KEFの最高技術責任者、マーク・ドット氏が語る「LS50」開発秘話

ヘッドホンとスピーカーの架け橋に

クロスオーバーにもアナログ方式が採用された。トランスにもこだわり、磁気漏洩の少ないトロイダルトランスを搭載。アナログ入力にも対応するが、左右チャンネルをUSB接続でデジタル伝送しているため、A/D変換された上で再生される。なお、左右チャンネルをつなぐUSBケーブルは1mと2mが同梱されているが、5mまでの使用を保証しており、柔軟なセッティングが可能だ。

X300AはLS50と同様に、ドライバーなど多くの点でBladeで培われたテクノロジーが応用されている。Uni-Qドライバーには非常に軽く硬性のあるアルミとマグネシウムの合金をコーンに使用し、高速でクリーンな中低域を実現した。トゥイーターは、共振ポイントを補強するために二重構造となっている。タンジェリンウェーブガイドはフィンの形状がさらに工夫され、トゥイーターの発する音波を正しく拡散させ、指向性の広さを確保する。また、ベンテッド構造採用でトゥイーターの背圧を自然に逃すことができるため、音の抜けが向上している。この辺りはLS50と共通する。

ドット氏が特に強調していたのは、X300Aが搭載するドライバーの優位性だ。一般的なスピーカーユニットは、一定の周波数帯域を超えると歪みが発生してしまう。通常モデルではネットワークにより一定の周波数を回避することでその歪みを解消するが、その方法は音質的に悪影響がある。本機の場合、コーンとボイスコイルの継ぎ目を工夫した独自のZ-flexエッジを採用することで、正確なピストン運動を保持。ドライバーの根本的な性能を向上させることで、歪みを解消しているのである。

「ヘッドホンの流行は、日本に限ったことではありません。ヘッドホンは素晴らしい文化ですが、そこで終わってしまうのはもったいない。ぜひ、スピーカーで空気を実際に振動させるスピーカーの魅力を知っていただきたいのです。しかし、ライト・ユーザーに向けたパワードスピーカーは、音の悪いものが多い。そこで、価格を抑えながら、本格的なコンポーネントをKEFは提供したいと考えました。X300Aは、ヘッドホンとセパレートコンポーネントの橋渡しとなってくれればいいと思います」。

ドット氏はX300Aについてこのように述べ、インタビューを結んだ。今後もさらに魅力的な製品がKEFから登場することを期待したい。