【連載】PIT INNその歴史とミュージシャンたち
第8回:渡辺香津美さんが語る「新宿ピットイン」と「六本木ピットイン」<前編>
YMOと伝説の「KYLYN」に参加
そのライブは超満員で酸欠状態にまでなった
渡辺:そういえば、ある晩、パンチパーマのお客さんが、出し抜けに演奏中のステージへ上がってきたんですよ。大村憲司さんに、ちょっとギター貸してくれみたいな感じで。何をするのかなと思ったら、ゴキゲンなブルースを1曲弾いて、客席にさっさと戻って行きました。休憩時間のとき、「あの知り合い、いい味だしていたね」と憲司さんに声をかけたら「あれっ、香津美の知り合いじゃないの」なんて言われて(笑)。結局、誰の知り合いでもなかった(笑)。
佐藤:ライヴならではハプニングだね。そして78年の後半からYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のセッションが始まる。
渡辺:最初はYMOというよりも細野晴臣さんを中心としたバンドメンバーが好き勝手に演奏するというような形でしたね。
佐藤:それが、「渡辺香津美・坂本龍一プロデュース・ナイト」という形に発展して、いまや伝説ともいわれるバンド「KYLYN」になった。参加しているメンバーが、凄いよね。坂本龍一、矢野顕子、益田幹夫、小原礼、村上 ”ポンタ“秀一、高橋ユキヒロ、ペッカー、向井滋春、本多俊之、清水靖晃。いまでは考えられないほど豪華。ライブは本当に超満員だった。
渡辺:身動きとれないほどぎっちりでした、エキサイトしちゃって客席にダイビングしたこともありました。もう部屋中が酸欠状態で危なかったですよ。あまりにも暑くて、全員がTシャツ短パン姿で演奏したこともありました。
佐藤:すぐに「六本木ピットイン」でライブ・レコーディングしたのが『KYLYN LIVE』。
渡辺:「六本木ピットイン」は、スタジオが上にあってライブ演奏と録音が直結していました。自分たちのやっていることがダイレクトに形として残っていく。着実な手応えがあった時代でしたね。
佐藤:この年の秋にはYMOのワールドツアーに参加して、香津美さんは、活動の場を日本から世界に広げていきました。そしてその成果を、次の『トチカ』ではっきりと示してくれました。
写真 君嶋寛慶
(後半に続く)
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渡辺香津美さん Kazumi Watanabe(ギタリスト、コンポーザー、プロデューサー)
1953年東京渋谷生まれ。弱冠17才でデビュー作『インフィニット』をリリースし、天才ギタリストの出現と騒がれる。今田勝、渡辺貞夫、鈴木勲など国内のトップ・グループに在籍し、79年には坂本龍一、矢野顕子、村上秀一等と伝説の「キリンバンド」を結成。さらに同年秋には「イエロー・マジック・オーケストラ」のワールドツアーに参加し、「Kazumi」の名は一躍世界的なものとなった。
80年代には大ヒット・アルバム『トチカ』を皮切りに、『Mobo』『Spice Of Life』といったフュージョン史上に残る伝説的作品を次々とレコーディング。自己のグループで全米&アジア・ツアーも行い、トップ・ギタリストとしての地位を確立する。
90年代からはアコースティック・プロジェクトに力を入れ始め、ジャズ/クラシックの境界線を乗り超えて世界中で活躍。91年バルセロナ、ローマ、95年ブルガリア、リスボン、97年のパリなど、ヨーロッパ各地で絶賛を浴びた。21世紀に入り《ギター生活30周年集大成》として発表されたギター組曲『ビヨンド・ザ・インフィニット』では、インプロヴァイザーとしての側面を活かした作・編曲で独自の世界を展開し、ギタリストとしての可能性をさらに極めていった。
2003年2月にはキャリア初の完全ソロ・パフォーマンス・アルバム『ギタールネッサンス』をリリース。バッハの「無伴奏チェロ組曲」やラベル、スカルラッティなどのクラシック作品、ビートルズの「アクロス・ザ・ユニバース」等を取り上げ、幅広い層から大きな反響を得た。さらに同年5月にはNYでNew Electric Trioによる 『Mo’Bop』をレコーディング。 2004年からはこの2つのアルバムを軸としたツアーも行い、2005年にはそれぞれの第2弾となるアルバム、ライブDVDもリリースした。
2006年に入り2本柱のアルバムはそれぞれ第三弾をリリース。その合間をぬってローマ〜パリでのソロ・パフォーマンスと現地ミュージシャンとのコラボレーション、さらには自らのアイデンティティに根ざした新プロジェクトとして韓国のジャック・リー、香港のユージン・パオと共に【エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト】を立ち上げた。
また、2007年より公私共にパートナーであるピアニスト・作曲家の谷川公子とのユニット『Castle In The Air』を始動しアルバムもリリース。自身の音楽とは一線画し自然との共生をテーマに社会との関わりの深い活動を展開。このユニットにて2008年夏公開の映画『火垂るの墓』の音楽も担当。これら多種多様な活動の中で、2008年より自身の原点に立ち返る『JAZZ回帰プロジェクト』としてJAZZコンボでのライブを各地で行う予定。コアなJAZZファンの期待に応えるものとなる。
