[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第99回】にわかに活気づく “平面駆動ヘッドホン” 注目3機種聴き比べ!
■“平面駆動”のメリットとは?
ドーム型振動板はその円の外周がドライバーの基部にラバー等の柔軟な素材で半固定されている(その接合部を「エッジ」と呼ぶ)。そして円の中心部分に電磁力で駆動する別部品のコイルを接合。そのコイルが往復運動することで振動板全体もそれに連動して振動させられる。
この方式だと中心部と外周部の動きは一致はしない。まず中心部が大きく動いてそれが小幅になりつつ外周部にも連動していく。その際に例えば振動がエッジ部で折り返して本来の振動と干渉するなどといった現象が起き、また厳密に見れば中心部と外周部には微細ながらも位相(タイミング)のズレがあり、結果、分割振動やら特定帯域の凹凸の発生やら歪みやらが生まれてしまいがちだ。
もちろん現在の実際のヘッドホンでは、そういった問題は様々な手法による改良で十分に緩和されているのだが…。
一方でドーム型振動板の改良ではなく、それとは根本的に異なる方式を採ることでドーム型振動板での問題を回避しているのが、平面型振動板による平面駆動型だ。こちらの振動板は、外周は円形だったり楕円形だったり長方形だったりそこは様々だが、まあとにかくフラットな板状だ。そしてそのフラットな振動板そのものにコイルが埋め込まれており、振動板自体の全面が一様に直接に電磁力によって駆動される。
ポイントは「全面が一様に」だ。中心部も外周部もズレなく同期して一律に振動する。ドーム型で問題の原因となっていた振動板中心部と外周部の振動の不揃いは、理屈としては平面型では起きない。なのでそれが原因である分割振動やら特定帯域の凹凸の発生やら歪みやらも理屈としては起きない。これは大きな、というか決定的な利点に思える。
…というように決定的な利点を持つと思える平面駆動型ヘッドホンだが、今日までそれが主流になることはなかった。
次ページ主流ではなかったはずの平面駆動型ヘッドホンが、にわかに活気づいてきた