷ったチラシですから、最後は刷り過ぎてプリンター壊しちゃったって・・・。

『この世界の片隅に』のポスターの前に立つ片渕須直監督(人物撮影:君嶋寛慶)

また、この作品の舞台になった山口県の防府市へ実際に赴いて、昭和30年にはこんなものがあって、あるいは1000年前にはこんなものがあってという、映画の舞台になった時代のことを紹介しながら歩くツアーを率先してやっていたんです。そこに泊りがけで来て下さる方がたくさんいらっしゃったんですよ。映画を応援しているというより、むしろ自身の体験を重ねて自分たちの映画だ、と思ってくださる方が、どうも増えてきている気がしました。

映画の中身だけじゃなくて、映画全体の中に描かれている世界からの広がりを体験したい、そういう気持ちです。そうだとしたら、クラウドファンディングという方法は出資者であるお客さんが、スポンサーとして自分たちの映画を得るということですから、これはあるんじゃないかなと思ったわけです。

それで、まずはプロデューサーの丸山さん(企画プロデューサー丸山正雄氏)にアメリカへ行ってもらいました。

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