「映画館で観るのと遜色ない」
『この世界の片隅に』BD/DVD本日発売! 片渕須直監督 単独ロングインタビュー
でもそれはおどろおどろしい声ではなくて、コトリンゴさんの声でのどかに聴こえている。それがこの作品なのかなと。最初にそういう思いを抱かせていただいたのが、コトリンゴさんだったんです。
―― 海外での公開も進んでいるとのことですが、反応はいかがですか?
片渕氏 少なくとも見ていただいた方の反応の多くは、日本でご覧いただいている皆さんと一緒ですね。評論や批評では日本の戦時中はどんな文化だったのか分からないというのが前提としてつくわけですけど、でも日本人の僕らがそもそも知らなくて、それを知ろうとした作品ですよね。日本の多くの観客にとっては、初めて出会ったものであるわけです。それは外国の方が見ても同じだと思うんです。
ただ、すずさんが非常に立体的な人物なので、彼女の心情には馴染んでいきやすいわけです。どの国の人もまず、すずさんを映画の中に見つけて寄り添って一緒に生活しているうちに、その時代のその世界を感じていただいています。それは変わらないんだなと思いましたね。
―― アメリカでは8月11日に公開されました。この後はフランスでの公開が控えていますね(※インタビュー時点)。監督も行かれるんですか?
片渕氏 行きます。フランスでどんな人たちと出会えるのかなと、自分で確かめに行く感じで楽しみですね。
―― BD/DVDのパッケージ版が本日発売されました。それについてお話しいただけますか。
片渕氏 制作の比較的早い時期から自分たちでビデオカメラを回したりもしていましたので、こんな風に制作していたんだ、という様々な内容のものをメイキング映像という形で「BD特装限定版」には特典として入れてあります。
特にBDの場合は、大きなご家庭のテレビで観ていただくと、シネマモードもあるので、ほとんど映画館で観るのと遜色ない映像が得られると思います。逆にテレビで見るからと言って、我々があえて原型を変えたことはなかったです。
原版の方を調整すれば普通のテレビで見やすい映像に持っていくこともできるんですけれど、テレビをちゃんと調節してもらえれば、映画館と同じ色合いやコントラストが得られるという形にしたかったので、あくまでほぼ原型のままにということにしました。
加えて、“音”というのはこの映画にとって非常に大きな部分だと思うので、ご家庭の環境でご覧いただいてどうなるのかは気になるところです。映画館で上映がまだ続いているなら、できればそこでも観ていただきたいですし、さらに原作を読んで、それから繰り返しご家庭でBDやDVDを観ていただけると一番いいんじゃないかなと思います。
―― では発売に際して、メッセージをいただけますか。
片渕氏 『この世界の片隅に』というのは、すずさんという人が生きていた世界を丸ごと表現したい、あるいはその当時の世界をそのまま切り抜いて持ってきたような画面にしたいと思っていたんです。もちろん音もそうなんです。普通に日常を生活している間に聴こえてくる音。料理をしている音もそうですし、それは大きなアゲハ蝶の羽音にいたるまで、いろんな音が付いているわけです。
それから、すずさんの上にあるとき戦争がやってきます。彼女が海軍の軍港がある呉に住んでいるので、度重なる空襲の目標にされてしまいます。つまり彼女の上に日常とは違う非日常の音がやってくるわけです。これまでの映画では、そうした音はもっぱらつくりものの音でした。でも、そういうものではない。本当に当時の人たちの上で鳴っていた音を再現しようとできるだけ本物の兵器の音を集めたり、あるいは録音してきたりして作り上げたものなんです。
たぶん、この音の世界だけでも戦争中に生きるということを理解していただけるんではないかなと思います。ぜひ、ご覧ください。
―― その当時を追体験できるくらいつくり込まれた音なんですね。
片渕氏 実際当時を体験された、それこそ70代、80代の方が本当にあんな音だったとおっしゃってくれたときはすごく報われた気がしましたね。あんな音の中に普通の人がいた時代があったんだな、と皆さんにも感じていただけるといいんじゃないかなと思います。
―― これからの制作プランはできあがっていますか?
片渕氏 昨年の9月9日に0号を出してからほとんど休みがありませんからね(笑)。映画館での舞台挨拶も100回を超えていますし、海外の数カ国にも行ったりしていますし、休めるのは海外でのホテルで空き時間に寝ているだけなんです。もちろん、次にやりたいことについては徐々に貯えたりしているんですけれど、それを具体的にどんな形にしていくのかまだまだプランを立ち上げる前という状態ですね。
―― 今後の夢みたいなものはありますか?
片渕氏 また違う時代かもしれないですけど、こんな風に人は生きていたんだな、というのを描いてみたいですね。
―― お忙しい中、ありがとうございました。
◇
『この世界の片隅に』について、一つ一つの質問に丁寧に答えてくれた片渕監督。その静かな情熱を全て注ぎ込んだ本作は、何度観ても新たな発見と深淵な想いに包まれる、まさに未来に残すべき名作といえるだろう。できるだけ大画面で、心ゆくまで観ていただきたい。
インタビュー当日、公式パンフレットにサインいただけたので、1名様にプレゼント!応募締切は9月22日(金)まで(なお、当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます)。
※お寄せいただきました情報は、プレゼント発送以外の目的では利用いたしません。また、無断で第三者に情報を提供することもありません。
【DVD・Blu-ray Discに関する問い合わせ先】
バンダイビジュアルお客様センター
TEL 03-5828-7582
―― 海外での公開も進んでいるとのことですが、反応はいかがですか?
