「映画館で観るのと遜色ない」
『この世界の片隅に』BD/DVD本日発売! 片渕須直監督 単独ロングインタビュー
アメリカはすでにキックスターターなどのクラウドファンディングが盛んだったので、どういう状況になっているのか、あるいはそれが作品制作にどういうふうに使えるかを確かめに行ってもらったんです。
でも実際のところ難しかった。映画の制作費を募って皆さんに参加していただいたとしても、集まる金額としてはひと桁少なくなってしまうんですね。そうだとするならば、クラウドファンディングはどういう風にあるべきか、というところから何年もかかって動き出していきました。
―― ということは前作から、今回始めるまでにだいぶ期間が空いているんですね。
片渕氏 2010年の夏に企画に着手して、クラウドファンディングを実際に始めたのが2015年の3月ですから、だいぶ空いていますね。その間もクラウドファンディングがどういう風に意味を持てるのだろうかと、ずっと考えながらやっていました。ただ、お客さんたちと一緒に作品をつくっていけるのは、やはりクラウドファンディングだなと思いましたね。また、一般のスポンサーを巻き込むとき、この映画を得たいと思っている人たちが、すでにこれだけいらっしゃるという裏付けにもなりました。
―― あっという間に目標金額を超えたわけですが、それに対してはどう思われましたか?
片渕氏 真木プロデューサーは若干心配なところはあったみたいなんですけど、『マイマイ新子と千年の魔法』を観た観客の方の動きや、こうの史代さんの読者の雰囲気を見ていたら、期待した通りに進むとは思っていたんです。ただ2,000万円を集める予定で3,000万円くらいまでは予見出来たんですけど、実際は4,000万円近かった。その勢いは予想外でした。
―― 2010年に企画があったということですが、こうの史代さんの原作はその時点で拝見されていたそうですね。
片渕氏 2010年の7月から8月にかけて読んでいて、読み終わる前に映画にするべきだと提案しました。
―― こうのさんへお手紙をかかれたそうですが…。
片渕氏 そうです。『この世界の片隅に』の原作出版社の双葉社さんが窓口になるだろうとうちのスタッフが電話したら、対応してくださった方が『マイマイ新子と千年の魔法』のスタッフだということに気が付かれて。だったら何か関係があるかもしれない、社内的に取りまとめを考えてみます、と言ってくださったんです。
関係がある、ということは大事なキーワードだと思いました。『この世界の片隅に』は広島が舞台ですが、そもそも僕にとって広島は縁がある土地ではなかったんです。実は原作もずっと前から持ってはいたんですけど、原爆のことを描かれていたら、ちょっと怖いなと思ってページを開かないでいました。
ところが、2010年の7月に『マイマイ新子と千年の魔法』の舞台挨拶が広島であって、初めて訪れた広島の人たちと仲良くなっていくうち、自分はこの土地と縁を持ったんだと思ったんです。それで原作の『この世界の片隅に』を開いてみたら、そこにはまさに自分と縁がありまくりの世界や表現でいっぱいだったんですね。
―― 縁なのか、導かれたということもあるかもしれませんね。
片渕氏 『この世界の片隅に』の終わりに流れる「みぎてのうた」の歌詞に、“どこにでも宿る愛”という一節があるんですよ。つまり、なんのきっかけもなければ、人と人との愛情もそこには結ばれないんだけど、ほんのわずかな些細なきっかけで知り合ったことから、人と人との間に愛が生まれていくんだよ、ということなんです。
それはどこにでも宿るんですよ。
でも実際のところ難しかった。映画の制作費を募って皆さんに参加していただいたとしても、集まる金額としてはひと桁少なくなってしまうんですね。そうだとするならば、クラウドファンディングはどういう風にあるべきか、というところから何年もかかって動き出していきました。
―― ということは前作から、今回始めるまでにだいぶ期間が空いているんですね。
片渕氏 2010年の夏に企画に着手して、クラウドファンディングを実際に始めたのが2015年の3月ですから、だいぶ空いていますね。その間もクラウドファンディングがどういう風に意味を持てるのだろうかと、ずっと考えながらやっていました。ただ、お客さんたちと一緒に作品をつくっていけるのは、やはりクラウドファンディングだなと思いましたね。また、一般のスポンサーを巻き込むとき、この映画を得たいと思っている人たちが、すでにこれだけいらっしゃるという裏付けにもなりました。
―― あっという間に目標金額を超えたわけですが、それに対してはどう思われましたか?
片渕氏 真木プロデューサーは若干心配なところはあったみたいなんですけど、『マイマイ新子と千年の魔法』を観た観客の方の動きや、こうの史代さんの読者の雰囲気を見ていたら、期待した通りに進むとは思っていたんです。ただ2,000万円を集める予定で3,000万円くらいまでは予見出来たんですけど、実際は4,000万円近かった。その勢いは予想外でした。
―― 2010年に企画があったということですが、こうの史代さんの原作はその時点で拝見されていたそうですね。
片渕氏 2010年の7月から8月にかけて読んでいて、読み終わる前に映画にするべきだと提案しました。
―― こうのさんへお手紙をかかれたそうですが…。
片渕氏 そうです。『この世界の片隅に』の原作出版社の双葉社さんが窓口になるだろうとうちのスタッフが電話したら、対応してくださった方が『マイマイ新子と千年の魔法』のスタッフだということに気が付かれて。だったら何か関係があるかもしれない、社内的に取りまとめを考えてみます、と言ってくださったんです。
関係がある、ということは大事なキーワードだと思いました。『この世界の片隅に』は広島が舞台ですが、そもそも僕にとって広島は縁がある土地ではなかったんです。実は原作もずっと前から持ってはいたんですけど、原爆のことを描かれていたら、ちょっと怖いなと思ってページを開かないでいました。
ところが、2010年の7月に『マイマイ新子と千年の魔法』の舞台挨拶が広島であって、初めて訪れた広島の人たちと仲良くなっていくうち、自分はこの土地と縁を持ったんだと思ったんです。それで原作の『この世界の片隅に』を開いてみたら、そこにはまさに自分と縁がありまくりの世界や表現でいっぱいだったんですね。
―― 縁なのか、導かれたということもあるかもしれませんね。
片渕氏 『この世界の片隅に』の終わりに流れる「みぎてのうた」の歌詞に、“どこにでも宿る愛”という一節があるんですよ。つまり、なんのきっかけもなければ、人と人との愛情もそこには結ばれないんだけど、ほんのわずかな些細なきっかけで知り合ったことから、人と人との間に愛が生まれていくんだよ、ということなんです。
それはどこにでも宿るんですよ。
次ページすずさんを表現できる声が本当に存在するかとずっと考えていた