ホームページアドレス http://www.hilltop.co.jp/kazumi
そのライブは超満員で酸欠状態にまでなった
渡辺:そういえば、ある晩、パンチパーマのお客さんが、出し抜けに演奏中のステージへ上がってきたんですよ。大村憲司さんに、ちょっとギター貸してくれみたいな感じで。何をするのかなと思ったら、ゴキゲンなブルースを1曲弾いて、客席にさっさと戻って行きました。休憩時間のとき、「あの知り合い、いい味だしていたね」と憲司さんに声をかけたら「あれっ、香津美の知り合いじゃないの」なんて言われて(笑)。結局、誰の知り合いでもなかった(笑)。
佐藤:ライヴならではハプニングだね。そして78年の後半からYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のセッションが始まる。
渡辺:最初はYMOというよりも細野晴臣さんを中心としたバンドメンバーが好き勝手に演奏するというような形でしたね。
佐藤:それが、「渡辺香津美・坂本龍一プロデュース・ナイト」という形に発展して、いまや伝説ともいわれるバンド「KYLYN」になった。参加しているメンバーが、凄いよね。坂本龍一、矢野顕子、益田幹夫、小原礼、村上 ”ポンタ“秀一、高橋ユキヒロ、ペッカー、向井滋春、本多俊之、清水靖晃。いまでは考えられないほど豪華。ライブは本当に超満員だった。
渡辺:身動きとれないほどぎっちりでした、エキサイトしちゃって客席にダイビングしたこともありました。もう部屋中が酸欠状態で危なかったですよ。あまりにも暑くて、全員がTシャツ短パン姿で演奏したこともありました。
佐藤:すぐに「六本木ピットイン」でライブ・レコーディングしたのが『KYLYN LIVE』。
渡辺:「六本木ピットイン」は、スタジオが上にあってライブ演奏と録音が直結していました。自分たちのやっていることがダイレクトに形として残っていく。着実な手応えがあった時代でしたね。
佐藤:この年の秋にはYMOのワールドツアーに参加して、香津美さんは、活動の場を日本から世界に広げていきました。そしてその成果を、次の『トチカ』ではっきりと示してくれました。
写真 君嶋寛慶
(後半に続く)
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渡辺香津美さん Kazumi Watanabe(ギタリスト、コンポーザー、プロデューサー)
80年代には大ヒット・アルバム『トチカ』を皮切りに、『Mobo』『Spice Of Life』といったフュージョン史上に残る伝説的作品を次々とレコーディング。自己のグループで全米&アジア・ツアーも行い、トップ・ギタリストとしての地位を確立する。
90年代からはアコースティック・プロジェクトに力を入れ始め、ジャズ/クラシックの境界線を乗り超えて世界中で活躍。91年バルセロナ、ローマ、95年ブルガリア、リスボン、97年のパリなど、ヨーロッパ各地で絶賛を浴びた。21世紀に入り《ギター生活30周年集大成》として発表されたギター組曲『ビヨンド・ザ・インフィニット』では、インプロヴァイザーとしての側面を活かした作・編曲で独自の世界を展開し、ギタリストとしての可能性をさらに極めていった。
2003年2月にはキャリア初の完全ソロ・パフォーマンス・アルバム『ギタールネッサンス』をリリース。バッハの「無伴奏チェロ組曲」やラベル、スカルラッティなどのクラシック作品、ビートルズの「アクロス・ザ・ユニバース」等を取り上げ、幅広い層から大きな反響を得た。さらに同年5月にはNYでNew Electric Trioによる 『Mo’Bop』をレコーディング。 2004年からはこの2つのアルバムを軸としたツアーも行い、2005年にはそれぞれの第2弾となるアルバム、ライブDVDもリリースした。
2006年に入り2本柱のアルバムはそれぞれ第三弾をリリース。その合間をぬってローマ〜パリでのソロ・パフォーマンスと現地ミュージシャンとのコラボレーション、さらには自らのアイデンティティに根ざした新プロジェクトとして韓国のジャック・リー、香港のユージン・パオと共に【エイジアン・スーパー・ギター・プロジェクト】を立ち上げた。
また、2007年より公私共にパートナーであるピアニスト・作曲家の谷川公子とのユニット『Castle In The Air』を始動しアルバムもリリース。自身の音楽とは一線画し自然との共生をテーマに社会との関わりの深い活動を展開。このユニットにて2008年夏公開の映画『火垂るの墓』の音楽も担当。これら多種多様な活動の中で、2008年より自身の原点に立ち返る『JAZZ回帰プロジェクト』としてJAZZコンボでのライブを各地で行う予定。コアなJAZZファンの期待に応えるものとなる。
ホームページアドレス http://www.hilltop.co.jp/kazumi
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