片渕氏 少なくとも見ていただいた方の反応の多くは、日本でご覧いただいている皆さんと一緒ですね。評論や批評では日本の戦時中はどんな文化だったのか分からないというのが前提としてつくわけですけど、でも日本人の僕らがそもそも知らなくて、それを知ろうとした作品ですよね。日本の多くの観客にとっては、初めて出会ったものであるわけです。それは外国の方が見ても同じだと思うんです。
ただ、すずさんが非常に立体的な人物なので、彼女の心情には馴染んでいきやすいわけです。どの国の人もまず、すずさんを映画の中に見つけて寄り添って一緒に生活しているうちに、その時代のその世界を感じていただいています。それは変わらないんだなと思いましたね。
―― アメリカでは8月11日に公開されました。この後はフランスでの公開が控えていますね(※インタビュー時点)。監督も行かれるんですか?
片渕氏 行きます。フランスでどんな人たちと出会えるのかなと、自分で確かめに行く感じで楽しみですね。
―― BD/DVDのパッケージ版が本日発売されました。それについてお話しいただけますか。
片渕氏 制作の比較的早い時期から自分たちでビデオカメラを回したりもしていましたので、こんな風に制作していたんだ、という様々な内容のものをメイキング映像という形で「BD特装限定版」には特典として入れてあります。
特にBDの場合は、大きなご家庭のテレビで観ていただくと、シネマモードもあるので、ほとんど映画館で観るのと遜色ない映像が得られると思います。逆にテレビで見るからと言って、我々があえて原型を変えたことはなかったです。
原版の方を調整すれば普通のテレビで見やすい映像に持っていくこともできるんですけれど、テレビをちゃんと調節してもらえれば、映画館と同じ色合いやコントラストが得られるという形にしたかったので、あくまでほぼ原型のままにということにしました。
加えて、“音”というのはこの映画にとって非常に大きな部分だと思うので、ご家庭の環境でご覧いただいてどうなるのかは気になるところです。映画館で上映がまだ続いているなら、できればそこでも観ていただきたいですし、さらに原作を読んで、それから繰り返しご家庭でBDやDVDを観ていただけると一番いいんじゃないかなと思います。
―― では発売に際して、メッセージをいただけますか。
片渕氏 『この世界の片隅に』というのは、すずさんという人が生きていた世界を丸ごと表現したい、あるいはその当時の世界をそのまま切り抜いて持ってきたような画面にしたいと思っていたんです。もちろん音もそうなんです。普通に日常を生活している間に聴こえてくる音。料理をしている音もそうですし、それは大きなアゲハ蝶の羽音にいたるまで、いろんな音が付いているわけです。
それから、すずさんの上にあるとき戦争がやってきます。彼女が海軍の軍港がある呉に住んでいるので、度重なる空襲の目標にされてしまいます。つまり彼女の上に日常とは違う非日常の音がやってくるわけです。これまでの映画では、そうした音はもっぱらつくりものの音でした。でも、そういうものではない。本当に当時の人たちの上で鳴っていた音を再現しようとできるだけ本物の兵器の音を集めたり、あるいは録音してきたりして作り上げたものなんです。
たぶん、この音の世界だけでも戦争中に生きるということを理解していただけるんではないかなと思います。ぜひ、ご覧ください。
―― その当時を追体験できるくらいつくり込まれた音なんですね。
片渕氏 実際当時を体験された、それこそ70代、80代の方が本当にあんな音だったとおっしゃってくれたときはすごく報われた気がしましたね。あんな音の中に普通の人がいた時代があったんだな、と皆さんにも感じていただけるといいんじゃないかなと思います。
―― これからの制作プランはできあがっていますか?
片渕氏 昨年の9月9日に0号を出してからほとんど休みがありませんからね(笑)。映画館での舞台挨拶も100回を超えていますし、海外の数カ国にも行ったりしていますし、休めるのは海外でのホテルで空き時間に寝ているだけなんです。もちろん、次にやりたいことについては徐々に貯えたりしているんですけれど、それを具体的にどんな形にしていくのかまだまだプランを立ち上げる前という状態ですね。
―― 今後の夢みたいなものはありますか?
片渕氏 また違う時代かもしれないですけど、こんな風に人は生きていたんだな、というのを描いてみたいですね。
―― お忙しい中、ありがとうございました。
『この世界の片隅に』について、一つ一つの質問に丁寧に答えてくれた片渕監督。その静かな情熱を全て注ぎ込んだ本作は、何度観ても新たな発見と深淵な想いに包まれる、まさに未来に残すべき名作といえるだろう。できるだけ大画面で、心ゆくまで観ていただきたい。
インタビュー当日、公式パンフレットにサインいただけたので、1名様にプレゼント!応募締切は9月22日(金)まで(なお、当選者の発表は、発送をもって代えさせていただきます)。
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