[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第99回】にわかに活気づく “平面駆動ヘッドホン” 注目3機種聴き比べ!
■“初めてのヘッドホン製品が平面型”という先鋭感。OPPO「PM-1」
続いては、OPPO「PM-1」(実売目安15万6,600円)だ。近年は選択肢がめっきり少なくなっていたハイエンドユニバーサルディスクプレーヤー分野を支えてきたメーカーが、ハイエンドのヘッドホンとヘッドホンアンプを一挙投入してこの分野に参戦。しかも両製品ともに先鋭的な仕様で、このヘッドホンPM-1に至っては「ヘッドホン初製品が平面型」なわけだ。
概要はこちらも以下のニュース記事を参照してほしい。
●OPPO、11.2MHz DSD対応ヘッドホンアンプ「HA-1」と平面駆動ヘッドホン「PM-1」正式発表
http://www.phileweb.com/news/d-av/201405/09/34909.html
概要を確認していただけたら、こちらも写真で見ていこう。
試聴は主には、標準イヤーパッド装着でバランス接続駆動という環境で行った。一通り試してみてこの環境が僕にはベストに思えたからだ。なおこのOPPO「PM-1」+「HA-1」は同一メーカーの組み合わせなので、「そりゃあベストな音がするだろうよ」ではある。その点が気になる方は、以下の評価は少し差し引いて受け取っていただければと思う。
というわけで音を聴いての印象をまずは簡単にまとめると、肉厚で濃厚で湿度感を出しつつもしつこくない!TH500RPとは真逆のようでもあり、しかし「しつこくない」の部分などには共通のものも感じさせる。ということはもしかしたらそこが「平面駆動らしさ」なのかもしれない。
まあこちらもお楽しみはあとにして、まずは強いて言えばの弱いところを挙げておこう。本機は完全に開放型なのだが、しかし「開放型っぽさ」を強く意識した音作りではないように思える。音場がとても広いとか、音と音の間の余白が豊かだとか、そういう印象は特に強くはない。先ほどと同じ言い回しを使い回すが、そこはハイエンドヘッドホンに求められるものを満たす高水準ではあるが、最高水準ではない。そこ重視ならそれをもっと得意とするヘッドホンは他にある。
しかし代わりになのか、本機が打ち出す厚みや力強さは格別だ。それぞれの音色も肉厚だし、音場全体も濃厚。低域も高域もすっと伸びてはいるがワイドレンジ感をいたずらには強調しすぎず、音楽のまさに中心であるミドルのぐぐっとくる充実を強く感じられる。実に音楽的なチューニングだ。
肉厚で弾力も豊かなベースやドラムスがそれでいて堅実に制動されるので、リズムのキレ、躍動感が素晴らしい。音色はガチッと硬質ではなく、しなやかに滑らか。ディストーションギターも厚みがあり、また深い歪みによって増強される倍音感の表現も豊かだ。女性ボーカルをほぐれさせつつ刺す成分も生かす感じ、そもそもの声の質感も秀逸だ。また前述のように全体にほどよいしっとりさ、湿度感がある。これは細かな粒子まで描き出す解像感と、その描き出し方の傾向によるものだろう。
この力強さを備えつつ重すぎずしなやかで、そして幅広い対応力を備える様は、喩えるならばミドル級あたりで王者クラスの総合格闘家だ。「ヘビー級には勝てない」という意味ではなく「パウンド・フォー・パウンド(仮に体重階級を度外視した際の最強候補)」なニュアンスで。
さて「高域解像度重視タイプ」イヤーパッドの印象についても触れておこう。これは明らかに音が変わる。すっとした開放型っぽさが強まり、濃厚さは薄まる。例えばシンバルの厚みが落ちて薄刃になる感じに顕著だし、単純にピンクノイズを流しても帯域バランスの変化を感じ取れる。もちろん「別物!」ではないが、明確な効果を期待してOKだ。
ちなみに「アンバランス駆動」の場合だが、バランス駆動と比べるとだが、厚みや力強さの差は大きい。十分にハイレベルではあるが、バランス駆動での音を知ってしまうと物足りないことは否めない。
なお、この取材のあとに、本機のほとんどをそのまま受け継ぎつつ何カ所かの素材の変更等でコストダウンを実現した「PM-2」も発表され、そちらも聴ける機会があったので、簡単だが次頁ではこちらをご紹介したい。
次ページ価格差6万円まで低コスト化した「PM-2」をご紹介する